著者
山根 孝行
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.2321-"2343-1", 1932

幼若家兎ニ稀薄鹽酸ノ一定量ヲ經口的ニ輸入シ又鹽化あんもにゆうむノ一定量ヲ食物ニ添加飼養シ,其骨系統ニ就テ解剖學的,化學的並ニ酵素化學的檢索ヲ行ヒタルニ著明ナル變化ノ惹起スルヲ認メタリ.解剖學的變化ノ主ナルモノハ,管状骨々質ノ軟化脆弱,中間軟骨帯ノ菲薄,軟骨基質槍ノ短縮乃至消失,骨緻密質ノ菲薄,骨髓腔ノ擴張,はーべるす氏管ノ擴張ニヨル緻密質ノ海綿化,骨髓ノ充血等ニシテ,化學的ニハ骨質中ノ燐及かるしゆうむハ共ニ減少スルモ,X線ニヨル結晶學的映像ニ變化ヲ認メザリキ.此等酸及酸性鹽攝取動物骨組織抽出液ノ,諸種えすてる鹽加水分解作用ハ,健康動物ノモノニ比シ著シク減退シ,各骨組織(骨端,骨膜,骨髓,骨幹)ノおると及ぴろ,ふおすふあたーぜノ減少ヲ示セリ.
著者
野村 茂樹 水島 大[シュン]
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.621-630, 1941

The foot-binding remains in Chinese as a time honoured manner and custom that is to bind women's feet from childhood. But Chinese women have a dislike to have one's own feet seen by other persons. For this reason, the study of foot-binding is so poor, that there is hardly any literature addicible for it. Accidentally we have had an opportunity to see many foot-bindings during the present Sino-Japanese Affairs. Summaries of our studies concerning about it are following: 1) The foot-binding in the Chinese has various forms, generally the distance from heel to back of foot is mostly long and variant. 2) The influene of foot-binding has not only local transinformation, but has bad effects upon the whole body.
著者
飯野 豐
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.D249-D278, 1929

從來「ぐりこげーん」含量ノ歳時ニヨル影響ニ就テハ多クノ業績ヲ見ルト雖モ更ニ一歩進ンデ含水炭素新陳代謝ト密接ノ關係ヲ有スル「あどれなりん」含量ノ歳時ニヨル影響ニ就テ報告サルルモノ甚ダ少ナク唯ダ僅カニ温血動物ニ就テ二三存スルモ未ダ一定セル結果ヲ示サズ是レ或ハ温血動物ノ生活現象ガ歳時ニヨリソノ影響サルヽコト少ナキニヨルカ將又副腎「あどれなりん」含量ガ他ノ諸種ノ條件ニヨリ歳時ニヨル影響ノ葢ハルヽ爲メユヨルカ.ソノ何レカナラン。茲ニ於テ余ハ之ガ解決ニ對シテハ歳時ニヨリ生活現象ニ劃期的變化ヲ有スルガ如キ動物ヲ選擇スルノ捷徑ナルヲ思ヒ特ニ冬眠動物ヲ選ビ其ノ副腎「あどれなりん」含量及ビ肝臟並ニ筋肉「ぐりこげーん」含量ヲ測定シ那邊セデ歳時ノ影響ノ存スルモノナリヤ否ヤ這般ノ關係ノ闡明ニ努メタリ。本實驗ハ平均體重二三五瓦ノ蝦蟇三三九頭(雄一六五頭雌一七四頭)ヲ使用シ千九百二十五年四月ヨリ千九百二十七年十一月ニ渉リ毎月十乃至十四頭ニ就テ副腎「あどれなりん」含量ノ測定ト同時ニ肝臟並ニ筋肉「ぐりこげーん」含量ヲモ測定シ尚ホ且ツ實驗當時ノ氣温並ニ一般生活状況ニ就テモ詳細ニ記載スルニカメタリ。勿論實驗動物ノ選擇ニ對シテモ充分フ注意ヲ用ヒタルノミナラズ凡ソ副腎「みどれなりん」含量及ビ肝臟並ニ筋肉「ぐりこげーん」含量ニ變動ヲ與フガ如キ動機ニ對シテハ嚴重ニ注意ヲ拂ヒ之レヲ避クルニ努メ可及的自然ノ状態ニ於テ實驗ヲ施行セリ。今實驗成績ヲ示セバ次ノ如シ。一。副腎總量ハ平均六四瓱(雄五六瓱雌七一瓱)ソノ大多數ハ三〇乃至九〇瓱ノ間ニ存在シ冬期ハ夏期ニ比シ一般ニ大ナリ。二。體重一瓩ニ對スル副腎重量ハ平均二七七瓱(雄二八四瓱雌二七一瓱)ソノ大多數ハ一五〇乃至四〇〇瓱ノ間ニ在リ。三。副腎「あどれなりん」總量ハ平均〇・一九六瓱(雄〇・一八四雌〇・二〇八瓱)ソノ大多數ハ〇・一〇〇乃至〇・三〇〇瓱ノ間ニ介在ス。四。副腎一瓦ニ對スル「あどれなりん」含量ハ平均三・三〇三瓱(雄三・四五九瓱雌三・一五五瓱)ソノ大多數八一・五乃至五・〇瓱ノ間ニ散在ス。五。體重一瓩ニ對スル「あどれなりん」含量ハ平均〇・八七九瓱(雄〇・九五一瓱雌〇・八一二瓱)ソノ大多數ハ〇・五乃至一・二瓱ノ間ニ存在ス。副腎「あどれなりん」總量ハ本動物ガ三月産卵スルト同時ニ著シク減少シタルモノガ五月ニ於テハ稍々増加ヲ示ス。六月ニ至レバ再ビ減少シ七月八月ニ於テ最低ヲ示ス(〇・一五一瓱)次デ九月十月ト次第ニ増加シ一月ニ稍々下降スルモ二月ニハ再ビ増量シ最高ニ達ス(〇・二六一瓱)而シテ三月ニ著シク下降シ四月ニハ益々下降ス。即チ最高ノ二月ハ最低ノ七月ノ實ニ一七〇%ニ相當ス。如斯副腎「あどれなりん」總量ハ後述スル肝臟並ニ筋肉「ぐりこげーん」含量ト同樣歳時ニヨリ明カナル動揺ヲ示スモノナリ。本動物ハ冬眠期ニ於テハ生活現象著シク沈衰スルニ反シ生殖腺ノ発達ハ益々加ハリ其ノ増加ト共ニ副腎「あどれなりん」含量モ亦タ益々加ハル。生殖行動開始ト共ニ又急速ニソノ含量下降ス。而シテ夏期覺醒期ニハ僅少ナル價ヲ保ツニ過ギズ。是レ恐ラク副腎「あどれなりん」分泌ガ冬眠期ノ生活現象沈衰ト共ニ強ク且ツ完全ニ停止サレ生殖期ニ於ケル準備トシテ貯藏サル丶モノノ如シ。六。肝臟總重量ハ平均七八瓦(雄七・四瓦雌八・二瓦)ソノ大多數ハ四乃至一〇瓦ノ間ニ在リ。七。體重一瓩ニ對スル肝臟重量ハ平均三二・三瓦(雄三四一瓦雌三〇五瓦)ソノ大多數ハ二〇乃至五〇瓦ノ間ニアリ。肝臟總重量並ニ體重一瓩ニ對スル肝臟重量ハ共ニ歳時ニヨリ明カニ動揺ヲ示シ冬期ハ夏期ヨリ大ニシテ三月ヨリ八月マデノ平均價ハ九月ヨリ二月マデノ價ノ約二分ノ一ナリ。八。肝臟「ぐりこげーん」總量ハ平均〇・五三五瓦(雄〇・五六三瓦雌〇・五〇八瓦)。九。肝臟「ぐりこげーん」%量ハ平均五・八八五%(雄六・一七六%雌五・五九九%)。十。體重一瓩ニ對スル肝臟「ぐりこげーん」含量ハ平均二・一一九瓦(雄二・四五五瓦雌一・七八八瓦)肝臟「ぐりこげーん」含量ハ一般ニ雄ハ雌ヨリ大ナルガ如シ。三月ノ生殖時期ヲ經過スレバ急激ニ減少シ四月ヨリ七月ニ至ル間ハ少量ナルモ九月ヨリ急速ニ増加シ二月ニ最高ニ達シ産卵期ト共ニ減少ス即チ肝臟「ぐりこげーん」含量モ亦明カニ歳時ニヨリ影響ヲ蒙リ一般ニ夏期ハ冬期ニ比シ常ニ少ナシ即チ肝臟「ぐりこげーん」總量ニ於テハ四分ノ一%量ニ於テハ二分ノ一而シテ體重一瓩ニ對スル肝臟「ぐりこげーん」含量ニ於テハ三分ノ一量ヲ示スニ過ギズ。十一。筋肉「ぐりこげーん」%量モ亦肝臟「ぐりこげーん」量ト同樣歳時ニヨル影響ハ著明ニシテ夏期ニ少ニシテ冬期ニ大ナリ、ソノ平均價ハ〇・九八一%(雄〇・九八一%雌〇・九八一%)ニシテソノ大多數ハ〇・三乃至一・五%ノ間ニ在リ,四月ヨリ七月マデハ〇・七%ナルモ八月ヨ・リ次第ニ増加シ二月ニハソノ最高(一・四三八%)ニ達ス而シテ三月ノ生殖期ニハ減少ス。以上述ベ來タリタル余ノ實驗成績ヲ綜合スルニ副腎「あどれなりん」含量ハ肝臟並ニ筋肉「ぐりこげーん」含量ト同樣ニ歳時ヲリ著明ナル影響ヲ蒙ルモノナリ。
著者
角田 英 久保 正哉
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学雑誌 (ISSN:00236012)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.987-"992-2", 1935

有機色素ノ多クノモノハ芳香簇化合物ノ特性トシテ中腦又ハ延髓ニ於ケル運動中樞ヲ刺戟又ハ麻痺セシムル作用ヲ有シ,コレガ中毒ニ際シ末梢神經ニモ一種ノ障害ヲ及ボスコトハ夙ニ認メラルル所ナリ.而ルニ他方ニ於テ此等ハぱらじとろーぷニシテ從テ一定ノ制菌力乃至制腐力ヲ具有セルガ故ニ外科的領域ニ於テ細菌竝ニ病原性原生動物ノ防壓ニ旺ムニ利用セラルル所ナリ.角田船越ハ本誌第13卷第3號ニ於テ二三色素ノ藥物學的作用ノ新知見ト,コレラノ作用ハ恐ラク植物性神經系統特ニ迷走神經ニ中樞性竝ニ末梢性ノ刺戟ヲ與フル事ニ因スト結論セリ.コレヨリ曩ニ小澤氏ハ本誌第12卷第1號ニ於ルとりぱふらびんノ副作用ニ就テノ實驗的研究ニテ本劑ヲ家兎ノ靜脈内ニ體重1kgニ就キ0.005g以上宛ヲ繼續的ニ毎日注射スル時ハ家兎ハ下痢ヲ起シテ斃死シ,之ヲ剖檢スルニ心筋,輸尿管上皮,肝小葉等ニ脂肪變性,溷濁澎張變性ヲ見ルト報告セリ.余等ハ今般鳩ヲ使用シ,通常外科領域ニテ使用セラルルあくりぢん色素ノGentianavilett,Isamimblau,Brillantgrun等ノ一定同一量ヲ同一回數夫々異リタル鳩ノ靜脈内ニ注射シ人工的ニ中毒セシメタル後其ノ下肢ノ筋肉ヲ採取シ,Ramon-y-Cayal氏變法ニ依リテ鍍銀標本ヲ作リ,之ヲ鏡檢スル事ニヨリテ神經終末ノ變化状態ヲ確メ,且其レラノ強度ヲ相互ニ比較セリ.其ノ結果各色素ノ神經親和力ノ強サニ從テ之等ヲ配列セバ大體次ノ如シ.Isaminban>Trypaflavin>Gentianaviolett>Brillantgrun>Rivanol經末ノ變化;1)Isaminblauノ場合嗜銀性ハ輕度ニ減退シ,終枝ハ輕度ニ腫張シ,其ノ迂曲性又減退スル傾向アリ.終網ハ消失セルモノアルモ,其ノ變化ハ輕度ニシテ油浸装置ヲ使用シテ始メテ認メラルル程度ナリ.無髓纎維モ亦輕度ニ腫張スルモ,其他ニハ殆ド認ム可キ變化ヲ呈セズ.筋紡錘體,太キ有髓纎維,細キ有髓纎維或ハ無體纎維ニ於ケル變化ハ輕度ニシテ,極メテ輕微ナル腫張ヲ呈スルニ過ギズ.神經幹部ニ於ル各種神經纎維ノ嗜銀性モ亦低下ス.血管神經ニハ輕度ニ萎縮スルモノアルモ,嗜銀性ハ尚可良ナリ.2)Trypaflavinノ場合.一般ニ嗜銀性高マリ,終末ニハ輕度ニ腫張スルモノアルモ,終枝ノ多クハ邊縁粗造トナリ時ニ消失セシムトスルモノアリ.終網ハ濃染スルモノ多ク,副行無髓纎維(Akzessorisclle Faser)ハ輕度ニ萎縮スル傾向ヲ示スモノ多キモ,時ニ其ノ終末ニ於テ消失セムトセルモノアリ.血管神經ハ極メテ輕度ニ萎縮ヲ示セルモ,嗜銀性ハ尚良好ニ保持サル.神經幹部ノ各種神經纎維ノ多クハ著變無キモ其ノ嗜銀性ハ却テ増進スルモノアリ.3)Gentianaviolettノ場合終末ハ其ノ嗜銀性輕度ニ増進セルモノト減退セルモノト相半シ,終枝ハ經過單調トナリテ腫張セリ.終網ハ消失セルモノアリ.副行纎維ニハ著變無シ.筋紡錘體ニ於テハ太キ有髓纎維,細キ有髓纎維,無髓纎維何レモ輕度ニ腫張スルノミニテ其他ニハ著明ノ變化ヲ認メ難シ.神經幹部ニ於ケル各種ノ神經纎維ニハ嗜銀性ノ増進ヲ認ム.血管神經ニモ著變無シ.4)Brillantgrunノ場合終末ノ極メテ輕度ニ腫張シ嗜銀性ノ亢進セルモノアリ.終枝ハ稍々單調ナル經過トナレルモノノ如ク,終網ニハ時ニ消失セムトセルモノアルモ,筋紡錘體竝ニ血管神經ニ著變ヲ認メズ.神經幹部ニ於ケル各種神經纎維モ殆ド正常ニシテ,一般ノ變化程度ハ略Rivanolノ場合ノ其レニ匹適スルモノト察セラル.5)Rivanolノ場合終末装置ニハ著變ヲ缺クモノ多ク,唯極メテ罕レニ終枝ニ輕度ノ腫張ヲ示スモノアルニ過ギズ.終網ハ殆ド正常ニシテ筋紡錘體,無纎維,血管神經悉ク常態ヲ保テリ.又神經幹部ニ於ケル各種ノ神經纎維ニモ殆ド認ム可キ變化無シ.即チ神經ニ對スル毒性ノ點ヨリ觀レバ,余等ノ實驗セル範圍内ニ於テハIsaminblau最大ニシテRivanol最小ナリ.而モソノ順位ハ一般的毒性ノ其レト必シモ全ク一致セザルヲ知リ,且本實驗ニ基キテ余等ハ外科領域ニ於テとりぱふらびん連續使用時ニ屡々慢性中毒症状トシテ見ラルル筋肉痛,關節痛等ノ病理組織學的根據ヲ聊カ闡明シ得タリト信ズ.但,余等ハ以上ノ如キ實驗成績ニ基キテ決シテ輕々シク各種色素製劑ノ外科領域其ノ他ニ於ケル醫療的價値ヲ云爲又ハ否定セムトスルモノニ非ズ.唯同一劑ノ過量ヲ永續的ニ使用セムカ,中毒症状トシテ如上ノ結果ヲ人體ニ於テモ亦生ジ得可キヲ警告スルニ過ギザルナリ.
著者
松田 かおり 眞鍋 えみ子 田中 秀樹
出版者
京都府立医科大学
雑誌
京都府立医科大学看護学科紀要 (ISSN:13485962)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.49-54, 2008

4歳児をもつ女性260名を対象に,女性の睡眠健康,睡眠感,眠気と精神健康との関連を検討した.その結果,睡眠健康の障害,自覚的睡眠感,日中の眠気と精神健康とは関連することが明らかとなった.さらに,入眠と睡眠維持の障害から,起床時眠気や疲労回復の遅れを伴う場合には,身体症状,社会的活動障害や不安と関連し,うつ傾向には,入眠障害,起床時眠気の関与が明らかとなった.したがって幼児をもつ女性においても,入眠困難や睡眠の質の改善を図ることにより,自覚的睡眠感の改善が期待され,精神健康の向上に寄与すると推測された.
著者
小嶋 健太郎
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

上脈絡膜腔バックリング手術は強膜と脈絡膜の間に存在する上脈絡膜腔に充填物質を注入することにより網膜と脈絡膜のみを内陥させる新規的術式で裂孔原性網膜剥離に対する低侵襲治療として近年その有効性が報告されている。この手術は有望である一方で、一般化に向けた課題として1)術式に最適化された充填物質および2)術式に最適化された手術器具の研究の必要性が明らかになってきている。本研究では上脈絡膜腔バックリング動物実験モデルを用いて上脈絡膜腔バックリング手術に用いる充填物質と手術器具の最適化に向けた基礎研究を行う。
著者
伊東 恭子
出版者
京都府立医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

タナトフォリック骨異形成症(以下TD)は、FGFR3遺伝子変異が原因で、四肢短縮などの骨形成異常とともに、中枢神経系では後頭葉・側頭葉に過形成性の過剰な脳回様構造、海馬異形成を伴う。今回我々は、ヒト胎児脳から樹立した神経幹細胞(以下NSCs)に、ヒトのTDで既報告のFGFR3遺伝子変異: FGFR3-K650E、FGFR3-R248Cの各々を導入したNSCsラインを樹立した。さらに、独自の培養液組成と培養環境条件下で、in vitroの系で3次元構築を有するミニブレイン様構造物の作製に至った。今後、TDミニブレインモデルを構築し、脳形成異常のメカニズム解明、レスキュー実験へと展開する。
著者
佐野 統
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

慢性関節リウマチ(RA)の病態における視床下部-下垂体-副腎(HPA)系の異常を調べるため、RA患者およびモデルラット(SCWおよびアジュバント)関節炎を用いてcorticotropin-releasing hormone(CRH)やβ-endorphinの役割を検討した。1)RA患者滑膜(表層細胞、炎症性単核球、フィブロブラスト様細胞、血管内皮細胞)においてCRHとβ-endorphin蛋白の著明な発現を免疫染色法を用いて証明した。2)RA患者滑膜ではCRH及びβ-endorphin蛋白は変形性関節症(OA)患者に比べ、有意に強い発現(P<0.01)がみられた。3)RA患者滑膜ではCRHmRNAが滑膜表層細胞、炎症性単核球、フィブロブラスト様細胞、血管内皮細胞において強く発現していた。一方、OA患者滑膜では表層細胞において弱い発現がみられるのみであった。4)RAのモデルラット(SCWおよびアジュバント)関節炎でも炎症の増強に伴い滑膜、軟骨、周囲皮膚においてCRH及びβ-endorphinの発現増強がみられた。5)グルココルチコイド投与によりモデルラット(SCWおよびアジュバント)関節炎と同時にCRH及びβ-endorphinの発現も軽度抑制された。6)抗CRHまたは抗β-endorphin抗血清をAlzetポンプを用いて2週間雌Lewisラット腹腔へ投与するとアジュバント関節炎が抑えられた(約40-50%)。7)抗CRH抗体投与により、免疫染色では関節滑膜や軟骨におけるCRHの発現は抑制されていた。8)抗β-endorphin抗体投与により、同様に関節滑膜や軟骨におけるβ-endorphinの発現は抑制されていた。以上より、CRHやβ-endorphinは様々な免疫作用と同時に、炎症惹起作用を有すると考えられ、RAの病態に強く関与している可能性がある。今後、RAにおけるHPA系の機能異常の解析が進むとともに、その機能修復によるRA治療という新しいアプローチが試みられるものと考えられる。
著者
赤澤 健太郎
出版者
京都府立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脳温度をMagnetic resonance imagingで非侵襲的に測定する方法のひとつとして、拡散強調画像から得られる側脳室内の脳脊髄液の拡散係数を利用する方法が近年提案されている。本研究では、この手法の安定性や、撮像条件・体温の違いによる影響を明らかにするために計画されたものである。健常成人の検討によって、この手法は安定的に脳室温度を計測することが可能であった。また撮像条件のうち、スライス厚は算出される温度に影響を与え、より薄いスライス厚のほうが望ましいという知見が得られた。また脳室温度は体温の影響を受けることも明らかとなった。
著者
高松 哲郎 原田 義規 南川 丈夫
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

手術において末梢神経を温存することは,器官機能の温存だけでなく,患者のQOLにおいて重要な役割を担う.本研究では,研究代表者らがこれまで行なってきたラマン散乱光を用いた組織観察法を基盤に,末梢神経を非侵襲かつin vivo検出可能なラマン顕微鏡システムの開発を行った.特に,深部組織診断可能な近赤外光に対応したラマン顕微鏡の開発,末梢神経および周辺組織に特徴的なラマンスペクトルの探索と散乱分子骨格の同定,および末梢神経を選択的に検出する解析アルゴリズムの開発を行い,ラマン散乱分光法に基づく末梢神経の分子構造解析および選択的検出が実現可能であることを示した.
著者
長谷川 徹
出版者
京都府立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

口腔顎顔面領域の外傷や手術後の合併症として、三叉神経に神経麻痺等の障害が起こることがある。このような障害に対し、従来から保存的な治療法として理学療法や薬物療法が選択されてきた。理学療法である高周波の電気刺激では微少血管の拡張、神経伝達速度の上昇、痛覚閾値の上昇などの効果について報告されている。しかし低周波・高周波混合の電気刺激による効果についての検討は未だ報告されていない。そこで、神経障害に対して低周波・高周波混合の電気刺激による効果についての研究を行った。まず、一定の刺激により神経系細胞に分化することが報告されている骨芽細胞(MC3T3-E1)に対し低周波・高周波混合の電気刺激を加え検討した。出力は1~4mAで、刺激時間は1~10分間とした。結果、出力に係らず5分間の電気刺激により細胞活性の増大を認めた。次に、ALP活性およびヒアルロン酸の産生について検討した。結果、出力が2mA、10分間電気刺激した群でcontrol群に比べ、有意なALP活性の上昇を認めた。一方、ヒアルロン酸の産生量は、control群と刺激群では変化がなかった。これより低周波・高周波混合の電気刺激は、骨芽細胞の増殖と分化を促すことで、骨形成の増大に関与している可能性が示唆された。また、オトガイ神経支配領域に知覚鈍麻を認めた症例に対し電気刺激療法をおこなった。他覚的な評価を口腔顔面機能学会の規定するスコア化の基準に従いスコア化した。その結果、治療開始後3ヶ月でスコアが改善した。また自覚的な評価をVASにより生活支障度および自覚症状で評価した。それぞれ10例中6例および7例で改善していた。以上より、理学療法である低周波・高周波混合の電気刺激により神経障害が改善する可能性が示唆された。
著者
高松 哲郎 山岡 禎久
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ヒトの組織や臓器を生きたまま見る方法として、エックス線断層撮影法、磁気共鳴画像(MRI)法、超音波断層撮影法など様々な方法があり、実際に医療の現場で頻繁に使われ威力を発揮している。しかしながら、それらの方法の空間分解能はたかだか数ミリメートルであり、様々な創意工夫により年々その分解能は向上されているが、原理的測定限界がある。一方、光を使った生体計測が、近年注目されており、光コヒーレンス断層映像法(OCT)に代表される医療への応用が発展してきている。光を使うと非常に高い空間分解能で測定が可能であるが、反面、光は生体により散乱、吸収されやすいという性質を持つため、生体への浸透深度が短いという欠点があり、OCTの応用は血管内膜のように厚さが薄いもの、あるいは眼など比較的透明なものに限られてしまう。例えば、末梢血管のような10μmから100μmの大きさのものを生体深部で捉える方法がこれまでになかった。本研究では、光の高空間分解性と、超音波の生体内長距離伝播特性の両方を利用した、全く新しいイメージング技術である多光子励起光音響イメージング(multiphoton excitation-assisted photoacoustic tomography(MEAPAT))を提案した。この方法では、近赤外域の高ピークパワーを持つ光パルスを利用する。生体内に光パルスを集光して入射させると、焦点での高光密度により、焦点部でのみ非線形な吸収効果が誘発される。その非線形な吸収による光音響波を測定することにより、生体深部を高空間分解能で観測できる。様々な実験や考察(MEAPATと従来型光音響イメージングとの比較、MEAPATの深さ分解能の見積り、MEAPAT信号を増強する工夫)を行い、提案している方法によるイメージングシステムを構築し、その有効性を示した。結果は、MEAPATが生体深部を10μm以下の空間分解能で計測するのに極めて有効な方法であることを示している。
著者
高木 智久 吉川 敏一 内藤 裕二 吉田 憲正 古倉 聡
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ヒト炎症性腸疾患患者(潰瘍性大腸炎・クローン病)をはじめとした炎症性疾患に対する革新的な新規治療法の開発の試みとして一酸化炭素ガス(Carbon monoxide:CO)吸入曝露装置の開発、ならびに同装置を用いたCOガス吸入療法の効果の検討をマウス実験腸炎モデルに対して行った。1,CO曝露装置は研究協力者の森田亨(東京高圧株式会社)とともに行った。その概ねの構造は1000ppmのCOガスを純空気により分割希釈することによる濃度調節法を選択し、マウスゲージを収納できるアクリル製の大型の閉鎖飼育容器に曝露する方法をとった。ガスの排気は安全性を高めるため開放系の外気に希釈廃棄することとした。この装置を用いて検討したところ持続的に安定した一定濃度のCOガス曝露が可能になり、以降の検討に耐えうるものが完成した。2,マウス実験腸炎モデルとしてTrinitrobenzesulfonic acid(TNBS)腸炎モデルを用いた。その結果、COガス曝露群では非曝露群に対して有意に病変の形成が抑制されていた。また、大腸粘膜内の好中球浸潤や炎症性サイトカイン産生もCOガス曝露群にて有意に改善を認めており、COガス曝露による抗炎症効果が確認された。3,他部位の炎症病態におけるCOガスの効果を検証するために、代表的な関節炎症モデルであるマウス関節炎モデルを用いてCOガス吸入の効果を検証した。その結果、COガスの吸入により有意に関節炎の発症が抑制された。このことより、COは腸管炎症だけでなく関節炎においても充分に抗炎症効果を発揮するものと考えられた。以上の検討から、COガスによる腸管炎症を含めた炎症病態における炎症性御効果が明らかとなった。
著者
吉村 学
出版者
京都府立医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

血中のカテコラミンの約6割を占めるドーパミンは測定可能な遊離型が0.3%と微量(10-20pg/ml)であり、他は抱合型として存在することから臨床検査としてルチンに使用するのは難しかった。しかし、今回ジフェニルエチレンジアミン法を用いるHPLC法を開発して、ドーパミンを5pg/ml迄測定する系を確立した。健常者に於ける血中遊離型ドーパミン(以下ドーパミン)濃度は若年者で6.4±1.5pg/ml、高齢者で16.2±8.2pg/mlとなり、血中ノルアドレナリン濃度と同様に加齢の影響を認めた。臥位で低下し、座位及び立位で高値を示すことから、採血は臥位で行った。24時間に於ける血漿ドーパミン濃度は日内変動を示さなかったが、血漿ノルアドレナリン及びアドレナリン濃度は日内変動を示した。運動時の血漿ドーパミン濃度は等尺性運動では軽度の上昇を示したが、律動性運動では著明な高値を示した。その上昇は運動強度の増大と共に上昇し、好気性運動から嫌気性運動に移行する時点で急上昇した。血漿ドーパミン濃度と乳酸濃度とは有意の正相関を示したことから、ドーパミンは運動時の筋肉内循環に重要な役割を占める事が示唆された。各種疾病との関連では、本態性高血圧症患者で低値を示し、β遮断薬投与患者では更に低下した。原発性アルドステロン症や褐色細胞腫などの二次性高血圧症では血漿ドーパミン濃度が高値を示した。又心不全などの浮腫性疾患や甲状腺機能低下症でも上昇した。パーキンソン病や症候群でL-DOPA投与後の血中ドーパミン濃度は経時間内に上昇し、又、循環不全患者でドーパミン製薬投与中の症例では血中ドーパミン濃度が著増することから、薬物濃度のモニターとしても利用可能である。今後は各種疾患及び各種薬剤投与症例の血中ドーパミン濃度を測定して臨床検査的有用性を確認する予定である。
著者
高浪 景子
出版者
京都府立医科大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

エストロゲンは生殖や性行動などの機能調節だけでなく、体性感覚の調節に関与することが知られている。とくに、妊娠期間や更年期などのホルモン環境が変動する時期に、痒み感覚に変化がみられるが、女性ホルモンであるエストロゲンが痒み閾値を調節する機序については不明な点が多い。そこで、行動薬理学解析と組織学解析を行い、エストロゲンが痒み閾値調節に関与するか、ラットを用いて解析した。その結果、雌ラットにおいて体内エスロトゲン濃度に依存して掻破行動の変化がみられた。また、 エストロゲンが感覚神経系 CGRP の発現を制御し、痒み閾値を調節する可能性が示唆された。