著者
岩崎 好陽 中浦 久雄 谷川 昇 泉川 碩雄 飯田 靖雄
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.446-451, 1984

自動車排ガスの臭気について検討した。6車種 (ガソリン車2台, ジーゼル車4台) について各走行モードごとに, 三点比較式臭袋法により臭気濃度を測定し, O.E.R。を算出した。また臭気強度および排ガスの成分も一部測定した。その結果以下のことが明らかになった。<BR>(1) 自動車排ガスの臭気濃度はガソリン車よりジーゼル車の方が高く, またジーゼル車においては, 大型になる程臭気濃度も高かった。<BR>(2) 大型ジーゼル車の臭気濃度は10,000~30,000 (臭気指数40~45) 程度であり, 0.E.R.は10<SUP>5</SUP>前後であった。<BR>(3) ジーゼル車において, 希釈倍数<I>x</I>と臭気強度<I>y</I> (TIA尺度) との関係は<I>y</I>=7.1-1.7log<I>x</I>となり, Kendallらの結果とほぼ一致した。
著者
常盤 寛
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.A8-A15, 1992-01-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
20
被引用文献数
2
著者
鹿角 孝男 薩摩林 光 佐々木 一敏 鹿野 正明 太田 宗康 畠山 史郎 村野 健太郎
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.282-291, 1996

山岳地域における環境大気中の浮遊粒子状物質 (SPM) と大気降下物の特徴を把握するため, 唐松岳入方尾根および長野市においてSPMを1ヵ月毎に採取し, 化学成分濃度を測定し, 各種発生源寄与率の推定を行った。また, 大気降下物を1ヵ月毎に測定し, 酸性物質降下量を調査して, 渓流水への影響について検討した。<BR>八方尾根におけるSPM中のSO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>濃度は春季~ 夏季に高くなる変化を示した。春季 (3~4月) には黄砂の影響が見られ, 黄砂粒子の濃度は約4μg/m3と推定された。調査地点近傍の土壌粒子の寄与は少なかった。大気降下物のpHは平均5.1であり, 長野市 (平均5.3) よりもわずかに低く, 春季に高くなる傾向があった。nss-SO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>の降下量は長野市の約2倍あり, またNO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>の降下量も多く, 清浄地域と考えられる山岳地域にも多量の酸性物質の降下が認められた。<BR>八方尾根付近の渓流である平川の水質は, pH7.6, アルカリ度0.48meq/<I>l</I>と十分な中和能があったが, 梅雨期には希釈効果により一時的にアルカリ度の低下が認められた。NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>濃度は融雪期 (3~4月) に上昇したが, pHの低下は見られなかった。
著者
鈴木 元気 森川 多津子 柏倉 桐子 唐 寧 鳥羽 陽 早川 和一
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.117-122, 2015-03-10 (Released:2015-09-03)
参考文献数
20

首都圏3地点(野毛、九段、つくば)において、野毛および九段では2006~2013年まで、つくばでは2010~2013年までの夏と冬の大気粉塵を捕集し、多環芳香族炭化水素 (PAH) 9種類およびニトロ多環芳香族炭化水素 (NPAH) 3種類をそれぞれHPLC-蛍光検出法、HPLC-化学発光検出法で測定し、その濃度の変遷を明らかにした。PAH濃度は野毛、九段で2006年から2008年の間の冬に低下傾向が認められた。NPAH濃度は、野毛では2006年から2011年の間の夏と冬、九段では2007年から2009年の間の夏および2006年から2011年の間の冬に低下傾向が認められた。つくばでは観測期間が2010年から2013年と短く、PAHとNPAHのいずれについても明確な変動傾向は認められなかった。また野毛および九段で[1-NP]/[Pyr]値の低下が確認され、PAH、NPAH濃度低下の要因の一つとして自動車排ガス規制による粉塵およびNOx排出量の減少が考えられた。

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出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.N10-N12, 2018-01-10 (Released:2018-03-17)
著者
市川 有二郎 井上 智博 大橋 英明 渡邉 剛久 石井 克巳 内藤 季和
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.152-165, 2015-05-10 (Released:2015-09-04)
参考文献数
52

2013年11月4日に千葉県市原市内の一般環境大気測定局で、PM2.5質量濃度の日平均値が「注意喚起のための暫定的な指針」で定める70 μg/m3を超過する可能性があったため、全県を対象に千葉県として初めて注意喚起を行った。なお当該注意喚起は、東日本でも初めての注意喚起となったことから、全国的に注目を集めた。本報では常時監視項目の観測結果、PM2.5成分分析の測定結果および気象状況の解析結果から高濃度となった要因について解析を行った。11月3日から大気環境は酸化雰囲気であったことから、NH4NO3の高濃度化に繋がったと考えられる。さらにレボグルコサン、水溶性有機炭素、Char-ECの測定結果から、バイオマス燃焼も大きく影響していたことがわかった。また、無機元素の測定結果からは、注意喚起日のV、Niの濃度が相対的に高い結果であったことから、重油燃焼による寄与も示唆された。気象状況については11月3日夜に確認された気温逆転層によって、大気汚染質が拡散されにくかったことおよび湿度の影響によるPM2.5質量濃度の上昇に加え、風の収束域により濃縮された汚染気塊が市原市内に移流したと推測された。以上のように、バイオマス燃焼、重油燃焼の人為起源による影響に加えてNH4NO3の高濃度化がPM2.5質量濃度の上昇に寄与したと考えられた。これらの影響を含んだ汚染気塊が拡散されず局所的に収束する気象条件も相重なったことが、11月4日の注意喚起に至った要因であると推定された。
著者
古明地 哲人
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.A103-A111, 1993-09-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
26

大気汚染の研究範囲はこれまで専ら人の健康, 植物影響に関する研究分野に関心が集中してきた。そしてこれらに関係する形で大気中での汚染現象を気象, 拡散, 化学反応モデル, 汚染物質と被影響対象との量一反応関係として扱う等, 多くの学問分野を包含する手法も使用されてきた。しかし, 緊急避難としての性格が大きかったこれまでの環境調査研究の中にも, 近年は環境問題のより幅広い現象に関心が広がり, 歴史的な文化遺産, 文化財への影響, その保存法等の調査も徐々に実施されはじめて来た。文化財のおかれている現状, また文化財の面からのより質の高い, 良好な環境について紹介したい。
著者
松下 秀鶴 森 忠司 後藤 純雄
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.220-227, 1982

タバコ副流煙中のN-ニトロソアミンの新しい分析方法を開発した。本法は, 次の各操作すなわち, 液体-固体捕集系による副流煙中N-ニトロソアミンの捕集, ジクロロメタンによるN-ニトロソアミン抽出, 抽出溶液のK-D濃縮器および窒素気流吹きつけによる濃縮, そして熱エネルギー検出器付ガスクロマトグラフィー (GC-TEA) によるN-ニトロソアミンの分析から成り立っている。<BR>副流煙中N-ニトロソアミンの捕集には, 1N KOH, 0.5Mスルファミン酸水溶液, 脱水剤 (Na<SUB>2</SUB>CO<SUB>3</SUB>) そしてサーモソルブ/Nチューブを直列につないだ捕集系を用いた。この系では, 副流煙中に8ppmの高濃度二酸化窒素を含む場合でも, アーティファクトニトロソアミン生成がなく, N-ニトロソジメチルアミン (NDMA) やN-ニトロソピロリジン (NPYR) に対して99%又はそれ以上の高い捕集効率が得られることが判った。高い分析再現性を得るために, 溶媒抽出の際, 既知量のN-ニトロソジーn-ブチルアミンを内部標準溶液として試料溶液に加えた。また, 本法で用いたGC-TEAは, クリーンアップ処理の簡素化にたいへん有効であり, 高感度であった。<BR>本法を若干の国産銘柄タバコ副流煙中のNDMAとNPYRの分析に適用した。喫煙は国際喫煙モードで, 定容量型自動喫煙器を用いて行った。分析結果の再現性は高く, その変動係数はNDMAで4.9%, NPYRで2.9%であった。また副流煙中のこれらN-ニトロソアミン含量は銘柄によって異なり, その値はタバコ1本当たりNDMAで190~370ng, NPYRで90~210ngであることを認めた。
著者
松下 秀鶴 森 忠司 後藤 純雄
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気汚染学会誌
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.339-345, 1983

タバコ副流煙中のN-ニトロソアミソ分析方法を改良した。副流煙中のN-ニトロソアミンの捕集には, 0.5Mスルファミソ酸水溶液, 脱水剤 (Na<SUB>2</SUB>CO<SUB>3</SUB>) そしてサーモソルブ/Nチューブを直列につないだ捕集系を用いた。捕集した副流煙中のN-ニトロソアミンは捕集系の各部位からジクロロメタンで抽出し, 抽出溶液を一つに集め, 内部標準としてN-ニトロソージーブチルアミンを一定量添加したのち, K-D濃縮器および窒素気流吹きつけにより約0.5m<I>l</I>まで濃縮し, GC-TEAで分離分析した。<BR>本分析方法では, N-ニトロソジメチルアミン (NDMA) とN-ニトロソピロリジン (NPYR) はほぼ完全に捕集できること, 分析結果の再現性が高く, その変動係数はNDMAで7.2%, NPYR 8.1%でであることが判った。<BR>本法を国産, 外国産タバコ各々15銘柄の副流煙中のNDMAとNPYRの分析に適用した。N-ニトロソアミン含量は銘柄によってかなり異なり, タバコ1本当りの含量はNDMAで113~544ng, NPYRで40~332ngであった。また中国産タバコの副流煙中N-ニトロソアミン含量は他の国々の値よりかなり低く, 米国産タバコのそれは国産タバコより多いことを認めた。
著者
松隈 大亮 板橋 秀一 鵜野 伊津志 若松 伸司
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.173-178, 2012-07-10 (Released:2012-10-23)
参考文献数
12

神奈川県北西部に位置する丹沢山地ではブナの衰退が深刻な問題となっている。この一因としてO3が考えられているが、丹沢山地ではO3生成に関わる一次汚染物質であるNOXの排出源、排出量が少ない。このことから、東京湾岸などの都市部で排出された一次汚染物質が光化学反応を起こしながら局地風などの影響により丹沢山地に移流して来ると考えられる。そのため、2007年7、8月を対象期間とし、測定では把握しにくい大気汚染物質の三次元的な濃度分布や動態を見るために領域化学輸送モデルWRF/Chemを用いて再現を行った。また、モデルの気象場の再現結果を使用してFLEXPART-WRFで後方流跡線解析を行い、日中に丹沢山地でO3濃度を高くした気塊の移流経路を示した。その結果、日中に丹沢山地でO3濃度が高くなる場合は、陸風により東京湾岸などの都市部から排出された一次汚染物質が相模湾に流入した後、日中に光化学反応を起こしてO3濃度の高くなった気塊が海風の影響を受けて丹沢山地の南~東南東側から移流して来ていた。また、海風には関東地域を覆うような大規模な海風と小規模な相模湾からの海風が見られ、前者の場合には丹沢山地の南方から、後者の場合には丹沢山地の南東方向から移流する傾向が見られた。
著者
玉置 元則
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.A1-A11, 2000-01-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
10
被引用文献数
2
著者
熊谷 貴美代 田子 博 飯島 明宏 小澤 邦壽 坂本 和彦
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.10-20, 2010-01-10 (Released:2010-07-29)
参考文献数
40
被引用文献数
5

関東平野の内陸に位置する群馬県前橋市および赤城山において,大気中粒子状物質を粒径別(<2.1μm,2.1-11 μm,> 11 μm)に捕集し,無機イオン成分,炭素成分分析を行った。炭素成分分析では,熱分離法と熱光学補正法の比較により補正を行った。微小粒子濃度の年平均値は,前橋で20.2~22.7 μg/m3,赤城で8.2~10.5 μg/m3であった。微小粒子濃度は春から夏にかけて高濃度となる季節変動を示した。微小粒子における無機イオン成分の96%は,NO3-,SO42-,NH4+であった。前橋も赤城も粒子濃度は同様の変動パターンを示した。前橋では春にNO3-が大きく増加するという特徴が見られた。しかしNO3-は赤城では低濃度であったことから,前橋におけるNH3ガスがNO3-粒子生成に影響していると示唆された。SO42-は夏に高濃度となる変動を示した。赤城でも前橋の8割程度のSO42-が観測され,SO42-粒子は広域的に存在することが分かった。マスクロージャーモデルを用いて,成分濃度から粒子質量濃度を推定した結果,実測値と同等の結果が得られた。モデル推定値から,粒子濃度の成分構成を季節毎に求めたところ,二次生成粒子と有機物が微小粒子の8割を占めると推定された。ECの寄与率は1割程度であった。春は,NO3-,SO42-粒子,夏秋はSO42-と有機物の寄与率が大きいことが分かった。
著者
中島 虹 高橋 日出男
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.92-99, 2015-03-10 (Released:2015-09-03)
参考文献数
21
被引用文献数
1

関東平野南部における光化学オキシダント(Ox)高濃度域と海風風系との関係を解析した。まず、1990年から2011年の7、8月における海風日を抽出した。Ox日最高濃度に対する主成分分析により、海風日を領域全体でOx日最高濃度が高く、かつその濃度が北側で高い日をType 1、南側で高い日をType 2とした。Type 1では相模湾や東京湾からの海風前線はType 2と比較して早い時刻に侵入した。Type 1、2とも、Ox高濃度域は下降流に伴う上空からのOx供給が考えられる海風前線の内陸側に位置した。海風前線が通過した地域では負のOx移流量を示し、海側から低いOx濃度の空気が供給された。そのため、いずれの場合も日最高Ox濃度の出現時刻は内陸ほど遅れる傾向にあり、Ox高濃度域は海風前線より内陸に位置したが、Ox高濃度域の位置は海風前線の侵入の遅速により異なった。Ox高濃度域は海風前線の侵入が速やかなType 1では対象領域北部に、遅延するType 2ではType 1よりも南側に現れた。Type 1の沿岸付近では、速やかな海風の侵入によりOx濃度の上昇が抑制されたと考えられた。以上から、Ox日最高濃度の分布には、関東平野南部の海風風系の違いによる海風前線侵入の遅速が関わっていることが明らかにされた。
著者
ナスルツラフ ニザール 立本 英機 三沢 彰
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.157-168, 1995-05-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
21
被引用文献数
1

自動車走行に伴って発生する粉塵が道路構造の違いや沿道植栽の有無によってどのような挙動を示すかを明らかにするために, 常磐自動車道および国道16号線に接した半地下構造, トンネル付近, 平坦構造, 盛土構造, 堀割構造, 高架構造および切土構造を選んで, それらの場所の土壌中重金属含有量の変化を調べた。その結果, 次のことが明かになった。1) 全体的な傾向として, 沿道土壌中の重金属含有量の変化は, 道路からの距離が離れるにしたがって金属含有量の減少がみられた。道路端又は遮音壁から7m以上および16m以下でみると, Zn, Pb, Cuおよび酸可溶性Feの含有量はトンネル付近, 半地下, 堀割, 高架, 盛土および切土構造の場合よりも平坦構造の場合の方が高い値を示した。酸可溶性Ca含有量は盛土構造で, Mn含有量は切土構造で最も高い値を示した。2) 沿道植栽の効果については, 樹林地中のPb含有量は無林地中のそれより多かった。また, Znおよび酸可溶性Ca含有量は, 無林地の方が多かった。酸可溶性CaおよびZnの道路からの距離による含有量の変化をみると, 樹林地の方が急激に減少した。特に酸可溶性Caは道路から3mまではその傾向が著しかった。3) Zn, Pbおよび酸可溶性Caは自動車走行により影響を受ける可能性がある。一方, Cu, Mnおよび酸可溶性Feは変化が少なく, むしろ, 地域に固有な土壌特性を反映しているといえる。4) 道路構造の違い, 道路の向き, 樹林の有無および風向等によって, 自動車走行に伴う重金属の拡散および沈着の度合が大きく異なり, 更に基礎データの積み重ねが必要であると思われる。
著者
横田 久司 舟島 正直 田原 茂樹 佐野 藤治 坂本 和彦
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.190-204, 2003-05-10 (Released:2011-11-08)
参考文献数
13
被引用文献数
1 3

自動車排出ガスによる大気汚染は, 幹線道路周辺などにおいて未だに深刻である。本研究では, 自動車排出ガスによる大気汚染を低減するため, アイドリング時の排出特性および停車中にエンジンを停止 (アイドリング・ストップ) した場合の排出ガスの低減効果について調査を行った。ガソリン車7台およびディーゼル車13台について, シャシーダイナモメータを用いて, 東京都実走行パターンおよびアイドリング・モードによる排出ガス測定を行った。その結果は, 以下の通りである。1. 排出ガスの排出率 (mg/s) および燃料消費率 (mL/s) を算出し, 実走行パターンとアイドリング・モード間での比較を行った。その結果, ガソリン車では, アイドリング時の燃料消費率は実走行時の47%に相当した。ディーゼル車では, アイドリング時のNOxは実走行時の30%, 同じく燃料消費率は28%に相当した。アイドリング時の排出率等は, 実走行時に比較して無視できないレベルにあることが確認された。2. エンジンが再始動するときに排出ガスの量は僅かに増加するが, 数秒から数分以上のエンジン停止により, ディーゼル車ではNOxおよび燃料消費量が低減し, ガソリン車では燃料消費量が低減することが確認された。三元触媒装着のガソリン車ではアイドリング時のNOx濃度は非常に低く, エンジン停止の効果は認められなかった。3. これらの結果を東京都内で使用されている小型貨物車の運行状況に適用したところ, アイドリング・モードによる排出ガス寄与率は, NOx3.5%, CO23.1%に達することが見積もられた。これから, 未把握の排出源として駐車中のアイドリングの実態調査が必要であることが示唆された。