著者
ダグダンプレブ スミヤクハンド 光鎬 孫 重人 阿部 岳巳 松井
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.162, 2017

<p>2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行を機に,世界中の空港では赤外線サーモグラフィによる発熱チェックシステムが導入された.しかし,感染の疑いのある渡航者も解熱剤服用時には検出が困難であり,サーモグラフィの有用性を疑問視する報告までも散見される.これらの検疫における課題を克服するために,本研究では,現在空港検疫で使用されている赤外線・CMOSカメラを用いて,非接触でバイタルサインである呼吸数・心拍数・体温を測定し,画像処理により感染症をスクリーニングするシステムの開発を提案する.その有用性を検証するため,2015年高坂クリニックのインフルエンザ患者16名と対象群の22名の健常者に対してスクリーニングを行った.本システムの精度は,感度87.5%,特異度91.7%であった.</p>
著者
藤原 義久 冷水 一也 源野 広和 松浦 英文 安田 昌司 飯田 健夫 牧川 方昭
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.162-171, 2005

This paper describes the development of a sensor incorporating an algorithm that estimates the quality of comfortableness by measuring peripheral skin temperature, pulse, and galvanic skin response (GSR) that reflect autonomic nervous system activity. A correct answer rate of 83% was obtained between the subjective comfortableness and the estimated comfortableness by the developed sensor. For the application of this human feeling sensor, we used it to estimate the comfortableness of subjects receiving massages, then developed two alternative adaptive massage control procedures based on the sensor's estimate, and verified the effectiveness of the results through testing the subjects. We observed that in course A (dynamic comfortableness) the peripheral skin temperature dropped and the GSR and pulse rate increased, while in course B (static comfortableness) the peripheral skin temperature rose and the GSR and pulse rate dropped. By the end of the control sequence, there was a statistically significant difference in the amounts of change in both the peripheral skin temperature and the GSR between the two sequences (<i>p</i> < 0.05). To examine the effects of each course more closely, we mapped the trajectories of physiological change during the control sequences of each course at twentysecond intervals, and the results correlated closely with the subjective assessments. These results suggest that bio-control adapted to comfortableness is feasible.
著者
荒川 貴博 三林 浩二
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual57, no.Abstract, pp.S130_1, 2019 (Released:2019-12-27)

近年、生体の化学情報を無拘束・非侵襲的にモニタリングすることを目指し、様々な生体センシングに関する研究開発が行われている。近年、Google プロジェクトにて、グルコースセンサと無線アンテナを内蔵したスマートコンタクトレンズのプロトタイプが発表され、国内外で注目を集めた。当研究室においても、これまでにフレキシブルグルコースセンサを開発するなど、生体成分モニタリング用のバイオ/化学センサを多数開発し、日常ケア用の体腔(Cavitas; Cavity)に装着可能なデバイスとして「キャビタスセンサ(Cavitas Sensor)」を提唱している。既存の外科治療を必要とする「インプランタブル」や、活動量計として一般的な「ウエアラブル機器」に対して、キャビタスセンサは近未来の医療や健康科学を見据えた新規医療デバイスとして、結膜嚢や口腔、咽頭などの体腔への着脱が可能な化学/バイオセンサである。本講演では、キャビタスセンサとして開発している「ソフトコンタクトレンズ型バイオセンサ」について、その日本白色種家兎の眼部に用いた涙液グルコース計測応用、また歯科用マウスガードをもとに作製した「マウスガード型の唾液糖グルコースセンサ」についても発表する。
著者
平澤 宏祐 白松 直樹 山本 知仁 原田 久 三宅 美博
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.466-474, 2003-12-10 (Released:2011-09-05)
参考文献数
13

In radiotherapy, it is essential to focus the radiation on the affected parts of the internal organs, like lung, liveretc., while minimizing the exposure to healthy tissues. Although methods that apply the beam to affected parts in synchronization with the patients' breathing have been used extensively, irradiation accuracy is not sufficient when the respiratory status of the patient is unstable. In this paper, we propose a new irradiation system that features (1) stabilizing the patients' respiration by synchronizing the rhythm of his/her breathing with that of music being played, and (2) controlling the timing of the irradiation based on the predicted respiratory phase instead of the measured phase that has been used widely. From experimental results using 12 subjects, it is possible to clarify that deviation of the beam irradiation position from the targeted point has been decreased to one-third as compared to conventionalmethods, resulting in a dramatic improvement in the accuracy of the irradiation system.
著者
白川 修一郎
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.160-168, 2008-04-10 (Released:2008-10-06)
参考文献数
12
被引用文献数
3
著者
富樫 亮太 宍戸 道明
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual56, no.Proc, pp.5-6, 2018 (Released:2018-09-14)
参考文献数
3

Recently, development of Brain-Computer Interface (BCI) which are enables non-contact operation of external devices by using electroencephalograms are progressing. This system is expected as an alternative communication tool for patients who are limited body function. However, BCI has expanded the area of research, it has problems such as high cost and instability due to requiring complicated control operation. On the other hand, evaluate the responsiveness and voluntariness of the system are also expected. Therefore, in this study participants conducted motor control tasks and clarified the voluntariness of the BCI based on the task success ratio. Also, "attention" acquired from the electroencephalogram sensor was used as the driving threshold of the motor, and 40, 50, 60, and 70 were set. As a result of comparing the task success ratio at each threshold value, when threshold is 60, the average is 50.8% and the result that the malfunction is small is obtained.
著者
又吉 淳二 比嘉 広樹
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.S238_2, 2019

<p>非侵襲型ブレイン・コンピュータ・インタフェースでは,精度の問題や即応時間などの問題がある.本研究では,上下左右の方向判別を行うことを目的に,事象関連電位(ERP)P300に着目し,その判別について検討を行っている.今回,健常被験者に視覚刺激を呈示した際のERPを取得し(図1),反応が大きい電極を選定した後,P300の有無を判別する学習器を作成,オフライン/オンライン判別の結果から各アルゴリズムにおけるERPの有用性を検討した.判別アルゴリズムには,線形判別分析(LDA),サポートベクタマシン(SVM)を用いた.学習の結果,各アルゴリズムでの学習率は94%程度となり,オフライン判別実験の結果はLDAでは83.3 %,SVMでは75.0 %となった.オンライン判別の結果はLDAでは60.4 %,SVMでは47.9 %であった.判別率の低下の理由としては,1方向に絞れていない結果がオフライン判別実験よりも多くなってしまったことや,過学習があげられる.今後は方向の絞り込みや信号処理部分の工夫を行い,システムの向上を行う.</p>
著者
島袋 雄一 比嘉 広樹
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.S84_2, 2019

<p>上肢不自由者の自立を支援するツールとして生活支援ロボットアームがある。このロボットアームには、上肢不自由者が操作して自身の代わりに食事や物を拾う等の上肢を扱う日常生活動作の支援を行うことが要求される。本研究では、ロボットアームを利用して食事支援を行うことを検討している。今回、仮想空間においてロボットアームによる食事支援のためのシミュレータを検討した。仮想空間には3D総合開発環境ソフトウェアUnityを使用した。仮想空間内に、着座した状態のユーザと、テーブル、食器等を配置し、ロボットアームを操作して、水分摂取とスープ摂取のシミュレーションを行った。環境内のロボットアームの制御にはゲームコントローラを使用した。また水やスープ等の液体には、小球を複数個用いて表現した。健常被験者1名に同コントローラを操作してもらい、シミュレータの評価を行った。実験結果より、水分摂取、スープ摂取とも実行可能であることが示された(図1参照)。しかし、操作時に2種類のモードを切り替えることに多少操作しづらさが感じられた。今後の課題として、ロボットアームの手首回旋時における自動制御の導入が挙げられる。</p>
著者
具志 翔太朗 比嘉 広樹
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.S194_2, 2019

<p> 社会には生まれつき身体に障がいを有する人々や,事故や病気,老化などが原因で日常生活に支障をきたしている人々が多く存在する.本研究では,上肢不自由者の日常生活動作を支援する目的で,ロボットアームを用いた食事支援に関する検討を行っている.今回,様々な食事動作を支援できるように人間の腕を模倣した7自由度のロボットアームを製作し,その手先に食物に見立てたビーズ入りスプーンを握らせた状態で移動させて,動作確認を行った.ここで,ジャイロセンサを使用してロボットアームの手先を水平に保つように設定した.実験結果より,ロボットアームのサーボモータを3.90 rpm 以内の回転速度で動作させた場合に,ビーズをこぼさずにスプーンを移動させられる(図1)ことが示された.ビーズをこぼさずに更に速い回転速度でスプーンを移動させるには,動作周波数の高いマイコンを用いた制御が必要であると考えられる.今後の課題として,食物を用いた動作実験を行うことが挙げられる.</p>
著者
塚尾 浩
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual57, no.Abstract, pp.S22_1, 2019 (Released:2019-12-27)

臨床工学技士養成課程では卒業年次の3月に実施される国家試験に合格するという具体的な目標に向かい学生も教員も邁進することになる。それは合格率という定量的な数値が容易に算出できるため、けして蔑ろにできないものとなっている。本校の学生は、そのほとんどが医療機関での勤務を志望するため、就職するためには必ず国家試験に合格する必要性があることを理解している。教員もまた同様である。本校の場合、4年時の後期に卒業に必要な単位として演習科目を設けており、それが実質的な試験対策となっている。学内での模擬試験を多く行うアウトプット中心の対策となっており分野ごとの正答率を算出することで自己の弱点を自覚しその補習に努めることになる。しかしながら、択一形式の結果から答えを導く過程を可視化するのは難しく、記述式とは異なりその思考過程が見えづらく理解度の判定には難渋する。学修成果の可視化は、国家試験対策のみならず高等教育の質の保証に関わる重要事項である。指導する教員のマンパワーをフル活用すれば個別指導にて可能になるかもしれないが、現実的には難しい。AIを利用した理解度判定ができればより良い指導ができるかもしれない。
著者
鎮西 清行 光石 衛 佐久間 一郎
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual57, no.Abstract, pp.S19_2, 2019 (Released:2019-12-27)

筆者らはPMDA科学委員会が2018年3月に公表した「AI を活用した医療診断システム・医療機器等に関する課題と提言2017」(PMDAレポート)の起草に参加した.その後,本邦での機械学習応用製品の承認事例が登場し,AI技術を利用した画像診断支援システム(AI-CAD)に関する開発ガイドライン・評価指標が公表に近づいている.これらを踏まえてAI応用医療機器のレギュラトリーサイエンスの観点からいくつかの論点を提供する.1) PMDAレポート: AIの特徴と,AIが医療診断システム・医療機器等に応用された時に考えるべき点を述べている.技術側面,規制側面にとどまらず,倫理的影響まで中長期的視点から述べている.2) AI-CAD開発ガイドライン・評価指標: 次世代医療機器・再生医療等製品評価指標は審査の際の参考文書,開発ガイドラインは開発者のための参考文書である.前者は学習データとテストデータの分離,データの品質,市販後学習の留意点などを述べ,後者はAI応用製品の開発プロセス,統計技法について述べている.3) 市販後学習は有効か: 日米では市販後学習を含む製品の承認例がない.規制上の困難だけが理由ではなさそうである.結局「ペイするか」が課題ではないだろうか.
著者
澤口 裕太 木村 主幸 菅原 俊継 三澤 顕次 有澤 準二
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.384-389, 2004-12-10 (Released:2011-09-05)
参考文献数
17

Although many studies have been conducted in relation to the biological effects of extremely-low frequency (ELF) magnetic fields, there is little agreement as to their total effects on living organisms. Related to this, we are concerned with the viral infection system; consisting of viruses and cells, and the following infection process: (1) absorption, (2) penetration, (3) synthesis of viral components, (4) maturation, and (5) release. This system enabled us to observe the effects of ELF magnetic fields more easily than using experimental animals. We divided these five steps into two groups. The first group is called the absorption period, which includes steps (1) and (2). The second group is called the proliferation period, which includes the remaining steps. In this investigation, we compared the two groups from the viewpoint of the effects when they were exposed to a 50Hz 62mT magnetic field. As a result, the 50Hz 62mT magnetic field inhibited the growth of the virus as compared to sham exposures. When either the absorption period or the proliferation period was exposed to the 50Hz 62mT magnetic field, growth was inhibited as well. It was clearly proven that the 50Hz 62mT magnetic field has an inhibitory action on viral infections, and the action can be observed throughout all processes in the viral infection system.
著者
山越 健弘 小川 充洋 松村 健太 板坂 優希 宮崎 慎平 山越 康弘 ROLFE Peter 廣瀬 元 山越 憲一
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.237-247, 2012-04-10 (Released:2012-07-13)
参考文献数
40
被引用文献数
1

In this preliminary study, we examined in human volunteers the performance of the developed prototype device for non-invasive quantification of blood alcohol concentration (BAC) by near-infrared light which is highly transparent to the body. We aimed at applying the results to the final goal of developing a novel alcohol-based vehicle ignition-interlock device. Accumulating evidence shows that one of the ethyl alcohol absorption peaks in the near-infrared region is present at 1,185 nm. We combined this with our recent development of a non-invasive optical method for blood glucose measurement, which we call pulse glucometry, using blood volume pulsations in a finger within a cardiac cycle. Thus, we developed a novel method, pulse alcometry, for non-invasive measurement of BAC. We calculated second derivative values of optical density (ODλ”) to remove baseline over a band including three wavelengths, 1,150 nm, 1,185 nm, and 1,220 nm. Then, a simple linear regression analysis was performed with the measured ODλ” to predict BAC levels. In 3 healthy male volunteers, during alcohol intake and washout, periodic optical measurements using the present device were made simultaneously with collection of blood samples for in vitro BAC analysis. In leave-one-out cross validations within an individual, the measured BAC and the predicted BAC correlated well (r = 0.773∼0.846, mean absolute error = 0.134∼0.333mg/ml). We conclude that, from the results of this preliminary study, the new method appears to be able to estimate BAC levels non-invasively. However, further investigations in a larger group of subjects will be needed in order to determine fully the operational performance of this new measurement system.
著者
野崎 利博 片山 大輔 安藤 努 関野 正樹 朴 啓彰
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.55Annual, no.4AM-Abstract, pp.278, 2017 (Released:2017-09-13)

脳底部への磁気刺激は海馬を疾患するアルツハイマー型認知症に対して有効な治療法となる可能性がある.本研究では基礎実験として,脳底部に極力近い位置から脳底部を刺激するための励磁コイル(口腔内コイル)を設計製作した.設計では口腔内に収まるサイズの条件下で,脳底部付近での磁束密度が極力大きくなるように口腔内コイルの仕様を最適化した.口腔内コイルに周波数3 kHz,最大電流1923 A(平均値)の単発パルス電流を印加した時,脳底部を想定した位置(海馬左右およびその周辺の視床左右,視床下部)に生じる磁束密度を計測した.ここではコイル角を変化させ,磁束密度に対する角度依存性を調べた.その結果,磁束密度は全ての脳底部位置について,口腔内コイル角が35~40 deg. 付近の時に最大値が得られた.また,頭部組織や器官ごとに磁気および電気的特性を与えた頭部モデルを用いて有限要素法による数値シミュレーションを実施した.その結果,磁束密度は全ての脳底部位置について,口腔内コイル角が35~40 deg. 付近の時に最大値が得られ実験結果との整合性がほぼ認められた.さらに脳の直接の刺激量である誘導電流密度を数値シミュレーションによって推定した.
著者
小川 武人 畑野 可奈美 藤岡 慧大 藤原 千尋 山本 健一郎 望月 精一
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual56, no.Abstract, pp.S320, 2018 (Released:2018-09-14)

シングルニードル透析は、一本の穿刺針で脱血と返血を交互に繰り返す透析手法である。その圧力や流量特性は通常の透析と異なるため、体外循環時の溶血に影響する可能性がある。そこで本研究では、牛血液を用いて通常の透析(二本の穿刺針)とシングルニードル透析とで溶血率について比較した。 牛血液それぞれ1 L を37℃の恒温槽にて撹拌し、通常透析では血液流量を200 mL/minとし、シングルニードル透析においては脱血時の設定血流量を200 mL/minとした。透析液は流さず、透析器は37℃の恒温槽に浸した。また、ブランクとして牛血液1 Lを恒温槽にて撹拌した。溶血率は血漿中のヘモグロビンの吸光度から算出した。 測定の結果、ブランクにおいても溶血率の上昇がみられた。これは撹拌によるものであると考えられた。通常透析とシングルニードル透析でのポンプおよび血液回路での溶血の影響をみるため、透析時の溶血率からブランクの溶血率の分を補正した。その結果、通常透析と比較して、シングルニードル透析で有意差は見られなかった。血液透析における溶血は、主に脱血時の陰圧による影響が大きいため、違いは見られなかったものと考えられた。 以上から、牛血液を用いた実験において、シングルニードル透析における流量特性が溶血に及ぼす影響については、通常透析との明確な違いが見られなかった。
著者
蘇日塔拉図 外山 寛 小杉 剛 木竜 徹 林 豊彦 飯島 淳彦 前田 義信 山崎 健
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.98-105, 2010-02-10 (Released:2010-11-17)
参考文献数
17

Visually induced motion sickness is one of the detrimental effects of video images on human psychosomatic state. Several studies for alleviating this effect have been cumulated in recent years. One of the studies reported that people with high heart rate tended to be immune to the motion sickness. This fact motivated us to assume that the increase of subjects' heart rate through physical exercise before video watching could prevent them from the motion sickness. Then we investigated the effects of video exposure with such pre-exercise on the motion sickness. First we recorded psychosomatic state of 23 volunteers using the simulator sickness questionnaire (SSQ) before and after watching extremely unpleasant video images of a mountain-bike ride capable of visually inducing motion sickness. Then we classified them into nausea and non-nausea groups, based on SSQ evaluation. Subjects' heart rate in nausea group increased gradually during video exposure, while that in non-nausea group was nearly constant. By imposing a 5-minute pre-exercise on 12 subjects in nausea group before video exposure, 10 subjects became immune to the motion sickness, demonstrating that the pre-exercise would be efficient for alleviating the motion sickness. In addition subjects' heart rate in nausea group remained at a higher level during video exposure than at rest, whereas it returned to the rest level immediately after the pre-excise without video exposure.

1 0 0 0 OA リレー随筆他

出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.38-40, 2016-02-10 (Released:2016-06-28)
著者
讃岐 徹治
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual56, no.Abstract, pp.S5, 2018 (Released:2018-09-14)

痙攣性発声障害は、喉頭に器質的異常や運動麻痺を認めない発声障害の一つで、発声時に内喉頭筋の不随意的、断続的な痙攣による発声障害をきたす疾患であり、国内外ともに内転型痙攣性発声障害に対する根本的な治療はない。チタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型は、発声時に不随意的、断続的に強く内喉頭筋が内転することで声門が過閉鎖し症状が発現することに着目し、発声時に声門が強く内転しても声帯が強く閉まらないように甲状軟骨を正中に切開し、両側甲状披裂筋の付着部を甲状軟骨ごと外側に広げて固定する手術術式であり、京都大学名誉教授一色信彦先生により報告された。チタンブリッジは、世界に先駆けて開発された新規原理の医療機器で、本邦独自の医療技術である。本治療は、その有効性により患者のQOL向上に寄与し、標準治療になりうるものと考え、2014年より難治性疾患等克服研究事業でチタンブリッジの実用化に向けた研究「内転型痙攣性発声障害に対するチタンブリッジを用いた甲状軟骨形成術2型の効果に関する研究 」を開始した。チタンブリッジは、厚生労働省の先駆け審査制度指定品目医療機器第一号に2016年2月10日付けで指定を受け、翌年12月15日に先駆け指定品目の中ではじめて薬事承認された。我々がこれまで進めてきた医師主導治験による高度管理医療機器開発と先駆け審査指定後の開発について述べる。
著者
菊地 眞
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.S122_01, 2015

公的資金投入が消滅しても民間企業活動として自立・持続的に発展可能となるネットワーク構築が究極目標になる。自立要因が、研究~開発~上市の過程における資金調達であるならば、資金供給・調達を適時・適切に実現するような社会的インフラ構築も一義的要件となる。金融機関の医療機器開発に関する「正しい評価判定(目利き)機能」が不可欠だが、極めて未熟である状況を今後どのように改善していくのか具体的方策も必要となる。そもそも産業界の基本姿勢として、医療機器開発に「極めてリスクの高い開発対象」、「市場規模の狭さ」、「利益回収の不確かさ」、「医療界・医療人との交流機会の欠如」など様々なネガティブ要因が存在するのであれば、決定的因子に関して行政レベルから規制緩和や環境変化促進策などの課題として取り上げて具体的解決策を講じる必要がある。医療機器関連企業トップの経営マインドの偏り、企業内における新規開発意欲不足、能力不足、人材不足、海外展開経験不足など様々な要因が存在していると思われることから、それらの潜在的弱点も支援ネットワーク強化で果たして打破出来るのかも検討すべき事柄と考える。医師・医療スタッフの医療機器開発に対するモチベーションが高くなかったことがわが国の治療系機器開発が世界から後れを取ったことから、医学会をはじめとする医療関係者を如何にしてネットワークに取り込んでいくのかも検討しなければならない。