著者
松崎 妙子 原 征彦
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.129-134, 1985 (Released:2008-11-21)
参考文献数
12
被引用文献数
131 161

(1) (-)-エピカテキン(EC), (-)-エピガロカテキン(EGC),(-)-エピカテキンガレート(ECg), (-)-エピガロカテキンガレート(EGCg)のラードにおける抗酸化作用を調べた.ラードにおける抗酸化力は等重量濃度で比べた場合, ECg<EC<EGCg<EGCとなり, BHAおよびdl-α-トコフェロールよりも強い抗酸化作用を示した.また等モル濃度で比べた場合はEC<ECg<EGC<EGCgとなり,構造式との相関関係があるように思われる. (2) EGCgとアミノ酸を併用したラードはEGCgのみのものに比べると,むしろPOVを上げるもののほうが多く, 19種アミノ酸のうちL-メチオニンのみがわずかに相乗作用を示した.リンゴ酸,酒石酸およびクエン酸が相乗作用を示した.またL-アスコルビン酸およびトコフェロールもEGCgと強い相乗作用を示した. (3) リノール酸に対してもEGCgは抗酸化作用を示したが,その強さはラードにおけるそれよりも弱かった.また水添加リノール酸に対しても抗酸化作用を示し,油系のみならず,水系においても抗酸化作用を発現することがわかった. (4) カテキン混合物(総カテキン含量約72%)は,ラードにおいてはEGCg単独の抗酸化力と同等の効力を示した,またこれはトコフェロール含有の市販サラダ油に対しても顕著な抗酸化作用を発揮することが明らかになった.
著者
尾仲 達史
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.127-132, 2005-02-01 (Released:2009-05-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1
著者
新谷 隆史
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.725-731, 2018-10-20 (Released:2019-10-20)
参考文献数
28

脂肪細胞から分泌されるレプチンは,脳の視床下部に働いて摂食を強力に抑制する.肥満により脂肪組織が肥大するに従ってレプチンの分泌量が増加するため,レプチンによる食欲制御機構は動物の体重を一定に保つシステムとして機能していると考えられる.しかしながら肥満が続くと,レプチンが視床下部に作用しにくくなるレプチン抵抗性が生じることで肥満が解消しにくくなる.本稿では,レプチンの情報伝達制御機構ならびにレプチン抵抗性の形成機構について解説するとともに,われわれが最近明らかにしたチロシンホスファターゼであるPTPRJによるレプチンシグナルの制御機構について解説する.
著者
末松 孝子
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.473-477, 2014-07-01 (Released:2015-07-01)
参考文献数
12
被引用文献数
2 4

2 0 0 0 OA 泌乳の生化学

著者
榑谷 和男
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.2-9, 1968-01-25 (Released:2009-05-25)
参考文献数
43
著者
渡辺 文太 平竹 潤
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.354-361, 2015-05-25 (Released:2016-05-20)
参考文献数
31
被引用文献数
3

生体内還元物質であるグルタチオン(GSH)は,活性酸素種の除去(抗酸化)や,求電子的な化合物,重金属など生体異物(毒物)の解毒の最前線に立つ極めて重要な分子であり,酸化ストレスを介してがん化学療法から薬剤耐性,生活習慣病に至るまで,病態と深くかかわる.GSH生合成は,律速基質であるCysの供給に大きく依存しており,近年,GSH代謝やCys供給(Cys availability)にかかわる酵素やトランスポーターが,抗がん剤などの重要な創薬ターゲットとして注目されている.本稿では,GSHの代謝を概観したあと,GSHのもつチオールの化学にフォーカスし,GSHの代謝異常と病態の複雑な関係,GSH代謝やCys availabilityにかかわるタンパク質とその活性制御が有用な創薬につながる可能性について解説する.
著者
畝山 寿之
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.432-441, 2015
被引用文献数
1

和食(WASHOKU)は出汁(だし)のうま味を共通の要素として高度にそして多様に発達してきた.日本の食文化がユネスコ無形文化遺産に認定されたことを含め,日本食のもつ健康価値が改めて世界から注目されている.われわれはうま味調味料グルタミン酸ナトリウム(MSG)の生理機能を先端的脳科学と栄養生理学的な研究手法を用いて追及し,うま味物質は「タンパク質摂取のマーカー」として味覚と内臓感覚を介して摂取したタンパク質の消化吸収にかかわるさまざまな生理機能を賦活し,健康な食生活に寄与している可能性を示してきた.本解説では,うま味の生理機能に注目し,日本食がもつ健康価値の可能性について解説していきたい.
著者
吉田 精作 村田 弘 今井田 雅示
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.1007-1011, 1992-06-01 (Released:2008-11-21)
参考文献数
7
被引用文献数
8 9

Marketed vegetables and fruits contaminated by organophosphorus, organochlorine, or carba-mate pesticides were cut into several regions (fruit stalk, pericarp, fruit receptacle, tissue around the stalk cavity, etc.) and the concentration of the pesticide residues in each region was assayed. In fruits and fruit-type vegetables, the concentra-tion of the pesticide residue was higher in the fruit stalk and near the epidermis (exocarp and fruit receptacle) than in the sarcocarp or peri-carp. In leaf vegetables, the concentration of the pesticide residue was higher in the outer leaves than in the inner ones. There was no pesticide contamination of the inner leaves of Chinese cab-bages with a well-formed head. Dieldrin and heptachlor epoxide were detected in pumpkins and cucumbers, although their use in agriculture has been prohibited in Japan for about 20 years. The removal rates of pesticide residues by washing with water or 0.1% liquid detergent for kitchen use were from 8 to 52% and from 19 to 67%, respec-tively. Removal of the fruit stalk, exocarp, and tissue around stalk cavity of fruits and fruit-type vegetables and washing of leaves with water or dilute detergent solution for kitchen use were necessary to decrease the intake of pesticide resi-dues from vegetables and fruit.
著者
赤星 亮一 大熊 広一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.135-141, 1985 (Released:2008-11-21)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

市販の熟成ブランデーおよび熟成ウィスキーの蒸気圧,その平衡蒸気成分を測定し,熟成現象とこれらの関係について明らかにした. (1) 長年月貯蔵熟成した蒸留酒のエタノール蒸気分圧および気相エタノール濃度は,同濃度のエタノール水溶液より低く,貯蔵期間に比例して低下してゆく. (2) 蒸留酒のエタノール蒸気分圧,気相エタノール濃度に影響を与える微量成分として考えられる酢酸エチル,アセトアルデヒド,イソブタノール,イソアミルアルコール,酢酸,メタノール,樽材浸出物について,その影響を明らかにした. (3) 熟成蒸留酒では,上記微量成分の影響以上にエタノール蒸気分圧および気相エタノール濃度が低下していることが判明した. (4) 熟成蒸留酒におけるエタノール蒸気分圧,気相エタノール濃度の低下は,液相中でエタノール分子が強く束縛されていることを示している.熟成した蒸留酒では,エタノール分子と水分子が水素結合により会合し,安定なクラスターが生成していると考えられる. (5) 長期間貯蔵した蒸留酒のエタノール蒸気分圧,気相エタノール濃度の減少は,熟成によってエタノール特有の刺激が減少する香味の円熟をよく説明している.
著者
赤星 亮一 大熊 広一
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
日本農芸化学会誌 (ISSN:00021407)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-9, 1985 (Released:2008-11-21)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

DSCを用いてエタノール水溶液および長年月熟成のウィスキー,ブランデー,エタノール水溶液の熱分析を行い,蒸留酒の熱的挙動と熟成の関係について研究を行った. (1) 熟成蒸留酒,エタノール水溶液いずれも,その融解サーモグラム上に2つの吸熱ピーク1, 2と1つの発熱ピーク3が観測された. (2) 熟成蒸留酒の各ピークの出現温度は,同エタノール濃度のエタノール水溶液と同じで貯蔵期間による差異は認められなかった.一方,各ピークの面積から算出した融解熱については,ピーク2およびピーク3に大きな差異が認められ,熟成蒸留酒では著しく減少していることが認められた.熟成蒸留酒におけるピーク2の減少は貯蔵期間に比例していた. (3) 蒸留酒中の主要微量成分である酸,エステル,アルデヒド,フーゼル油,樽材浸出物等が融解サーモグラムに与える影響について検討を行った.エステル,アルデヒド,フーゼル油の場合,いずれも含有される濃度範囲においては,その影響はほとんど認められなかった.酸および樽材浸出物はピーク2の融解熱を減少させるが,熟成に伴う熱量値の減少は,これらの影響よりもはるかに大きいものであった. (4) これらの実験結果は,熟成蒸留酒中ではエタノール分子が強く束縛されていることを示しており,熟成した蒸留酒やエタノール水溶液が固体に近い凝集状態に移行し,安定な液体構造が形成されていると考えられる.熟成によってエタノール特有の刺激が減少する蒸留酒の香味の円熟をよく説明しているものといえる.
著者
陽東 藍 横越 英彦
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.223-227, 2013-04-01 (Released:2014-04-01)
参考文献数
27
被引用文献数
1

摂取した食物が脳内代謝を変動させ,脳機能活動に影響を及ぼすことが多く報告されてきた.これまでにも同様のタイトルでの記述をしており(1),今回は,比較的最新の動向について紹介する.また,脳機能に食品や食品成分がどのような影響を与えるか,それをどのように評価するかについての新しい手法も開発されてきており,食品や食品成分の情動への影響などの脳機能効果がより解明されやすくなった.