著者
宝崎 隆祐
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.705-710, 2011-12-01

3月11日に発生した東日本大震災は未曾有の数の被災者を生み,懸命な捜索活動にもかかわらず,8月22日現在なお4,615名の行方不明者を数えている.そこで重要な働きを見せている消防,警察,海上保安庁や自衛隊は,その任務の中に捜索救難活動を持っており,効果的な活動の実施が期待されている.オペレーションズ・リサーチの一研究分野である探索理論はその適用分野として捜索救難をもち,効率的な捜索活動の計画・実施に寄与することができる.今回の報告では,捜索救難の観点から探索理論を解説し,大規模災害への対策の一助としての探索理論の役割と課題について考えてみる.
著者
荒木 孝治
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.261-266, 2013-05-01

1996年, Tibshiraniは,線形回帰分析において最小2乗法にl_1罰則を課す回帰母数の推定法であるlassoを提案した.これは,変数選択と回帰母数の推定を同時に行うもので,これに触発され,以降,さまざまな手法が提案されてきた.本稿では,罰則付き回帰の近年の展開を,データ解析環境Rへの実装の関連で報告する.
著者
伊藤 秀史
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.566-573, 2012-10-01

本稿では,たとえば組織のトップとミドルの関係を表すシンプルなプリンシパル・エージェント理論によって,(a)情報収集努力を行うインセンティブと(b)情報をトップに正直に上げるインセンティブとの関係を分析する.そして,(a)のインセンティブを強めることが(b)のインセンティブを歪め阻害して「イエスマン」を生み出すこと,(b)のインセンティブを与えるためには(a)のインセンティブを弱めなければならないことを明らかにする.
著者
井山 俊郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.237-257, 1981-09

この論文では、一方の工程が複数個の指数作業時間を持つステーションから成る2工程生産ラインを解析する。最初に、このラインを隠れマルコフモデルとして解析し、生産率、平均仕掛品数等を解析する手順が示される。また、双対モデルに対する解析手順も示され、双対モデル間の種々の関係が議論される。この結果、一方の生産ラインの特性はその双対モデルから完全に求められることが明らかとなる。次に、ステーション数の生産率に及ぼす影響を調べるため仮想Buffer容量なる尺度が導入される。この結果、仮想BUffer容量はステーション数の影響を端的に表わすこと、さらにこの仮想Buffer容動機型の漸近線を持ちしかもこの漸近線は仮想Buffer容量を精度よく近似していることが示される。最後に、この仮想Buffer容量の漸近線を求める簡単な手順が示される。
著者
高畠 泰斗 香田 正人
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.677-682, 2006-11-01
被引用文献数
4

領域判別問題(domain description problem)とその判別手法である1クラスSVM (OC-SVM)について紹介する.特にガウシアンカーネルを用いたOC-SVMについて,その性質を整理し,また密度推定や近傍サポート(Support Neighbor)との関係を明らかにすることで,どのように領域判別を実現しているのかを考察する.
著者
根岸 弘明
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.724-727, 2011-12-01
参考文献数
12

緊急地震速報は地面が揺れる前に警報を発するという全く新しいタイプの防災情報であるが,発表プロセスすべてが自動処理によることと,対処可能時間が秒単位であることから,効果を上げるには速報の持つ特性を理解した上で的確な用途に利用する必要がある.本論では,高度利用者向け緊急地震速報の利活用を念頭に置き,実際に自動制御による被害減少や人命保護に活用している例を紹介するとともに,地震という物理現象から来る独特の留意点と利活用に向けた課題について議論する.
著者
福永 拓郎
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.5-9, 2011-01-01

各点間に十分な連結度をもつネットワークを低コストで構築することを要求する最適化問題を,ネットワーク設計問題という.ネットワーク設計問題に関する理論研究の最近の進展の中心にあるのが,反復丸め法と呼ばれる手法である.本稿では,この反復丸め法について解説する.
著者
田村 征洋 黒岩 祥太
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ・リサーチ学会和文論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1-19, 2009-12

2005年9月11日の衆議院総選挙における自民党圧勝の要因は何か.本論文では『人々にとって最も好ましい公共政策とは何か,その傾向はどのように有権者の政党支持や選挙に於ける投票に影響しているのか』を計量的に位置付けることを考え,政策に対する有権者意識に関する基礎的知見を得る為に,政策全般に対する有権者の選好傾向を調査・分析した.具体的には,政策全般へのコンジョイント分析を用いる.従来の5段階評価などは政党(全体)評価と個々の政策(個別)評価の関係を定量化することが困難であり,「軽い負担で手厚いサービス」という安直な結果に陥りやすい.現実は各政策を個別に評価(投票)するのではなく政党単位(政策の組合せ)で評価する.従って,全体評価から部分(要因)価値を定量化するコンジョイント分析は有効な手法であろう.結果は野党が掲げる理想的な政策(公共事業費の大幅な削減や消費税の現状維持,年金の一元化など)の効用値は高くなるものの政党単位で見た場合(各党の掲げる政策に近い水準を当てはめた場合)では有権者の政策に対する選好傾向にバラツキが生じ,今回の選挙結果を裏付ける有効な知見を得た.
著者
服部 徹
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.397-402, 2008-07-01

海外では,聞かれた市場で卸電力が取引されるようになって久しい.ところが,電力そのものの市場価格だけでは,必要な設備投資のインセンティブを与えられず,安定供給のための十分な設備容量の確保に懸念が生している.米国の北東部では,卸電力を調達する小売供給事業者に,あらかじめ一定の設備容量を確保する義務を課し,その過不足を調整するための容量市場が設立されている.容量市場には,設立当初から,様々な問題を指摘されてきたが,制度改革も進んでいる.本稿では,このような電力取引に伴う容量市場導入の経緯を振り返るとともに,米国北東部の事例から,その制度設計の課題について解説する.
著者
神山 直之
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.15-20, 2011-01-01

Ford&Fulkersonによって体系化されたネットワークフロー理論は,そのモデルの持つ表現力が強力であるがゆえ,理論的に深く研究され,多くの現実問題に応用されてきた.しかし,このネットワークフローモデルにも1つの弱点がある.それは,時間の要素が欠けているということである.その欠点を補うために開発されたモデルが動的フローである.本稿では動的フローのモデルおよび基本的な結果を紹介する.
著者
室町 幸雄
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
オペレーションズ・リサーチ : 経営の科学 (ISSN:00303674)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.619-624, 2009-10-01

2007年頃から顕在化したアメリカの住宅バブルの崩壊に始まるサブプライムローン問題とそれに続く世界金融危機において,金融機関の損失額を飛躍的に増大させるとともに,アメリカから世界中の金融機関へ損失を拡散させる役割を果たしたのが,近年市場規模を急拡大させてきた証券化商品である.本稿では,証券化商品の仕組みと商品特性を単純な例を用いて説明し,価格付けモデルを紹介する.さらにヘッジ手法やリスク計測にも触れ,証券化商品や評価モデルなどに内在する問題点をまとめる.