著者
高田 みつ子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.444-450, 1986-06-25

桜井女学校附属看護婦養成所のミッション関係の往復書簡 昭和60年(1985)は,日本の地で正式な看護婦養成が開始されて,ちょうど100年目にあたった.日本看護協会の通常総会においても,その記念行事が行われた. 最初にわが国で看護婦養成が行われたのは,明治18年(1885)の有志共立東京病院看護婦教育所である.次に設立されたのは京都看病婦学校,3番目に設立されたのが,桜井女学校附属看護婦養成所(以下桜井と記す)である.前者2校は母体がしっかりしていることもあって,すでに多くの研究がなされ,看護婦養成の歴史はかなり明らかにされている.それに比較し,桜井は,後の女子学院が明治35年12月27日,明治39年12月10日の2度の火災と昭和20年5月24日夜半から25日未明にかけての東京大空襲1)で,内部資料をほとんど焼失してしまったため疑問な部分が多く残されたままであった.また,桜井の設立者であるマリア・T・ツルー(Maria T. True)自身のミッション関係の記録も今まで紹介されていなかった.
著者
福地 重孝
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.104-105, 1965-08-01

女らしき女丈夫 「婦人新聞」は矢島楫子を評して「男らしき女丈夫は世間に少なくないが,女らしき女丈夫に至っては,刀自において初めてこれをみる。社会を呪い,世間を悪罵する矯風家はその人に乏しくないが,教育家的先達的態度を以て社会を指導せんとする矯風家は,刀自をおいて他に多くみない。」(大正3・11・20)といっている。 彼女が風俗改善のため,東京婦人矯風会を起こしたのは1886年(明治19)であり,それを日本婦人矯風会として全国的組織としたのは1893年(明治26)であった。これは日本でもっとも大きな全国的婦人団体のさきがけということができよう。もっとも半官製の奥村五百子らの愛国婦人会のごとき軍事援護団体があったが,楫子らのそれは,その根底にクリスチャンとしての信仰と強烈な婦人解放の意志が蔵せられていたのである。そして,矯風会は満州事変以後一時沈滞したが,戦後たちなおり日本キリスト教婦人矯風会として活躍し,婦人運動の一翼をにない,国際平和運動にまでつらなって活動しているのである。
著者
山本 由美 乃木田 俊辰 川島 眞
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.88-90, 1999-01-01

25歳,女性.20歳頃より腰背部に瘙痒を伴う米粒大までの灰褐色角化性丘疹が出現し徐々に増数し,ステロイド軟膏の外用を行うも著変なし.50% dimethyl sulfoxide(DMSO)外用療法を1日1回施行し,半年後には個疹の縮小,扁平化と色素沈着の減少を認めた.組織学的にも表皮直下のアミロイド沈着の減少を確認した.
著者
阿川 辰子 大沼 弥栄子 金井 芙美子 尾形 亜紀子 古藤 慶子 阪詰 百合子 園田 洋子 近藤 マサ子 富永 昭子 広瀬 弥栄子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.33-40, 1966-09-01

まえがき 新生児の生下時体重は,どの母親にとっても大きな関心事の一つとなっているが,これが児の運命を左右するばかりでなく,保育の面からも重要な意味を持っており,さらに,社会的な問題にまで発展しているからである.新生児の生下時体重がどのような因子により左右されるものであるかということは,私たち助産婦の道を志す者にとって大変興味深い問題であるので,実習期間を通して妊産婦の婚前と妊娠中の生活態度を中心に調査することにした.
著者
浜田 修 宮野 憲仁 西田 恭博
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.949-954, 2006-09-01

骨粗鬆症性椎体骨折は,受傷時には予期できないほどの著しい椎体圧潰を来すことが少なくないことから,受傷時から椎体内に異常可動性を来しているのではないかと推測した.損傷椎体の動的情報を得る目的で仰臥位,側臥位,座位での側面X線撮影を行い,この撮影法を三態撮影と名付けた.新鮮椎体骨折20例に三態撮影を行った結果,椎体楔状角は仰臥位より側臥位,側臥位より座位で有意に大きくなっており,椎体異常可動性の存在を確認することができた.
著者
奈良 勲
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.85, 2018-01-15

ホモ・サピエンス(理性の人)としての人類は,古代にはボディーランゲージ,象徴的壁画(絵文字),そして文法の確立されていない単純なことばを媒介にして,ホモ・ファーブル(創造の人)として相互のコミュニケーション手段を考え出し,歴史の経過に伴い,各地域の文明化と文字文化が創造されてきた.しかし,古代文明を築きながらも,その民族の一部は文字文化を発展,継承することができなかった.例えば,これまで世界の四大文明は,メソポタミア・エジプト・インダス・黄河文明であると言われてきたが,近年そのほかにも文明化された地域が存在していたとの報告がある.いずれにせよ,小規模な文明を構築していた民族のなかには,文字文化を残していない民族もあり,仮にそれらの文明の遺跡は温存されていたとしても,文字文化は消滅している. 日本の歴史的な伝説や神話を含む『古事記』には,古代の事象が文字として記録され温存されているため,その文明と文化などを知る大きな手掛かりになっている.日本人の主な生活基盤は農耕民族として受け継がれてきたが,文字文化は朝廷および武士の時代に伝承されてきた.明治維新から太平洋戦争までは初等・中等教育としての尋常小学校,旧制中学,旧制高校,そして戦時中の旧制(帝国)大学は戦後に新制大学へと変遷してきた.このような長い歴史を経て日本語は古文から現代語へとさま変わりしてきた.
著者
笠井 直人 溝井 和夫 小沼 武英
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.415-420, 1982-04-10

I.はじめに わが国における平時の頭部銃創の報告は欧米に比し非常に少なく,あっても自殺による銃創が多いためか,その予後は極めて悪い.今回われわれは,近距離からピストルの射撃を受け,脳内血腫を来たし昏睡に陥った幼児を手術により幸いにも救命しえたので,治療上の問題とともに若干の考察を加え報告する.
著者
亀谷 統三 三浦 大助 中田 慶子 土肥 祐輔 柳田 純孝 織部 道雄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.162-170, 1966-03-15

はじめに 昭和34年以来続いた池田内閣の経済成長政策は,所得倍増計画とあいまって,わが国の歴史始まって以来の好景気を出現した。しかしその反面,都市においては,入口の過密や公害の発生など,幾つかの弊害もまた副産物として産みだされている。特に公害の問題が住民の日常生活に著しい被害を与えているところも少くない。熊本県の水俣病,三重県の四日市喘息などは,その代表的なものである。これらの公害の問題は,起っては忘れられ,忘れられた頃にまたどこかで発生を繰り返すなど,閑却視されがちなのが現状である。昭和39年9月14日,富山化学工業KK富山事業所において発生した塩素ガス漏洩事件も,公害問題などに関心のうすい,裏日本の中都市の真只中で起った事件であった。この種の事件は,わが国でも始めての経験であるので,ここに事件の概要をまとめて報告し,今後この種の事件の発生を防止するための資料にしたい。
著者
出村 孝義 岡村 廉晴 藤沢 真 有馬 滋 坂下 茂夫 高村 孝夫 藤本 征一郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.803-806, 1981-08-20

緒言 真性半陰陽は睾丸と卵巣が同一個体に共存している稀な奇形であり,竹崎1)により本邦100例が集計され報告されている。真性半陰陽における性染色体構成は他の半陰陽に比べはるかに多彩であるが,本邦では未報告の極めて稀な染色体構成,すなわち46XX/48XXYYのモザイクを呈した真性半陰陽症例を経験したので報告し,真性半陰陽の二,三の問題点につき考察を行なう。
著者
中川 遵 嘉川 須美二
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.691-695, 1977-09-20

I.はじめに 耳閉感は耳鼻咽喉科を訪れる患者の愁訴群中もつともpopularなものの1つである。その原因疾患としては①外耳閉塞疾患(耳垢栓塞,外耳道閉鎖症など),②中耳伝音系障害(中耳カタル,耳管狭窄症,鼓膜外傷など),③内耳障害(メニエール氏病,突発難聴など)が挙げられる。特に注目すべき点は,難聴が軽度の場合あるいは突然おこつた場合は難聴を自覚せず,まず耳閉塞感を訴えることである。したがつて耳閉感は一面としては重篤なる難聴の初発症状としての意義もあると言えよう。現在のところでは後迷路系の聴覚伝導路障害による耳閉感は,はつきりとしていないので,まず耳閉感患者には上述の①〜③の原因によるものを考え得る。しかし私たちが耳鼻科外来にて診療を行なう場合,これらの疾患群に当てはまらない,あるいは他の特別の疾患を伴わないのにもかかわらず,不快感のある耳閉感を訴える症例にしばしば遭遇する。いわく聴力検査正常,耳管通気度良好,鼓膜所見・外耳道所見正常といつたものである。このような例は一般臨床医家を苦しめるものであり,仕方なく当座の処置として耳管通気法,鼓膜マッサージ,ビタミン類の投薬を漫然とくり返していくうちに患者の信を失うに至るものである。私たちはこのような例の多くに,後頭部の鈍痛,胸鎖乳様筋付着部の圧痛,下眼瞼部の圧痛,緊張性頭痛,眼のかすみ,悪心などのいわゆる肩こりに随伴した症状を見出し,それらの症例に対し主として肩部の有痛部への1% lidocaineブロックないしneucoline Pのブロックを施行したところ,肩こりの改善と平行して耳閉感の消失あるいは改善をみたので報告し,併せて肩こりからの耳閉感の発生要因について考察を加えた。
著者
藤沼 康樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.888-891, 2014-10-15

症状や不安などを訴えて患者が外来受診した場合,通常は問診,身体診察,診断に必要な検査を経て,医学的診断をして治療を行うというのが,通常医学教育において教えられる診療のプロセスである.しかしながら,このプロセスをニュートラルに行うというより,問診や身体診察の時点で作業仮説としての診断を絞り込みつつ,同時に,見逃すと大変なことになる危険な疾患を除外するというプロセスを臨床家は重視している.たとえば,胸痛の訴えのある患者において,症状と経過からは「病気っぽくない」が「念のため」冠動脈疾患,胸膜炎などの重大な疾患を除外したいと思うだろう.これらを除外した場合に,臨床家はまずホッとするものである
著者
潮見 泰蔵 丸山 仁司 秋山 純和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.693-694, 1987-10-15

Ⅰ.初めに 床上における種々の移動動作は,その移動形態から,いざる(shuffling),這(は)う(creeping),歩く(walking)などに大別することができる.その中でも,横いざり(片麻痺型),四つ這い,膝歩きは,脳卒中片麻痺患者や脳性麻痺児をはじめ,種々の運動障害者の床上における移動手段および訓練方法として,しばしば用いられる.これらの動作は,直立歩行と比べ,低重心かつ広支持基底面をもつ点では共通しているが,推進する際の上下肢の使われかたは,各動作で大幅に異なっている.したがって,この差異がエネルギー消費に及ぼす影響も大きいのではないかと推察される.一方,移動動作が実用化するか否かについては,その動作に要するエネルギー消費に関連するとも言われる.そこで,今回,いざり,四つ這い,膝歩きについて,これら三つの動作の運動強度を比較・検討するための基礎的資料を得ることを目的に,物理的負荷量を一定にした場合の各動作のエネルギー消費などを測定したので報告する.
著者
時実 利彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.378-379, 1968-03-10

人間行動を操る5F 3Sで骨抜きにされたとか,3C時代の到来とかいわれているが,それにあやかつて,人間行動を操る5Fを紹介しよう。 食行動Feeding,性行動Fertilizing,集団行動Flocking,攻撃Fighting,逃走FleeingのFの頭文字のつく五つの行動であつて,いずれも大脳辺縁系にそのはたらきの座があつて,個体の保全と種族の維持をはかりつつ,私たちをしてたくましく生きてゆかせているおのずと身につく本能行動と情動行動である。