著者
和気 洋介 藤原 豊 青木 省三 黒田 重利
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.437-440, 1998-04-15

身体の特定の部位に限局して,奇妙な異常感覚を持続的に訴える一群の症例はセネストパチーと呼ばれている。これら体感の障害は精神分裂病,うつ病,器質性疾患などの1症状として現れる広義のセネストパチーと,異常感覚のみが単一症状性に持続する疾患概念としての狭義のセネストパチーとが区別されている5)。セネストパチーは頭部,口腔内,胸腹部,四肢,皮膚などに限局し,持続的にまた執拗に訴えられることが多いが,特に口腔内の異常感覚を訴えるものは頻度も多く,歯科で対応に苦慮しているのが現状である。 今回,我々は口腔内の奇妙な異常感覚を主症状として狭義のセネストパチーに位置づけられると思われた18症例について,その臨床的特徴を検討し,診断的位置づけ,薬物反応性,歯科との協力関係のあり方などを考察した。
著者
毛利 好孝 三村 令児 森本 康路
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.520-525, 2020-07-01

●たつの市民病院は,平成25(2013)年4月に現地建て替えによって新病院が竣工したが,大幅な病床減によっても病床稼働率は回復せず,平成26(2014)年度の病床稼働率は53.1%,経常収支は7億1千8百万円を繰り入れながら8千5百万円の赤字であった.●平成27(2015)年度から地域の医療ニーズに合わせる形で医療機能が大幅に転換され,平成30(2018)年度の病床稼働率は84.5%,基準内繰入後の経常収支は1億1千3百万円の黒字となり経営再建が達成された.●令和2(2020)年4月からは地方独立行政法人化され,新たなスタートを切っている.
著者
河原 秀次郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.461-464, 2017-04-20

【ポイント】◆機能的端々吻合は2つの腸管の側々吻合であるが,腸管内容の移送の面からは端々吻合と同等と考えられてきた吻合法である.◆吻合法には,順行式(normograde)と逆行式(retrograde)の2つがある.◆順行式吻合術は小腸結腸吻合に最も用いられてきた吻合法であるが,逆行式吻合は結腸結腸吻合あるいは結腸直腸吻合に有用な吻合法である.*本論文中、[▶動画]マークのある図につきましては、関連する動画を見ることができます(公開期間:2019年4月末まで)。
著者
長野 広之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1984-1993, 2020-10-10

総論 神経炎は単神経炎(mononeuropathy),多発単神経炎(mononeuritis multiplex),多発神経炎(polyneuropathy)に分かれます.末梢神経の局在に沿っていれば単神経炎を,それが複数存在すれば多発単神経炎を,遠位優位の靴下・手袋型では多発神経炎を考えます.多発神経炎はまず足先から始まり,膝くらいまで広がったあたりで上肢にも指先から症状が出現し,重度の場合,臍部付近にも出現します. 多発神経炎は一般人口の2〜3%,55歳以上では8%に認める高頻度な症候です1).原因としては台湾の520例の多発神経炎の報告が参考になります(図1)2).個人的な経験ではビタミンB12/B1欠乏(本研究では栄養障害に含まれる)がもう少し多い印象があります.
著者
大西 香代子 桂川 純子 三木 佐和子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.420-423, 2020-09-15

冬の気配が漂い始めた昨年12月半ば、町の集会所に私たち研究チーム3名とアシスタント4名が集まりました。この日、いよいよ日本で初めての試み、精神障害当事者が、研究者の行う研究に当事者の立場からアドバイスするというJ-SUGAR(Japan Service Users Group Advising on Research)がスタートするのです。 イギリスで始まったSUGAR*1を日本でも作ることが、私たちの夢でした*2。当事者主体が叫ばれながら、保健医療サービスを提供する側と受ける側のギャップ、横にというより何かしら縦に広がっているこのギャップを、小気味よく埋められるのではないか、そんなワクワクする思いと、うまくいくのかだろうかという不安とが混在していました。本稿では、日本でのSUGARの展開について報告します。
著者
挾間 玄以 楠見 公義
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.265-270, 2004-03-15

抄録 症例は72歳,女性。抑うつ気分や精神運動制止などうつ病類似の症状で発症。症状は抗うつ薬で一時軽快するも再燃し抑うつ状態が遷延化した。その後,パーキンソニズム,認知機能低下が認められ,拒絶症や認知機能の変動も顕在化した。quetiapine少量投与(50mg/日)により,これらの症状の部分的改善が得られた。同薬の増量はパーキンソニズム増悪のため困難であり,donepezilの少量(0.5ないし0.75mg/日)を併用投与したところ拒絶症や認知機能の変動は消失した。quetiapineやdonepezilは少量投与でもDLBの精神症状改善に有効である可能性が示唆された。
著者
桑原 史成
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.758, 2004-10-01

ベトナム戦争の終結は1975年だが,それまでの約10年間にアメリカ軍は南ベトナムの,ほぼ全域に布陣していた.南北のベトナムが統一する2年前の1973年に,約50万人のアメリカ軍は撤収してベトナムを去ったが,兵士たちが残した戦争孤児は,南ベトナムの各地で生み残された.その正確な数字は公表されていない.が,海外のジャーナリズムの推測では,数万人とされる.孤児を出産した母親はベトナム女性であることは言うまでもないが,その多くの女性たちが,戦乱の中,孤児たちを養育することは不可能だった.それに統一後の社会主義国の中で,敵兵の白や黒の肌色の子どもを連れて歩くことは,憚れたようである. 一方,ベトナム戦争に派兵していた韓国軍兵士の戦争孤児の場合は,東洋人の黄色のため,孤児院などの施設に引き取られる数は少なかったようである.ベトナム戦争の終結の直前に,アメリカ政府は,戦争孤児たちを首都のサイゴンから航空機でアメリカに移送している.里子としてアメリカに渡った子どもの数は,全体の10%程度とされる.
著者
篠塚 達三
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.869-872, 1953-12-10

緒言 妊娠5ケ月以後の人工妊娠中絶には種々の方法が發表されているが,未だ滿足出來る方法は發見されていない。メトロイリーゼ,ブジールングは娩出迄に比較的長時間を要し感染の危險があり,アブレル氏方法は比較的確實であるが時に不慮の危險を招く。最近種々の溶液を卵膜子宮壁間に注入する方法が發表されている。私は以下述べるような種々の方法を行つて見たので比較發表する,尚全實驗例共施術直後鹽酸キニーネ1gを2時間毎に3回に分服させた。
著者
渡邊 剛 富田 重之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.531-535, 2005-05-01

冠動脈バイパス手術をめぐる最近1年間の話題 社会の高齢化に伴い,わが国においても虚血性心疾患は増加の一途をたどっている.冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting;CABG)は1960年代にアメリカで開始され,その劇的な症状改善効果と比較的安全な手術であることから本邦においても一般的な治療法となった.しかし,一定頻度で脳梗塞などの重篤な合併症の出現があること,また一方でカテーテルインターベンション(PCI)の進歩により外科治療の位置付けは大きく変わってきた.PCIの適応拡大とともに,低左心機能の多枝病変,緊急手術などこれからの心臓外科医の使命は,より重症化し,また合併症疾患を持った症例に対し安全確実に遠隔期予後を改善する良い手術を行うことにある.特に多臓器疾患合併症や高齢者などのいわゆる重症例に対してより安全で確実な冠動脈再建が求められている. また,PCIは局所麻酔にて簡便かつ低侵襲に施行できる一方,それに比較しCABGは,全身麻酔,人工心肺,心停止,胸骨正中切開などが必要であり,侵襲が大きいといわざるを得ない.そこでこの10年間に心臓外科医は,手術の低侵襲下を追求し,人工心肺を使用しない心拍動下冠動脈バイパス術(Off-pump CABG;OPCAB)に取り組んできた1,2).人工心肺を使用しないOPCABは,吸引式の吻合部固定器具や,心尖部吸引型の心臓脱転器具などの開発に伴い,より安全で確実な手技となってきており,術後の合併症の低減や,死亡率低下へつながるとの報告も多くみられるようになった3~5).
著者
内尾 祐司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.39-43, 2009-10-22

はじめに 通常,筋および筋膜縫合は深部の処置が終了したのち閉創に際して行われるが,的確に行われないと創治癒の遷延やヘルニアを生じるばかりか,筋の機能障害をもたらすことになる.一方,腱縫合術の成否は四肢の運動機能に大きく影響を与える. 本稿では,筋・筋膜・腱縫合における手技やポイントなどについて概説する.
著者
野村 一俊 渡辺 充伸
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.969-972, 2013-10-25

大腿骨転子部骨折の骨接合術後に低出力超音波パルス(LIPUS)照射を加えることにより骨癒合を促進できれば,ラグスクリューのカットアウトを減少させることができ,術後の荷重時痛を早期に軽減でき入院期間が短縮できる.一方,LIPUS治療の診療報酬(5,000点)の算定は,開始時に1回しか算定できないため,回復期医療機関のLIPUS治療への理解と協力が得られなければ治療の継続は困難である.理解と協力を得るためには,地域連携クリティカルパスの活用が有用である.
著者
榊原 博樹 谷口 正実 大河 原重栄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.621-629, 1996-06-15

医薬品添加物は製剤の適用性(溶解補助,pH調節,等張化,吸収促進,安定化,成型など)をたかめ,医薬品の有効性と安全性を維持するために不可欠なものとされている.しかし,医薬品添加物に関しては使用品目の制限や使用量の基準は作られていないようである.製剤として有効成分とともに承認前の臨床試験を経てきており,これをもって安全性の検討はなされたものと解釈されている.一方,食品添加物は340品目余りが許可されており,対象食品の規定や一部に使用量や使用制限の規定も明らかにされている.そのうちの一部は医薬品にも共通して用いられており,その存在すら意識されずに摂取されている.ところが,食品・医薬品添加物のなかには一部の気管支喘息や蕁麻疹患者に過敏反応を惹起するものがあり,その増悪因子として注意する必要がある.特に非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti—inflammatory drugs,NSAID)に過敏な,いわゆるアスピリン喘息(aspirin-induced asthma)やアスピリン過敏性蕁麻疹をもつ患者に食品・医薬品添加物過敏症が多い.注意すべき添加物は,食用黄色4号(タートラジン),その他のタール系色素(食用黄色5号=サンセットイエロー,赤色102号=ニューコクシン,赤色2号=アマランス),安息香酸ナトリウム,パラオキシ安息香酸エステル類,亜硫酸塩類である.
著者
藤島 綾 安部 眞佐子 堤 ちはる 吉留 厚子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.594-598, 2012-07-25

はじめに 近年,食物アレルギーをもつ子どもは増加傾向にある。食物アレルギーは,2011年の厚生労働科学研究班による「食物アレルギー診療の手引き」では,「原因食物を摂取した後に免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」と定義されている。食物アレルギーは乳幼児の約5~10%が罹患している1)と考えられており,他のアレルギー疾患と比較して小児期,特に1歳前後までの乳幼児に圧倒的に多く発症することがわかっている。厚生労働省の全国調査では食物アレルギー患者1546名を分析しているが,その年齢別内訳として0歳児35.8%,1歳児17.7%で全体の53.5%を占めている2)と報告されている。 一方,胎児の神経管閉鎖障害発症リスクを減少させるため,2010年の厚生労働省日本人の食事摂取基準の中で,妊娠前期において葉酸摂取を推奨する傾向にある。胎児の神経管閉鎖障害とは,受胎後およそ28日で閉鎖する神経管の形成異常であり,臨床的には無脳症,二分脊椎,髄膜瘤などを呈する。このように妊娠早期に起きる異常であるため,厚生労働省は2000年「健やか親子21―妊産婦のための食生活指針」の中で,妊娠を計画する女性に対して,妊娠前から妊娠3か月までの食事での葉酸摂取と,それでも不足している場合は葉酸サプリメントを使用しての葉酸摂取を推奨している。この推奨により,妊婦の葉酸摂取に対する認知度や葉酸サプリメントを摂取する者の割合は増加してきている3)。 しかし,妊娠期間を問わず,妊娠後期まで葉酸サプリメントを利用している妊婦も多い4)ことが報告されている。乳幼児のアトピー性皮膚炎での食物アレルギーの関与を認める5)といった報告もあり,2008年には,食物アレルギーが発端となりアトピー性皮膚炎,気管支喘息へ進展することが,「食物アレルギー診療の手引き」にて示されている。また,2歳までに食物アレルギーに罹った児はその後の喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎の可能性が高い6)ことも示されている。 今回,妊娠中の葉酸サプリメントの摂取状況の実態と,乳幼児に最も多いアレルギー疾患である食物アレルギーの関連を調査した。
著者
葛原 茂樹
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.119-129, 2011-02-01

はじめに 太平洋熊野灘に面する紀伊半島の南岸一帯は,江戸時代までは紀伊国の牟婁と呼ばれていた。明治の廃藩置県によって東半分は北牟婁郡と南牟婁郡として三重県に編入され,西半分は和歌山県の東牟婁郡と西牟婁郡になり今日に至っている(Fig.1)。 この地域の中心部を流れる古座川流域には,「古座の足萎え病」の伝承があった1)。また,明治末にはわが国の神経学の創始者である三浦謹之助2)によって,紀伊から伊勢にかけての紀伊半島南岸にALSが多発することが指摘されていた。 このような伝承や医学的観察の知見を,1960年代以降に医学的手法によって研究し科学的知見に高めたのは,当時の和歌山県立医科大学精神科教授の木村 潔と,同科講師として研究を担った八瀬善郎であった3)。彼らは牟婁の風土病である「古座の足萎え病」が筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)であることを明らかにしただけでなく,牟婁地方の広範な疫学調査によって,古座川と穂原の2地区にグアム島とならぶALS高集積地があることを発見した。紀伊半島集積地のALS(紀伊ALS)は神経病理学的には中枢神経系にAlzheimer神経原線維変化[Alzheimer neurofibrillary change (tangle):NFT]が多発し,グアムALSと同質の疾患と考えられた4)。 紀伊ALSの疫学と原因研究は,八瀬をリーダーとして米国のグアム病研究グループと共同で進められたが,原因解明がなされないままにグアムに引き続いて紀伊半島でもALSの発生が激減していき,1980年代にはこれらの地域での高頻度発生は終焉したことが報告された5,6)。 1990年に三重大学に神経内科が新設され,教授として着任した筆者7)は,かつて高集積地であった穂原地区から1年間に3名のALS患者が受診したことを契機に再調査を行い,ALS多発がなおも持続していることを確認しただけでなく,同じ集落にグアムのパーキンソン・認知症複合(parkinsonism-dementia complex:PDC)に臨床像が酷似した疾患も多発していることを観察し,剖検例によって神経病理学的にも確定した。紀伊ALSとPDCは臨床病理学的には同じスペクトル上の疾患と考えられており,ALS/PDCとして扱われることが多い。多発の原因に関しては,環境因,遺伝素因ともに解明されていない。 時間軸でみると,紀伊半島でもグアム島でも,ALS発生は激減し,PDCは減少しながらも持続しているが,近年は高齢者認知症が増加していることが報告されている8)。このような疫学像の変遷が何によってもたらされたのかは,ALSの成因や予防との関連で大きな関心が払われている。本稿ではこのような筋書きに沿って,牟婁病の歴史を振り返ってみたい。
著者
河野 兼久
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1221-1222, 2019-12-10

平成から令和に改元される記念すべき年となった2019年の3月末をもって,愛媛県立中央病院を定年退職し,41年にわたる脳神経外科手術医の人生に区切りを迎えました.振り返ってみると,多くの先達が言われてきたように,思いのほか巧く行えた症例よりも難渋したことのほうがより濃く鮮明に思い出せます. 私が脳神経外科専門医を取得した1985年頃には,日経メディカルに「苦いカルテ」という連載があり,名だたる先輩・名医の先生方が,若いときの教訓的な実臨床での苦い経験を赤裸々に記載されており,私はもとより多くの若い医師たちに「他山の石」として愛読されていました.スポーツ選手が負けてから大きく成長すると言われるように,臨床現場でも失敗から学ぶことの大事さは,良医たるに必然の文化とも言えるもので,事の重大さから仔細は表沙汰にできない内容もあり,個人が秘めて自戒し,患者診療に反映させることで免責を得たように自己処理しているのが実情かと推察します.
著者
津田 陽
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.849-859, 1998-09-15

はじめに 薬剤の吸入は一般的に行われている.例えば,喘息患者へのalbuterolのような気管支拡張薬の投与には長年にわたって吸入器が用いられている.近年,バイオテクノロジーの急速な進歩に伴って多くの新しい薬剤が開発され,臨床試用が行われている.しかし,薬剤によっては従来のような経口投与では具合が悪いことがある.例えば,錠剤で経口投与された場合,薬剤が作用を発揮するべき所へ到達する前に蛋白とペプチドは胃の酵素によって簡単に分解されてしまう.肺は広大な肺胞の表面積を有し,また肺胞壁は極端に菲薄な構造をしており,さらに肺内深部の領域にはわずかの蛋白分解酵素しか存在しないという特徴から,肺に薬剤を投与する治療法が現在注目されつつあり,またその有望な方法として,エロゾールの形で薬剤を投与する吸入療法が次第に重要性を増している. エロゾール吸入療法は経口投与に比べて多くの利点を持つが,一方でいくつかの問題点もある.最も大きな問題は薬剤輸送の効率である.近年試用されているネブライザーや,定量噴霧式吸入器(MDI)のような吸入器では投与された薬剤の約5〜10%しか口腔咽頭や喉頭を通過して肺に達することができない1).このような肺内に達する薬剤量の減少は,原則的には粒子サイズや吸入気流速度を減少させることによって軽減することができるが,適切な量の薬剤を目的とする気道に確実に到達させるのは非常に困難である.エロゾールの輸送と沈着は,非常に複雑な物理学的現象であり,それらは粒子の性状,呼吸パターン(気道の流体力学),気道の解剖学的形状などに依存している. 本稿の目的は,気道におけるエロゾールの輸送,沈着に関わる基本原理を強調し,基礎的な背景となる事柄について解説することである.本稿の最後に,肺内深部でのエロゾール輸送に関する新しい概念である“stretching and folding”注1)対流混合について,われわれの最新の研究成果2,3)を簡潔に紹介する.
著者
野田 寿恵 木村 哲也 坂本 英史 矢吹 すみ江 秋山 剛
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.293-295, 1999-03-15

国際疼痛学会では,痛みを「組織の実質的あるいは潜在的な損傷を伴い,このような障害を表す言葉を使って述べられる不快な感覚,情動体験」と定義している11)。痛みに伴う情動とは,主に抑うつ,焦燥,不安などであり,慢性疼痛の患者に抑うつ症状が出現した場合,しばしば抗うつ剤などの向精神薬が投与される。また,うつ病が合併した慢性疼痛に対して,電気けいれん療法が有効であったとする報告が,1946年以来いくつかみられる8)。今回我々は,ペインクリニック科での様々な疼痛治療や向精神薬の投与で,症状の改善をみなかった慢性疼痛の症例7例に対して,無けいれん通電療法modified electroconvulsive therapy(mECT)を本人の告知同意のもとに施行した。7例の中で,改善が得られた症例と改善が得られなかった症例の臨床的特徴を比較し,慢性疼痛に対する無けいれん通電療法の適応について若干の考察を加えた。
著者
皆見 省吾
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.143-144, 1963-02-01

I.まえがき 飲酒によつて紅斑または紫斑を起す例を見た。あまり記載されていないように思う。三浦氏は日本酒により下肢に紅斑を生じ,ビールでも起るがウイスキーでは起らぬという固定疹を報告した。氏は脱感作に成功したという。
著者
加藤 美由紀 岡崎 亮 松本 俊夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.792-794, 1991-07-15

Q急性膵炎では,低カルシウム血症が特徴とされます.カルシウムが低下する機序についてご教示ください.