著者
白川 健 三崎 凌
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.409-413, 2017-12

[要約] 本論文では,サッカーのPK戦を確率論を用いて分析するアルゴリズムを,中学・高校数学の授業作りの基本素材(元ネタ)となり得る数学モデルとして提案する。また提案モデルの「目標プロファイル」を具体的に構成・検証することによって,モデルが有するPK戦の分析アルゴリズムとしての説得力を数学的に考察する。更に得られた考察を基に提案モデルの達成度を評価し,今後の活動継続に向けて必要となる課題等についても検討する。
著者
伊藤 秀樹 堀下 歩美 保坂 亨
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.29-34, 2011-03

本研究では,長期欠席(不登校)の児童・生徒への支援の一環として教育委員会で行われている家庭訪問相談員事業について,A県3市の聞き取り調査の結果から,事業実施上の工夫と事業が抱える課題の背景・解決策を検討した。事業実施上の工夫については,活動の安全面の確保に焦点を当てて検討し,(1)学校・保護者・指導主事・相談員の4者による事前打ち合わせ,(2)支援事業の使い分け,(3)相談員の2人ペアでの家庭訪問,(4)保護者在宅時の訪問,という4つの工夫を見出した。事業が抱える課題については,(1)保護者の非協力・拒否,(2)義務教育終了後の対応,(3)支援の非継続性という3つの課題に着目し,その背景と解決策について検討を加えた。
著者
佐藤 宗子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Chiba University (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.444-436, 2018-03-01

[要約] 一九六〇年代に偕成社は、異なる趣旨のもと、二つの「日本文学」に関する少年少女向叢書を刊行した。一つは「一人一冊」スタイルの「作家」叢書の体裁を強めた「少年少女現代日本文学全集」であり、先行するあかね書房「少年少女日本文学選集」と対比しつつ既に論じたことがある。それに対し、一九六四年刊行開始の「ジュニア版 日本文学名作選」は、「全集」以上に途中での増刊を繰り返しつつ、七〇年代半ばに六〇巻で完結した。この叢書の構成を編年的に把握しながら、作品中心に題目設定がなされたことによりどのような特徴が生まれたか、「全集」との共通要素からは何が言えるか、体験を交えつつ享受の状況の対照をどのように考察しうるか、といった点の追究を行い、長編収録や特定の作家の浮上、新味を持つ作品群の選定など文学研究者の関与のもと「日本文学」の編成が進められた状況を明らかにした。今後は「世界の文学」との関係や同業他社の同種叢書との対照を行うことで、「日本文学」の体系化、規範化が少年少女向けにどのように進展したか、状況把握を進めることとしたい。
著者
羽間 京子 保坂 亨 小木曽 宏
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.13-19, 2011-03

長期欠席(不登校)児童生徒の中には,その背景に児童虐待が疑われる事例が含まれる。学校及び教職員は,児童虐待防止法により虐待の早期発見の努力義務が課せられているが,家庭訪問をしても児童生徒に会えず,状況確認ができない場合がある。本研究は,接触困難な長期欠席児童生徒(および保護者)に学校教職員がとりうるアプローチに関する議論の前提として,保護者の就学義務とその不履行について法的規定や裁判例を整理し,学校教職員の家庭訪問の法的位置づけとその限界を検討した。その結果,就学義務不履行による督促については,議論が「不登校」にマスキングされたまま弁別・整理されていないと考えられた。また,学校教職員の家庭訪問は教育活動の一環として位置づけられており,児童虐待の疑いがあったとしても,保護者が住居への立ち入りを拒否し児童生徒に会わせようとしない場合,教職員は子どもの安全確認まではできないことがその限界として指摘された。
著者
谷藤 千香
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.365-371, 2012-03

近年,中高年のスポーツが盛んになりつつある。海外では比較的以前から多くのマスターズスポーツ大会が行われていたが,日本ではまだその歴史は浅い。そこで,各競技団体が行う単種目のマスターズ大会や複数種目で行われるマスターズ大会の日本と海外の事例から現状と課題をあげ,今後のマスターズスポーツについて検討した。単種目のマスターズ大会は,日本では陸上競技や水泳が多く実施され,また,いわゆるスポーツ種目のマスターズ大会は欧米で非常に古くから存在していた。複数種目の大会では,日本スポーツマスターズにおいて生き甲斐を感じる参加者が多いものの,年齢区分などいくつかの問題点が見うけられたが,国際的に行われている最も大きなマスターズの大会であるワールドマスターズゲームズでは,可能な限り誰もが参加できるよう門戸を開き,多くの参加者をひきつけている。今後のマスターズスポーツには,こうした競技スポーツとレクリエーションスポーツの融合した領域が求められる。
著者
村松 成司 藤原 健太郎 伊藤 幹 藤原 健太郎 フジワラ ケンタロウ Fujiwara Kentaro 伊藤 幹 イトウ モトキ Ito Motoki 藤田 幸雄 フジタ ユキオ Fujita Yukio 服部 祐兒 ハットリ ユウジ Hattori Yuji
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.351-358, 2010-03

特徴的なトレーニングゆえに活性酸素・フリーラジカルによる酸化ストレスに強くさらされていると考えられる長距離ランナーの生体酸化ストレス及び呼吸機能・代謝に及ぼす活性水素水の影響について検討した。活性水素水摂取は安静時好中球分画及び絶対数の増加を抑えることから,トレーニングに伴う血中好中球の活性化を抑制または活性化した血中好中球を速やかに正常化する可能性が示された。安静時の血清過酸化脂質の変化より,活性水素水摂取がトレーニング由来の生体酸化ストレス障害を抑え,生体機能の維持に寄与する可能性が示された。酸素摂取量・呼吸商・心拍数の変化から,循環器系及び代謝が向上した可能性が示された。安静時の測定結果より活性水素摂取が生体の抗酸化に寄与する可能性を示す結果が示され,また,運動時の代謝及び呼吸循環機能を向上させ,パフォーマンス向上をもたらす可能性が推察された。This experiment was undertaken to investigate the effect of active hydrogen water ingestion on oxidative stress and respiratory function of university long-distance runners, presumably exposed to active oxygen and freeradical materials induced by their particular training. Seven healthy university students trained for 20 days with 2 liters of active hydrogen water (AHW) per day. We compared blood samples and respiratory function at pre and post experiment. The results obtained suggest the possibility that ingesting AHW may inhibit the activation of neutrophilic leukocytes that occur with exercise training. Further, it is suggested that ingesting AHW appears to normalize an activated blood neutrophilic leukocyte response, because the increases in the ratio and quantity of neutrophilic leukocytes at rest was reduced. The changes in serum lipid peroxide seemed to suggest the possibility that AHW could decrease oxidative stress resulting from exercise and contribute to the maintenance of homeostatic physiological function. Oxygen uptake, respiratory quotient and heart rate results seemed to suggest that respiratory and circulatory functions were improved by ingesting AHW. Results suggest the possibility that AHW ingestion contributed to antioxidant effects during training. Furthermore, AHW ingestion may improve exercise performance through its effects on respiratory, circulatory and metabolic systems.
著者
平出 昌嗣 ヒラデ ショウジ Hirade Shoji
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.249-253, 2014-03

この18世紀の小説は,小説が本来持つべき主題と秩序と統一という概念を故意に壊そうとした作品であり,遊びと笑いの精神に満ちている。主人公の人生はほとんど描かれず,描かれるものは主人公の周囲にいる父親や叔父ばかりである。またプロットも,時間を追い,因果律に従って展開するのではなく,語り手の気分によって自由かつ奔放に展開していく。連想法というのがその方法であり,主人公の物語を進めるふりをして,脱線につぐ脱線で,その脱線ぶりを楽しみ,本筋はほとんど進まないというのが,基本的なパターンになる。さらに語り手は聞き手を人格化し,紳士淑女にひんぱんに話し掛けては,おしゃべりを楽しむ。また白紙や黒塗りのページなどの視覚効果も繰り返し現れる。このように,この小説のおもしろさは小説の概念を大胆に破壊し,読者を翻弄するところにある。This eighteenth-century novel aims to destroy the idea of theme, order and unity which any novel should have as a work of art, and has the lively spirit of play and laughter. What is drawn is not the life of the protagonist, but those of his father and uncle. The plot is made, not on the basis of time and causality, but according to the mood of the narrator, so it goes along free and extravagant. The method is that of association of ideas, by which the story makes digression after digression under the pretense of progression. Furthermore, the narrator enjoys the casual conversation with ladies and gentlemen, the personified listeners of his story. He also makes an appeal to the eyes, providing a blank or a black page, or line drawings. In this way, this novel enjoys throwing readers into confusion caused by the destruction of the idea of a novel.
著者
井上 孝夫 イノウエ タカオ Inoue Takao
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.209-216, 2007-02

大学の原則は「自学自修」である。しかしこの原則は形骸化が著しい。特に100名単位の学生が受講する講義科目において,少なからぬ学生からは「楽して単位を修得する」ことが当然視され,講義はあたかも単位取得ゲームの競技場と化している。このような現状のもとで,わたしの行なった2006年度前期の「社会学概論」の講義では,受講学生に対して,「ノートの取り方」と「授業の流れ,およびテキストへの注意」に関する2つの「指導」を行ない,「自学自修」の原則を実質化していくためのささやかな第一歩とした。それによって,一定の成果をあげることができたと判断している。本稿は,その概要と分析である。
著者
松尾 七重 マツオ ナナエ Matsuo Nanae
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.21-28, 2007-02

本研究の目的は図形の定義についての検討場面を取り入れた授業により,図形の包摂関係についての生徒の理解が変容することを明らかにすることである。そのために,まず,図形の概念形成を促進することを目指し,定義の捉え方の指導を考えるという本研究の立場を明確にし,また,これまでの研究成果を踏まえ,定義指導の要因を示す。次に,その要因を考慮して実施された授業の概要,その授業前後で行われた図形の包摂関係についての理解に関する実態調査の概要及びその結果を述べ,その結果を考察する。その結果,長方形,平行四辺形及び二等辺三角形についてはより特殊な図形を含めて考えられるようになったことにより指導の効果が示された。しかしながら,定義を適切に捉えることができた生徒はある図形がそれより一般的な図形に含まれるかどうかの判断はできても,その判断を,概念イメージに当てはまる図を選ぶ際に用いていないことが明らかになった。The purpose of this study is to show the transition of students' understanding of inclusion relations between geometric figures through the lessons which adopt the situation of discussing about definitions of geometric figures. First it clarifies that teaching definitions of geometric figures promotes concept formation of these figures in this study. Second the factors of teaching definitions of geometric figures are pointed out based on the results of the previous studies. Third the lessons which adopt the situation of discussing about definitions of geometric figures were given and the survey of understanding of inclusion relations between geometric figures before and after the lessons administered and the results of the survey were considered. It follows from what has been said that the teaching definitions effects students' understanding of inclusion relations between squares and rectangles, rectangles or rhombi and parallelograms, regular triangles and isosceles, right isosceles and isosceles, however, students who understood the definitions of geometric figures appropriately was not able to use the inclusion relations in order to select figures that are consistent to their concept image of geometric figures.
著者
川島 亜紀子 カワシマ アキコ Kawashima Akiko
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.185-191, 2013-03

夫婦間葛藤に関する心理学的研究は、我が国においては比較的新しい領域であり、多くの研究は欧米における研究で使用される尺度を使用するか、あるいは、それらを基に、日本版を作成することが多かった。そのため、我が国独自の葛藤のあり方について測定しきれていないのではないかという懸念があった。そこで、本研究では、我が国における夫婦間葛藤方略の実態について検討するため、インターネット上のサービスである、"Yahoo!知恵袋"に寄せられた情報を使用し、我が国の夫婦間葛藤の実態や、葛藤方略の実態について検討することを目的とした。その結果、大きな枠組みとしては、欧米での先行研究との違いは見いだされなかったが、攻撃性の表出方法や、譲歩のあり方において違いがみられる可能性が示された。今後、これらの結果を基に尺度を構成し、本結果が我が国の実態を反映しているのかどうかを検討することが求められる。
著者
加藤 修 カトウ オサム Kato Osamu
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.495-502, 2013-03

本稿では,筆者の長年の制作活動や,2001年に文化庁芸術家派遣制度でニューヨークに滞在していた際に,現地で9.11を経験し体得した観点から,表現活動や作品の持つ意味,アートプロジェクト・ワークショップの意義,その社会的役割について考え至った内容を記述している。現在,大学の普遍教育教養展開科目「アートをつくる」を母体として,大学生スタッフとともに継続的に展開している複数のアートプロジェクトをはじめ,その1つである「旗をつくる-住みたい国を考える」に特に焦点を当て,2011年7月より同タイトルで5回繰り返してきた内容を振り返り,それぞれを比較しながら,それらがどのような意義と目的をもって結果を導いたのかを検証する。そして,それらが「継続」により生まれた人と人との関係性に基づくものであり,継続を可能にしたシステムの確保による内容の洗練とスキルアップの成果であることを確認している。
著者
梅田 克樹
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.339-342, 2019-03

[要約] 本研究は,大学生が自県に対してどのような地域認識を有しているのかを,「お国自慢」の調査を通じて明らかにした。調査対象とした学生は,千葉県出身の千葉大学教育学部生のうち,事例主義と方法主義を重視した平成10年版学習指導要領下において小中学校の地域学習を受けた世代である。調査の結果,次の諸点が明らかにされた。(1)「東京大都市圏ならではの住みやすさ」や「自然環境の豊かさ」など,居住地としてのバランスの良さを挙げた学生が多かった。(2)第一次産業についての回答が多くみられたのは,景観面で重要であり,日々の食生活にも直結するためと考えられる。(3)学生の食生活や余暇活動のあり方が,地域認識の形成に強く影響していた。(4)副読本「ちば・ふるさとの学び」の存在は,「第一次産業」や「成田空港」などの回答に影響を及ぼした可能性がある。
著者
平出 昌嗣
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.243-251, 2008-03

この小説のテーマは,主人公の心における愛の誕生である。物語の根本にあるものは時間と愛の対立であり,時間とは,ロンドンに響き渡るビッグ・ベンに象徴されるように,人と社会を支配する現実の絶対的な力になる。クラリッサはその時間の世界で,国会議員の妻として華やかに生きてきたが,老いと死の不安に脅かされたとき,深い孤独と虚無に直面する。それは時間の世界に生きる者の宿命である。しかし三十年ぶりにピーターと再会したとき,心の底から蘇ってきた愛の喜びを知る。物語のプロットとは,時間の世界を抜け出て愛に目覚めるその心の動きになる。それは,心の自由を得るため,窓を開けて投身自殺をするセプティマスの異常な行為と重なる。時間の窓を開けて永遠の愛の世界に飛び込むクラリッサの心も一種の狂気になるが,それによって彼女は時間と死の力に打ち勝ち,魂の再生と歓喜を得ることができる。
著者
畑中 恒夫 高石 哲男
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.449-456, 2002-02

電磁波はネズミの脳に作用して情動に変化を生じ, 学習効率を変化させることが知られている。電磁波が脳の構造が全く違うワモンゴキブリの情動に変化を生じるか調べるため, 市販の電磁波を利用したネズミ・ゴキブリ駆除器を用いて, 行動観察を行った。ゴキブリは電磁波に暴露されると, 活動性が下がるとともに, 電磁波を発する場所から特定の位置を保ち, 電磁波の強さあるいはその作用による情動の強さを知覚できるような行動が見られた。また, 長期間暴露していると, はじめの2週間はストレスによると見られる, 産卵直後の卵鞘を雌が食べてしまう行動が目立ったが, そのほかの行動に変化は見られなかった。本実験で, 電磁波はゴキブリの情動にも影響を与えることが示された。
著者
松田 伯彦 松田 文子 宮野 祥雄
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.p29-40, 1978-12

教育工学的視点とその問題点を論じた。1.教育工学というのは, 教育目標を設定するとかいう, 教育的価値観のともなうものをその研究分野にふくまない。しかしこれまでの教育においては, つねに価値観をともなう教育論争が尊重されてきたし, 現在もそうである。2.教育工学的視点の根底には, 行動科学的人間観がある。この考えに立てば, 教授過程での教師と児童・生徒の行動と交互作用も充分に分析された後には, 予測と制御が可能であると考えられるが, これは「教育」を「芸術」とみなす多くの教育関係者には受け入れられない。3.このような行動科学的人間観に立った場合, 「なにが出来るようになったか, というオバートな行動の変化」が「学習」であって, 教授の目標は「学習者の行動」すなわち目標行動の形であらわす必要がある。しかし「学習」をオバートな行動のレベルでだけで考えでよいであろうか。4.教育工学においては, 人, もの, 金, 情報をうまく組み合わせて, 教育効果を上げようとするのだが, このように, 人はものや金とならぶ一要因でしかない。教師対児童, 児童対児童の真剣な格闘の中から新鮮な授業が創造される, とするような「人」に非常に重点をおいて考える人達からは, この点から教育工学は拒絶される。5.教育のシステム化というとき, そのシステムの優劣は効率性によってきまる。産業界においては異議のない「効率性」という概念ではあるが, 教育において, 「効率性」を追い求めることが正しいことかどうか, かならずしも自明の理ではない。6.教育工学は潜在的に教育の個別化を指向しているが, 教育の個別化は, ただちに教育における差別や選別として批判されがちであり,
著者
戸田 善治 竹内 裕一 姜 雪婷 三浦 輔 宮田 知佳 山本 晴久 和田 敦実
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.133-143, 2013-03

本稿は,2011年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究(社会)」における大学教員と大学院生の共同研究の報告である。日本政府は1990年に「入管法」を改正,すべての外国人を就労可・不可にはっきりと区別し,不法就労外国人に対する取り締まりを開始した。一方で,「定住者」資格を認めたブラジル・ペルー出身の日系人に就労を許可し,さらに「研修・実習」制度を中小企業にも活用しやすいように規制緩和し,事実上の就労を認め,この制度の目的が「途上国への技術移転,人材育成」であると一貫して主張してきた。これに対して,受け入れ企業は「単純労働力確保」,中国人実習生は「カネ稼ぎ」を目的とし,この両者間ではWIN-WINの関係にあり,日本政府のいう制度の目的とその運用実態には大きな乖離がある。そこで,この乖離状態に着目し,「外国人技能実習制度」の是非及びその改革案について考える授業を開発した。
著者
柴田 道世 山下 修一
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.15-20, 2017-03

[要約] 本研究では,モデルと他者との対話を通じて,月と金星の満ち欠けを理解させることを目的として実施した。公立中学校3年生3クラス84名を対象にして,月と金星の満ち欠けの学習において,新たに開発した一人一モデルを操作させ,月や金星の見え方について他者に説明させる授業を展開した。開発したモデルは,部品の配置を換えることにより,月の満ち欠けと金星の満ち欠けの両方を調べることができるマルチ説明器である。生徒は,モデルを操作する中で月や金星の見え方が変化することを見出し,モデルを媒介にして見出したことを他者に伝えた。その結果,他校の3年生4クラス135名の事後調査結果と比較して,新たに開発したモデルの操作や見出したことを他者に説明させることにより,月と金星の満ち欠けの理解を促したことが実証された。[SUMMARY] This study was conducted to enable students to understand the phases of the moon and Venus through a model and interaction with others. The subjects of the study were 84 12th-grade students from three classes in a public school. During the lesson, each student operated a newly developed model and explained the appearances of the moon and Venus to others. The model is an all-around explanation device that can check on the phases of both the moon and Venus by changing the placement of its parts. The students discovered while operating the model that the appearances of the moon and Venus would change and told other students what they had discovered from the model. The results verified that asking students to operate the newly developed model and tell others about their discoveries facilitated understanding of the phases of the moon and Venus, in comparison with results obtained in a post-survey conducted with 135 12th-grade students from four classes in other schools.
著者
西野 明
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.163-165, 2019-03

[要約] 本研究では,日本のバレーボールの普及・発展に向けた一資料を得るために,日本におけるバレーボールの制度(6人制と9人制)の特徴について検討した。主にルール上の相違点に関して6人制との比較から,認知度及び理解度が低いと思われる9人制の特徴を,筆者の実践経験もふまえ明らかにした。バレーボールという一つの競技ではあるが,サービスの回数(6人制は1回,9人制は2回),ボールコンタクト(9人制はボールがネットに触れると最大で4回接触可能),ポジション(6人制はローテーション,9人制はフリーポジション),コート規格などの点で9人制独自のスキルや作戦が必要になることがわかった。 今後は,バレーボールのさらなる普及・発展のためにも,両制度(6人制と9人制)の特徴を捉えながら,うまく共存できるようにすることが大切である。