著者
安部 朋世 神谷 昇 小山 義徳 西垣 知佳子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.59-64, 2018-03

[要約] 本研究グループでは,英語の語彙・文法指導のひとつの方法として,「データ駆動型学習 (Data-Driven Learning:DDL)」の有効性について,継続して調査・研究を行っている。本稿は,DDL教材・指導法開発のための基礎的データを収集するために,学校英文法と学校国文法が既修である大学生に対して,英語と国語それぞれの品詞に関する理解度調査を行った結果を報告し,学校英文法と国語科文法学習の双方の影響と連携の可能性について検討する。具体的には,大学1年生を対象に調査を行い,その結果から,[ 1 ] 日本語文法と英文法の知識をどの程度正しく身に付けているか,[ 2 ] 日本語と英語の品詞によって理解の程度に差はあるか,[ 3 ] 日本語文法の知識から英語文法の知識に,どのような転移が見られるか,[ 4 ]英語文法の知識から日本語文法の知識に,どのような転移が見られるか,について実態を明らかにする。
著者
戸田 善治 澤田 典子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.267-276, 2018-03

[要約] 本稿では,西洋史研究における地中海世界の「古代」から「中世」への転換点と,世界史教科書の内容構成及び記述におけるそれの比較検討を行った。西洋史研究においては,「古代」と「中世」,そして「古代」から「中世」への転換点をめぐっては,多様な議論が繰り広げられてきた。また,現在発行されている6冊の世界史教科書における地中海世界の「古代」から「中世」への転換点に該当する部分を分析すると,3つに類型化することができ,その違いは,『平成21年版高等学校学習指導要領』の内容項目(3)イの「ビザンツ帝国と東ヨーロッパの動向,西ヨーロッパの封建社会の成立と変動に触れ,キリスト教とヨーロッパ世界の形成と展開の過程を把握させる。」という記述の後半部分を,「キリスト教とヨーロッパ世界の形成を把握させる」と解釈するか,「キリスト教とヨーロッパ世界の展開の過程を把握させる」と解釈するかによって生じることが明らかになった。
著者
戸田 善治 竹内 裕一 姜 雪婷 三浦 輔 宮田 知佳 山本 晴久 和田 敦実
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.133-143, 2013-03

本稿は,2011年度に社会科教育教室が開講した大学院授業「授業研究(社会)」における大学教員と大学院生の共同研究の報告である。日本政府は1990年に「入管法」を改正,すべての外国人を就労可・不可にはっきりと区別し,不法就労外国人に対する取り締まりを開始した。一方で,「定住者」資格を認めたブラジル・ペルー出身の日系人に就労を許可し,さらに「研修・実習」制度を中小企業にも活用しやすいように規制緩和し,事実上の就労を認め,この制度の目的が「途上国への技術移転,人材育成」であると一貫して主張してきた。これに対して,受け入れ企業は「単純労働力確保」,中国人実習生は「カネ稼ぎ」を目的とし,この両者間ではWIN-WINの関係にあり,日本政府のいう制度の目的とその運用実態には大きな乖離がある。そこで,この乖離状態に着目し,「外国人技能実習制度」の是非及びその改革案について考える授業を開発した。
著者
鈴木 宏子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.65, pp.494-490, 2017-03

[要約] 明治期に短詩型の革新を志した正岡子規は「歌よみに与ふる書」において、『古今和歌集』は「くだらぬ集」であり、紀貫之は「へたな歌よみ」であると痛罵した。この文章は、時代の文脈から切り離されて、現在に至るまで『古今集』のイメージに悪影響を及ぼしている。しかし子規自身の最晩年の歌の中にも、『古今集』的な「こころ」や「ことば」の伝統が色濃く感じられる例がある。このような近代短歌と古典和歌のあいだに存在する連続性を認識することから、文学や言語についてのより豊かな考察が可能になると考える。
著者
中澤 潤 中道 圭人 朝比奈 美佳 中道 圭人 ナカミチ ケイト Nakamichi Keito 朝比奈 美佳 アサヒナ ミカ Asahina Mika 古賀 彩 コガ アヤ Koga Aya
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.125-130, 2008-03

本研究では,音楽や造形の熟達者と非熟達者の幼少期の環境の違いを検討した。調査1(N =307)では音楽専攻の大学生と,調査2(N =216)では造形専攻の大学生と他の学問を専攻する大学生を比較した。その結果,音楽や造形に熟達している大学生は,そうでない大学生に比べ,幼少期の音楽や造形に関する物理的な環境や人的な環境が整っていたことが示された。さらに,物理的な環境より人的な環境が音楽や造形の熟達には影響している可能性が示された。This study examined differences between environments in young childhood of artistic expert and novice. Ex 1. (N=307) compared expert students in music with novice students, and Ex 2. (N=216) compared expert students in design art with novice students. These results showed that expert students had rich physical and human environments in young childhood more than novice students. In addition, human environments influenced expertise of music and design art more than physical environments.
著者
鈴木 宏子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.518-511, 2012-03

紀貫之は、最初の勅撰和歌集である『古今集』の編纂作業の中で多くの歌を収集し、またそれらの歌を理解し分類・配列することを通して、和歌についての知見を深めていった。そして得られた知見を自分の歌において確認し、『古今集』に随時反映させていったことは想像にかたくない。貫之は表現の〈型〉についてきわめて意識的な文学者であったが、そのような資質は歌集編纂作業の中で培われたものと見ることができる。先に稿者は歌集編纂の問題を念頭において『古今集』四季歌の表現分析を行なったが、本稿では恋歌をとりあげて、万葉相聞歌以来の〈型〉を継承する歌、『古今集』よみ人知らず歌の新たな動向を捉えた歌、紀貫之から始まる新しい〈型〉を用いた歌のそれぞれについて具体例を挙げて論じる。
著者
鈴木 宏子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.518-511, 2012-03

紀貫之は、最初の勅撰和歌集である『古今集』の編纂作業の中で多くの歌を収集し、またそれらの歌を理解し分類・配列することを通して、和歌についての知見を深めていった。そして得られた知見を自分の歌において確認し、『古今集』に随時反映させていったことは想像にかたくない。貫之は表現の〈型〉についてきわめて意識的な文学者であったが、そのような資質は歌集編纂作業の中で培われたものと見ることができる。先に稿者は歌集編纂の問題を念頭において『古今集』四季歌の表現分析を行なったが、本稿では恋歌をとりあげて、万葉相聞歌以来の〈型〉を継承する歌、『古今集』よみ人知らず歌の新たな動向を捉えた歌、紀貫之から始まる新しい〈型〉を用いた歌のそれぞれについて具体例を挙げて論じる。
著者
田中 久夫
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.p231-243, 1978-12
著者
花澤 寿
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.329-337, 2019-03

[要約] ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)は,進化論と神経生理学に基づき,Porges が提唱した自律神経系の適応反応に関する新しい理論である。この理論によると,哺乳類が獲得した新しい自律神経である腹側迷走神経と,それと連係協働する脳神経群が形成する腹側迷走神経複合体が,より原始的な自律神経(交感神経系,背側迷走神経系)をコントロールすることにより,最も適応的なストレス反応が可能になる。腹側迷走神経複合体が司るのは,人と人とのつながりと,安全・安心の感覚を結びつける社会的関わりシステムである。治療者と患者の関係性が重要な意味を持つ精神療法を,ポリヴェーガル理論を基礎において検討することにより,精神療法一般に共通する理論的基盤と実践的方法論が得られる可能性について考察した。
著者
飯塚 正明
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Chiba University (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
no.69, pp.307-310, 2021-03-01

[要約] 電気技術者の多くは,子供時代にラジオ製作から電気・電子技術に興味をもち,技術者の道に進んでいる者が少なくない。初めて作るラジオ教材は,AM ラジオである。これは,回路が簡単であることだけではなく,簡単な回路であることから,部品一つ一つが特性に影響をおよぼす回路であり,部品の改良と共に特性の改善が得られ,技術の核心に触れることが出来る。しかし,近年,このAM ラジオで受信可能なAM 放送の放送停止が進められている。我が国では,今日でもAM放送が続けられているが,すでに,海外では放送を停止した国もある。テレビ放送がアナログ放送から地上デジタル放送への変更にともない放送電波帯がVHF からUHF へと移動した。その結果,FM ラジオ放送の利用電波帯が広がり,ワイドFM となった。広がった電波帯にAM 放送と同じ放送が行われるようになり,FM ラジオだけで,FM 放送だけでなく,AM放送と同じ内容の受信も可能となった。これは,AM 放送電波帯の停止の可能性が高まったといえる。AM 放送が停止してしまうと,技術者育成のきっかけでもあるAM ラジオ教材が製作できなくなってしまう。本研究では,AM ラジオ教材にかわるFM ラジオ教材の検討を行った。FM ラジオでは,AM ラジオに比較し,復調回路が複雑である。AM ラジオでは,鉱石ラジオと呼ばれる無電源ラジオが作製教材の代表例である。無電源ラジオとして,FM 復調回路だけのラジオの検討を行った。筆者の環境では,電界強度が低く,放送の受信が出来ないため,増幅回路を検討した。回路が複雑なラジオでは,初心者の製作には困難であるため,トランジスタ1石で検討を行った。その結果,超再生方式のFM ラジオ回路であれば,増幅度を高くすることが可能であり,1石での回路が作製できることから,超再生FM ラジオ作製教材の検討を行った。
著者
久住 庄一郎 揚原 祥子 竹内 由紀子 原田 圭
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.363-372, 2018-03

[要約] 中学校や高等学校での音楽活動は,小学校におけるそれより格段に充実してくる。高等学校ともなれば身体的な発達も著しく,運動競技などと同様に,生徒の演奏能力は既に大人顔負けの場合も珍しくはない。ただ,それはほぼ部活動に限定された現象で,それ以外の生徒は小学校時代から音楽的スキルに大きな変化が無いのが実情ではないだろうか。これは個人差こそあれ,他の教科ではあまり考えられないケースであろう。本論文では,その原因を「ソルフェージュ教育の欠落」に見出した4人の教員養成に関わる教員が,様々な観点からその解決策を提言し,音楽的な本質をいかにして学校教育の中に見出していくべきかを論ずる。
著者
畑中 恒夫 小林 史尚 宮崎 隼人
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.349-353, 2008-03
被引用文献数
3

電化生活が進むにつれ,そこから発生する電磁波にさらされる機会が増え,電磁波の影響が心配されている。この電磁波が動物の学習行動に影響を及ぼす例が報告されているが,矛盾する報告もある。そこで,下等な昆虫のミツバチを用い,単純な連合学習である花の匂いと,蜜を吸う吻伸展反射の条件づけを行い,電磁波の影響を調べた。市販のマウス駆除器から出る複合された低周波の電磁波に曝露すると,連合学習の学習率が低下した。超低周波の電磁波は磁場成分が生体に作用すると考えられるので,50Hz,200Hz,300Hzの変動磁場に曝露すると,200Hzの変動磁場で学習率が低下し,超低周波電磁波は学習を阻害することがミツバチでも実証された。一方,定常強磁場下では学習率が増加し,磁場や超低周波電磁場はミツバチの磁気受容器を介して学習行動に影響する可能性が示唆された。
著者
妹尾 裕彦
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.63, pp.317-332, 2015-03

「近未来石油枯渇論」は石油および石油開発に関する基本的知識を欠いた誤謬であり,「人類にとって利用可能と見込みうる石油の総量」は非常に多い。また,石油採掘量の増加に貢献しているイノベーションを概観すれば,「人類にとって利用可能と見込みうる石油の総量」がさらに伸びる余地が十二分にあることがわかる。「近未来石油枯渇論」に基づいた文明縮小という選択は,単に不要なだけでなく,未来人に対して不遜であり,しかも倫理的にも大きな問題を孕んでいる。化石燃料に依存した現代文明は今後も長らく存続し続けられるが,そのためにはイノベーションが肝要である。
著者
三輪 寿二 根本 橘夫
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.21-41, 1994-02

本研究は, 表情と身体動作による感情の非言語的コミュニケーションに対する特性不安の影響を検討した。感情の次元については, 喜び・悲しみ・嫌悪・怒り・驚きの5つが使用された。特性不安はMASで測定した。特性不安の影響は, 表出者と認知者のそれぞれについて検討された。表出者は高・低の2群, 認知者は高・中・低の3群に分けられた。実験1では, 不安高・低8名ずつ計16名が被験者となり, 表出者の特性不安が, 非言語的表出行動に及ぼす影響が検討された。実験1における主要な結果は次の通りである。1.高不安者は, 低不安者より, 無意味な非接触動作の使用時間が長い。特に, 腕をふる動作の使用時間が長い。2.高不安者は, 悲しみ表出において, 低不安者より, 無意味な身体動作の頻度, 身体動作全体の頻度が少ないが, 無意味な身体動作の使用時間は長い。3.高不安者は, 怒り表出において, 低不安者より, 有意味な身体動作の頻度が少なく, 無意味な身体動作の使用時間が長い。特に, 無意味な身体接触動作の使用時間が長い。4.高不安者は, 低不安者より, 嫌悪の体験談を長く話す。実験2では, 実験1の表出者から, 高・低両群から4名ずつ計8名を表出群として構成した。さらに, 認知群として, 不安高・中・低の3群各14名ずつ計42名を構成した。これら, 表出群と認知群によってなされる感情の非言語的コミュニケーションについて検討した。実験2における主要な結果は次の通りである。1.高不安表出者は, 低不安表出者にくらべ, 喜び表出の強度を弱く認知される。2.高不安表出者は, 低不安表出者にくらべ, 悲しみ表出において, 正しく認知され, その強度を強く認知される。3.低不安表出者は, 高不安表出者にくらべ,
著者
久保 桂子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.275-282, 2009-03

本研究は,フルタイム共働き夫婦の家事分担に影響を与える物理的・意識的要因を明らかにするとともに,共働きをしながらも家事分担には抵抗を感じる夫の意識とさまざまな性役割意識との関連を明らかにする。分析には,2005年に行った共働きの夫婦調査を用い,そのうち,18歳未満の子どもを持つフルタイムの共働き夫婦を対象とした。主な結果は以下のとおりである。妻の年収が高いほど,夫の通勤・勤務の合計時間が短いほど,夫の家事分担度が高いことが明らかとなった。さらに,夫が家事を行うことに対する抵抗感について,夫が抵抗感を持っている場合も,妻が持っている場合もともに,夫の家事分担度が低い傾向にある。また,夫が家事をすることに抵抗を感じるという性役割意識は,女性への母親役割,妻役割を期待する意識と強く関連していることが明らかとなった。This study examines the factors concerning the division of housework between couples and the husband's gender role attitudes. I studied 895 full-time dual-earner couples with children under eighteen years old from a 2005 survey of dual-earner couples. This study shows that wives' high income is positively related to the husband's role in doing housework. Husbands' long working hours are negatively related to the husband's role in doing housework. In cases involving couples who think husbands must not cook or do the laundry, these cases are also negatively related to the husband's role in doing housework. The husband's gender role attitude that men must not cook or do the laundry is positively related to the husband's positive attitudes toward the mother's role and wife's role.