- 著者
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鴻巣 努
- 出版者
- 千葉工業大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2010
本研究では眼球運動計測により, 非漢字系孤立語の言語特性について考察した. タイ語読解においては,難易度の上昇により注視回数だけでなく,注視時間の増加が認められた.これは,日本語の傾向と異なっており,タイ語読解時では認知処理レベルが高くなる傾向が分かった.読解時の注視点分析より,タイ語には,日本語における漢字,英語におけるスペースなどの形態的に特徴を持った要素への注視は少なく, PSG(周辺探索誘導)が優位に機能している傾向は認められなかった.一方で,単語の末尾に存在するドーサコット(終末子音)に注視が集まる傾向が認められた.ドーサコットは,通常使われる子音と同じ形態で日本語や英語のように形態的特徴だけで通常子音かドーサコットかの区別ができない.視覚探索においては,CSG(認知探索誘導)を優位に働かせることが必要である. 一注視あたりの情報受容量は日本語やドイツ語のデータと比べて 20~30bits 程度多く,これはタイ語の認知特性に起因していると推察される.