著者
森田 啓行 永井 良三
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1349-1355, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
16

チーム医療推進のひとつの方策として,Nurse Practitioner/Physician assistant(NP/PA)をはじめとする「新しい」医療職種導入に関して議論されることが多くなってきた.しかしながらNP/PAがどのように位置づけられ,いかなる役割分担の下,医療行為をおこなっているか,ということに関する正確な理解は浸透していない.そこで我々はNP/PA発祥の地である米国に赴き,実際にNP/PAの勤務実態を視察し,NP/PAや管理者,医療スタッフのインタビューをおこなった.紹介されたデータ・文献などに基づき,米国のNP/PA制度の実態に関して本稿にまとめ,若干の考察を加える.チーム医療を推進するにはNP/PA制度導入は有効な手段のひとつと考えられ,現場のニーズ,役割分担と責任を議論することは大いにあってよい.法律整備による裁量権と責任の明記,養成教育システム・資格試験の制定,医療従事者と国民の理解などが課題になる.
著者
小林 久美子 ヌグラハ イ グスティ バグス バスカラ 森田 啓義
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.79, pp.43-48, 2009-06-04
被引用文献数
1

都市部において移動ノードが収集した情報を有効活用するため,情報を収集した場所に着目し,位置情報(緯度,経度)をキーとして,格子状のエリア毎に配置したステーションで管理する「位置に基づく情報の分散管理システム」を提案する.提案システムでは,エリア内は無線LANによるステーションと移動ノードのクライアント・サーバ型で,エリア間は有線LANによるステーション同士のP2Pで,通信を行う.エリア間P2Pネットワークでは,2次元の格子状エリアをトーラスと考え,緯度および経度方向の2つの1次元リングを用いた論理的ルーティングテーブル(フィンガーテーブル)を用いる.このフィンガーテーブルを参照することで,ステーションは位置情報に基づいて他エリアのステーションが管理する情報の検索や登録が可能となる.本稿では提案システムの基本シミュレーション評価結果を報告する.
著者
森田 啓介 黒木 裕鷹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会第二種研究会資料 (ISSN:24365556)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.FIN-031, pp.156-162, 2023-10-10 (Released:2023-10-12)

企業のガバナンスは経営の透明性やステークホルダーからの信頼と大きく関連する.コーポレートガバナンス・コードが,独立社外取締役の知見に基づいた助言に期待して,その選任を推奨する中で,一人の個人が複数企業の取締役および社外取締役を兼任するケースがある.取締役兼任ネットワークを分析した先行研究の多くは,ネットワーク中心性と企業の業績や情報開示の相関分析に焦点を当てている.しかし,同じ人物による異なる取締役会への参画によって,その人物の知見やノウハウが共有・伝播されるとすれば,接続の同類性やクラスター構造をはじめ,より複雑なネットワーク構造を捉えた分析が重要である.また,ネットワークデータを直接扱う機械学習技術の開発が進んできていることからも,兼任ネットワークにおいて,こうした豊富なネットワーク情報を考慮する意義を見定めることが必要である.本稿では,日本における兼任ネットワークの最近の動向を調査するとともに,条件付き一様グラフ検定と指数ランダムグラフモデル(ERGM)を適用し,ガバナンスとの関連が知られる諸指標の同類性(assortativity)を検証する.結果として,ベータや残差リスクは同類性をもつことがわかり,取締役の兼任によって企業間で知見が共有されている可能性が示唆された.取締役兼任ネットワークのもつ豊富な情報を活用して,ガバナンス構造の分析・予測を行う余地があると考えられる.
著者
森田 啓 片岡 暁夫 近藤 良享
出版者
Japan Society for the Philosophy of Sport and Physical Education
雑誌
体育・スポーツ哲学研究 (ISSN:09155104)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.25-43, 1998 (Released:2010-04-30)
参考文献数
48

The purpose of this study is to show that the sport world should choose the common good based on the dispute between liberalist and communitarian.Though the word liberalism is ambiguous, we define liberalism as the thought based on unencumbered selves (M. J. Sandel), which includes utilitarianism, deontological liberalism, or revisionist's liberalism. Needless to say, liberalism depends on civic virtues.Liberal democracy in this century destroys the civic virtues, so that liberalism reaches the extreme relativism which denies the past and present values and goodness and affirms the unlimited selfishness, especially economic one.In favor of communitarians' criticism, we agree with Sandel's contention of situated selves rather than ‘unencumbered selves’ and propose that we should make an effort to recover the common good in our society.Turning to the sport world, we have gradually swept away its original ethics such as sportsmanship, fair play and the mind of social relationship in England in 19th century. And now the sport world also accepts the tendency of the unlimited self-interest, especially economic one.The ethics of ordinary world has nothing to do with that of the sport world, but the latter bases on the former. In conclusion, we must note that the sport world should maintain the traditional common good because the ordinary world also needs to reinstate us in the common good.
著者
前田 達郎 松本 尚之 須藤 昌吉 中原 良樹 上野 邦明 中山 英 森田 啓介 丹羽 雄紀
雑誌
第79回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, no.1, pp.523-524, 2017-03-16

電力システム改革に伴う計画値同時同量制度の導入により、発電事業者は30分毎のゲートクローズ(需給計画の提出締切)やインバランス回避のために、定期点検等の運用上の制約のほか、気温等環境要因による発電能力の補正、燃料ガス導管の流量や燃料在庫管理等の複雑な制約も加味した緻密な発電計画を迅速に作成する必要がある。これらの制約のもとで、最大100台の発電機群の運転状態を決める大規模な最適化計算を、ヒューリスティック計算およびソルバー計算を併用することで、実用的な時間で解くことのできるハイブリッド最適化手法を東京電力フュエル&パワー株式会社と共同開発したので報告する。
著者
安部 力 森田 啓之
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.95-100, 2021 (Released:2021-04-15)
参考文献数
24

内耳(骨迷路)にある前庭系の末梢器官は耳石器と半規管で構成されている.耳石器(球形嚢と卵形嚢)は重力や頭位を,また半規管は回転加速度を認知する.これらの末梢器官は眼球運動(前庭動眼反射)や姿勢(前庭脊髄反射)を制御している.興味深いことに,末梢前庭器への刺激は交感神経を介した動脈血圧応答を引き起こすことも明らかになってきた(前庭動脈血圧反射).さらに,この応答性は重力環境変化による前庭系の可塑により低下することがわかってきた.本稿では,起立耐性に対する前庭動脈血圧反射の役割について説明する.また,高齢者や宇宙飛行士の前庭機能低下に対する末梢前庭器電気刺激法の可能性についても述べる.
著者
森田 啓 荒牧 亜衣 植木 陽治 深澤 浩洋
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.303-313, 2019
被引用文献数
2

The purpose of this research is to consider ways to encourage critical thinking in Philosophy of Physical Education and Sports classes. Introductory classes for students specializing in sports education were observed. Students reviewed a specific example in which a batter was given an intentional walk five consecutive times and they aimed to consider the case critically.<br> Right after watching the case on screen, students noted whether they agreed with such a practice or not. Then, 3 points were explained and students noted their opinion again.<br> The 3 points were;<br> (1) position of activities of sports clubs<br> (2) regarding it as a competitive sport<br> (3) regarding it as part of education (Physical Education)<br> In 4 years, 8 classes were held and 1,020 students participated in them. 118 of them (11.5%) changed their opinion after listening to the explanation. It must prove that those students were able to analyse even their own initial judgement critically and perceive it differently.<br> Furthermore, the following became clear from comments written after the classes:<br> By watching and using a specific example on screen, there is a possibility to eliminate/reduce negative images some people hold towards sports(P.E.) philosophy or philosophy. It also increases the possibility to engage students positively by introducing active learning of actually thinking and writing down their opinions.
著者
小島 亜有子 久保田 敏昭 森田 啓文 田原 昭彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1519-1522, 2008-09-15

要約 目的:ステロイドレスポンダーの臨床的特徴の報告。対象と方法:副腎皮質ステロイドの点眼または内服で眼圧が5mmHg以上上昇し,かつ25mmHg以上になった17症例をステロイドレスポンダーと定義した。7例は全身投与,10例では点眼が原因であった。男性9例,女性8例で,年齢は15~82歳(平均49歳)であった。診療録の記述からその特徴を検索した。結果:屈折は右眼-3.58±2.72D,左眼-3.50±2.58Dであった。ステロイド投与開始から最高眼圧に達するまでの期間は,全身投与群では9.8±13.5か月,点眼群では10.5±12.7か月であった。最高眼圧は全身投与群31.7±5.3mmHg,点眼群40.6±13.7mmHgであった。眼圧の上昇率は全身投与群143.0±103.1%,点眼群154.1±100.9%であった。すべての項目で投与方法による有意差はなかった。全身投与群では両眼の眼圧が上昇し,点眼群では点眼側の眼圧だけが上昇した。結論:ステロイド投与では,点眼だけでなく全身投与でも眼圧が上昇することがあり,かつ長期の経過観察が必要である。
著者
藤城 光弘 池田 祐一 熊谷 英敏 山下 裕玄 森田 啓行 浅岡 良成
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

Wntシグナル制御機構:R-spondin-LGR4/5/6-ZNRF3/RNF43系を標的とした 抗癌剤としてのR-spondin活性阻害剤、腸管粘膜再生促進剤としてのR-spondin代替え低分子化合物の同定を目指し、 低分子化合物ライブラリーをスクリーニングした。その結果、再現性を持ってR-spondin 阻害活性を有する化合物を60種類、R-spondin 様活性を有する化合物を1種類同定した。その後の解析により、R-spondin 様作用を有する化合物はZNRF3/RNF43を介して作用することが確認され、消化器疾患再生医療領域における有望な創薬シーズになりうることが示唆された。
著者
森 絵美 細谷 弓子 今井 靖 大橋 俊則 田澤 英克 馬渡 和真 森田 啓行 北森 武彦
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.461-468, 2015-06-05 (Released:2015-07-07)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

マイクロフルイディクス(微小流体工学)と熱レンズ顕微鏡を応用して酵素結合免疫測定(enzyme-linked immunosorbent assay: ELISA)をシステム化した新しい機能デバイス(μELISA)を開発した.μELISAは,これまでの研究成果で,ヒト血清でも優れた性能を発揮してきた.しかしながら,様々な患者検体でマイクロリットルオーダーの微量分析を行う場合には,患者ごとに異なる検体の成分組成や粘度の違いによる影響などが課題となる可能性がある.本研究では,測定対象とするマーカーをC反対性タンパク(CRP)として,実際の患者血清に対して考慮すべき測定条件を検討した.その結果,マイクロ流体系では検体に由来する影響があることが分かり,信頼性のある測定値を得るためには,緩衝液にて希釈をする必要があることが分かった.
著者
永井 良三 森田 啓行 前村 浩二
出版者
東京大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2001

血圧や心拍数など心血管系機能、あるいは心筋梗塞や冠動脈スパスムなどの疾患の発症時間には、明らかな日内変動が見られるが、その分子メカニズムは未だ解明されていない。最近、体内時計の分子メカニズムが急速に明らかにされ、CLOCK, BMAL1, PERIODなどの転写因子相互のpositive及びnegativeのfeedbackループから形成されていることが明らかになった。本研究は循環器疾患の日内変動が、心臓や血管に内在する体内時計により制御されているという全く新しい着想により遂行した。マウスをlight-darkサイクルで飼育した後、経時的に心臓や血管などの臓器を採取し、体内時計構成因子群の発現が日内変動をもっていることをNorthernブロット法にて確認した。さらに、血管内皮細胞、平滑筋細胞、心筋細胞の培養を行い、個々の培養細胞レベルで体内時計関連遺伝子の発現が概日リズムを呈することが示され、.心血管系を形成する細胞レベルで体内時計の存在が示された。心筋梗塞、不安定狭心症などの急性冠症侯群は早朝に多く発症し、その一因として線溶系抑制因子であるPAI-1の活性が日内変動を呈し、早朝に最高値になることが挙げられている。我々はさらに血管内皮細胞において、我々のクローニングしたCLIFとCLOCKがPAI-1遺伝子発現の日内変動を局所で調節していることを示した。以上の結果より末梢組織にも体内時計が存在し、局所に抽いてPAI-1遺伝子の発現を調節することにより、心筋梗塞発症の日内変動に寄与していることが示唆された。組織固有の日内リズム発生のメカニズムを理解することは、心筋梗塞や冠動脈スパスムなどの病態の理解を深めることにつながる。さらにそれは時間に即した治療法の開発にむすびつけることが期待される。
著者
森田 啓 西林 賢武
出版者
社団法人全国大学体育連合
雑誌
大学体育学 (ISSN:13491296)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.37-43, 2007-03-15

1990年代以降,大学で体育を行うことの根拠が問われている.本研究は,大学体育のFDに関する取り組みのひとつであり,オープンキャンパスにおいて,参加者および学内の他領域教員や職員に本学の体育のさまざまな試みを紹介することを目的とした体育科目の体験コーナーを設けたことにより,得られた成果を参加者の意識調査の結果を中心に検討したものである.オープンキャンパス参加者の意識調査は,本学オープンキャンパス参加者の中で,体育のブースを訪れてくれた人を対象に,アンケート用紙を用いて行った.ブースを訪れてくれた人には,フライングディスクの的あてを体験してもらい,体育の授業を紹介したパネルを読んでもらった.調査の結果,大学でも体育の授業があることを知らない者が60%いたが,大学でも必要と考える者は約90%いた.他領域の教員や職員に対する本学の体育紹介については,体育のブースを通りかかった教職員に声をかけて紹介を行った.オープンキャンパスに来ている教職員は,皆担当があって忙しくしていたため,感想を聞くことができた人はわずかであったが,多くの教職員にとって,大学の体育は「単に何かのスポーツを行っているだけ」「高校の繰り返しのような内容」と思われていたようで,本学の体育で取り組んでいるいくつかの新しい試みに興味・関心を示してくれる教職員もいた.今後も,本学で新しく試みた成果をきちんと公表し,さらに新しい試みを開始し,大学体育の必要性,重要性を提示していきたい.
著者
渡辺 裕文 中野 貫二 森田 啓義 阪田 省二郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.28, no.10, pp.1099-1102, 1987-10-15

フィリップスらの陰関数表現された曲面の交線を微分方程式の解として表す方法をテンソル積曲面に拡張して テンソル積曲面パッチの組で与えられた2つの曲面モデルの交線を数値的に算出するアルゴリズムを提案する.この方法では いったん交差パッチ対が求まれば初期点によらず交線上の1点が直ちに求められる.さらに交線から離れることなく交線上の相続く点を次々求めることができ しかも複数のパッチ対にわたり連続的に交線を求めることができる.なお この方法の簡単な適用例によってその有効性を確かめた.
著者
森田 啓
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本年度は、1年目からの継続で、実際に運動遊び指向を指導方針に置くクラブ(競技志向が比較的弱い)に所属するジュニア・ラグビー参加者を対象に調査活動を行った。調査の結果については、集計および分析を進め、近く公表する予定である。実際のプログラム作成の過程で、身体接触とともに、普段の日常生活では体験しない浮遊感覚を体験できるものとしてスノーボードに着目し、スノーボード体験者にも調査活動を実施した。本研究で着目した「キレ」の状態は、深層心理学では、日常生活とは異なるこころの状態(変性意識状態)のひとつと考え、この状態では無意識領域の働きが活性化し、私たちの日常の合理的な論法が通用しない独特な思考様式が浮かび上がるとする。「無意識の教育」のためには身体が直接感じる「感情」「感覚」を教材化、プログラム化することとなる。身体が直接感じる「感情」「感覚」は「無意識」の領域に属すると考えられるからである。本研究で行ってきた調査においては、これらを言語化し、他者との対話の中で浮かび上がらせることによって、「無意識の力」が存在することを考えるきっかけとなるよう工夫してきた。普段は意識できない、あるいは自分にはどうすることもできない「無意識」の領域があることが認識・理解できれば、次の段階、つまり「無意識」とうまく付き合うこと、それをいかにコントロールするかを考えることが可能となる。本研究において、他者との身体接触やスノーボードなどの体験においては、痛い、怖い、むかつくなどの否定的感情を喚起することが可能であり、経験をつむことによってこれらの感情を抑制したり、コントロールできる可能性が示唆された。今後は、実際にさらにデータを収集し、考察を進めていきたい。