著者
大澤 匡弘 粂 和彦 村山 正宜 祖父江 和哉 小山内 実
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

痛みは不快な情動を生み出す感覚刺激とされるが、心の状態が痛みの感受性にも影響を与える。本研究の成果から、慢性的に痛みがあると不快な情動を生み出す脳内神経回路が活性化していることを全脳イメージングの解析から明らかにできた。また、気持ちが落ち込んでいる状態(抑うつ状態)では、些細な刺激でも痛みとして認識されることが明らかになった。特に、前帯状回皮質と呼ばれる情動に関係が深い脳領域の活動が高まっていると痛みに対して過敏になることも示すことができた。これらのことから、難治化した痛みに対しては、情動面に配慮した治療法が有効であることが提唱できる。
著者
廣瀬 泰彦 郡 健二郎 安井 孝周 戸澤 啓一 岡田 淳志 濱本 周造 田口 和己
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

尿路結石は、疫学、形成機序、結石と石灰化の構成成分など、動脈硬化と類似点が多い。近年、酸素を直径100nm以下のガス核として、Salting-out現象により安定化させた機能水、酸素ナノバブル(Oxygen nano-bubbles: ONB)水の抗炎症効果が報告された。炎症や組織改変をともなう動脈硬化などの疾病の治療薬となる可能性をもつ。そこで、私たちは、結石形成モデル動物を用いて、酸素ナノバブル水の、尿路結石形成抑制効果を調べた。酸素ナノバブル水は、尿細管細胞障害を低下させ、シュウ酸カルシウム結晶の接着因子であるオステオポンチンとヒアルロン酸の腎での発現を抑制し、腎結石形成を抑制する。
著者
森田 明理 前田 晃
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

大規模分子疫学的調査:人種差による環境因子(喫煙、紫外線、大気汚染)に対する皮膚老化の差違(ドイツ・デュッセルドルフ大学環境医学研究所との共同研究)-JAGE project(JAGE=Study of extrinsic skin ageing of Japanese and German women)の疫学調査をすすめ、解析をすすめた。ドイツ人では早期にしわができやすく、日本人ではしみができやすいこと、しみに関しては大気汚染との関連が統計上明らかとなった。また、喫煙としわの関係が明らかとなった。JAGE2として、都市と郡部での皮膚老化に対する違いを検討する予定である。また、喫煙者のTH17が末梢血中に多いことが明らかとなり、乾癬、掌蹠膿疱症でTH17が末梢血中で上昇していることが明らかとなり、タバコ煙抽出液でTh17が誘導されることが明らかとなった。さらに、タバコの煙には3800以上の成分があるともいわれ、水溶性以外に水不溶性の成分が含まれる。その中には、Aryl hydrocarbon receptor(AhR)のシグナル伝達経路を活性化するものが含まれていることが推定されている。タバコ煙抽出液の水不溶性成分とAhRの関係を分析するために、ヘキサンに溶解するタバコの煙抽出液(ヘキサン抽出液)を作成し、培養人繊維芽細胞を使用した。ヘキサン抽出液は、AhRのシグナル伝達経路であることを示すチトクロームP1B1(CYP1B1)発現を有意に上昇させ、また有意にMMP-1発現誘導した。また、AhRノックダウンした細胞では、タバコ煙抽出液の添加で、MMP-1の上昇はなく、AhR経路の活性化によってMMP-1表現を誘導することを明らかとなった。このことは、タバコ煙がAhR経路を活性化することを示しただけでなく、AhR経路が、環境因子による皮膚老化に関与することを示唆するものである。
著者
岡本 秀貴 川口 洋平 永谷 祐子 浅井 清文
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

再生医療の分野では皮膚や骨、軟骨、網膜など比較的単純な組織では臨床応用が盛んになされている。爪や毛髪などの組織は一見単純な器官に思えるが、産生された硬性ケラチンを複雑な層状に重ねてさらに緻密な硬組織と成してそれを秩序的に一定方向に伸長させていくという非常に複雑な働きがある。本研究によって爪母細胞の元となる再生能力の高い爪幹細胞を発見できれば爪再生の研究は飛躍的に発展すると予想される。本研究期間内に1)爪組織の器官培養法の確立2)爪幹細胞の存在部位同定とその培養3)組織工学的手法を応用しての爪再生を明らかにする
著者
小酒井 亮太
出版者
名古屋市立大学
巻号頁・発行日
2016-03-25

平成27年度
著者
御供 泰治
出版者
名古屋市立大学
雑誌
名古屋市立大学看護学部紀要 (ISSN:13464132)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.103-104, 2001-03

石原英子先生がこの度平成13年3月31日をもちまして,定年ご退職される運びとなりました。先生には平成4年4月に薬学部より,本学部の前身である名古屋市立大学看護短期大学部へ教授としてご着任になられて以来,看護短期大学部の7年間と看護学部の2年間計9年間にわたり,看護学の教育と研究に尽力してこられました。そもそも先生はそれ以前すでに,昭和29年4月に名古屋市立大学薬学部にご入学以来,平成4年3月まで実に38年の長きにわたり,田辺キャンパスにてご活躍になっておられました。そんな石原先生をご着任以前に,われわれが身近に感じたエピソードがございます。それは昭和63年4月に看護短期大学部が開設してからわずか4年後に,当時の化学と生化学を担当しておられた高橋禮子教授が,定年退職者第一号になられました。開設後まだ日も浅く,本学教員の退職記念事業に関するルールや慣習もなく,内部ではどうしたらいいものかと考えあぐねておりました時点で,高橋先生の当時の研究者仲間であられた,分子医学研究所の(故)加藤泰治教授と医学部細菌学の安田陽子助教授(本学非常勤講師兼担)と,薬学部の助教授をしておられた石原先生の三人が,いち早くご準備を進めておられることが判明しまして,われわれはお願いしてそれに便乗する形をとらせて頂いたお陰で,何とか面目を保つことができました。先生はご母堂や叔母上が教師をしておられた関係で,女性の進学に関しては恵まれた環境におありでしたが,受験に際して特に薬学分野に興味を持ったり,薬剤師に憧れたというわけではなかったそうです。4年生になり就職先もすでに決まっていた学生生活最後の夏休みに入り,衛生化学教室の募集した環境衛生に関するアルバイトになんとなく応募したのがきっかけで,現在の研究者への道をスタートされたとお聞きしています。当初は,(故)石坂音治名誉教授のもとで11年間にわたり公害対策に関する最先端の勉強をされ,その後は手島節三教授(現名誉教授)のもとで糖質に関する解析の研究に従事されました。そして,昭和51年には「脂質分解酵素に関する研究」で薬学博士の称号を受けておられます。その他に「オリゴ糖の分析法」や「天然着色料の生理的条件下での分解」,さらには「インフルエンザウイルスの細胞内増殖を規定する糖鎖の構造解析」などの研究をされ,衛生化学の分野でこれまで多くの業績を残してこられました。その間には,昭和36年愛知県薬剤師会奨励賞,昭和59年には三島海雲記念財団学術奨励賞などを受賞され,平成3年には中埜研究奨励会助成金,平成4年には医科学応用研究財団助成金を受けておられます。また,名市大医学部第一生化学教室やウイルス学教室,名城大学薬学部臨床生化学教室や衛生化学教室などとの共同研究を通して,高橋礼子先生や信澤枝里先生など実に広い人脈をお持ちです。先生の薬学部当時に,衛生化学教室や各種委員会の運営上先生が極めて貴重な存在であり,手島節三教授が敬服されているというお噂を,周りの方々から何度も耳にする事がありました。この事はその後縁あって先生に看護の世界へきて頂き,実際身近に接してみてわれわれ自身が実感してまいりました。教授会や委員会で物事や議論が停滞したり,はたまた暗礁に乗り上げたりした時など,先生の発案や一言によってその後うまく展開していくことが,これまで何度あったことか知れません。看護短期大学部時代には研究紀要委員会委員長や図書室運営委員会委員長を努められ,学部の運営に多大の貢献をされました。また看護学部設立準備の時期におきましては,入学試験専門部会の部会長としてご活躍されましたことは,特筆すべきものと思われます。平成11年4月の看護学部発足と同時に,今度は大学評議員として名市大全体の運営にも参画され,さらに大学制度検討委員会では,より良い教養教育のあり方を求めてご活躍になってこられました。なかでも平成12年は本学の開学50周年の年に当たり,その記念事業検討委員会の主要メンバーの一人として,式典・講演会など成功裡に治められたことは,まだわれわれの記憶に新しいところであります。教育面におきましては,大勢の学生を一人で担当する困難な条件にもかかわらず,以前の専門学校における教育とは異なった,大学における看護教育の中での化学の実験として,pHメーターの使用法の把握などを導入したり,助産学専攻科学生の卒業研究論文の作成指導に当たっては,教授の厳しさと母のやさしさで学生に接し,誰からも慕われてこられました。一方,学外におきましては,日本薬学会・日本生化学会・日本糖質学会・社会薬学研究会・日本食品化学学会・日本食品衛生学会・日本母性衛生学会・愛知県母性衛生学会の各会員として,実に多くの学会発表や原著論文を出され,大いにご活躍をなさいました。
著者
日沖 敦子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
no.10, pp.338-332, 2008-12

国立歴史民俗博物館蔵『久修園院縁起』(写本一冊)、および、福岡県八女郡大光寺蔵『飛形山大光寺縁起』(写本一冊)の二種の寺社縁起を翻刻紹介する。いずれも、藤原山蔭関連の寺社縁起である。藤原山蔭の説話・伝承を踏まえ、本尊の由来を説いた寺社縁起は複数確認でき、未紹介のものも少なからず存在する。近世前期には縁起絵巻も制作されており、本誌第四号では、大阪府茨木市常称寺が所蔵する『総持寺縁起絵巻』を紹介した。また、第七号では、天理大学附属天理図書館が所蔵する『新長谷寺縁起』を紹介した。今回紹介する、『久修園院縁起』は、かつて星田公一氏により紹介されたもの(『久修園院所蔵本カ)であるが、国立歴史博物館蔵本とは、若干字句に異同があり、『飛形山大光寺縁起』と併せて翻刻することにした。『飛形山大光寺縁起』は近世中期のものであるが、未紹介の寺社縁起である。内容の詳細については、後稿に記したい。
著者
谷口 幸代
出版者
名古屋市立大学
雑誌
名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
no.10, pp.354-340, 2008-12

大正七年自費出版の『愛の詩集』、『抒情小曲集』が認められ、室生犀星は詩壇に登場した。そして長い放浪生活から抜け出て、東京に居を構える。新進詩人はその翌年に「中央公論」に投稿した『幼年時代』など三作が認められ、一躍、文壇に登場した。以後、詩、俳句、短歌、小説、随筆、童話と、多岐にわたる足跡を残すことになる。その犀星の十五冊の日記は現在、新潮社版の全集別巻一、二に収められている。日記には原稿料や印税がそのつど丹念に書き込まれており、昭和時代の一部には原稿料を受取るまでの経過や交渉の事情まで書き留めているものもある。この原稿料授受の記録を注解しながら、筆一本の売文生活の実態と文士気質を明らかにすることが、小稿の目的である。犀星が文壇に登場した大正時代は、新聞の発行部数が飛躍的に増え、雑誌界では各種の女性誌が次々に創刊され、原稿料が飛躍的に上がった時である。総合雑誌の「中央公論」と「改造」というライバル雑誌での犀星の評価は原稿料ではかることができるほどである。昭和時代は円本ブームで始まり、戦時中に戦費調達のため源泉徴収制度が施行され、昭和二十年代は、敗戦直後の物資不足と激しいインフレによる原稿料の急騰、新円発行の金融緊急措置令による不況のため、支払の遅延や未払いの様が書き込まれている。昭和三十年代の週刊誌ブームの頃、創刊間もない「週刊新潮」の目玉だった谷崎潤一郎『鴨東綺譚』がモデル問題で中絶したとき、ピンチヒッターとして立ったのが犀星だった。円地文子は「原稿を書くことは文学者の生命なのだから、それによつて得る報酬もなおざりに考えてはいけないというお考えだつた」と回想する。
著者
成田 徹男
出版者
名古屋市立大学
雑誌
名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
no.11, pp.145-154, 2009-06

本稿では、明治期以降の日本語資料において、カタカナの占める位置は、どのようなものか、ということをみるために、手始めとして夏目漱石の『坊ちゃん』を対象とし、漱石が、『坊ちゃん』という作品の表現手段のひとつとして、カタカナをどうつかったか、あるいはどうつかおうとしたかを考える。全体の構成は次のようである。「0.はじめに 1.『坊ちゃん』のカタカナ表記語 2.語種と、表記の字種との関係1-外来語の、表記の字種(以上前稿「その1」)」以下、3.語種と、表記の字種との関係2-和語の、表記の字種4.「笑い」について5.漱石の表記態度6.おわりにが、本稿「その2」の対象部分である。「3.語種と、表記の字種との関係2-和語の、表記の字種」では、和語として分類したカタカナ表記語のうち、「生き物:バッタ、ゴルキ、イナゴ、モモンガー(4語)」について、カタカナ表記されている理由を、読みやすい漢字表記がないこと、などと推測した。また、擬態語や和語の畳語は原則としてカタカナ表記されないこと、擬音語にもひらがな表記の例が多いことを指摘し、笑い声を除く擬音語について、カタカナ表記されている理由を、高い鋭い音が意識されているためではないかと考えた。「4.「笑い」について」では、「アハハハ」は山嵐、「エヘヘヘ」は野だいこ、「ホホホホ」は赤シャツというように、笑い声の特定のカタカナ表記が、主要な登場人物につかわれ、その人物の性格描写と関連していることを指摘した。「5.漱石の表記態度」では、語種を基準とした機械的な文字のつかいわけはしていない、という点と、和語のカタカナ表記は、かなり意図的なものである可能性が高い、という点を指摘した。漱石の表記態度には、現代の日本語話者の表記態度に通じるものがある、と考えられる。
著者
木村 和哲 前田 康博 堀田 祐志 佐々木 昌一 片岡 智哉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2005年に男性型脱毛症治療薬のフィナステリド、2009年に前立腺肥大症治療薬のデュタステリドが承認された。これらの薬剤は5α還元酵素を阻害する薬剤であり、これまでの報告によると5α還元酵素阻害剤服用患者で勃起障害(ED)の副作用が見られたことを報告されている。EDと同様の機序で動脈硬化が進行することが知られており、本研究では5α還元酵素阻害剤による心血管機能への副作用を検討した。ラットにデュタステリドを連日投与したところ、4週後および8週後の時点でEDを発症した。一方、大動脈を用いて血管内皮機能を薬理学的に評価したところいずれの期間においてもデュタステリド投与による変化は観察されなかった。
著者
楢崎 洋一郎
出版者
名古屋市立大学
雑誌
名古屋市立大学大学院人間文化研究科人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
no.9, pp.53-67, 2008-06

生徒の教育記録の開示に関する従来の議論では、教育の理論と実践に根ざす議論があまりなされないまま、個人情報保護条例に基づく全部開示の流れが強まった。しかし、学校・教員が児童生徒に適切な指導や公正な入試を行いたいならば、事実や評価を正確かつ適切に記載するとともに、知らせるべきでない評価は不開示にすべきである。そこで、裁判例を素材に、評価の性質を教育学の観点から捉え直した上で、文書、項目および記載内容の不開示事由該当性を検討した。第一に、指導要録は、児童生徒の発達段階や在学関係、文書や評価の性質を検討した。請求者が在学児童生徒の場合、(1)事実および知らされている評価については開示、(2)学習評価のうち、目標準拠評価は開示、個j人内評価は教員の説明を補って開示、絶対評価と相対評価は不開示、(3)人物評価のうち、個人内評価は教員の説明を補って開示、絶対評価は不開示とすべきである。請求者が卒業生の場合は、(1)事実、(2)学習評価については不開示事由に該当しないが、(3)人物評価のうち、絶対評価は教員の説明を補って開示、個人内評価は開示とすべきである。請求者が保護者の場合は、すべての記載について教員の説明を補って開示とすべきである。第二に、調査書は、開示制度の有無と開示の時期を検討した。(1)事実および知らされている評価については開示、(2)知らされていない評価は、合否発表前ならば不開示、合否発表後ならば開示とすべきである。
著者
堀場 充哉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2021-04-01

脳卒中後の運動機能や高次脳機能障害に関連する脳領域を評価するとともに、これら関連領域に対して、非侵襲的刺激法の一つである経頭蓋交流電気刺激法(皮膚上から微弱な交流電気刺激を行う方法)を用いたリハビリテーションを実施する。脳卒中の一般的な機能評価およびMRIを用いた脳内のネットワークの変化を収集、解析し、経頭蓋交流電気刺激法を用いたリハビリテーションの効果、回復に寄与する神経基盤について検討する。
著者
土屋 周平 黒田 健介 加藤 伸一郎 本田 雅規 渋谷 恭之
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

インプラント治療においてオッセオインテグレーションは必須の現象であるにもかかわらず、その分子メカニズムは明らかにされていない。一方、オッセオインテグレーションを獲得したチタンと骨の界面にある糖鎖はチタン上の石灰化や生体適合性などに影響を与え、オッセオインテグレーション獲得に重要な役割を果たしていると考えられる。本研究の目的は、チタンと骨のPGs層に含まれる糖鎖がオッセオインテグレーションにおける機能を分子生物学的手法で明らかにすることである。その結果、糖鎖を利用した分子マーカーを同定することにより、チタン製インプラント治療の検査項目の開発や成功率の高いインプラント製品の開発を最終目的とする。