著者
中村 精一
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

抗腫瘍性サポニン・シラシロシド類の全合成に向け、CDE環部の立体選択的な合成を行った。分子内O-H挿入反応と続くオレフィン化により生じたジヒドロフランカルボン酸エステルを用いてIreland-Claisen転位を行うと、望みの異性体が立体選択的に得られることを見出した。生成物に対し、分子内1,3-双極付加環化反応によるD環構築、シクロプロパン化を経る核間位へのメチル基導入を行い、目的フラグメントの合成を達成した。また、転位の際の立体化学制御に隣接位の置換様式が重要な役割を果たしていることを明らかにし、酸化型テルペノイド合成に利用可能なキラル合成素子2種を立体選択的に得る方法を確立した。
著者
山田 美香 水野 恵子 有賀 克明
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.117-132, 2006-06-24

本研究は、台湾・台北の多様な幼児教育機関への訪問を踏まえ、これら幼児教育機関の保育者へのインタビューや関連行政機関担当者へのインタビューをまとめたものである。これらの調査から明らかになったのは、日本以上に抜本的な改革が行われていることであった。しかし日本とは違い、NPOや母親の有志が国や地方自治体を大きく動かすような状況、民間と公的機関の連携もほとんどみられなかった。幼稚園、託児所が多様化しているが、強力な政府主導型による託児所・幼稚園行政が行われていた。2004年11月の段階で、幼保一元化など、これまで幼稚園、託児所と大きく二分されていた就学前教育のあり方にメスが入った。政治的・財政的要因があるにせよ、改革は受益者である子どもの権利を尊重することにあると明確に原理原則を打ち出している点は傾聴に値する。台湾では、日本に比べ、急激に子どもを取り巻く環境、子どもの減少など大きな変化が訪れ、その対応に追われつつも、自由競争の中で効率的な質の高い幼児教育・保育を真摯に求める姿が見られた。
著者
設楽 将之
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

胸腺扁平上皮癌12例に対して、次世代シーケンサーを用いたターゲットシーケンスによって、癌関連409遺伝子の網羅的解析を行った。Ingenuity Variant Analysis、SHIFT、PolyPhen-2、PROVEANによってフィルタリングを行い、胸腺癌10例から24遺伝子、25変異が候補遺伝子変異として決定された。明らかな胸腺癌に共通する遺伝子変異は認めなかったが、個々の症例においてKIT, DDR2, PDGFRA, ROS1, IGF1Rなどのチロシンキナーゼ遺伝子に変異を認めた。
著者
中村 恵子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、虚弱高齢者の生活空間の拡充に向け人的・情報的ネットウークモデルを開発することを目的としており、2年目にあたる平成22年度は次の調査・検討とモデル作成にむけた準備を行った。1.調査の実施;「虚弱高齢者の生活空間とソーシャルネットワークの特性」の検討虚弱高齢者の生活空間の特性を明らかにするため、平成19年に初回調査を行ったA県郊外在住の虚弱高齢者61名を対象に3年後の追跡調査と横断調査を実施した(4月~8月)。追跡調査が可能であった高齢者は39名(男性7名、女性32名、平均年齢84.5±6.3歳)であり、調査不可能の高齢者22名の内訳は死亡8名、入院・入所3名、認知症4名、体調不良2名、転居1名、音信不通・調査拒否4名であった。結果、虚弱高齢者の生活空間は、life-space assessment (LSA)を調査したところ平均26点であり、活動範囲は自宅から平均半径631mであった。3年間で高齢者の生活機能(老研式活動能力指標)は平均8.0点から5.0点へと有意に低下しており、一週間における交流日数には変化がなかったが、外出日数は平均5.6日から4.6日へと有意に減少していた。またソーシャルサポートして連絡を取り合う親戚と近隣の人数も有意に低下していた。以上から、虚弱高齢者の生活空間は自宅を中心とした狭い範囲となっており、加齢に伴う生活機能の低下とともに外出日数やソーシャルサポートの縮小が示唆されたため、この特性を踏まえた支援や環境整備の検討が必要である。2.ネットワークモデル作成にむけた準備22年度はモデル地区のアセスメントを継続しており、モデル作成にむけた協力機関や協力者の体制を整えている段階である。
著者
中村 元樹 森田 明理 杉浦 真弓 山口 裕史 西田 絵美 加藤 裕史 古橋 卓也 鳥居 寛 Fukunaga-Kalabis Mizuho 水野 俊彦
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

4箇所の胎児皮膚(頭部、背部、腹部、足底、胎生13週~22週、計36体)をHMB45, MITFなど各種抗体で免疫染色し、胎生期におけるメラノサイトの遊走過程を解明した。有毛部皮膚では、メラノサイトは胎生12から15週に、これから毛芽が形成される表皮基底層に存在し、足底皮膚では胎生早期、汗管形成以前にメラノサイトが汗管発生部位に到達し、汗管の伸長と共に深く入っていくことを明らかにした。エクリン汗腺にメラノサイト幹細胞が存在するとする近年の報告を裏付けるものであり、ヒトでの研究は初めてである。
著者
宮治 眞 長尾 正崇 藤原 奈佳子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

次の視点より検討した。1.判例データベースを用いて、35年間の最高裁判決から医療訴訟における事例を17例(医療側勝訴3例、医療側敗訴14例)抽出した。これを今回考案した1事例1頁の一覧性をもつフォーマットに要約し、事故防止を考慮した類型化を試みた。その結果、病状の進行が凡そ1ヶ月未満で比較的急性に進展する病態においては、慢性に経過した病態とくらべて、診療早期の「観察」による誤りや、その当時の医療慣行に従って診療することが、判断の誤りに基づく誤行為を招きやすい傾向であった。2.患者側の真摯な訴えはコメディカルスタッフにもインフォームドコンセントが適応されるべき課題か否かを検討した。その結果、コメディカルスタッフをどこまでの職種とするかについて、大きな差がみられた。3.病院の立地条件やコメディカルスタッフのインフォームドコンセントまで広げると、地域医療における医療管理も視野に入れる必要が考慮された。NPO法人「たすけあい」名古屋が地域に根付く過程を検討した。4.地域医療連携を視野にいれて、病院医療の立場から患者の安全をどのように担保していくかについて、本院の電子カルテシステムを日本医療機能評価機構の自己調査評価票に基づいて検討した。その結果、患者の安全医療の観点から電子カルテシステムをもっと見直すべきであること、システムの機能を拡大していくことが確認できた。以上を総括すると、「安全の医療」「安心の医療」「満足の医療」を「安全の生活」「安心の生活」「満足の生活」へ還元すべきことが示された。このことの基準は最終的には法律によって規定されるべきであると思われた。しかし、患者の真摯な訴えに代表される患者側の要請は、価値観を包含しており、法律と倫理の狭間の問題ともいえる。したがって、医療管理からみた場合、医療側が患者側の求める「満足の医療」「満足の生活」の垣根をどこまで共有できるかは、次の課題である。
著者
吉田 一彦 上島 享 脊古 真哉 佐藤 文子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究では、日本の神仏習合の成立と展開について考察し、それを日本一国史の中で内在的に理解するのではなく、アジア東部における仏教と神信仰の融合の中で考え、この地域の宗教文化の中に日本の神仏習合を位置づける作業を行なった。この視座から以下の点を明らかにした。①『日本書紀』に記される仏教と神信仰の対立の話は創作性が高く、歴史的事実を伝えるものとは評価できない。②比叡山、白山などの神仏習合の聖山は、中国の神仏融合の聖山である天台山や五臺山の強い影響を受けて成立した。③「本地」の思想は真言宗の護持僧によって考え出されたもので、日本の「本地垂迹説」は11世紀前半に成立した。
著者
大村 いづみ
出版者
名古屋市立大学
雑誌
名古屋市立大学看護学部紀要 (ISSN:13464132)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.23-29, 2003-03
被引用文献数
5

妊娠初期から産褥期までの母親意識(母親役割の受容、子どもへの感情)と抑うつ状態の変化および両者の関連について分析することを目的に、正常な妊褥婦52例を対象に質問紙調査を行った。母親役割の受容については、全般に積極性得点が高く、消極性得点は低かった。積極性得点は妊娠末期にやや低下する傾向があり、消極性得点は妊娠末期から産褥期にかけて高くなっていた。子どもに対する感情では、子どもの人格性の意識と密着の得点が他よりも高かった。また、Zungスコアの平均から見て軽度から中度の抑うつ状態にあると考えられた。時期別には、妊娠末期にZungスコアが高く、産褥期には低下していた。しかしながら、母親意識、抑うつ状態とも妊娠時期による統計的有意差は認められなかった。一方、積極性得点と抑うつ状態との間(r=-0.47)、また、子どもへの献身得点と抑うつ状態との間(r=-0.41)には相関が認められた。このことから、母親意識と抑うつ状態との間には関連があると考えられた。この点を中心に今後、さらに対象例数の増加、同一対象の縦断的追跡など、検討が必要である。
著者
吉村 公夫
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.31-39, 2004-01-10

本稿では、社会的制度、活動である社会福祉が対象とするもの、生活問題となづけられているが、まずその生活問題という規定の系譜をあげ、その中で、以前取り上げた一番ヶ瀬康子による生活問題規定を引き継いでいると考えられる、副田義也の生活問題論を検討し、次に、その副田の論考を引き継いでいると見なされる、古川孝順による生活問題規定を考察する。副田は、一番ヶ瀬の生活問題規定が労働力を中心に規定されていることに不足を感じ、生活そのものの検討と、それには社会学研究で盛んになっている生活構造論が有効ではないかと提案している。古川は研究方法に関しての、この副田の提案を受け取り、生活問題規定に進んだ。先行研究としては、一番ヶ瀬の他に、岡村重夫、三浦文夫の研究を踏まえ、生活問題の成立、経路、類型の内容の検討、説明に挑んだ。生活危険、生活不能、生活障害、さらに生活基盤の障害、生活能力の障害、生活関係の障害、生活環境の障害と詳細な生活問題類型を提示した。 しかし、それぞれの類型の具体例があげられたが、詳細になった点とそれぞれの問題成立の説明が判然としなく、現象列記の印象をあたえている。
著者
韓 宝 岡田 広司
出版者
名古屋市立大学
雑誌
オイコノミカ (ISSN:03891364)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.121-137, 2007-03-01
著者
谷口 幸代
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

大正期の野村胡堂は、『報知新聞』文芸欄で、記事の執筆、新聞小説の企画などの編集作業、自らが連載読物を書く創作、と多彩に活動した。胡堂は,記者や学芸部長の活動を通して把握した文壇の動向と読者の好みに基づき、新聞小説において、新しい書き手の充実、作品の質の向上、既成の枠組みに囚われない新しい分野の開拓をめざした。大正期に始まった輪転機印刷の普及による激烈な発行部数競争を背景に、胡堂は純粋芸術とは別の新聞小説というジャンルを切り開いた。このことは『報知新聞』に森鴎外や芥川龍之介の作品が掲載されなかった理由を考える手掛かりとなり得る。
著者
土屋 勝彦
出版者
名古屋市立大学
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.67-82, 2004-01-10

多和田葉子の文学は、言語表現への不可能性を表明しつつ、それでもなお不可視のものの言語化を試みようとする脱領域化ないしは越境的な言語空間の創造に向かう。ドイツと日本の両言語文化のエートスから逃れ、それらの中間地帯に独自の「民俗語的詩学」を構築しようとするのである。『無精卵』では、語り手の視線の変容によって幻視される事物の変貌を語りつつ、分身からの身体的な逆襲による自己否定を通して、語り自体が否定される。『飛魂』では、意味性(シニフィエ)と表象性(シニフィアン)の変転と循環のプロセスにおいて、音声映像の言霊の力が発揮され、表象文字の映像化が身体の言語として発現する。ここには言語遊戯と言語実験の中から生まれる新たな言語表現構築への強い志向が一貫して見られる。異質で奇矯なイメージの衝突によって想起される文学空間は、夢と現実の狭間に浮かぶ幻視の反物語であり、世界の認識不能性を示す。国民文化に還元されえない、語りえぬ中間地帯への絶望的な志向性こそ、越境文学の持つ宿命的なデラシネのパトスを支えるものに他ならない。
著者
平嶋 尚英
出版者
名古屋市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

マスト細胞は炎症性メディエーターを放出して、アレルギー反応において重要な役割を果たしている。このメディエーターの開口放出は細胞内Ca2+濃度上昇によって誘導される。Ca2+流入は主にCRACチャネルを介したストア作動性Ca2+流入である。CRACチャネルのひとつであるOraiには3つのアイソフォームがあるが、我々は、Orai-2が主に分泌顆粒に局在することを見出した。Ora-2をノックダウンすると、細胞内Ca2+ストアからのCa2+放出が抑制され、また脱顆粒も抑制された。マスト細胞では、Orai-2は細胞内Ca2+ストアからのCa2+放出に影響して、脱顆粒を制御している。
著者
橋本 佳明 山本 浩 岡野 節 梅田 芳郎 宮原 孝夫 小島 誠
出版者
名古屋市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

線型微分方程式のコ-シ-問題とグルサ-問題に対して、その係数とデ-タがあるジェブレ族に入るとき、どの様な条件があれば解がどのジェブレ族に入るかという問題について考えた。常微分方程式についてはマルグランジュ、ラミス、ジェラ-ル等が解いた。特にラミスはその条件を幾何学的な条件であるニュ-トン多角形の辺の傾きの条件で求めた。偏微分方程式に対しては米村氏、三宅紙の結果があるが、橋本はこの三宅氏の結果を三宅氏との共同研究で負のジェブレ指数をもつ族までこめた結果に拡張した。そしてそれを名古屋大学教養部数学教室で出しているプレプリントシリ-ズに出した。これらの文献調調査にあたり、名市大の岩橋、宮原、梅田、岡野の各氏に協力をお願いした。また論文を書くにあたり、数学論文清書用のソフトAMSーTEXとそのテキストファイルを作るためのワ-プロソフト一太郎を使うに当たり、名市大の小島、山本各氏に協力して頂いた。この研究の歴史的背景を詳しく調べるために3月12日、13日に名市大で研究集会を行ない、上智大の田原さん、東京大の石村さんに講師をお願いした。小人数の研究集会であったが、時間をゆったりとったため、有効に討議が出来た。田原氏は三宅ー橋本の結果との関連も深く、歴史特にジェラ-ル氏との共同研究の結果のマイエの定理について詳しく話してもらった。もう一人の石村氏はこの科研費のテ-マとの関連で、その方法が利用出来ないか、数値解析が出来ないかという点、参考となった。なおこの研究集会の記録はノ-トにまとめ、参加出来なかった近隣の方に配布する予定で、その資料整理、研究集会の補助にバイトを依頼した。