著者
我妻 美奈子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.271-281, 2000-03

民族衣裳の和服は年々晴着とよそいきにしか和服を着装して歩いている人達を見かけなくなって来ている。普段着としてのウールアンサンブル等着ている人は少なく,紬なども普段着として着ている人が少ない。和服を着るのは成人式の振袖,卒業式の袴などは多くの人達が着ている。前に礼装として男性の普段着,ゆかた及び羽織・袴の青年と老年の体型を検討したので,今回は青年女性の普段着,袴,羽織・袴・コート及び老年女性の普段着,喪服(夏),喪服(冬)と袴を着装した時の体型を検討したのでここに報告する。実験方法は坂本元一氏が考案した計測器を使用した。5趾他5箇所,すなわち片足を10区分して両蹠面20箇所を,1秒間計測する。足型は足の足面を分類すると1∿10が左足で11∿20が右足である。素足で各自の足型に合わせ,開眼起立で直立5秒後より測定を開始,30秒間で終る。体型についてはデーターによって体型が分けられる。体型は足圧分布を4区画に分ける。左側前方,1区画,右側前方,2区画,左側後方,3区画,右側,4区画である。F_1 : は前方に足圧が多くかかる。F_2 : 後方に足圧が多くかかる。F_3 : 左側に足圧が多くかかる。F_4 : 右側に足圧が多くかかる。F_5 : 左前側と右後側に足圧が多くかかる。F_6 : 左後側と右前側に足圧が多くかかる。足圧分布によって体型を青年女性と老年女性の和服着装時の体型を検討したので報告する。
著者
佐藤 まゆみ
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.60, pp.97-108, 2019-03-31

本研究は、市町村を中心とする子ども家庭福祉の実施体制構築の必要性について、特に子どものレジリ エンスとそれを支える環境の1つとして社会的親に着目し、子ども家庭福祉を取り巻く現状を踏まえ、文 献研究に基づいて子どもの立場から理論的に検討することを目的とした。 その結果、現状からは、単相的育児の中で育つ子どもにとって、大人たちとの関わりの少なさはモデル の獲得や多様な人間関係、社会性の発達等の機会を乏しくさせていることが明らかになった。逆境にさら されても良好に適応する力であるレジリエンスは、「生涯を通して必要なもの」 であり、個人の生得的な 心の特性にのみよるものでなく、外的特性もあいまって 「支えられる」 ものである。そのため地域の中に 大人とのつながりを作ることが、子どものレジリエンスを支える環境となると考えられた。また、要保護 児童に限らず、地域で生活する子どもの中にも、親の離婚をはじめとするあいまいな喪失を体験する子ど もがおり、一生にわたり向き合う可能性があることから、レジリエンスは特に必要であることが明らかに なり、その力となるものの中には新しい関係性によるものが含まれていた。レジリエンスの防御推進要因 には、養育にかかわる大人がいることがあり、この点でも社会的親の必要性が指摘できる。 以上のことから、子どもの支援はある特定の時期に、特定の領域だけが関わるのではなく、子ども期全体、 必要があればその先まで見通し、支援チームを形成して支援の連続性を担保することが必要である。その ためには、虐待から子どもの命を救う対応等とは別の観点で、子どものレジリエンスに着目し、社会的親 と出会い、関わり生きていくための環境として、市町村を中心とする子ども家庭福祉行政実施体制を構築 する必要があると考えられた。
著者
小沢 哲史 Tetsushi OZAWA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.77-89, 2015-03-31

本論文は“愛情レンズ (affection lens)”と“トラウマ・レンズ (trauma lens) ”という2つの処理システムとその接合状況によって人間の心理と病理を説明することを試みた(これを“二重レンズ理論”と呼ぶ)。健康な発達にとっては、養育者の関わりによって2つのシステムがよく接合されることが望ましく、その接合にはアタッチメント・システムが寄与していることを論じた。次に、2つのレンズの接合不全と、トラウマ・レンズの増殖、トラウマ・レンズの溶解痕によって、様々な精神病理を一貫して説明しようとした。さらに治療に影響を与える点について提示した。最後に今後の課題や展開を論じた。
著者
藤丸 麻紀 MAKI FUJIMARU
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.129-141, 2011-03

本稿では、子ども手当のGDPに対するマクロ経済効果として乗数分析を行い、出生率に対するミクロ経済効果として家計内生産理論モデルによる子どもに対する需要関数の分析を行った。またデータ分析を行い、理論による分析を補足した。 GDPに対するマクロ経済効果としては、消費拡大効果はあるものの、子ども手当の財源確保のために政府消費削減、公共投資削減、増税などが伴えば、GDPにはマイナスの効果をもたらすことが分かった。 また、出生率に対するミクロ経済効果としては、子どもへの需要を増加させる効果はあるが、子ども手当が生涯所得に与える影響が小さければその効果は小さいと考えられることと、子どもへの需要が増加しても出生率は変わらず子ども一人当たりの支出を増加させる可能性もあることが分かった。 データによる分析では、期待される生涯賃金が減少していることや女性非正社員の賃金の低さが出生率の低下につながっていると考えられることが分かった。したがって、子ども手当の支給よりも、保育サービスの提供や保育料負担軽減などを行った方が所得を増加させ出生率増加につながるのではないかと考えられる。
著者
山本 真弓 山田 満
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.33-43, 1997-03-31

1)人工胃液のpH1ではすべての乳酸菌の失活が認められた。2)ビフィズス菌は製剤においてpH1∿4のどのpHでも60分後にはビフィズス菌が死滅しており,製品についてもpH2で失活することからビフィズス菌の腸への到達は難しい。3)ビフィズス菌以外の乳酸菌はpH1ではすべて失活するが,pH2では120分後まで生存する確率が高く,pH3∿4では120分後で全て生存がみられた。4)菌別にみると,L. acidophilus,L. bulgaricus,St. thermophilusはpH2に耐えられ,比較的耐酸性があった。
著者
平野 千鶴 藤森 直江 菊野 惠一郎
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.17-24, 1991-03-31

食物繊維が,他の栄養素の消化を妨げるという作用に着目し,食物繊維の種類や摂取量によるタンパク質の消化吸収への影響を調べた。結果は次の通りである。1)精製したセルロースパウダーは,殆ど影響を及ぼさなかった。2)ごぼうの繊維を,多く摂取するほど消化率は低下した。3)ごぼうに含まれる種々の繊維の分析を行い,タンパク質の消化吸収に影響を及ぼしている繊維は何かを追求し,また,食物繊維を長期間に渡って摂取すると,どの様に消化率に影響を及ぼすか,今後検討していきたい。本実験に御協力頂きました江藤圭子,春日麗子,加庭桂子,神戸香の諸氏に感謝致します。
著者
仲村 洋子 羽生 京子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.37-51, 2003-03-31

和服着装時における着崩れについて究明したのが本研究である。和服は、洋服と異なり着付けることによって形づくるものである。和服を着た時でも、日常の立ち居ふるまいとまったく異なるわけではないので、当然動きに伴った変化が起きる。つまり着崩れが生じる。この着崩れの要因の一つとして、着物のサイズと体格・体型との不一致があると想定し探ることを目的とした。従来より平面構成学演習の授業において、身体の各部を採寸し割り出し法によって算出した寸法を用いて縫製した試着衣と、一年次にほぼ標準寸法で縫製したゆかたを着装して比較実験を行ってきた。今回は、着装後に階段の昇降といった一定の動作を加えて、着装直後と動作後に撮影した写真による観察と、被験者自身の着心地といった感覚面から着崩れの状態を把握することを試みた。被験者をJIS規格を参考にして、S、MおよびL・LLサイズの3グループに分けて、被験者である学生自身の報告を参考にしながら比較検討した。結果として、S・Mサイズについては、ゆかた、試着衣いずれも問題とするほどの目立った着崩れは認められない。その若干の変化は、階段の昇降といった下半身の動きによって生じた現象であるにもかかわらず、裾の部分が広がることだけでなく上半身の衿の交差の形状にも見られる。違いが顕著に現れたのはLLサイズである。標準寸法のゆかたは、着装条件そのものを満たすことも困難であり着崩れを論ずる以前の問題となった。一方、試着衣については着装状態もほぼ満足できるとともに、着崩れについてもS・Mサイズと同程度になった。今回の着装実験によって、LLサイズといった極端な例ではあるが、予測通り、着崩れは体格・体型といった身体に合わせたものがより少ない事を確認した。
著者
金丸 裕志 Yuji KANAMARU
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.29-40, 2023-03-01

民主政治における「大統領制化」の議論は、ポグントケらの研究を中心にこれまで数多く議論されてきた。本稿ではこの「大統領制化論」を検討し、その内容を「政策決定過程」と「選挙過程」とに分けて考えることでよりよく理解が進むことを示す。そして彼らの大統領制化論に対する批判のなかで、それを政治の「個人化(personalization)」とする議論を紹介し、とくに「選挙過程」に着目することで、今日、先進民主主義諸国だけでなく新興民主主義国や途上国でもみられるポピュリズムや新興政党といった政治の現象は、むしろ政治の「個人化」として理解する方が妥当であると結論付ける。
著者
榎本 春栄
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.135-147, 2002-03

婦人服の製作指導においては,現在,各種のパターン作成のもととして,文化式の身頃原型を使用している。今まで数多くの学生に対し,製作過程での補正を行ってきたが,原型のもととなるバストサイズの大小に関わらず,ある程度の補正をすることでそれぞれの体型に合わせる事が可能であった。しかし,今回問題となったのは,体格としては標準に近いサイズであるのにバストだけが非常に大きいという,ファンデーションのサイズから考えるとDカップ・Eカップ体型の場合である。本研究はこのようないわゆる標準と比べた場合の特殊な体型のための原型をいかに容易に作成することができるかを考え,その製作方法を示したものである。バストサイズ・背丈・ウエストサイズが異なる原型は,アパレルCADにより容易に作成することができる。そこで今回は,それらの原型を応用し,後ろ身頃と前身頃にバストサイズの異なる原型を組み合わせ,部分的に補正し体型に合う原型を作成することがねらいである。被験者の後ろ身幅と前身幅を計測し,それぞれに適合する原型を組み合わせることで,基本の部分ができる。更に前身頃に関しては,衿ぐり・肩線・袖ぐりなどにどちらのサイズのラインをどのように組み合わせて行くか等,実践を踏まえての研究を行った結果,被験者に適合した特殊体型のための原型を完成することができた。また,バストとヒップの差が大きい体型に対するプリンセスラインのワンピース作図方法を示すとともに,試作をし被験者が着装することで原型の完成度の確認をした。
著者
山本 真弓 山田 満
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.27-34, 1999-03

生食用野菜の洗浄について強酸性水と水道水による比較検討したところ,明らかに差がみられ,強酸性水の除菌効果の方が高かった。初発菌数に対する除菌率においてもほとんどが90%以上であり,一般細菌については特に顕著な差が認められた。野菜の種類別では強酸性水はカイワレ大根の洗浄に特に有効であり,一般細菌,大腸菌群とも除菌効果が認められた。本研究の要旨は第57回日本公衆衛生学会(1998・岐阜)において発表した。
著者
島田 由紀子 Yukiko SHIMADA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.97-108, 2014-03

幼児に18個の図形(三角・丸・四角、青とピンクの線画)を提示し、何かに見立てた描画の初発反応について取り上げた。初発反応に焦点をあてることで、幼児が見立てやイメージがしやすい図形の形と色について把握することができ、描画のモチーフからは、図形からイメージして描く内容を知ることができる。形や色を提示するという条件のもと、年齢差や性差にどのような差や共通性がみられるのか明らかにすることで、幼児の造形活動や指導への手がかりにすることが期待できる。 調査対象者は4歳児クラス(男児14名、女児14名)、5歳児クラス(男児14名、女児10名)の52名で、調査員との個別調査で行った。その結果、取組み数は年齢や性別を問わず約80%以上であったことから、幼児は「見立てよう、描こう」という意欲が高いことがわかった。初発反応の図形は、図形丸と図形三角が多く、幼児にとって図形三角や丸は親しみやすい形だと考えられる。線画の色はピンクよりも青の方が多く、性別による嗜好色の影響はなかった。4歳児クラスでは見立ての描画として成立するには、見立ての理解とイメージしたものを描くことの難しさがうかがえた。しかし、女児は4歳児クラスでは低い成立数が5歳児クラスでは90%と高いことから、この時期の女児の見立てや描画への興味関心の高さやイメージする力、描写力の伸びがうかがえた。色からの見立ての描画の成立数は形に比べて低く、見立ては色よりも形が優先されることが明らかになった。モチーフに着目すると、見立ての不成立の描画には年齢性別問わず、提示された図形への2重描きや塗りつぶし、図形の中や外への自由な描画などがみられた。見立てが成立した描画は、4歳児クラスの男児では「車」「メロンパン」、女児では「星」「ドア」、5歳児クラスの男児では、「家」「ドラゴンボールの玉」「おにぎり」、女児では「雪だるま」「ロールケーキ」などであった。男児の「車」や女児の擬人化された「雪だるま」などには自由画にみられる性差との共通性が、食べ物を見立てて描画することは図形からの連想語調査との共通性がみられた。 幼児が図形から何かをイメージして描画表現するには描写力が必要となるため、5歳児クラス以前では難しいことが推測された。しかし、5歳児クラスの見立ての描画では形からの成立数をみると、それまでの間にいろいろな経験をしてイメージを広げることや造形活動や生活経験を重ねることで、見立てるイメージ力も描写力も備わることがわかった。この時期の幼児が考えたり思い浮かべたりすることや、形や色やさまざまな素材を使った造形活動を重ねることが、その後の創造的な造形表現につながることが考えられた。
著者
佐藤 千恵 後藤 政幸 Chie SATO Masayuki GOTO
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.149-155, 2015-03

内分泌かく乱作用が懸念されるピレスロイド系農薬の環境生態系への影響を把握することを目的に、貝類中微量ピレスロイド系農薬の分析方法の開発を試みた。ホンビノス貝(Mercenaria mercenaria)を対象に5種ピレスロイド系農薬(ビフェントリン、ペルメトリン、シペルメトリン、フェンバレレート、デルタメトリン)を添加して、微量濃度における回収率(ホンビノス貝中各農薬濃度0.1ppm)および分析の迅速性、クリーンアップ処理の妥当性について検討した。農薬分析の前処理には高速溶媒抽出およびゲル浸透クロマトグラフクリーンアップを採用した。結果、ビフェントリン、ペルメトリン、シペルメトリン、フェンバレレートおよびデルタメトリンの回収率はそれぞれ67、86、76、82および79%であり、「食品中に残留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ライン」(平成22年12月厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知)に定められた回収率の目標値(70〜120%)のほぼ範囲内であった。また、高速溶媒抽出により分析時間の短縮等有効な抽出ができ、ゲル浸透クロマトグラフクリーンアップ法を取り入れたことでガスクロマトグラフ/質量分析時の夾雑物質による検出器等の汚染や定量感度の低下が解消された。
著者
佐藤 勝明
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
no.61, pp.243-254, 2020-03-31

元禄期の俳諧の内実を探るために、蕉風以外の未注釈文献から興味深い連句作品を選び、〔見込〕〔趣向〕〔句作〕の三段階分析の手法を用いて、各付合のありようを分析する。本稿はその第一弾であり、無倫編『俳諧 紙文夾』(元禄十年秋序)に収められる、不角・無倫・里風・我笑・和英による五吟歌仙を対象とする。そして、その分析により、当歌仙でも心付(句意付)が主流となっていることは確実ながら、前句にふさわしい場面を想像し、位を重視して付けるという芭蕉流の意識を見て取ることはできず、詞の連想に頼った側面も少なからずあることを明らかにする。
著者
三橋 洋子 小林 幸子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.139-149, 2000-03

永平寺の修行僧の食事には曹洞宗の開祖・道元禅師によって書かれた「典座教訓」の精神が根底にある。そこには「僧の役割の一つである炊事,調理を分担する典座は仏に仕える修行の心に通じる」と書かれており,そこに説かれている「赴粥飯法」の精神から現在失われがちな食に対する感謝や自然の恵みに対する謙虚な態度を学ぶことができる。永平寺で実際供されている食事はどのようなものか,またそれらはなぜ食する人々の心を捉えるのであろうか。今回その調査のため永平寺に赴き参籠した。永平寺典座・山脇氏の好意により修行僧に供される食事の献立を入手することができた。それによると,小食(朝食)は粥,胡麻塩,沢庵といった質素なもの,中食(昼食)・薬石(夕食)は主食,汁物,平,小皿で様々な食材,調理法を用いたバラエティーに富んだ内容であった。使用される食材は穀類,野菜類,果実類,豆類,きのこ類,海草類などで,当然のことであるが肉,魚,卵,乳製品は使用されておらず修行僧の一日の摂取熱量は1,000∿1,200kcal程度である。その中で健康を維持し毎日の厳しい修行を持続させることができるのは精神修行によるものが大きい。しかしそれだけでなく若い修行僧にも受け入れられるような食材料,調理法の工夫がなされていることも献立を見て知ることができる。食材に対する愛と感謝の気持ち,食べてもらえる喜びすなわち喜心,老心,大心の「三心」にこそ永平寺の精進料理が尊ばれる理由があることが修行僧の生活の中から伺うことができる。
著者
島田 由紀子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.87-96, 2017-03-31

幼稚園の造形活動や小学校の図画工作は、美術を専門に学んだ保育者や教師が担当するとは限らない。したがって、造形活動や図画工作の指導や援助に戸惑う者も少なくない。その戸惑いの影響は、幼児や児童の表現にも表れることが予想され、幼児や児童自身の苦手意識にもつながることが考えられる。造形活動や図画工作を苦手に感じている保育者や教師が多いことから、活動や授業にすぐに結びつく実践的な書籍がこれまでも多く出版され、また講習会や研修会も数多く行われている。特に、描画活動は幼稚園でも小学校でも行われていることから、保育者や教師のさらなる描画指導に対する苦手意識と困難さは先行研究からも読み取ることができる。描画指導に対する苦手意識や困難さを感じている保育者や教師にとって、具体的なメソッドを教授する講習会の影響は大きく、絵画コンクールに出品される作品からもその影響がみられる。しかし、メソッドによる描画指導法については、これまで、造形教育や美術科教育の研究対象としてはほとんど取り上げられてこなかった。その理由に、メソッドに沿った描画では幼児や児童の思いや個性が表現されず、画一的な表現に陥ることが挙げられている。一方、メソッドによる描画指導の講習会は毎年行われていることから、支持している、あるいは頼りにしている保育者や教師が多いことが推測される。描画指導法のメソッドが確立、普及していった背景からは、絵が描けない幼児や児童の存在と、自身の描画に対する苦手意識と指導や援助に困惑している保育者や教師の姿が見えてくる。そして、メソッドを習得した後、活動や授業の中で実践し、幼児や児童が予想していたように描けることに達成感や手応えを感じ、さらにメソッドを取り入れた指導法を推し進めているという実態が考えられる。 幼稚園教育要領や小学校学習指導要領にメソッドによる描画指導法を照らし合わせて考えると、必ずしも沿ったものではないことがわかる。幼稚園教育要領や小学校学習指導要領は「上手に絵を描くこと」をねらいや目標としていないからである。メソッドでは、学力の三要素にもある知識や技能の習得は可能であっても、思考力・判断力・表現力、主体的に学習に取り組む態度には結びつきにくい側面があることも推測される。また、学校教育ならではの集団での遊びや学びがメソッドでは想定されておらず、友達や保育者、教師とのかかわりは重視されていない。今後、幼児や児童自身がメソッドによる描画指導法についてどのように感じ考えているのか把握する必要がある。
著者
酒井 ノブ子 篠原 冬
出版者
和洋女子大学
雑誌
大學紀要. 第2分冊, 家政系編 (ISSN:02893193)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.187-199, 1983-03-31

本報では, 中高年主婦の勤労観について, 緒言に記したような仮説を立て, 調査を試みた。その結果を要約すれば次の通りである。1) 中高年主婦の勤労観は, 本調査による限りでは, NHKの全年齢層を含む調査結果や, 著者らが行った女子青年層の調査結果と比較してみると, 女子青年層よりも意欲的で積極的な姿勢がみられたが, NHK調査の結果には及ばなかった。また, NHK調査の結果よりも自己実現志向型が多く, この点は女子青年層に近かった。さらに, 勤勉型も多かったが, NHK調査の結果にみられる程ではなく, かなり批判的な姿勢がみられた。2) 中高年主婦の中では, 中年主婦が高年主婦よりも意欲的で, また, 自己実現志向型が多かった。3) 同じく中高年主婦の中では, 有職者の方が無職者よりも意欲的で, 勤労を客観的に捉えているものが多かった。以上のように, この研究は, あくまで大都市圏にある二地区を選んでの事例研究に過ぎないが, この調査によって, ある程度, 中高年主婦の勤労観の特徴や傾向をつかむことができた。また, 仮説は一応検証できたと考えている。今後さらに, 中高年男女の勤労観の比較や, 老年男女の勤労観とその比較などについて研究を進め, 中高年主婦の勤労観についての特徴をさらに明白にしたいと考えている。
著者
藤丸 麻紀
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.51-63, 2017-03-31

保育園の待機児童の増加に伴い、小学校入学後の学童保育の待機児童も増加しており、「小1の壁」という問題が生じている。そこで女性が活躍できる社会をめざすために、2014年に「放課後子ども総合プラン」が策定された。このプランに基づき、各自治体で放課後子ども教室の拡充が進められ、学童保育も放課後子ども教室と一体化させる自治体が多くなってきた。これは待機児童の解消には効果的であるが、学童保育と放課後子ども教室との本来の意義・機能を損なう懸念がある。本稿では、事例研究として東京23区の例を具体的に調べ、あるべき一体化の方向性を探った。 また、少子化にも関わらず保育園及び学童保育の待機児童が増えている現状を分析するために要因分析を行った。晩婚化・核家族化などにより学童保育の需要増は今後も続くと考えられる。 理論分析としては、家計内生産モデルを用いて、妻の就業時間と家計の収入の選択が、学童保育の有無などでどのように変わるかを分析した。
著者
小沢 哲史 TETSUSHI OZAWA
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.155-166, 2013-03

近年、日本では少年犯罪に対する関心が高まり、実態以上に過大視する傾向が強まっているとされる。これを「少年犯罪に対する過大視現象」とする。この現象については実態の把握が十分ではなく、この現象をどのように説明すべきか、その影響は何かなど不明な点も多い。本論文は第一に、この現象の実態をより明確に把握するため、高校生、大学生、幼稚園児の母親、50 〜70歳代の計4グループ、合計183名を対象に、平成17年度内閣府調査の質問文を精緻化した調査を実施した。第二に、少年犯罪の過大視現象をどのように捉えるのかについて学際的議論を行った。最後に、過大視現象が青少年の発達に与える影響について論じた。