著者
杉浦 功一
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.13-24, 2018-03-31

デモクラシーの概念及び民主化の動向を概観したうえで、これまで西側先進国主導であった開発援助及び民主化支援におけるデモクラシーや民主化の位置づけの変化を、ガバナンスなど関連する概念との関係を含めて検証する。そして実際の民主化支援活動の全体的な傾向とエジプト及びフィリピンへの支援を検証し、それらで現れているデモクラシーの概念の変容を捉えることを試みる。結果、「規範的なデモクラシー」としては、国家の政治体制としての自由民主主義体制が国際的な規範であり続けている。他方で、実際の開発援助や民主化支援の検証を通じてわかる「運用されるデモクラシー」をみる限り、より「非政治的」で政府の能力に重点を置いたデモクラシー像が現れつつある。
著者
藤丸 麻紀
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 (ISSN:18846351)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.41-54, 2016-03

民間活力導入の流れの中で指定管理者制度が2003年に導入されて10年以上が経過し、指定管理者制度導入施設は増加した。指定管理者制度を経済学的に考えると、不完備契約とプリンシパル=エージェント理論を当てはめることができる。とくに児童館・保育園への指定管理者制度導入を考えると、指定期間を長くすることが望ましいが、エージェンシー・スラックを抑えるためにはモニターコストをかける必要があるといえる。実証分析で東京23区の指定管理者導入施設について分析を行ったところ、児童館・保育園を含む社会福祉施設については指定期間が長くなっていることが分かった。次に児童館と保育園を分けて分析したところ、保育園については指定期間が長くなっているが、児童館についてはむしろ短くなっていることが分かった。しかし児童館・保育園に指定管理者制度を導入し、その中でもとくに株式会社を指定管理者としている例はまだ数が少なく十分な分析が行えない。そこで東京都中央区の例を参考に事例研究を行った。その結果、児童館に対する指定管理者制度導入によって運営費用を抑えながらサービスの質的向上を図るために、指定期間を10年間と長くしている一方で、公設公営の館を基幹館として指導・監督を行う、運営委員会を開催する、引継ぎ期間を長くするなど、モニターコストや引継ぎコストを十分にかけていると推測できることが分かった。
著者
木村 尚志
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 = The journal of Wayo Women's University (ISSN:24326925)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.186-176, 2017-03-31

歌語「夜の鶴」は『和漢朗詠集』の「第三第四絃冷々 夜鶴憶子籠中鳴」(管絃・五絃弾・白居易)に基づく。高内侍は長子伊周が流罪となった時に、病に倒れ「夜の鶴都のうちに籠められて子を恋ひつつもなきあかすかな」(栄花物語・浦々の別れ)と詠んだ。百七十年後、源平の合戦に敗れ捕虜となった平家の武将平宗盛とその子清宗は、鎌倉へ向かった後、京都へ送還され、近江国篠原宿で斬首された。宗盛が清宗のことを思って泣いていたと聞いた西行は、「夜の鶴都のうちをいでてあれな子の思ひには惑はざらまし」(西行法師家集)と詠んだ。二首ともに「都のうち」に五絃弾の詩から取った「籠の中」という言葉を掛けて「夜の鶴」の縁語として詠み込み、そして栄枯盛衰の時代状況の中で生まれたものである。本稿では鶴という歌語全体の性質にまで視野を広げつつ、このような「夜の鶴」にまつわる逸話が後の時代の歌語「鶴」の展開にどのように関与するのかを家の意識等にも着目しつつ考察する。
著者
大野 信子 仁平 佳奈 小平 了二
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
no.35, pp.p11-19, 1995-03
被引用文献数
2

市販のシイタケ,シメジ(ブナシメジ),マイタケ,エノキタケを適当に刻み,これらを材料の一つとして用いて茶わん蒸しを調理した場合,マイタケを用いたものは卵液が凝固することがなかった。マイタケ子実体からは,これを細かく刻み,蒸留水に浸漬するだけで多量のプロテアーゼが溶出してきた。これに対して,浸漬液中のアミラーゼ,キシラナーゼ,セルラーゼの活性はほとんど検出されないか極めて微弱であった。浸漬条件の若干の検討結果等から子実体には,酸性領域で働く酵素と,中性からアルカリ性領域で働くプロテアーゼの存在が示唆された。両酵素とも活性の至適温度は50℃にあったが,70℃においても30℃におけると同程度のかなりの活性を維持した。本研究を遂行するにあたり,実験に協力下さった和洋女子大学根本真里栄さん,吉野真由美さん,実験協力やご助言を頂いた千葉大学藤井貴明教授,篠山浩文助教授,また試料の提供やご助言下さった合同酒精株式会社,小林文男氏に感謝いたします。

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著者
中込 省三
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
no.35, pp.p191-198, 1995-03
著者
嶋根 歌子 長谷川 寛子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.95-108, 1994-03-31

高校の学校指定靴の実態とその問題点を明らかにする為に,女子高校2年生122名を対象として調査を行った。さらにアンケートに協力してもらった高校生の内40名を被検者として,立位時足部測定と足底圧分布の測定を行い,足型と靴型の形態的な適合性を検討した。結果を要約すると次のとうりである。I靴に対する意識と履用実態1.足幅サイズについては高校生122名中108名(87.8%)が「不明」と回答しており長さに対する認識に比べ幅についての認識が非常に低い。2.履用されている学生靴の型は「普通C型」(45.6%)と滑り止め付き底の「デラックスC型」(44.8%)で,「C型」が約90%と大多数を占め,好まれている型と思われる。3.購入時の状況は前の靴が古くなったり壊れた為など,何等かの問題が出た為の買い換えが大半を占めた。購入してからの履用期間は回答があった83名だけで平均を出すと約9.8カ月となった。靴になんらかの修理加工をした18名は全員がC型を履用し,中でも普通C型が12件で多い。4.現在トラブルがある者は,19名。ストッキング着用時期20名60.5件,ソックス着用時期に26名74.5件となる。合計でも全体の45.5%にあたる56名の者が何らかのトラブルを経験し,件数では154件にも上る。トラブルは踵部,足部先端部やアキレス腱部に集中している。5.学生靴への意見・要望では機能性関連の不満を訴える者が最も多く,その中でも耐久性の不足を指摘する意見が19件にも上った。ついで履き心地関連が15件であった。
著者
嶋根 歌子 藤原 和歌子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.217-227, 2000-03
被引用文献数
1

寝室の温湿度条件は寝具をとうして寝床内気候に影響し,睡眠の質的レベルに大きく関わる。特に近年の暑熱環境下では快適な条件は得られず,冷房機による調節でより安眠環境を得る家屋が増えてきている。一方環境問題や省エネルギー志向あるいは冷えによる体調不良が問題となり健康志向が高まるなかで,冷房に頼らない,寝室環境や寝具の工夫及び改善が求められている。本研究は,昔の人の知恵を借り,敷寝具の工夫で暑熱を和らげられるかという観点から,寝床内気候,衣内気候の計測と共に,睡眠中の寝姿勢や体動から睡眠の質を捉えようと試みた。主たる結果は,次ぎの様である。1.目覚め感と体動回数との関係は,"ゴザ"の方が眠れたと回答した被験者の体動回数が,通常使用している"ふとん"に比べ少なかった。一方,"ゴザ"の方が眠れなかったと回答した者は普段柔らかいふとんに寝ており,ゴザの表面が硬いことにより,頻繁な体動を繰り返し,身体が不安定で眠りが阻害されたと考えられる。2."ゴザ"を敷くことにより仰臥姿勢がやや減少する一方,側臥姿勢が増加する傾向にあった。一晩中にとった最も長い保持時間は,"ゴザ"の方が長く,平均54分(標準偏差14.16)であり,ふとんは平均43.8分(標準偏差14.24)であった。3."ゴザ"の衣内温度は,就寝1.3時間後に約36℃の第1のピークを示し,次いで3時間,5時間後にピークを示した。衣内湿度も衣内温度のピークと同時期に高湿となった。寝姿勢はこの直後仰臥位から背を起こしたり,側臥位に変化した。寝床内温度は,34∿35℃にあったが,"ふとん"の方が高値を示し,特に101∿200分後に36℃となった。畳間も,"ふとん"の方がやや高値で推移した。相対湿度も,温度と同様,"ふとん"の方が高くなった。
著者
鉄矢 博子
出版者
和洋女子大学
雑誌
大學紀要. 第2分冊, 家政系編 (ISSN:02893193)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.47-65, 1983-03-31

市販各種甘味料(蜂蜜, 低カロリー甘味料4種 : A-商品名シュガット・B-商品名シュガーカット・C-商品名マービー・D-商品名マイホームシュガー, 虫歯予防用甘味料 : 商品名デンタルシュガー)を砂糖の代りに使用した時, これらの甘味料は砂糖と同様の調理性を示すかを, 卵白の起泡性に対する影響を取り上げ考察した。特にスポンジケーキにおける調理効果について砂糖との比較において検討したところ次の様な結果が得られた。1. 各種甘味料は砂糖と同様, 卵白の起泡に安定性を与えた。更に低カロリー甘味料A・低カロリー甘味料B・低カロリー甘味料Dは砂糖より卵白の起泡性を高める効果がみられた。2. 低カロリー甘味料Dは共立て法の場合は起泡性を著しく低下させた。脂肪による消泡作用を受けやすい様に思われる。3. 共立て法によりスポンジケーキを作成した時, 蜂蜜・虫歯予防用甘味料を用いたスポンジケーキは砂糖のものより表面の焼き色がつきやすく, 仕上り形態はあまり良くない。しか, 味・香は砂糖同様よいものであった。4. 低カロリー甘味料A・低カロリー甘味料B・低カロリー甘味料Cを用いたスポンジケーキは砂糖のものより表面の焼き色がうすいが, 整った形をしており, 外観はよい。味・香はあまり好まれない。5. 低カロリーDを用いたスポンジケーキは他と同様の方法で作成した場合, 良い外観のものは得られなかった。甘味料を小麦粉に混ぜる方法で作成した場合は他の低カロリー甘味料と同様の外観を得ることが出来た。しかし, いずれにしても味・香はあまり好まれない。6. 甘味料を用いずに作成したスポンジケーキは官能的に最も好まれなかった。このことから, 各種甘味料は砂糖と同様スポンジケーキの品質向上に何らかの効果を与えていることが明らかとなった。7. 低カロリー甘味料を用いたスポンジケーキは, 砂糖と同程度の甘味になるように各甘味料を使用する場合は, 保存性の低いことが観察された。
著者
力丸 テル子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
no.37, pp.255-273, 1997-03

基礎統計分析の結果,調査対象の平均は年齢が18.6歳であり,身長は157.8cmであった。自宅通学が87.1%と4分の3以上を占めている。まず色彩選択の状況からアンケート調査を行った。色彩系統色名を1番∿72番まで提示した。その中より合着(春秋)夏冬で好んで着用する色,嫌いな色を質問したところ,好む色に合着では,薄いピンク,薄い青色,夏では白色,薄い青色,冬は黒色,ベージュ,白色という結果を得た。嫌いな色では,四季をとわず濃い紫色,濃い赤色,さえた赤色があげられている。いずれも薄い色,淡い色,浅い色に嗜好度が高く,嫌いな色は,さえた色,濃い色にあるようだ。スーツ・ブラウス・セーター・ワンピース・スカート・スラックスそれぞれで選ぶ色は何にかの質問では,スーツでは紺色・黒色・灰色であり,ブラウス・セーターのような上衣では,白色,黒色・薄い青色,灰色である。ワンピースでは,黒色,白色,薄い青色,またスカートやスラックスのような下衣でも,黒色・紺色,白色が好まれている。いずれも黒・白・紺・ブルー系が特に上位にあって,好まれている理由には,前で述べたような黒系は明度の高い色や暖色,膨張色とよく合い,面積を考えて用いると良い調和のとれた衣服となる。また白系も他の色と合わせやすいし,ブルー,紺系は落ちついた色で,彩度が高くても派手にならないし知的で引きしまって見える。配色がしやすいという特質をもっている。今回の調査の対象が18歳∿21歳の学生であること。以上の観点から好まれているものと思われる。つぎに柄の選択状況では,無地が全体の69.4%で第一位を占めており,第二位に横じまとチェックであった。反対に好まない柄として,水玉46.8%,横じまが22.6%である。色彩,柄の嗜好は男女によっても,年齢によっても,あるいはその人の性格などによっても個人差が大きい。また時代的,社会的要因によっても影響を受けやすい。色彩・柄は膨張感,温度感,距離感,硬較感等の性質をもっている。この性質をじょうずに衣服に取り入れることは自己の体型をふくよかに見せたり,あるいは,ほっそり見せたりするうえで効果的である。衣服の色彩・柄の選択ついては充分注意して効果的に着用したい。では襟型の選択状況から,夏用ではブラウスはウィング・カラー(Wing Collar) 25.8%ついでノッチド・カラー(Notched Collar)。ワンピースも,ウィング・カラー(Wing Collar)が第一位を占め,スクエヤー・カラー(Square Collar)の順位である。ジャケットではテーラード・カラー(taillored Collar) 30.7%,ピークド・ラペル・カラー(Peaked lapel Collar) 25.8%であった。冬用の襟型の選択では,ブラウスは夏用と同じ第一位にウィング・カラー(Wing Collar) 33.9%,ついでホースシュー・カラー(horseshoe Collar)である。ワンピースは,ノッチド・カラー(Notched Collar)。ジャケットでは夏用の襟型と順位が同じであった。いずれも若向きでスポーティであり,またソフトなタイプの年齢にも関係のない襟型をも選択している。袖型の選択状況はどうか,夏用では,セット・イン・スリーブ(Set-in Sleeve) 33.9%,そしてボックス・スリーブ(Box Sleeve) 32.3%であった。ではワンピースはボックス・スリーブ(Box Sleeve) 45.2%,ついでクォーター・スリーブ(Quarter Sleeve)である。ジャケットはツー・ピース・スリーブ(Two piece Sleeve) 53.2%でありボックス・スリーブ(Box Sleeve) 22.6%の結果を得た。冬用では,ブラウスは,セット・イン・スリーブ(Set-in Sleeve) 75.8%と全体の4分の3以上を占め,ワンピースでは,タイト・スリーブ(Tight Sleeve),そしてセット・イン・スリーブ(Set-in Sleeve)である。ジャケットでは,ツー・ピース・スリーブ(Two piece Sleeve) 75.8%という結果を得た。スカートの選択状況から,日常着はヒップボーン・スカート(Hipbone Skirt),キュロット・スカート(Culotte Skirt),スリム・スカート(Slim Skirt)の順位であり,訪問着にいたっては,スリム・スカート(Slim Skirt)が過半数の62.9%を占め,外出着では,訪問着と同じくスリム・スカート(Slim Skirt)が25.8%とラップ・アラウンド・スカート(Wraparound Skirt) 11.3%であった。以上の結果から日常着ではスポーティーな感覚と機能的で活動的なスカートを,外出着・訪問着では平凡なスタイルではあるが万人向きなスカートを選択している。では色彩・形態・柄などを選択する理由を調べたところ,第一位に「その時の気分」が答えられており全体の32.3%を占めている。第二位は「TPO」の25.8%であった。現在の学生は何んとなく,その時の気分で好きな衣服を選択し,TPOを考えて着装する。また髪型や顔型にはあまり気にしていないようである。
著者
布施谷 節子 大村 知子
出版者
和洋女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

1)女子大生21名を被験者にして、昨年に引き続き浴衣の着崩れ実験を行った。これまでは一連の動作の結果としての着崩れを把握したが、今年度は動作の違いによる着崩れの特性を明らかにした。さらに対丈と二部式の着物を実験に加え、お端折の有用性を把握した。2)女子大生398名を対象に中・高の学習指導要領の新旧による製作実習教材の違いなどをアンケート調査した.その結果教材に差は見られず、いずれもエプロンが主流であった。製作品を活用しない者が多く、高校では約3割が実習未経験であった。高校では浴衣の製作が約15%みられた。さらなる教材開発の必要性を実感した。3)大学1年生31名を対象にミシンの操作実験を行った。その結果、上糸かけは正しくできた者は皆無、下糸巻きは約半数、下糸セットは約8割、下糸の引き出しは約8割の達成率だった。ミシン操作の指導を小・中・高校と工夫する必要性が示唆された。4)家庭科教育の中での福祉教育について、大学生37名を疑似障害者として着脱動作を行わせた。録画資料から身体上の6点の動作軌跡を検討した。その結果、着脱を行わせることが、障害者を理解させるためのシュミュレーションとして有用であることが明らかになった。5)本科研費を得て、伝統文化を理解させるための教材として浴衣を取り上げて、様々な角度から検討を行ってきた.授業での補助教材の開発や、指導法などを改善し、中学・高校での実習に伴う問題点を明らかにできた。また、浴衣の染色業者に提案し、中・高生が取り組みやすい浴衣教材が開発され、教育現場で使用され始めた。また、三次元動作解析システムを購入できたことから、浴衣以外の靴、ブラジヤー、パンツなどの着脱や動作性の研究手段として有効に活用できるようになり、研究の範囲が広がった。
著者
大須賀 彰子
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.81-89, 2007-03-31

本研究では、学生とその母親を対象に野菜類と魚介類の食嗜好についてアンケート調査を行った。その結果、1.過去に嫌いな食材があったと回答したものは、母親より学生の方が多かった。2.嫌いとして挙げた食材の出現率は、野菜類では「ピーマン」「セロリ」「にんじん」「トマト」、魚介類では「いくら」「うに」「かき」「うなぎ」が、学生と母親とも高かった。3.野菜類の克服率は、学生と母親ともに高い値を示したのに対し、魚介類の克服率は低かった。4.野菜類の克服状況は、学生では克服理由として「調理法」「食習慣」「食教育」が多くあげられた。5.母親では、野菜類の克服理由は「調理法」「結婚」「妊娠・子育て」があがり、魚介類は「食環境」「妊娠・子育て」があがった。このことより、母親の食に対する意識の向上が、日々の食生活を通じ、子どもの食嗜好に変化を与える可能性が示唆された。6.結論として、子どもだけでなく、母親の食教育の必要性も示唆された。今回は、野菜類と魚介類に限定して調査を行ったので、今後は他の食品の食嗜好も調査をし、さらに検討していきたいと思う。
著者
〓谷 要 小平 志乃 出山 悦代 後藤 政幸
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.111-122, 2003-03-31

キチンやキトサンと同じ2-アミノ糖を基本単位とする食物繊維糖鎖の一つである(1→4)-α-ポリガラクトサミンの化学修飾による新規機能分子化を検討した。(1→4)-α-ポリガラクトサミン2位のアミノ基を、穏和な水系緩衝溶液条件でボラン・ピリジン錯体を還元剤とする還元アミノ化反応により置換させた。置換基としては、マルトースやラクトースをはじめとするオリゴ糖を用い、種々の条件を検討した。還元アミノ化反応では、ポリガラクトサミン中のガラクトサミン残基に対するオリゴ糖のモル比に応じて、置換度が異なる生成物を得た。これらのオリゴ糖鎖導入ポリガラクトサミンを、三酸化イオウ・ピリジン錯体を硫酸化剤として、乾燥ピリジン中で硫酸化した。硫酸化生成物は極めて高い水溶性を示した。さらに、オリゴ糖鎖導入ポリガラクトサミンの分子構造を、コンピュータを用いた分子軌道計算、分子力場計算により推定した。計算結果から、オリゴ糖鎖が導入された場合、主鎖構造は僅かに湾曲した直鎖状となり、側鎖はほぼ完全に交互に位置する構造を取ることが予測された。らせん状の構造を取らなかったのは、主鎖構造の糖鎖間の結合様式によるものと考えられた。
著者
林 喜美子 湊 久美子 北村 裕美
出版者
和洋女子大学
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編 (ISSN:09160035)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.167-175, 2006-03-31

中高年女性の運動習慣に影響する要因を検討する目的で、中高年女性183名(運動習慣のある者130名、運動習慣のない者51名、無回答2名)を対象に、職業の有無、運動歴、現在の運動状況などに関するアンケート調査と性格検査(YG性格検査)を実施した。対象者の平均年齢は、56.2±8.7歳であった。対象集団のうち、現在運動習慣のある者は71.0%、11年以上運動を継続している者は、48.2%であった。運動習慣のある者は、学生時代に運動経験のある者が多かった。また、現在、集団種目の運動習慣のある者は、個人種目の運動習慣のある者と比較して、運動継続年数が長かった。学生時代に運動経験のある者は、卒業後の運動経験のある者が多く、運動継続年数が長かった。職業の有無や勤務形態と運動実施との関係は、認められなかった。運動習慣のある者の性格は、運動習慣のない者と比べて、安定積極型と判定された者が多く、不安定積極型や不安定消極型と判定された者が少なかった。以上の結果から、中高年女性における運動習慣の維持には、就学期の運動経験、特に集団種目の経験が影響していることが明らかとなった。また、情緒の安定性も関係している可能性が示唆された。