著者
工藤 哲洋 横山 央明 松元 亮治 工藤 祐己 那須田 哲也 町田 真美 鈴木 昭宏
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

太陽は恒星の集団である銀河に属し、恒星間には希薄な星間ガスが存在しています。そして、星間ガスには磁場が存在し、太陽のような恒星が星間ガスから誕生する時に大きな影響を与えています。しかし、星間磁場がどのように維持されているのかはよくわかっていません。私たちは、星間磁場の維持増幅機構(銀河のダイナモ機構)に興味を持ち、その機構に重要な不安定性を研究しました。特に、星間空間に存在する宇宙線と呼ばれる高エネルギー粒子に着目し、それが不安定に寄与する事で、銀河の中における星間ガスの密度や磁場の分布が大きく変化を受けることを発見し、それがダイナモ機構に影響を与えうることを確認しました。
著者
吉田 二美
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

天体の衝突破壊現象の素過程を現在まで良く保存していると思われる形成年代の新しい3つの小惑星族の小惑星を約50個観測し、自転周期分布、形状分布、自転周期と形状の関係を明らかにした。また、形成年代の新しい小惑星族の小惑星と古い小惑星族の小惑星の表面カラーの比較から、小惑星の表面年齢とカラー変化の関係を確認できた。
著者
林 正彦 百瀬 宗武 倉本 圭 井田 茂 左近 樹
出版者
国立天文台
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

総括班は4件の計画研究を有機的な連携のもとに推進する事を主な目的としている。領域全体の情報交換を促進する為、国際研究集会を9回開催し、その参加者は国内外合わせて800名を数えた。同じく研究で得られた成果を広く国内外に発信し、若手育成の為に措置を講じ、領域ホームページを作成し情報発信をした。公募研究では2度の募集を行い全14件を採択。参加者は全国の大学・研究機関に分布している。
著者
後藤 友嗣
出版者
国立天文台
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は宇宙最遠方のQSOを発見し、これを用いて宇宙最電離を解明することにある。本年度はUKIDSS近赤外線サーベイによって新しく観測されたデータを用いてQSO候補天体の選択を行った。これら候補天体を同定するため、主としてハワイ大学の8-10mの望遠鏡を用いて分光観測を行ったが新しいQSOは発見できなかった。UKIDSSサーベイの進行状況が全計画の1/2程度まで進んでおり、QSOの個数密度の進化をz<6から外挿すると、この領域でのQSO発見の期待値は~4個程度である。従ってこの領域のQSOの発見個数が0であることは、QSOの個数密度がz>7において大きく減少していることを示している。これはQSOの進化史にとって劇的な変化であり、QSOの進化理論に制限をつけることができる重要な結果である。現在はこの結果を最終確認すべく、UKIDSSサーベイの残り1/2の領域について鋭意探査を継続中である。QSO探査と平行して既知の遠方QSOに関する調査も行った。昨年度我々がその周囲に取り巻くホスト銀河およびライマンα輝線星雲を発見したz=6.4におけるQSOを10m望遠鏡を用いて詳細分光観測を行った。この分光データを用いて、QSOを背景光として利用することにより5.615<z<6.365における宇宙の電離度の調査を行った。QSOを背景光とした直説的な方法による宇宙の電離度の探査がz=6.365の遠方にまで遡って行われたのはこの研究が初めてである。この結果5.915<z<6.365の間において、ガンピーターソンの谷とよばれる全くQSOの紫外光が検出されない暗黒領域が見つかった。これは200Mpcという前例をみない広大な領域に及んでおり、5.615<z<6.365の宇宙は再電離が完了しておらず、宇宙がより中性であった暗黒時代にさしかかっていると考えて矛盾しない。
著者
井口 聖 奥田 武志 杉本 正宏 浅山 信一郎
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ミリ波帯での高精度モニター観測によって、巨大銀河の中心から周期的に時間変化する強度変動を発見することに成功した。この結果とこれまでの観測結果から、巨大銀河の中心にはバイナリーブラックホールが存在する可能性を示唆できた。ブラックホール同士の合体は宇宙空間において最も壮大な自然現象の内の1つである。さらに、本結果は超巨大ブラックホールへの成長過程の中でブラックホール衝突が深く関わっている可能性を示したと考える。
著者
古在 由秀 黒田 和明 藤本 眞克 坪野 公夫 中村 卓史 神田 展行 齊藤 芳男
出版者
国立天文台
雑誌
創成的基礎研究費
巻号頁・発行日
1995

人類がまだ果たしていない重力波検出を実現して「重力波天文学」を創成するためには、巨大なレーザー干渉計を長時間安定にかつ超高感度で動かす技術を開発する必要がある。本研究では基線長300mの高感度レーザー干渉計(TAMA300)を開発・製作し観測運転を試み、(1)世界の同様な干渉計計画に先駆けてTAMA300の運転開始(1999年夏)、(2)世界最高感度の更新(2000年夏)、(3)50日間で1000時間以上の観測データ取得(2001年夏)、(4)リサイクリング動作の成功(2002年1月)など、着々と感度と安定度を向上させ、重力波観測装置としての成熟を示す成果を挙げた。さらに干渉計の建設過程で行われた要素技術の開発研究でも、(5)単一周波数連続10W発振の高出力・超高安定レーザー実現、(6)広い面で均一で低損失な超高性能ミラーの評価法の確立とミラーの実現、(7)リサイクリングを適用した干渉計の新しい制御方式の発明と実験的証明、(8)位相変調光を透過する光共振器での付加雑音の原因究明と抑制、(9)波面検出法による長基線光共振器の光軸制御の実現、(10)光共振器の基線長の絶対値計測法の考案・実測と地球物理学への応用可能性示唆、(11)プロトタイプ干渉計を用いたリサイクリング動作の世界初の実証など、世界初や世界最高レベルの独創的で発展性のある成果がいくつも生まれた。本研究をさらに発展させるべく平成14年度より特定領域研究(重力波の新展開)が始まり、TAMA300のさらなる感度と安定度向上を図りながら、外国で動き出す巨大レーザー干渉計との同時観測によって銀河系周辺で発生する重力波の探査観測を行う計画である。
著者
末松 芳法 大谷 浩 今井 英樹 一本 潔 清水 敏文 花岡 庸一郎 宮下 正邦
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

空間2次元同時での分光観測(以下では3次元分光観測と呼ぶ)は、天文観測研究者の究極の夢の一つである。本研究は太陽観測としては初めて真に3次元同時の観測を実現し、太陽活動現象の研究に適用したものである。3次元分光観測の技術としては様々な方法が夜の観測では適用されていた。一方、太陽観測では視野、空間分解能、波長分解能への要求が高く、3次元分光観測の実現は容易ではない。本研究では3次元分光観測の1つの手段であるマイクロレンズ・アレイを用いた方法を太陽観測に適用したものである。観測ではスペクトル線の観測が重要であるが、興味あるスペクトル線(Hαなど)では必要な視野、空間分解能、波長分解能を同時に満たす解があることが示せた。結果、マイクロレンズ・アレイも配列数の多いもの、CCDカメラもピクセル数多いものが必要であるが、今日の技術では十分実現可能であった。得られた光学系の設計解は、世界の多くの太陽観測装置に適用可能のものであり、本研究では米国国立太陽天文台サクラメント・ピーク天文台にて本装置の有用性を確かめることができた。特に空間分解能の高い観測では威力を発揮することが示せた。本研究の成果は、2次元像とスペクトル線プロファイル情報の同時取得により、フィルター観測と分光観測の利点を発揮できる観測法により、太陽観測法の新しい展望が開けた、とまとめることができる。具体的には、(1)本装置は既存の望遠鏡・分光器と組み合わせて容易にインストールすることができ、いろいろな太陽観測所の長所を生かした観測が可能であることを示した。但し、視野が狭いため追尾装置との併用が望ましい。(2)2次元同時分光データより、フィルター観測の長所である単色像を再現でき且つ分光器観測の長所である線輪郭解析が可能であることを示した。
著者
片山 真人 松田 浩 福島 登志夫
出版者
国立天文台
雑誌
国立天文台報 (ISSN:09156321)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.57-67, 2008-10
著者
福島 登志夫
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

地球の形状軸方向ベクトルの空間的運動の周期成分である章動について、剛体地球の章動理論としてRDANを採用し、SOSモデルによる非剛体効果を考慮して1979年から200年までのVLBI観測データに基づいて、新しい非剛体地球の章動理論SF2001(Shirai and Fukushima 2001)を構築した。副産物として、地球の力学的扁平率など重要な地球物理パラメータを従来にない高精度で推定することができた。惑星歳差について、DE405に代表される最新の数値天体暦から、その永年成分を高精度で抽出するため、ペリオドグラムによる周波数推定技術と、周波数をも未知数とする非線形最小2乗法を組み合わせ、内在周波数の数を0から1つずつ増やす逐次的手法を組み入れることにより、高精度の非線形調和解析法を編み出した(Harada and Fukushima 2003)。これを、DE405から得られる地球・月重心の軌道角運動量ベクトルの方向角2成分について実施し、有意な周期成分をすべて除去することにより、最終抽出物として時間の2次関数の形にまで凝縮することに成功した(Harada and Fukushima 2004)。これは、DE405が表現している現代の最新運動理論から得られた最新の惑星歳差公式(HF2004)である。最後に、一般歳差をVLBI観測データから推定するために、SF2001章動理論を用いて観測量から周期成分を差し引き、さらにHF2004惑星歳差公式の寄与分を考慮して、一般歳差をVLBI観測データから精密に推定することに成功し、最終的に日月歳差の最新推定値を求めた(Fukushima 2003)。副産物として、平均黄道傾角の精密な推定値を得ることができた。
著者
松本 尚子
出版者
国立天文台
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、高精度天体位置計測のための望遠鏡VERAを用いた位相補償VLBI観測により、銀河系中心から約3kpcまでの領域の晩期型星および星形成領域に付随するメーザー源の絶対3次元運動を高精度で計測し、その測定結果と銀河系の動力学的な理論モデルとを比較することで、銀河系のバーポテンシャルの深さ・太陽系に対するバーの傾斜角など、銀河系の棒状構造に制限をつける事である。特に、運動学的に議論可能な精度で銀河系内のガスの絶対3次元運動を得るには、現時点において星形成領域に付随するメーザー源を用いた位相補償VLBI観測が唯一であり、運動学的な観点からのアプローチの一つとして重要な意味を持つ。この目的のために、昨年度は国内初の試みである6.7GHz帯メタノールメーザー源を用いた位相補償観測の試験として、もっとも明るい6.7GHz帯メタノールメーザー源の一つである大質量星形成領域W3(OH)に付随するメーザー源の年周視差・固有運動を得た。本年度はその成果をPASJから出版し、国内外の研究会でも成果発表を行った。本成果には、まだ観測例の少ない6.7GHz帯メタノールメーザー源の内部固有運動の検出も含まれており、大質量星形成領域の周辺環境を探るという観点でも重要な意味を持つ成果である。上記の経験を元に、2009年11月よりVERAを用いて、銀河系バー周辺領域の6.7GHz帯メタノールメーザー源を10天体観測してきた。2011年秋までの時点で、10天体中6天体の絶対3次元固有運動を3σ以上の精度で求めることができた。これらのデータ解析結果から得られた3次元運動と銀河の棒状構造モデル等と照らし合わせて非円運動成分を導き、これまでの銀河系に関する研究結果と矛盾しないバーの傾斜角~35°が得られ、棒状構造の存在が3次元運動からも示唆される事を、国内外の研究会にて発表した。
著者
佐藤 忠弘 新谷 昌人 今西 祐一 大橋 正健 福田 洋一 田村 良明
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は科研費の最後の年度であり、神岡超電導重力計(SG)の性能の向上、特に冷凍機関係の性能向上を図るため、筑波大学研究基盤総合センター低温部門の池田博講師に、また、従来も共同研究をしてきたJSPSの外国人特別研究員(水沢勤務)Severine Rosat博士の2名に研究協力者として参加してもらった。スマトラ・アンダマン地震(Mw=9.0-9.3)の信号は世界の多くのSGで明瞭に捉えられた。神岡、松代を含む世界13ケ所のSG記録を使い、地球自由振動_0S_0モード(地球の半径が変化するモード)の解析結果を出版した。従来の研究で、このモードの地球の扁平度、回転の影響(緯度依存性)は知られていたが、緯度のみのならず、経度方向にも変化すること、また、その変化が3D-地震波トモグラフィーを使ったモデル計算から予測される分布と矛盾がないものであることが分かった。これは、世界初である。神岡と松代の解析結果は観測誤差の範囲で一致しており、解析の信頼度を測る目安になった。本科研費で実施した一連の観測・研究の大きな成果と言える。観測された_0S_0の振幅変化幅は全地球で2%程度の小さなものである。しかし、本研究の結果も示すように、振幅変化は地球の横方向の構造変化に敏感で、地球内部構造の研究にとって重要と言える。SGは絶対重力計を使い0.1%以上の精度で検定されている。これが、このような微小な現象が議論できる基礎になっている。しかし、SG観測点の数は、国際観測網で使われている地震計の数に比べ圧倒的に少ない。一方、地震計の振幅精度は数%程度で、これを0.1%台に向上できれば、地球内部構造の研究に大いに寄与すると言える。地震計検定の精度向上を目指し、本研究のレーザ歪計グループが開発したレーザ地震計とSGとの比較観測を、本年度、神岡で開始した。重力観測への大気圧変動、海洋変動の影響についての研究でも、大きな進展がみられた。なお、絶対重力計FG5によるSGの検定を3回(江刺1回、神岡2回)実施した。
著者
末松 芳法 OROZCOSUAREZ DAVID OROZCO SUAREZ David OROZCO SUAREZ David
出版者
国立天文台
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

太陽表面で見られる活動現象の大部分は太陽に存在する磁場に関係して起こっている。黒点は強い磁場が存在する場所として良く知られており(活動領域)、フレアなどの爆発現象が起こる場所に対応している。一方、黒点以外の場所(静穏領域)にも強い磁場は存在し、機械的エネルギーがこの磁場を介して外部のコロナに輸送されコロナが一般に100万度以上の高温になる原因と考えられている。但し、どのような機構でエネルギーが外部に運ばれているかは未解明の大問題である。また、対流と磁場の相互作用としての未解明のダイナモ機構に関連する極めて重要な電磁流体現象を提供している。本研究は太陽磁場、特に地上では観測の難しい静穏領域の磁場の性質を詳細に調べることでこの謎解明に迫るものである。太陽静穏領域の磁場はネットワーク構造をしており、超粒状斑と呼ばれる直径約3万kmの対流セルの境界に集中して存在することが知られている。個々の磁気要素は激しく変化しており、数時間の時間スケールで入れ替わっていることが予想される。超粒状斑内の浮上磁場、その対流運動による超粒状斑境界への輸送、境界磁場との融合消滅過程を経て、更新が行われていると考えられる。これらの静穏領域の磁場の性質の研究が進んできたが、まだ統一的な見解は得られていない。このため、太陽観測衛星「ひので」の高精度磁場観測を実施し、静穏領域で太陽中心角の異なる4つのフォトンノイズの小さいデータを用いて磁場の傾きを調べた。視線方向磁場に対応する円偏光成分と、視線に直角方向の成分に対応する直線偏光成分には、太陽中心角の大きな依存性があり、水平成分が卓越していることを示した。この結果は、磁場は等方的ではなく、小さなループ構造で多く存在していることを示唆している。太陽中心角に依らず、磁場強度は平均で180ガウスとなり、以前のハンレ効果を用いた結果と同様の強い磁場が得られた。更に、積算により非常にフォトンノイズを小さくした「ひので」の偏光データを解析した結果、直線偏光のみからなる磁場が70%近くを占めることが示され、磁場の傾きが水平方向に卓越していることを強く支持する結果を得た。
著者
渡部 潤一
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

流星群を生み出す母天体である彗星あるいは小惑星の活動史を、流星群の活動から推定する新しい方法を確立し、いくつかの実例について研究を行った。また、枯渇彗星の可能性のある近地球小惑星の中から、既知の流星群と軌道が一致する天体を抽出し研究した。特に2003WY25とほうおう座流星群について研究し、この小惑星が枯渇彗星であることを明らかにし、その上で19世紀には彗星活動が少なくなった活動史を、実際の観測を踏まえて明らかにした。
著者
ギュヨン オリビエ 高見 英樹 高見 英樹
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究ではすばる望遠鏡用のコロナグラフィック究極補償光学系(SCExAO)の開発を行った。すべての鍵となるコンポーネントの製作を行い、実験室において可視光で全体として性能試験を行い、目的の性能が達成されていることを確認した。これはすばる望遠鏡用の新補償光学系AO188と太陽系外惑星検出用のコロナグラフカメラHiCIAOに取り付けるものであり、そのための取り付け治具の製作を別途すすめ、2010年に望遠鏡に取り付けての観測を予定している。
著者
吉田 道利 泉浦 秀行 清水 康広 沖田 喜一 竹田 洋一 佐藤 文衛 清水 康広 沖田 喜一 竹田 洋一 佐藤 文衛
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡に装着された可視光高分散エシェル分光器用に、望遠鏡カセグレン焦点から光を導く光ファイバー天体導入システムの開発を行った。また、ファイバー集光システムに付随する問題点とその解決策を明らかにした。さらに、巨星周りの惑星探査計画を進め、散開星団に世界ではじめて系外惑星を発見するなど、巨星周りに惑星を新たに8個発見することに成功し、恒星質量・年齢と惑星質量・軌道半径の間に相関関係が存在する兆候を見出した。
著者
田村 元秀 林 正彦 周藤 浩士 西川 淳
出版者
国立天文台
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

すばる望遠鏡と高コントラスト観測装置などを用いた観測により、原始惑星系円盤と残骸円盤の観測を行い、その形態の多様性、氷の分布、偏光に基づく塵の性質を初めて空間的に分解し、直接的に明らかにした。若い星の比較的遠方に惑星質量(約10木星質量)に匹敵する伴星天体を発見した。マウナケア山頂群のファイバー干渉計実験(OHANA)にも成功した。また、次世代高コントラスト装置HiCIAOを開発した。
著者
出口 修至
出版者
国立天文台
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、低周波で明るく輝く電波源の位置や強度、スペクトルを観測し、それらの起源を、遠方の銀河団に付随するものか、あるいは銀河系内の比較的近傍に存在する低温矮星(または惑星)に付随するものか、を明らかにする事である.平成22年度には、前年度と同様にインドの大型電波干渉計(GMRT)によりさらなる観測を行い、遠方銀河団に付随すると思われる天体8つについて観測データーを得た.また、ヨーロッパで行われた関連する低温度星の研究会に出席し、研究発表を行った,前年度得た低温矮星候補天体についての詳細なデーターの解析、および本年得たデータの解析を行った.同望遠鏡で得た観測データーにはインドの干渉計に特有な電波雑音が無数に載っており、その除去に非常に手間取り解析が遅れたが、低温矮星候補天体のデーターについてはほぼ解析を終了し、現在結果を論文に纏めている.主要な成果は、低周波電波源のうち、その位置が低温矮星に1秒角以内で一致するものが2個有り、そのスペクトルは1.4GHzにピークを持ち、また数分の時間スケールで電波強度が変動している、という事が明らかになった事である。これらの事実は、電子サイクロトロンメーザー等の放射機構により低温矮星(あるいはその周囲を巡る惑星)から低周波電波が来ている事を強く示唆するものである。この結果は、かなりの数の低周波電波源が銀河系内天体に付随する可能性を示したという意義が有る。これは、今後発展するであろう低周波電波天文学の一つの方向性を決定づける重要な結果であると思われる。
著者
浅山 信一郎
出版者
国立天文台
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、マイクロマシニング導波管を用いたTHz帯超電導サイドバンド分離ミクサの開発を行なっている。サイドバンド分離ミクサに必要不可欠な導波管型90度ハイブリッドカプラーは櫛歯状の構造を持ち高いアスペクト比を持つ。これまでの調査で、導波管壁の垂直度を保ちつつD-RIE(Deep Reactive Ion Etching)を用いたシリコン基板のマイクロマシニングで実現することは難しいことが分かった。また別の問題点として、シリコンの微細構造上に均質な金メッキを施すことも難しいことが分かった。そこで、フォトレジストで作成した構造体に金蒸着等を用いてTHz帯導波管回路を作成した実績を持つチャールマス工科大学(スェーデン)との共同研究を開始した。具体的には研究代表者が800GHz帯において設計を行った導波管型90度ハイブリッドカプラーを、チャールマス工科大学において試作を行った。試作の結果、800GHz帯において導波管型90度ハイブリッドカプラー十分な精度で制作することが可能であることを確認した。この成果を平成20年3月に開かれた応用物理学会で口頭発表を行った。今後は研究代表者が本研究の初年度に2mm帯で既に実証したサイドバンド分離導波管回路をTHz帯でマイクロマシニングにより作成を行う。そして国立天文台で開発しているAIN接合を用いたTHz帯において広帯域特性が期待できるSIS素子と組み合わせ、高感度かつ高帯域なTHz帯超電導サイドバンド分離ミクサの実現を行う。
著者
谷川 清隆 河鰭 公昭 相馬 充
出版者
国立天文台
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2002

申請者らは、四庫全書から順次天文史料を抜き出し、史料をパソコンに蓄積した。史料は漢書から明史におよぶ。一部は国立天文台報において印刷中である。地球自転鈍化パラメータΔTと月運動の鈍化パラメータを紀元前700年から紀元1000年までの期間で精度よく決定した。日本の天文史料は新たに2つの日食を今江廣道氏の協力を得て史料に加えた。日本の天文史料の信頼性は時刻制度の検討とともに行った。また紀元前188年と紀元873年の日食同時観測データであることを発見した。2003年8月には箱根において「授時暦合宿」を行い、そこでの合意の下に、藪内清・中山茂の授時暦研究ノート、建部賢弘の授時暦議解をデータベースにする作業を始めた。打ち込みは終了し、校正の段階に進んだ。研究成果は2003年8月シドニーにおけるIAU総会、2003年9月サンクトペテルブルグでのシンポジウムにおいて発表した。そのほか、慶應大学、科学博物館において一般講演を行い、2003年6月には京都コンピュータ学院主催のシンポジウム「歴史を揺るがした星々」において招待講演を行った。申請者らの成果は一般の注目するところとなり、朝日新聞2003年5月31日夕刊の14面、京都新聞2003年6月29日26面、および毎日新聞2004年2月7日科学欄で紹介された。