著者
金 樹英 西牧 謙吾 東江 浩美 田島 世貴 豊田 繭子 佐久間 隆介 篠原 あずさ
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

特別支援教育の経験がなく不登校のASD青年を対象にショートケアを実施した。研究期間中に利用登録したのは11人で、就労移行支援サービスや進学などで卒業したのは5人、2年以上利用継続しているのは3人だった。ショートケア利用により親の総合的な精神的健康度は改善がみられた。外来通院患者で不登校の有無で比較したところ、不登校群の方が全検査IQ(FSIQ)、言語理解(VCI)、知覚推理(PRI)の得点が高く、ワーキングメモリー(WMI)、処理速度(PSI)では差がみられなかった。発達障害を伴う場合(N=22)では、同様のパターンがより顕著にみられた。
著者
和田 真 小早川 達
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

「スイカに塩をかけると、甘くなる」といった味覚の増強は、万人に通用するとはいえない。これまでの調査研究からも、自閉スペクトラム症者は、「味がまざるのを嫌う」とされており、塩味・甘味等の知覚の分離がうまくいかないことが、偏食に結びつく可能性がある。本研究では「基本味間の時間的に過剰な統合が、味覚の問題に起因した偏食を引き起こす」という仮説のもと、発達障害者における偏食の背景にある神経メカニズムの理解と、解決策の提案を目指す。
著者
硯川 潤 井上 剛伸 中村 隆
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では,日常生活でのうつ熱発症予防という観点から,身体との接触面からの体熱除去で誘発される温熱生理反応の特徴抽出と,最適な冷却アルゴリズムの確立を目的とした.健常者を被験者とした温熱環境下での背部冷却実験から,発汗量の有意な減少を確認できたため,人為的な体熱除去が人体の温熱生理反応を代替できることが示された.一方で,被験者間の皮膚温のばらつきが減少したり,皮膚温と血流量の相関性が崩れるなど,体熱除去が通常の温熱生理反応の外乱となりうる現象も確認された.この結果は,代謝量や生理反応を指標として,冷却出力などをリアルタイムに調整する必要があることを示唆している.
著者
硯川 潤 井上 剛伸 中村 隆 高嶋 淳
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では,近年生産技術としての応用が期待されている3次元積層造形技術を福祉機器部品の製造に適用するための,基礎的な設計手法を提案することを目的とした.積層造形で製作された造形物には,積層方向に依存した異方的な強度特性が存在することが知られており,安全利用の妨げとなっている.そこで,引張・曲げ強度試験により強度特性を系統的に把握し,さらに,既存の表面改質処理が強度特性を部分的に改善する効果を有することを確認した.また,これらの実験的に得られた知見が,実際の義手部品の強度予測に適用可能であることを確認できた.
著者
阿久根 徹 吉村 典子 村木 重之 岡 敬之
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

日本の三地域に設立した一般住民コホートにおいて疫学調査を実施し、ビタミンK不足と運動器障害との関連を検討した。問診票により食事ビタミンK摂取量を調査した2453名において、ビタミンK摂取量が150 microgram/d未満であった者の割合は15%であった。また山村部コホートの対象者827名において、単純膝レントゲン画像における変形性膝関節症の指標と食事ビタミンK摂取量との間に有意な負の関連があり、ビタミンK摂取量の不足が変形性膝関節症と関連していることが明らかとなった。
著者
和田 真
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、自閉症の当事者・支援者が感じる身体像に対する違和感を定量化するために、視覚-触覚の時空間統合と身体感覚の個人差や発達過程を調べることを目標としている。本年度は、昨年度に引き続き、複数の心理物理実験、脳機能計測(fMRIによる機能結合評価)、神経内分泌計測(唾液中オキシトシン濃度)に関する研究を行い、自閉傾向に関連した認知神経科学的な特性を明らかにした。自己身体像の錯覚を評価できるラバーバンド錯覚課題では、コミュニケーションや社会スキルの困難の自覚が強いほど、錯覚で生じるラバーバンドへの身体所有感が弱く、さらに錯覚の身体所有感と唾液中オキシトシン濃度との間に正の相関を見出した (Ide & Wada, 2017)。また自閉傾向の高い参加者では、周期的な刺激が錯覚を強化した (Ide & Wada, 2016)。視触覚の相互作用を調べる触覚誘導性視覚マスキング課題では、この現象の生起に二次体性感覚野と視覚野の機能的結合が重要である可能性を発見した(Ide et al., 2016)。さらに視点切り替えにおける身体像の影響と自閉傾向の関係も調査した。自己と他者の左右を判断させる課題では、細部への注意が強いほど、他者の背面像への投影が弱く、想像力の困難感が強いほど、他者の身体部位への注意が強い可能性が示唆された(Ikeda & Wada, ECVP2016)。また、日常生活上の困難と認知特性の関連を探るためにグループインタビューを実施した。以上のように、発達障害のコミュニケーション困難の背景には、情報のまとめ上げの困難とその結果生じる身体性の問題が深く関与しているという当初の仮説を裏付け、自閉症の当事者が感じる身体像に対する違和感の背景にある認知特性を定量的に示すことができた。
著者
伊藤 祐康
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

現在、発達障害児童の割合は多くなってきており、その理解と対応は急務となってきている。こういった割合の高さからも教育的なニーズが高まっており、その機序の解明は重要である。これまで自閉症に関して認知科学の視点からコネクショニスト・モデルが提唱されており、特に線形分離できない課題が自閉症者で難しいことが指摘されている。しかし、論理演算を組み込んだ行動実験はこれまでないためおもちゃに論理演算を組み込んだ実験を行い、自閉症児と定型発達児で比べてみる研究を行った。
著者
伊藤 和之 加藤 麦 中村 仁洋 池田 和久 幕内 充 水落 智美 岩渕 俊樹
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

重度の中途視覚障害者の手書き行動が学習に影響を与えるかを検証するため,新規外国語単語学習課題を手書き有り無しの2条件で行う行動実験及びMRI撮像を行った.その結果,聴くだけの学習は短期記憶で,手書きとの併用は長期記憶で有効との示唆を得た.また,視覚障害者群で,両側の運動野を含む前頭頭頂葉から後頭葉に亘る広い領域で,晴眼者に比して強い神経活動が見られた.特に,左前楔状回を中心とする視覚領域では,手書き条件で,非手書き条件より強い神経活動が観察された.重度の中途視覚障害者の手書き行動は,長期記憶に有効であり,視覚心像に関わる視覚連合野を中心とする神経活動を介して学習促進が起こることが示された.
著者
小野 栄一 筒井 澄栄 蔵田 武志 大西 正輝 尾形 邦裕 植山 祐樹
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

障害により体が不自由な車いす利用者の体型に合い、着崩れせず、動きを妨げない等、障害に配慮された衣服が必要だが、従来の衣服作製技術は立位姿勢が基本で、座位姿勢ではない。そこで、座位姿勢の衣服作成支援のため、衣服を着た座位姿勢での非接触・接触3次元体形計測システム、衣服圧が測定できて自由に座位姿勢を変えられるダミーを研究・試作した。また、試着の負担軽減のため、RGB-Dカメラによる非接触3次元計測にて衣服CGモデルを作成し、アパレルCAD等によるシミュレーションのような実時間で試着結果を可視化するため、体の動きの認識結果に応じて衣服CGを変形させAR技術で重畳表示する手法を開発した。
著者
遠藤 智美
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

音声知覚時において、視覚情報から得る音響要因としてフォルマント周波数に着目し、フォルマント周波数以外の音響要素を揃えた母音を用いて母音弁別課題を実施し、課題遂行時の脳波を計測した。健常成人を対象とした脳波計測の結果は、有意な波形差は認められなかったが、皮質下に電極を留置した難治性癲癇患者に対して実施した皮質内脳波計測では、音声のみの提示で音声提示から200ms以内に、左外側側頭葉後部で認められた母音ごとの差が、視覚情報と同時に提示すると認められなくなった。これは、口の形という視覚情報があることで聴覚野近傍の神経応答が変化することを示唆する。
著者
緒方 徹 長尾 元史 杉森 道也
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

脊髄損傷後の再髄鞘化促進は、損傷脊髄の機能回復に向けた重要な治療戦略のひとつである。再髄鞘化を促進するためには、オリゴデンドロサイトの前駆細胞を活性化し、その増殖、分化、成熟を促進する必要があるが、この過程の分子メカニズムは未だ不明な点も多い。本研究では、チャージ症候群の原因遺伝子として知られているクロマチン再構成因子Chd7が、転写因子Sox2と協調して働き、脊髄損傷後の前駆細胞の活性化を制御することを明らかにした。
著者
小林 吉之
出版者
国立障害者リハビリテーションセンター(研究所)
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,ヒトが歩行中に転倒するもっとも主要な要因である『つまずき』が生じる一因を解明するために,これまで著者らが行ってきた研究で得られた知見を基に,ヒトが歩行中に足部の位置をどの程度正確に知覚できているか,その特性を実験的に明らかにすることを目的とした.本研究の結果,ヒトの足部は歩行中遊脚期にも30mm程外側に偏っている事が確認された.