著者
古賀 寛教
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近年、水素ガスにフリーラジカル消去作用があると報告されており、その抗酸化作用を期待して様々な薬理作用が研究されている。本研究では、水素ガスを、安全かつ確実に体内に供与するシステムを構築し、さらに、心臓での検討に先立って行ったラットの腎虚血再灌流モデルにおいて、水素水投与による腎機能の改善効果を発見した。この研究により、低用量においても水素が抗酸化作用を発揮していることが推測され、今後、各種病態に応用できる可能性を示した。
著者
川田 菜穂子
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

戦後日本の住宅システムは、世帯主である男性勤労者が持家を取得することを前提としてきた。しかし日本では結婚や家族形成のあり方が大きく変化し、離婚の増加が顕著である。本研究は、日本と異なる住宅システムとジェンダーの傾向をもつ欧州諸国を比較対象として、離別女性の住宅経歴の実態分析を行うところから、日本の住宅システムの実態と課題を明らかにするものである。国際機関が提供するパネル調査や独自調査の結果を分析したところ、住宅システムの違いにより、各国の離別女性の住宅経歴には異なる傾向がみられた。日本では離別時の女性の転居率が顕著に高く、移動を経験した女性は厳しい住宅条件におかれている。
著者
渡邉 浩一郎 白尾 国昭 波多野 豊 大津 智 森永 亮太郎 平島 詳典 久松 靖史 西川 和男 河野 桜
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

2012年10月1日UMINへ「上皮成長因子受容体(EGFR)阻害薬の耐性獲得に対して制御性T細胞が及ぼす影響」(受付番号:R000010551)として登録を行った。皮膚及び血液検体の免疫組織学的検索の解析から、EGFR阻害薬投与後の皮疹の出現に伴い、制御性T細胞マーカーであるFOXP3およびCTLA-4陽性細胞の真皮への浸潤が経時的に増加していることを確認した。皮膚のmRNAレベルでも制御性T細胞のマーカーであるCTLA-4の発現が亢進していることが証明された。同時に測定した炎症性サイトカインや炎症抑制サイトカインは個体差が大きく一定した傾向をみることができなかった。
著者
田中 圭 森 拓郎 井上 正文
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

2011年3月11 日の東日本大震災では、多くの木造住宅が津波による浸水を受けたものの構造的な被害は免れた。また、東海・東南海・南海連動地震の新しい被害想定では、東海から九州に至る太平洋沿岸で最大36m もの津波到達が予測されている。この地域は、平野部に都市圏を抱えるため、仮設住宅で対応できる規模を大きく上回る住宅が浸水することが予測される。これを踏まえ、数時間から数日間水没を経験した木造住宅が余震の続く状況下で再使用が可能か、学術的に検証した。この結果、壁倍率は、1日養生後にわずかな低下が見られたが、3か月経過後は養生環境にかかわらず、コントロール試験体と同等の値まで回復する結果となった。
著者
土居 晴洋 山崎 健 香川 貴志 木本 浩一
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,現代中国において改革開放政策導入以後,急速に展開されている住宅改革の実態と都市地域構造の変化における意味を明らかにすることを目的としていた。本研究の具体的な研究テーマは,中国における住宅改革の特質を明らかにすること,中国国内における都市の住宅の市場化の地域的特質を明らかにすること,北京と上海における住宅開発のタイプとその開発の地域的特質を明らかにすること,住宅建材を含めた中国独特の住宅供給構造を明らかにすることの4点である。これらのテーマに関して,代表者と各研究分担者は海外共同研究者の協力を得て,中国現地において不動産企業や行政機関などへの聞き取り調査や統計・文献資料の収集と整理を行った。土居は住宅改革およびその市場化に関して,文献・統計資料を用いて全国的な動向を把握して北京市と上海市の全国的な位置づけを確認するとともに,北京市における不動産企業への聞き取り調査を進めて,住宅開発が行われるメカニズムを明らかにした。山崎は北京市における住宅開発の地域的動向を統計資料と開き取り調査によって明らかにし,住宅開発が北京市の都市地域構造の変化に持つ意味について考察した。香川は上海市における住宅開発の地域的動向を分析するとともに,インターネットを通じた住宅物件情報の整備状況を調査した。木本は建設業者や内装設備等の関連業者への聞き取り調査を進め,日本とは異なる中国独自の住宅開発プロセスおよび住宅産業の特質を明らかにした。なお,香川と木本は共同で北京市,上海市において,住宅入居者に対するアンケート調査を用い,住宅購入の動機や住宅選択の要因などを考察した。以上の研究成果を通じて,経済成長が急速に進む中国の大都市において,居住環境の改善を求めて住宅を購入する市民,中国独自の土地・住宅制度のもとで住宅開発を行う住宅開発企業,さらに社会主義的特質の維持にも努力する政府・行政機関それぞれの特質と3者の相互関係が明らかになるとともに,このような住宅市場の形成によって都市地域構造が急速に変容していることが確認された。
著者
柴田 克成
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

膨大な時空間情報の中での効率的な学習は,実世界での高次機能創発の鍵を握る。本研究では,特に時間軸の扱いに注目した。事象の重要度を「主観的」に判断し,過去の事象に対する学習に利用する「因果トレース」の考え方を提唱し,状態価値の学習で飛躍的に学習性能が向上した。また,「概念」は行うべき行動の差に基づいて形成されるとの考えの下,強化学習によってリカレントネット内で離散的・抽象的な状態表現が形成された。さらに,自律的なコミュニケーション学習によって物体の動きの情報を伝達できることを示した。時間軸の処理に対して新たな展望をもたらしたが,シンボル処理創発にはダイナミクスの学習能力の更なる向上が必要である。
著者
麻生 和江 古城 建一
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

2003年4月からの知的障害者と大分大学学生とのダンスや福祉レクリエーション・サービスを通して、両者の「からだ」への意識変容を検証した。ダンス活動では、活動を進めていく中で、」大学生は戸惑いつつ,障害者との活動を進めていく過程で,知的障害者を観察し,健常者との違いを明確に把握することができた。他者と自分の違いを認識すること,他者の生を実感することは,健常者間でも求められる。しかしながら,知的障害者に実際に接することで,観念的でしかなかった「健常者」「知的障害者」の相違の根拠を認識することによって,自信を持って「他者と接する」ことができるようになった。それはまた自己の改革を導出することにもなった。知的障害をもつ人々の生活をみると,彼らはその障害の特殊性から,生きるための生活そのものも家族やボランティアや福祉施設等の組織的支援への依存度が高い。そういうわけで,福祉レクリエーションの掛け声は少しずつ高まっているとはいえ,生活のなかに,「こころとからだ」の楽しみを日常的に求めることは困難な状態に置かれている等の考察に至った。結論的には、知的障害者と大学生はダンス活動やレク・サービスを媒介とした交流で,「からだ」を実感する様々な体験を蓄積していき,お互いに生き生きとした「からだ」への認識を深めることができたと考えられる。
著者
森下 覚
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,教員養成系大学で行われている「教育実習」と「体験的プログラム」における学習過程を比較することを目的として行われた。研究の結果,教育実習は失敗を伴う実践的な体験が少なく,指導力の自己認知が高まることが明らかになった。一方,体験的プログラムは現場の教師と協同して働く実践的な機会が多く,学生は教師の背中を見て学ぶことが明らかになった。
著者
小林 隆志 濱野 真二郎 谷内 麻美 Haque Rashidul Mondal Dinesh
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

致命的な内臓型リーシュマニア症(VL)の制圧には、治療による全身症状寛解後に発症する皮膚病変(PKDL)の発症機序を理解し、PKDLを的確に診断・治療することが不可欠である。PKDLのリスクファクターを解明するため、バングラデシュのPKDL患者の調査を行い、VL治療薬別PKDL発症率を解析したが治療薬と発症率に因果関係は認められなかった。しかし、リーシュマニア原虫の Real-Time PCRによる定量的検出に成功し、ミルテフォシンがPKDL皮膚病変内リーシュマニア原虫排除に機能することを経時的、定量的に示した。更に、原虫を高感度で検出する乾燥LAMPの試作に成功し現地での実用性も検証された。
著者
宮町 良広
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、日本における対内直接投資の概要を整理し、それが地域経済に及ぼす効果について、九州を事例として考察した。九州への外資系企業の進出は増加傾向にあり、その数は500事業所を超える(2015年)。外資系企業が地域経済に及ぼす影響は,資本注入,地元企業への刺激,知識の伝播,雇用創出の4領域に区分できることから、九州の場合を分析したところ、これまではやや低調であることが解明された。日本政府は2014年に新たな地域政策である「地方創生総合戦略」を導入し、その中で対内直接投資の拡大を掲げている。地方自治体においては、地域人材高度化などの「高次」政策にシフトすることが重要である。
著者
富来 礼次
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、建築材料の吸音性能を評価する最重要の指標の一つである残響室法吸音率について、近年急速に発展している波動音響に基づく非定常音場シミュレーションを駆使し、残響室法吸音率測定値の変動要因と測定誤差の関係の明確化、および残響室法吸音率補正手法の開発と適用範囲の検証を行った。室形状,周波数,測定試料の吸音率・面積の異なる72種の測定音場を対象に有限要素法による非定常音場シミュレーションを実施し、全壁面へ入射する音のエネルギに対する試料へ入射する音のエネルギの割合(r(t))を用いて補正した残響室法吸音率が、補正しない残響室法吸音率と比較し、理想値をより捉えることを示した。
著者
横井 功 北野 敬明 徳丸 治 西田 育弘
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

研究成果の概要(和文):電子スピン共鳴法を使用しα-リポ酸誘導体(DHL)やビタミンE誘導体(ETS-GS)はヒドロキシルラジカルなどの活性酸素種やフリーラジカルを消去し、過酸化による脂質の分解を抑制することを示した。また、31P-核磁気共鳴法を使用しETS-GSは脳虚血後の再灌流で発生する活性酸素種によるエネルギー代謝への障害を軽減することを見いだした。さらに、ヘモグロビンを使用して、より臨床病態に近い外傷性てんかんモデルラットを作成し、DHLのてんかん焦点形成予防効果を検討したが、DHLでは予防困難なことが明らかとなった。
著者
SEAN・M Chidlow
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、医療に関する文学作品や映画を日本語と英語の二ヶ国語で紹介するウェブサイト上のデータベース、医療人文学データベース日本版(Medical Humanities Database Japan;以下MHDJ)を構築することであった。本研究によって、英語で書かれた文学作品25本、日本語で書かれた文学作品20本、映画作品21本を収録した英語と日本語の二ヶ国語のウェブサイト上のデータベースを構築した。本研究で製作したMHDJはhttp://www.medicalhumanitiesjapan.com. で公開している。
著者
大鶴 徹 富来 礼次
出版者
大分大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

研究代表者と分担者はよ緊密な連携のもと当初計画に従い以下実施した。検討1: 粒子速度センサのキャリブレーション手法の確立に向けた検討:当初計画では広帯域(20Hz-20kHz)への拡張を目指す計画としていた。しかし、所有する2台のセンサが交互に不調をきたし、製造元での調整を繰り返すこととなった。本研究の目的が開発途上にある粒子速度センサの可能性を探ることにあり、こうした事態も予め想定した上で2台のセンサを用いてきた。これに伴い当初予定を変更し、本研究の主眼である100Hz~1500Hzの周波数域に対象を絞り、センサの安定性に留意しつつ以下の各項目を実施した。検討2: 粒子速度センサを利用した測定法と既往の測定手法(残響室法、管内法)により得られる吸音特性の関連の明確化:提案手法、残響室法、管内法3者の吸音率を比較し、その相違を定量的に示した。また、建築研究所や日本大学等で測定したラウンドロビン・データをもとに詳細な検討を加え、音源位置-受音位置-試料境界-音圧・粒子速度、の相互関連を実験的に明らかにした。検討3: アンビエントノイズの定義の明確化:高速多重極展開境界要素法を用い、音場のパラメトリックスタディとモンテカルロシミュレーションを実施し、アンビエントノイズの定義並びにその利用による音響測定メカニズムの詳細を解明した。なお、粒子速度センサを利用して材のランダム入射時の吸音特性のアンサンブル平均を測定する際に必要な各条件(センサ位置、試料寸法等)を明らかにし、本研究の成果を活用し材料の開発等を行う際の基礎資料とした。これまでに得られた成果については逐次、日本建築学会、日本音響学会、Internoise (Ottawa、招待論文)、WESPAC(北京)等で公表し、周知と議論に努めた。また、測定メカニズムに関わる基礎的検討の成果はアメリカ音響学会誌で公表した。
著者
宮崎 英士 安東 優 濡木 真一 石井 稔浩 小野 恵美子
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

今回の研究で、急性好酸球性肺炎患者の気管支肺胞洗浄液には高濃度のオステオポンチンが検出されることを明らかにした。他の臨床病型である好酸球性肺炎でも高値であり、好酸球性炎症に特異的と考えられた。オステオポンチン濃度は、好酸球性炎症を惹起すると考えられているサイトカインと正の相関を示した。蛍光二重染色法では好酸球に強いオステオポンチンの発現が認められた。以上より、好酸球由来のオステオポンチンが急性好酸球性肺炎の病態形成を促進している可能性が示唆された。
著者
山岸 治男 有田 憲仁
出版者
大分大学
雑誌
生涯学習教育研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.4, pp.63-70, 2004-03

かつて、地域社会の主な担い手は、企画運営・参加出席の両方とも主として壮年期の男性であった。産業構造の近代化・現代化の進行に連れ、様相が変わった。今日では、地域社会を実質的に支えるのは男女高齢者と女性である。だが、地域社会には壮年期男性の欠落化による新たな問題が起きはじめている。例えば路上犯罪の多発、男性不在の子育ち・子育て、家庭も仕事も地域役割もすべて女性にという男女協同参画社会に逆行する事象などがそれである。事態を転換するには、あらためて壮年期男性の地域参加が要請される。そのための社会制度や社会意識の改革が求められる。では、それには社会教育にどんなプログラムを準備したらよいか、本研究は公民館の事業を例にこの課題にアプローチするものである。
著者
犀川 哲典 WANG Yan
出版者
大分大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

不整脈の発生母地としてのイオンチャネルの異常発現を検討する実験動物では、多くの場合に電位依存性Na+チャネルが減少しており、そのために興奮伝導の低下が生じることが多い。その結果、興奮伝導の低下によってリエントリー回路が形成され易くなり、心房細動は停止は困難になる。我々は、心筋細胞をプロテアソーム活性化剤(SDS)存在下で長時間培養するとNa+チャネル電流は減少する予備データをよりどころに、Na+チャネルは心臓の発生に関わる転写因子GATA4他の初期分化関連転写因子の作用によって発現が制御されるという仮説を立てた。その検証として、遺伝子組換えアデノウィルスを以下の要領で作成した。次に、リニア化したTRE17-pAdTrack-CMVとウィルスのbackbone plasmid(pAdEasy-1)をcompetent cell(BJ5183)にco-transfectし環状ウィルスDNAを作成した。更に、リニア化したTRE17-pAdEasy-1をHEK細胞にtransfectしてウィルスを収穫した。通常のpAdEasyシステムを用いて遺伝子(MEF2C,Tbx5,SRF,FOG-2)組換えアデノウイルスを作成した。次に、新生ラット単離心筋細胞に、組換えアデノウイルス(MEF2C,Tbx5,SRF,FOG-2)をトランスフェクトさせ、2日間隔(あるいは4日、8日間隔)で順次導入して、細胞の心筋化誘導とイオンチャネルの発現を行った。トランスフェクト後にどのように心筋分化が誘導されるか以下の手順で評価した。その結果、1)転写因子GATA4の遺伝子導入後に心筋細胞の自動拍動が有意に増加することを確認し、2)膜電位固定法によって細胞の最大拡張期電位が有意に過分極することを明らかにした。