著者
梅本 真吾
出版者
大分大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

好酸球性副鼻腔炎(ECRS)は組織中への著しい好酸球浸潤を特徴とする難治性の副鼻腔炎である。ECRSはステロイド以外の薬物効果が乏しく、手術を行っても高率に再発を来すため、新たな薬物療法の開発が求められている。一方で、内因性カンナビノイドはタイプ2カンナビノイドレセプター(CB2R)を通じて免疫系のバランスをとることが知られており、受容体発現が増強した際に外因性カンナビノイドを投与することで病態の修復を促す可能性が考えられている。本研究では、ECRSにおけるカンナビノイドシステムの寄与について検討することで、カンナビノイドシステムを介したECRSの治療の可能性につき評価する。
著者
矢野 博之
出版者
大分大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

我々は、放射線誘発線維症(RIF)に関する遺伝子発現メカニズムを解析するために、細胞外マトリックスの主成分であるI型コラーゲンの転写レベルでの発現調整を調べてきた。また、非コードRNAの一種であるmiRNAについて、miR-29及びmiR-26がRIFにおける転写後の遺伝子発現調節に関与することを報告した。転写後のRIF発現メカニズムについてさらに調べるために、本研究は、miRNAと競合して転写後の遺伝子発現調節に関与するlncRNAに着目し、昨年度までにRIFに関与するlncRNAとして、lncRNA-Xを見出した。今年度は、lncRNA-Xと相互作用しうるmiRNAを見出し、RIFにおけるmiRNA及びlncRNA-Xの機能的役割について調べ、以下の結論を得た。in silico解析により、lncRNAと結合が予測されるmiRNAとしてmiR-Aを見出した。また、lncRNA-X及びmiR-Aが標的としうる遺伝子を調べた結果、抑制型smadであるSmad7を見出し、ルシフェラーゼアッセイの結果、Smad7の3'UTR配列において、miR-A及びlncRNA-Xが結合することが分かった。さらに、miR-Aを過剰発現させた場合、lncRNA-X及びSmad7の発現が抑制された一方、I型コラーゲンの発現が上昇した。これらの結果により、lncRNA-XがmiR-Aと相互作用してSmad7の発現を調整し、放射線によるI型コラーゲン発現増加に関与することが示唆される。
著者
阿部 史佳
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

性差による口腔扁平上皮癌の病態の違いをみるため、まず40歳未満の若年口腔癌患者を26人(男性15人、女性11人)対象に、生活歴、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染率、エストロゲン受容体α(ERα)とエストロゲン受容体β(ERβ)の発現に差があるか否かを検索した。喫煙者は男性77%、女性患者18%と圧倒的に男性患者に多く、HPV感染率は男性 53.3%、女性63.6%(全体は57.7%)とやや女性に多かった。ERαは癌細胞の細胞質と一部の細胞核に、ERβは癌細胞の細胞核に陽性を示し、両者の発現パターンに男女間での違いを認めなかった。若年口腔癌では性差による差を捉えることができなかったため、次に口腔多発癌患者に対象を変え、口腔潜在的悪性疾患OPMDの有無を検討した。この結果、OPMDを73.3%の症例に認め、その内訳は口腔扁平苔癬OLPが最も多く(46.7%)、次いで口腔白板症(20%)であった。またOLPを併発した口腔多発癌患者の71.4%が女性であったことから、OLPが女性の口腔多発癌の発症と関連することが示唆された。そこで女性の口腔多発癌と男性の単発口腔癌では口腔発癌過程の違いがあるものと仮説をたて、まず早期癌18例(男性12例、女性6例)を対象に癌周囲粘膜における異型上皮の有無を検索したところ、女性では4例(66.7%)、男性では1例(8.3%)で口腔癌から離れた部位にスキップした異型上皮を認めた。このことは女性では多中心的に口腔発癌が生じやすい傾向を示しており、OLPを前駆疾患とする口腔多発癌が女性に多いことと合わせて注目すべき所見と考える。現在、口腔発癌の初期に高頻度に生じることが報告されている遺伝子変異(9p21と3p14領域のヘテロ欠失)に注目してさらに検索を進めている。
著者
尾崎 貴士
出版者
大分大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究代表者が所属する研究室では、SLEモデルマウスと野生型マウスの脾臓および血液中に含まれる脂質メディエーターの濃度を、計159種類の脂質メディエーター関連物質を解析対象とした液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を用いて解析を行った結果、SLEモデルマウスではパルミトイルエタノールアミド(PEA)及びオレオイルエタノールアミド(OEA)の濃度が野生型マウスに比べて血中及び脾臓内で低値であることをこれまでに明らかにした。そこで、SLEの病態形成機序に関わっているToll様受容体9(TLR9)刺激に対するPEAの作用を解析することとし、これまでの研究においてPEAは骨髄由来樹状細胞におけるTLR9刺激による炎症性サイトカイン(IL-6, IL-12, IL-23)の産生をmRNAレベルおよびタンパクレベルの両者で抑制することを見出した。また、同様に脾臓B細胞やマクロファージ細胞株(Raw 264.7細胞)においても、PEAはTLR9刺激によるIL-6の産生をmRNAレベル、タンパクレベルで抑制した。さらにPEAは、骨髄由来樹状細胞においてTLR9刺激による細胞表面マーカー(CD86、CD40、MHC ClassII)の発現を抑制し、同様にB細胞においてもCD86とCD40の発現をPEAは抑制することを見出した。また、本年の研究により、PEAはTLR9刺激によるマウス脾臓B細胞の増殖を抑制すること、さらにB細胞におけるTLR9刺激によるIgM抗体産生も抑制することを明らかにした。in vivo においても、TLR9刺激薬であるCpG-ODNとDガラクトサミンを用いたseptic shock modelマウスにおいて、PEAを投与することにより血中IL-6濃度の上昇が抑制されることをすでに見出しており、一連の研究結果から、SLEをはじめとするTLR9刺激よる炎症病態の制御にPEAが有用である可能性が示唆される。
著者
八木 直樹
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、戦国大名大友氏と室町幕府・朝廷との関係を明らかにすることである。成果として、戦国期の大友氏当主が室町幕府・朝廷から獲得した守護職などの幕府官職と官位などの栄典について、彼らがいつ何を獲得したのかを明確にした。大友義長は3つ、大友義鑑と大友義鎮は8つの幕府官職と栄典を獲得していた。これらには、大友氏が申請のもの(主に守護)と幕府側より与えられたもの(主に栄典)があった。戦国大名大友氏と室町幕府・朝廷との交渉の頻度は、保守的なイメージとは異なり多くはなかった。本研究により遠国の戦国大名と室町幕府・朝廷との関係のあり方を提示することができた。
著者
鈴木 留美子 山岡 吉生
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、(1)Helicobacter pylori(ピロリ菌)を利用した先史時代アジアにおける人類移動経路の推定、および、(2)ピロリ菌が持つ新規疾患関連因子の探索の2つをテーマとして進めた。テーマ(1)に関しては、沖縄に特異的に見られるピロリ菌の分岐年代(2~3万年前)から、縄文時代以前に琉球列島に人口流入があった可能性が示唆された。テーマ(2)に関しては、胃がん、および胃MALTリンパ腫患者由来のピロリ菌の比較から、主要な病原性遺伝子であるcagAとvacAで、アミノ酸頻度に有意差のある座位を見出した。
著者
杉田 聡 田中 誠二 後藤 芳美 丸井 英二
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、1945~1952 年の占領期において、厚生省等の日本の行政機関と、GHQ/SCAP/PHW(連合国最高司令官総司令部 公衆衛生福祉局)との協同や対立と構造を分析した。分析には、国立国会図書館に所蔵されるGHQ 文書、特に占領開始から終了までのGHQ/SCAP/PHWの業務日誌であるDaily Journalを用いた。厚生省とPHWの会合記録を集計分析した結果、占領開始時の厚生省衛生局長である勝俣稔が重用されていることが明らかとなった。また、①日本脳炎対策のための岡山県の野外調査と、②衛生教育のために全国を巡回した公衆衛生列車の立案実施の実態を明らかにした。
著者
池崎 八生 池崎 喜美恵
出版者
大分大学
雑誌
大分大学教育福祉科学部研究紀要 (ISSN:13450875)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.151-165, 2004-04

台北、台中、高雄日本人学校における技術・家庭科関連施設や授業観察などを行い、技術・家庭科教育の実態を明らかにした。また,日本人学校の生徒を対象に技術・家庭科学習および技術・家庭科観、情報機器に関する知識や経験についてアンケート調査を実施した。その結果、次のような知見を得たので報告する。技術・家庭科を男女がともに学習すべきで、日常生活に役立ち、生活に必要な技術を学習する教科としてとらえていた。技術学習では、パソコン使用や木材加工の楽しさを、家庭科学習では調理実習の楽しさを中学部の生徒が回答していた。技術・家庭科学習の必要性を児童・生徒は十分認識しているので、興味・関心を引き出す指導を工夫することが必要である。また、パソコンやインターネットに対して、男女ともに関心が高い現状が明らかになった。したがって、各教科での活用方法を工夫し、IT時代における情報機器の更なる活用を検討すべきである。
著者
吉松 博信 加隈 哲也 正木 孝幸
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ストレスと肥満症における脳内神経ヒスタミン機能を明らかにするために、平成22年度は以下のような研究成果をあげた。1)痛覚ストレスおよび情動ストレスは負荷後24時間の1日摂食量を有意に減少させた。2)4時間拘束ストレスは負荷後24時間の1日摂食量を減少させた。3)飢餓ストレスとしての72時間の絶食負荷後、再摂食時の摂食量はストレス負荷前の摂食量と比べ有意に減少した。4)インスリン誘発性低血糖はインスリン投与後2時間の摂食量を有意に増加させた。5)寒冷ストレスは食行動に影響しなかった。6)tail pinchによるストレス負荷は食行動を誘発した。以上の実験結果から各種ストレスは主に摂食行動を抑制する方向で作用するが、寒冷ストレスは効果がなく、tail pinchは食行動促進性に作用するなど、ストレスの種類にともない反応が異なることが確認された。現在これらのストレスの慢性負荷による影響を検討している。また3),4)より飢餓ストレスの効果は低血糖などのエネルギー欠乏が直接原因ではなく、エネルギー欠乏によって生じる神経ヒスタミンの増加など、他の要因の関与があることが示唆された。そこで、ストレスと神経ヒスタミンに関して以下のことを明らかにした。7)拘束ストレスによる食行動抑制反応はヒスタミンH1受容体欠損マウスでは有意に減弱した。8)拘束ストレスは視床下部において、ヒスタミン合成酵素であるhistidine decarboxylase (HDC)のタンパク量を有意に増加させた。9)拘束ストレスは視床下部の神経ヒスタミン代謝回転を有意に増加させた。10)寒冷ストレスは視床下部のHDCタンパク量を有意に増加させた。以上より、拘束ストレスによる摂食抑制作用は神経ヒスタミンを介していることが明らかになった。他のストレスによる神経ヒスタミンの動態変化を現在解析中である。
著者
朴 順愛
出版者
大分大学
雑誌
国語の研究 (ISSN:09173544)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-14*, 2003-11
著者
麻生 和江
出版者
大分大学
雑誌
大分大学教育福祉科学部研究紀要 (ISSN:13450875)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.319-328, 2003-10

極端な細身が優位とされる風潮がある。様々なダイエット志向の情報も氾濫し,猟奇的で残虐な犯罪の報告も多い環境にあって,身体が玩具のように物化される危機感を感じる。教育,表現,健康の視点から、若者(大学生)には自分の「からだ」を防護する手だての指導は緊急の課題と考えられる。そこで本稿では、その手がかりとして、形状、運動機能、健康・自己制御の視点から、大学生におけるからだへの意識を把握することを目的として質問紙による調査を実施した。結果として全体的には、半数以上の学生が今の自分の形状に不満があり、細身への変身願望が強く、女子は男子に比べて細身への変身願望が顕著であった。また、調査対象の約8割は運動が好きと回答し、男子は女子より運動好きが多く、動きの機能においても男子の方が女子より高く自己評価する傾向がある等、大学生における「からだ」への意識の一端を把握することができた。
著者
Day Stephen
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

In June 2017, I was able to make an initial presentation to the EUSA-AP Conference (Tokyo) which provided invaluable feedback for the start of my project. Two months later, I was invited to give a lecture at the United Nations University (Tokyo) on the issue of Brexit. Indeed, much of this year has been taken-up following the on-going machinations of the UK's withdrawal process and the corresponding impact on the European Union. This has resulted in public lectures for the EUIJ-Kyushu and the Saga EU Association. In terms of party-politics above the level of the nation-state, I was asked to write a contributing chapter for the International Institute for Democracy and Electoral Assistance (co-ordinated by Steven Van Hecke, Leuven University). In December 2017, I attended the Congress of the European Liberals (Amsterdam) where I observed preparations for the 2019 European elections and the process for selecting a leading candidate (spitzenkandidat); undertook numerous on-the-spot interviews; and engaged in some debates.While in Amsterdam, I also had the opportunity to undertake some archival research on the start of the European integration process post-1945. In addition, I visited Ireland where I undertook numerous interviews with national parties, across the political spectrum, about their views on Brexit and their relations with their corresponding Europarty. The information I collected is presently feeding into a paper I will present in Taiwan (EUSA-AP) in June 2018.
著者
牧野 芳大 馬 紹平
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

日本脳炎ウイルス(JEV)は、そのC-prM遺伝子領域(240塩基)による分子系統樹解析およびそのウイルスの分離地をもとに4つの遺伝子型(G1〜4)に分類される。日本国内のJEVの遺伝子型は従来G3型に属するとされていた。しかし、1994年頃を境にG3型からタイ北部の株に属するG1型と交代していることが明らかになり、JEVが海外から持込まれた可能性が示唆された。大分、長崎、沖縄、大阪、石川、東京で1965-2001年に分離された23株について、JEV遺伝子のC-prM遺伝子領域の塩基配列をもとに分子系統樹解析を行ったところ、従来のG3型は時間的経過と共にA, B, C, D, E1, E2のクラスターに分類された。次に、これらのクラスター間の抗原性の差異について検討するため、大分県で1981〜2003年に分離された、異なるクラスターのJEV6株と大分県内で飼育され、JEVに自然感染したブタ血清検体(20検体)を用い、ベロ細胞を用いた50%プラーク減少法による中和試験を行った。各ウイルスによる20検体の血清抗体価の幾何平均値間の多重比較による有意差検定を行った。その結果1981年の株は1989年の株との間に有意の差が見られた。また、1989年の株は1995年の株および2003年の株との間に有意の差が見られた。尚、1995年の2株の間にも有意の差がみられた。しかし2003年の株は1995年の株および1981年の株との間に有意の差は認められなかった。C-PrMによる系統樹分類は中和試験に関与するエンベロープによる系統樹と類似することが報告されている。本研究では、中和試験による各系統間の差は明確ではない。しかし、1980年代前半、後半および1990年代以後のJEVで中和反応に関与するウイルスの抗原性にわずかな差が見られる。異なる抗原性をもつJEVの国内持込に対し継続した監視が必要である。
著者
賀川 経夫
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、画像などの非構造データを含むビッグデータの解析において、視覚化だけでなくVR技術を応用した没入型のインタフェースの構築に関する検討を行った。音を用いた医用画像診断支援ツールについて、学生と放射線科医に利用してもらい、その効果を検証するとともに、没入型インタフェースに関する考察を行った。その結果、モダリティ間の連携に検討の余地はあるものの、没入型インタフェースの有効性に関する示唆を得ることができた。
著者
西野 浩明 吉田 和幸 池部 実 賀川 経夫
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

3Dプリンタ等のものづくり機器の普及により,一般利用者が実物の試作を独力で行える環境が整ってきた。この技術の進展には,少品種大量生産を想定した従来型のものづくりから,個人の特徴や感性を反映した個性的なものづくりを支援する,新たなデザインおよび演出手法の開発が必要である。本課題では,利用者の感性や嗜好に基づいて既存の3Dデータの形状や質感を個性化し,地域の環境情報を造形過程に組込む新たなものづくり技術を開発する。さらに,触感や香りなどの多感覚情報を融合しながら,デジタル情報を可視化・演出する要素技術を実装するとともに,実用的な分野のシステム開発と評価をとおして,開発した技術の有効性を検証する。