著者
小松 志朗 浅井 雄介
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-07-18

本研究の目的は、グローバルな感染症対策における人の国際移動の管理の課題と、その解決策を明らかにすることである。前年度の研究において課題の方は概ね明らかにできたので、今年度は解決策の検討に重点を置いた。本研究では、航空機による移動に焦点を絞っていることから、人の国際移動の管理とは空港での国境管理を意味する。国境管理の具体的な中身は移動制限(渡航制限)をはじめとして様々なものがあり、それらを効果的に組み合わせて感染症の輸入リスクを低減させること、あるいは国内対策の準備のために「時間稼ぎ」をすることが管理の目的であり、しかもそれを資源と時間が限られた状況下で実現しなくてはならない。この点については、各国政府にとって国境をどの程度開放/閉鎖すべきなのかという問題は判断の難しい「究極の選択」であると考え、他分野の類似の問題との比較もしながら理論的、倫理的な考察を深めた。そのようにして解決策の骨格を描く一方で、最も有効な国境管理のあり方を具体的に示す理論上のモデル(グローバル管理モデル)の構築を目指し、特に重要な管理措置である移動制限の効果を測るために、投薬、ワクチン接種、感染者の隔離という3つの措置と比較するシミュレーションを行った。その結果、移動制限は10%の制限でも効果があり、理論上は他の3つよりも効果的な措置であることが明らかになった。ただし、その効果は制限の開始時期に大きく影響を受け、開始が遅ければ大流行を防げない可能性が高いことも分かった。移動制限の効果と限界を理論的に把握したことで、グローバル管理モデルの構築の土台を固めることができた。
著者
木島 章文 樋口 貴広 島 弘幸 奥村 基生 鈴木 聡
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

小学校2, 4, 6年生を対象とした実験を完了し,以下の結果を得た(現状も分析を続行している).1) 三者跳躍課題の遂行に伴うミスの回数を学年間で比較した結果,第2学年以上になるとミスの回数が多くなる傾向が見られた.2年生においては一方向のみあるいは定型的に跳躍方向を切り替える組(例えば,左右1回ずつ交互に,あるいは2回ずつ交互になど)が7割がたを占め,第4学年以上になると不規則に跳躍方向を切り返す組が7割がたを占めていた.また第6学年では成人と同じく,反時計回り方向へ跳躍するケースが顕著に多くなった(平均で成功回数の7割).2)先導跳躍者に対する他二者の遅れに関して学年間に有意差はなかったが,全ての学年における遅れ時間が,成人より有意に大きかった.また先導・追従性に差がない等質群においては,成人と同じく,正方形条件における遅れが正三角形条件における遅れより大きい傾向があった.また先導性に差がある異質群においては,成人とは逆に,正方形条件において先導児童が早期に跳躍することを示す二者先導(一者追従)型の協応パタンを示す傾向が強かった.3)等質群では,三者の配置が対称な正三角形条件において三者それぞれが他を先導する確率が等しく(約33%),正方形条件では跳躍方向に空き地を持つ一者が先導する確率が抜きん出て高く,他の二者が先導することはほとんどなかった.これら協応パタンは成人のパタンと同じ性質であり,それぞれの地形における跳躍者の配置の対称性から群論に基づいて予測したパタンと一致する.一方で異質群においては先導児童が場の制約に反して先導する傾向が高かった.そこで現れるパタンの時空間対称性は地形から予測される対称性より低い.現在,跳躍者の個性が地形の幾何学対称性から予測される協応パタンの対称性が,そこに配置される跳躍者の個性によって崩れることを説明する数理モデルを検討している.
著者
土田 孝之 武田 正之 宮本 達也 小林 英樹 中込 宙史 芳山 充晴
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

間質性膀胱炎に対して、ブシ末(トリカブト)中心とした漢方を処方した。3年間継続治療をして、副作用なく効果は持続している。低侵襲性で患者への貢献度は高い。また、ボツリヌス毒素の膀胱筋層内注入療法は10回以上繰り返しても、副作用、効果の減弱は認めない。また膀胱上皮細胞の伸展刺激におけるATP放出の分子メカニズムを、細胞内小胞へのATPの蓄積ならびに開口放出の視点から捉え、ボツリヌス毒素はこのATP放出を抑制する。膀胱痛症候群(PBS)の動物モデルにおいて、脊髄神経膠星状細胞(アストロサイト)の顕著な活性化が示された。マウスの実験でアストロサイトの活性化を漢方のブシによって抑制することが可能。
著者
長谷川 千秋
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

『和字正濫鈔』における契沖の仮名遣研究の本質とは、定家仮名遣などの仮名遣書にあるような「どの仮名で書くか」という仮名遣の規範を示すことにあるのではなく、語が本来、「どのような音をもち」、「その音がどのような仮名で現され」、さらに「どのような意義をもつか」という形音義を示すことにあることを明らかにした。『和字正濫要略』は、その題名の通り『和字正濫鈔』の抄出のように見えるが、仮名遣書として仮名遣の規範を示すに止まり、編纂方針に大きな方向転換があることを明らかにした。契沖の『和字正韻』は、契沖が字音仮字遣の研究を行っていた証左となる文献であることを明らかにした。
著者
村田 暹
出版者
山梨大学
雑誌
山梨大學工學部研究報告 (ISSN:05131871)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.163-166, 1956-08-11

In dieser Schrift wird der Strahl laengs einer ebenen Platte behandelt welcher auf der Nachstroemung hinter dem Spalt der Stroemungsmaschinen anwendbar ist. Die Hauptergebnisse sind : (1) Im laminaren Fall, die Geschwindigkeit nimmt mit x^<-1/2> ab, die Breite mit x^<3/4> zu, und die oertliche Wandschubspannung in der x-Richtung ist proportional x^<-5/4>, wobei x den Abstand vom Spalt bedeutet. Die Geschwindichkeitsverteilung ist in Bild 3 angegeben. (2) Wenn die Platte in der z-Richtung bewegt wird, die z-Wandschubspannung ist proportional x^<-3/4>, wobei z die Kordinate in der Wand und senkrect zum Strahl ist. (3) Der turbulenten Fall wird behandelt unter der Bedingung, dass eine scheinbare Zaeigkeit von y, dem Abstand vor Wand, unabhaengig ist.
著者
田中 勝
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は全国110ヶ所の伝建地区を対象として伝建地区における生活文化の継承と歴史的町並み・集落の保存とを一体的に実現していくための地域共創の住まい・まちづくりの多様な実践、仕組み、現代的意義について全国規模の調査より明らかにした。また伝建地区における住まい・まちづくり学習の教材として各地区を代表する民家をモデルにしたペーパークラフト3種類を新たに開発するとともに、小・中学校の総合的な学習の時間を活用した町並み保存学習への導入を試みた。民家ペーパークラフトの活用は身近な町並みや生活文化について子どもたちの主体的な学びを育み、町並み保存や地域共創のまちづくりの担い手育成に有効であることを実証した。
著者
百澤 明
出版者
山梨大学
雑誌
山梨医科学雑誌 (ISSN:13485091)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.101-107, 2013
著者
高橋 智子
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

海上保安庁の海洋情報部に未整理の状態で保管されてきた海軍時代の水路部の資料調査を行った。その結果、これまで未確認だった「高度方位暦」を発見することができた。膨大な計算を必要とするこの高度方位暦の作成を可能にしたのは、天体暦そのものを独自に推算し、計算方法を工夫してきた編暦課の天文学者たちの努力であった。その経緯を明らかにし、海軍つまり軍事組織のなかで行われた天文学者たちの研究の特徴を論じた。
著者
香川 知晶 大谷 いづみ 竹田 扇 川端 美季
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

生命倫理学では「モンスター」という語が、医学的な「奇形」という意味を離れて、新たな医療技術のもたらす「怪物」といった意味に拡張されて使用されている。ここでは、この疾病概念のメタファー使用の典型例について、その歴史的起源を検討した。その結果、「モンスター」概念は、16世紀以来、何よりも神の意図を蔵している「驚異」の典型として論じられており、医学的な「奇形」概念と比べれば、もともとメタファーとして理解されていたことが明らかとなった。生命倫理学におけるメタファーとしての用法は「驚異」概念の現代における復活として解釈されるのである。
著者
日永 龍彦 石渡 尊子 照屋 翔大
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1940年代の米国では、民間の大学・学校協会よりも州立大学や州政府がアクレディテーションを行なう件数が多く、それが占領側の指導内容に影響していた。これは、戦後改革期の大学設置認可とアクレディテーションの制度を「特殊日本的」と見てきた先行研究の見直しを迫るものである。また、米軍統治下の琉球では、日本本土で頓挫した大学設置認可や大学管理制度が実現していて、それが琉球の人々の選択の結果であったことを明らかにした。さらに、ランドグラント大学をモデルとする琉球大学では、本土と異なり、家政学の教授陣による普及事業が推進され、米国のカリキュラムがそのまま移入されたことなどを明らかにした。