著者
森勢 将雅 能勢 隆
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

VOCALOIDを代表とする歌声合成ソフトウェアが広く一般に普及するにつれ,計算機による「人間的」な歌唱を目指す数多くの取り組みがなされてきた.一方,Auto-Tuneなどのソフトウェアを用いた「非人間的」な歌唱もコンテンツとして利用されている.ここでは,コンテンツとしての自然さと非人間性を両立する歌声が存在するか確認するため,人間性を制御する加工法について研究に取り組んだ.実験の結果,提案法により,人間の歌声が有する揺らぎ成分を除去するという従来のアプローチだけではなく,誇張させた場合でも一定の自然さを保ちつつ非人間的な歌声を生成できることを確認した.
著者
若山 照彦 岸上 哲士 長友 啓明 大我 政敏 水谷 英二
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

今年度は、クローンマウスの研究において念願だったF1以外の卵子からのクローン作出に成功した(Tanabe et al., Reproduction 2017)。最も安く購入できるICR系統の卵子が利用可能となっただけでなく、系統間で卵子の初期化能力を比較することが可能となった。また、核の保存限界を明らかにする研究では、国際宇宙ステーション内で宇宙放射線に長期間曝したフリーズドライ精子であっても顕微授精によって産仔を得ることが可能であり、精子核に対するDNA損傷はわずかであることを初めて証明した(Wakayama S. et al., PNAS 2017)。この成果は主要な全国紙およびNHKなどのテレビで報道されただけでなく、海外でも広く紹介された。またこの研究において、ダメージを受けた精子核は卵子内で修復されていることを明らかにした。糞由来細胞核からのクローンマウス作出の試みでは、安定した核の採取に成功し、卵子内で移植した核のDNA修復が確認されたが(投稿中)、現時点で初期発生には成功していない。一方、活性化した卵子内の核の変化および初期化については、今まで生きたまま観察することは出来なかったが、今回我々は、zFLAPという新技術を開発し、生きたままダメージを与えずに核の変化を観察することに成功した(Ooga & Wakayama PlosOne 2017)。核移植や胚移植のためには、卵子や胚を保護するだけでなく顕微操作において卵子や胚を固定するために透明帯が不可欠である。そこで、人工卵子が作出できた場合のために、人工透明帯の開発を行ったところ、アガロースで作られたカプセルであれば透明帯の代替品となることを明らかにした(Nagatomo et al., Scientific Reports 2017)。
著者
北村 正敬
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

喫煙は潰瘍性大腸炎の寛解因子として知られている。本研究は「喫煙は芳香族炭化水素受容体(AhR)の活性化を介して潰瘍性大腸炎の発症進展を抑止する」という仮説を実験的に検証することを目的に行った。その結果、タバコ煙を曝露させたマウスでは肺および肝臓等で AhRの活性化が生じること、高濃度のタバコ煙への曝露により大腸でも AhR 活性化が起こること、また AhR の活性化物質の経口投与により大腸での AhR 活性化マーカーの発現上昇が認められ、実験的潰瘍性大腸炎の発症進展を抑止できること、を明らかした。
著者
若山 清香
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究は絶滅動物の凍結死体細胞からクローンをよみがえらせる手法を開発することが目標である。そこで核移植技術を中心に、絶滅動物を復活させるために解決しなければならない問題を想定しマウスを用いて実験を行った。本研究費助成期間内に新たな染色体移植の方法、死滅した動物からの細胞の採取法、ならびに半永久的にクローン動物を継続維持できることなどを証明した。
著者
大森 竹仁 林 尚示
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.95-104, 2005

本研究は,生徒会活動を通して集団づくりをすることを目指す一連の中で,特にリーダーの資質について検討したものである。具体的には,大学の学生及び中学校の生徒,並びに中学校の生徒会主任教師を対象とした調査を実施し,その結果をもとにリーダーの資質として重視されている内容を明確化した。この作業により,特別活動で望ましい集団活動を通して人間形成をしていくために,特に特別活動の中での生徒会活動の果す役割が明確化してくる。更には,リーダーの資質に焦点化して研究を進めることにより,今後の学校教育の中で,生徒会活動の教育的効果や教育的価値の再確認に繋がる成果が期待できる。
著者
森 英雄 藤間 一美 清弘 智昭 桜井 彪 小谷 信司 猪井 善生 今 義博
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

研究の目的は盲導犬ロボットを試作し、視覚障害者に本当に役に立つ歩行補助装置は何かを明らかにすることである。ロボットは電動車椅子に環境を理解するためのセンサーと電子地図を載せ、障害物を回避しつつ視覚障害者を道案内するロボットである。本研究による成果は次の通りである。1)画像処理とDGPSをベースとする盲導犬ロボット「晴信7号機」を開発し、大学構内の走行実験や知能ロボットシンポジウム(1997年1月、川崎産業振興会館)、8th Int'l Symp.of Robotics Research(葉山,1997年10月3-7日)の公開デモで自律走行に成功した。2)ソナーをベースとする盲導犬ロボットを開発し、視覚障害者の歩行を研究している心理学者が被験者になって評価し、盲導犬ロボットの有効性を実証した。3)足のリズムを歩行者のサインパターンとして画像処理で検出するシステムを開発した。4)自動車の真下の陰を自動車のサインパターンとして画像処理で検出するシステムを開発した。このシステムで交差点を通過する自動車の位置と速度を検出し、交通規制に基づいて進路を予測し、危険度を判定するシステムを開発した。T字路で実験した結果90%の確率で危険度を予測できた。5)パルスコードで変調した超音波を送信し、物体からの反射波と送信波の相関をとって距離を計測するソナーシステムを開発した。トラックや建築機械等が出す騒音に強いことを実証した。また複数のソナーシステムのパルスコードを変えることによって同時計測が可能なことを実証した。
著者
森 一博 田中 靖浩
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は, ウキクサ類を用いてデンプンを多く含むバイオマスを生産し,これをバイオエタノール生産の原料に用いようとするものである。そこで,有用ウキクサ植物株の探索, バイオマス生産条件, デンプン誘導条件, ウキクサ類バイオマス由来デンプン糖化条件を明らかにした上で,供試植物のエタノール生産への適用性と実用性評価を検討し結果,ウキクサ類から効率的にバイオエタノールを生産できることが示された。
著者
齋藤 康彦
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、山梨県を事例に、社会的ネットワークの形成に着目して日本の近代化を支えた地方名望家層の再検討を行った。得られた新知見は以下の通りである。地方名望家の典型である昭和戦前期までの山梨県の県会議員は、銀行と電力会社に積極的に参画し、複数の役職の兼任によって銀行・企業ネットワークが形成され、これに被さるかたちで閨閥の二重、三重のネットワークは、全県的な規模で広がっていた。しかし、甲府在住の豪商層からなる甲府商工会議所議員による銀行・企業ネットワークや閨閥ネットワークは市域に止まり、甲府市の有力商人達には郡部地域の名望家層との間に積極的に閨閥を形成しようとする意図はなかったことが確認された。農地改革にみられる戦後の社会的な変動と、政党化の進展で、革新政党や労働組合を基盤とする県会議員も増加し、近年の女性の登場という時代状況は、地方名望家層が地方議員の輩出基盤であったことを変質させた。高度経済成長が開始される以前の1960年代までの県会議員の職業は、蚕糸業、建設業、製材業、郡内機業に代表されていた。寄生地主制の廃絶で地主層が総退場し、醸造業の地位も低下し、代わって地場産業の経営者層が多数進出した。しかし、1970年代以降は状況は大きく変わり、建設業のみが議員数を増加させた。そして企業ではなく、業界団体中心のネットワークが形成され、血縁ネットワークは失われた。この意味でいえば、県会議員レベルでは地方名望家体制は崩壊したといえる。しかし、政治に関与せず実業の世界に活動を限定している老舗や企業経営の存在が確認され、政治と経済の分離が進んだことも確認できた。
著者
平野 千枝子
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ゴードン・マッタ=クラークは都市のなかに放置された建物に入り込み、かつて住人をとり囲んでいた床や壁を切り取って新しい空間に変える行為を行った。こうした行為は、既存の建物から思いがけない新しい構造を生み出すとともに、人々がどのような空間に生きていたのか、それはなぜ廃墟となったのかを考えさせるものだった。マッタ=クラークはこのような活動を始める前に、樹木を用いた作品を制作し、合わせて植物を大量に描いていたが、これらの建築に関する作品との関係は不明だった。本研究では、マッタ=クラークが、環境によって変化し、環境を変化させる樹木を、我々を取り囲む建築を考え直すときのモデルとした可能性を提起した。
著者
若山 照彦
出版者
山梨大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤を用いてクローン技術の成功率を改善することに成功し、この技術を用いることで16年間凍結保存されていた死体からのクローンマウスの作出に成功した。一方、従来再クローニングには限界があると言われていたが、この技術により再クローンを25回以上繰り返すことに成功し、1匹のドナーマウスから600匹ものクローンマウスを作ることに成功した。初期化異常は蓄積されないことが初めて示された。
著者
伊藤 洋 秋山 郁男村田 嘉利 村田 嘉利
出版者
山梨大学
雑誌
山梨大學工學部研究報告 (ISSN:05131871)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.161-166, 1976

When two electromagnetic plane waves of different frequencies, f_1 and f_2,are incident upon a semi-infinite, anisotropic plasma, mixing phenomena of the electromagnetic waves are theoretically considered. For the simplicity, the waves are assumed to be vertically incident upon the plasma, and the static magnetic field is also assumed to be parallel to the direction of the wave propagation. In the plasma, the second order fluctuations of electron density of frequencies 2f_1,2f_2,|f_1±f_2| are excited as well in the anisotropic plasma as in an isotropic case. The plasma resonance of the difference frequency wave takes place, when |f_1-f_2|=f_p, where f_p is the plasma frequency. In this case, the amplitude of the difference frequency wave is affected by the cyclotron frequency of the plasma. And the amplitude becomes larger as the cyclotron frequency becomes higher. The effect of the collision frequency on the resonance phenomenon is also reported in this paper.
著者
小島 千か
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-12, 2007

絵本に音楽を付ける活動を「音楽理論及び演習II」の授業で行い、出来た作品を有志の学生が子ども図書室において子ども達の前で発表した。その発表作品の内容から、絵本に音楽を付ける活動は、レベルの違いはあるものの、小学校音楽科の音楽づくりでも行われるイメージを音にする活動と同様の内容であり、今後も続ける必要性を感じた。今回の発表作品は、「テーマとなる一つのメロディーを作り、そのメロディーを絵本の登場物のイメージに合わせて変化させる」、「絵本の登場物や場面をイメージさせるような音楽や音を演奏する」のどちらか又は両方を用いて音楽が付けられていることが明らかになった。そこでこの方法で絵本に音楽を付ける活動をするにあたって、授業における今後の課題を示した。更に、音・形・色・動きの関わりとイメージについての考察も今後の課題となった。
著者
成田 雅博
出版者
山梨大学
雑誌
山梨大学総合情報処理センター研究報告 (ISSN:13439588)
巻号頁・発行日
vol.1, 1997

校種を問わず,一般の方も参加するインターネットの教育利用に関する公開講座を実施した。受講者には,ダイアルアップPPP,電子メール,Webページ公開のためのアカウントを提供し,8か月の長期にわたり,受講者と講師の間のやりとりが電子メール,メーリングリストによって行われた。本稿では,講座の環境設定とカリキュラム,および,講座に関わって起こった事象を記述,分析することにより,長期にわたって実施する分散型講座がうまく運営されるための条件を抽出した。