著者
中尾 篤人
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

正常時でも血漿中のヒスタミンの濃度は昼夜において変動し、とりわけ夜間に高くアレルギー症状に相関することが示唆されている。しかしその血漿ヒスタミン濃度を調節するしくみはよくわかっていなかった。本研究では、マスト細胞が定常状態において時計遺伝子依存的に自発的かつ概日性にヒスタミン放出を起こし血漿ヒスタミン濃度の日内変動を調節していることを明らかにした。本成果は血漿ヒスタミン濃度を標的としたアレルギー疾患の新しい予防や治療に役立つ。
著者
飯島 純夫 山崎 洋子 古屋 洋子 芳我 ちより
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

患者と看護師に対する病院環境についてのアンケート調査と、病院における騒音、照度、温度、湿度、気流(風速)の環境測定を実施した。衛生状態、騒音、明るさ、総合評価で、看護師に比べ患者のほうが有意に良い回答をしていた。看護師では温度(「暑い」)と湿度(「蒸し暑い」)で、患者では湿度(「蒸し暑い」)と気流(「弱い」)で冬期と比較して、夏期で有意に高い割合が認められた。
著者
猩々 英紀 馬淵 正 安達 登
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では細胞内小器官の生活反応を指標とした新たな法医診断法を開発するために、高分解能蛍光顕微鏡を用いた3次元画像解析により細胞内小器官の形態を可視化し、脳損傷の痕跡が生活反応としてミトコンドリアの形態に保存されているか検討した。脳組織標本において、頭部外傷後の大脳皮質でミトコンドリアの形態が変化する事が示唆された。また、培養細胞ではミトコンドリアの形態は細胞が死に至る過程を反映しており、死後の細胞においても生活反応として保存されている可能性が示唆された。以上の結果から、高分解能蛍光顕微鏡を用いた3次元画像解析はミトコンドリアの生活反応を指標とした法医診断の開発に有用である事が示唆された。
著者
高橋 遼平
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

太平洋の島々への先史人類の移動と適応を探るため、先史人類に食料として運搬される機会が多かったイノシシ・ブタのDNAを解析した。琉球列島の野生イノシシであるリュウキュウイノシシは全ての島の個体が遺伝的に近く、同一系統に由来する事が示唆された。しかし琉球列島の先史遺跡を対象とした古代DNA解析では、リュウキュウイノシシと異なる系統に属す個体が検出された。これらから、琉球列島では先史時代にイノシシ属を伴う人類の移動があった可能性が考えられた。先史人類の移動の経路や時期を探るため琉球列島の周辺地域の遺跡出土試料の古代DNA解析も試みたが、試料の状態が悪くDNAを増幅できなかった。
著者
木村 はるみ
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

神楽に代表される動作名称の不明な日本の舞の動作特徴を映像資料から抽出することを目的とした。具体的には、春日大社・金刀比羅宮・出羽三山神社・住吉大社の4神社の巫女舞を調査対象とし、身体動作の国際記譜システムであるLabanotation法ならびにYourMove法を使って動作特徴について考察した。さらに、日時・装束・着付け・髪型・道具類など動作以外の情報も重要に機能しているジャンルのため、歴史学的視点からの文献資料・絵画資料・舞譜などの有形資料の収集と伝承形態・現状などのインタビューによる調査を行った。時間的に伸縮する日本音楽の特徴を示す巫女舞の歌を五線譜で採譜し、その流れに沿って舞の概要をYourMove法で記譜すると、舞の構造の中に形式と繰り返しによる所作の特徴が確認できた。編集ソフトを通して30分の1秒での動作観察を行いYM法でスコア化すると舞の動作イディオムのレペティションが様々なヴァリエーションでシンメトリカルに現出する事が確認された。本来家族伝承であった舞の継承には、4神社とも親子のような年齢間隔で指導者的な女性が存在し口頭で伝承しており、3世代にわたる指導形態を維持していた。4神社の舞は類似する同一的な特徴も示しているが、個別性、差異性もあり、神社内では再興や復興の努力が見られたが、廃絶したものや、形を変更したものもある。文字資料や絵画資料・写真などは、当時を思わせるが、数少ない断片からでは、失われた時間を繋ぐのは難しい。舞踊や芸能の発生研究は、現代のなかで希薄になり形骸化してしまった身体文化に過去からもたらされる恩寵であり、叡智である。こうした無形文化遺産を21世紀にふさわしく継承し人間の身体が本来もっている叡智を甦らせることは我々の使命と思われた。継承者不足や廃絶・変形の危機にある神楽などの日本文化の継承・保存・復刻にこの研究が役立てば幸いである。
著者
八木 清
出版者
山梨大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2010

本研究課題は非調和振動理論を開発し,水素結合系の動的挙動の解明を目的としている。これまでに我々は孤立分子系に対する振動理論として振動擬縮退摂動論や瞬間振動状態解析法を開発してきた。本年度は,これまでの理論を周期系へ拡張した。エネルギーがサイズに対して無矛盾となる条件を見出し,それに基づき理論を定式化した。この方法をプログラムに実装し,高分子(ポリエチレン,ポリアセチレン)へ応用した。この方法により高分子の赤外スペクトルを高精度に求めることが初めて可能となった。また,非調和ポテンシャルを効率的に構築する方法論を新たに開発した。3次,4次の非調和定数からカップリングの強い振動モードを重点的に構築することで高精度かつ高効率に非調和性を評価することができる。この評価により,カップリングが強いと判断されたカップリング項は高精度な手法で構築し、一方、弱いと判断されたカップリングはレベルの低い手法で構築、あるいは無視することで、全体の精度を損なうことなく、効率よく計算することが可能となった。また,振動モードを局在化させることで効率的にポテンシャルを構築できることを理論的に明らかにした。系が大きくなるに従い基準振動モードは一般的に非局在化する傾向にある。これは系の様々なモードが偶然縮退するためであるが,このような広がった振動モードを用いてポテンシャルを多体展開すると収束が遅く不利であることを指摘した。この解決方法として,局在化した振動モードを用いることを提案した。従来の方法では異性体間におけるIRスペクトルの変化の方向性すら記述できず、定性的に破綻していたが、新しい方法は変化の方向性を正しく再現し、さらに実験精度に迫る計算が可能であることが分かった。
著者
小畑 文也
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

知的障害児のヘルスリテラシーを、主に症状の表出と周囲の理解の点から検討した。症状としては、「頭痛」「腹痛」「疲労」「めまい」「出血」「吐き気」が選ばれ、健常幼児(3-5歳)と比較しながら面接調査と質問紙調査を実施した。その結果、対象となった知的障害児の症状表出は、健常幼児3歳とほぼ同様であり、痛みを除き、自発的な表出が見られないこと、特に言語的な表出が困難なこと、母親の理解(気づき)にはばらつきが大きいことが明らかとなった。また。母親の子どもの体調への注意は、健常児の場合、加齢とともに減少しているが、知的障害児の場合、加齢とともに増加していることも明らかとなった。
著者
堀 哲夫
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究の目的は、高次の理科学力を育成するため教育方法であるOPPA(One Page Portfolio Assessment)の開発とその効果を検証することにある。主として、以下の三点から研究をすすめた。第一は、OPPAの依拠している学習論および評価論の学術的など動向を検討し、その理論書と実践書をまとめたことである。第二は、小・中学校および高校理科の授業実践を通して、OPPAはメタ認知の育成に効果的であることが明らかになった。第三は、その具体的内容として、OPPシートの作成、学習および授業の実施とOPPシートの活用、OPPシートを用いた授業改善の方法などについて考察した。
著者
中村 勇規
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

花粉症では鼻水や鼻閉などの症状が夜から明け方に悪化することが知られている。しかし、「体内時計」が花粉症の病態に関与するか否かについては未だに明らかではない。そこで、動物モデルを用いて「体内時計」が花粉症の病態に関与することを検証した。マウス花粉症モデルを用いて検討した結果、野生型マウスにおける花粉症の症状は日内変動を示し、時計遺伝子Clock変異マウスでは消失することが確認できた。また、体内時計に作用する薬剤を投与することで、花粉症の症状が抑制できること、加えて、マウス慢性時差ぼけモデルではこの日内変動が消失していた。これらの結果から、体内時計が花粉症の病態に関与することが強く示唆された。
著者
花岡 利幸 楊 進春 趙 文謙 西井 和夫 北村 眞一 ZHAO Wen-qian YANG Jin-chun 中村 文雄 今岡 正美 竹内 邦良 荻原 能男 張 道成
出版者
山梨大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

1、自然災害への対策:甲府盆地及び四川盆地を流れる河川は氾濫河川であり、両地域とも治水技術に長い歴史と特徴を持っている。2、市街地拡大・人口集中への対策:甲府盆地では城下町、周辺の農村集落の成立を通じて緩やかな発展(時速4km/hrの世界)を遂げてきたが、1965年以降の自動車化(時速40km/hr)によって市街地の拡大が始まった。自動車保有の増大に合わせる需要追随型道路計画が進められてきた。1980年代の高速交通時代(時速120km/hr)の始まりは、計画先行型計画を取り込む気運を育み、新環状道路建設計画(1994)に繋がった。成都市は約40年間に人口の都市集中が起こり、人口960.4万人、市区人口304.5万人の中国内陸部の大都市に成長した。その結果、中心部の収容力に対し人口負荷が上回り、交通渋滞、エネルギー資源不足、通学難などの問題が顕著になった。自転車中心から自動車時代を目前に控え、交通問題は深刻さを増している。対策として環状道路建設、地下鉄建設、衛星都市・中小都市の育成による大都市への人口集中の抑制が急務となっている。3、都市中心部の総合整備事業:成都市では中心部外縁を全長29kmの府河南河が流下し、「二江抱城」の独特な景観を呈している。歴代の府南河は水が清く深く、潅漑、供水、運航、洪水防御などの機能を持ち、主要交通路でもあった。しかし、工業の発展、人口の増加に伴い、府南河はスラム地と化し、昔の栄光を失いつつある。府南河整備事業は、生態的都市の建設を目指し、持続的経済成長および社会的進歩を推進する目的の総合整備事業である。その内容は(1)洪水防御、(2)環境保全、(3)緑地整備、(4)道路とライフラインの整備、(5)住宅建設などである。沿河住民10万人移住を伴うこの事業は1985年から計画検討の後、1992年に正式に着工し、5年の歳月を経て1997年に概成した。その社会経済的および環境の効果が顕著に現れている。
著者
範 江林 小池 智也 柴田 信光 手塚 英夫
出版者
山梨大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

疾患関連遺伝子の解析や治療標的候補蛋白の同定には、遺伝子導入動物(特に遺伝子改変マウス)の使用は医学分野において不可欠な研究手法である。しかし、汎用されているマウスの脂質代謝系と心臓血管系がヒトとは大いに異なっているため、高脂血症や動脈硬化といった脂質代謝異常、心臓血管疾患の研究に不適当であることが指摘されてきた。本研究ではウサギCETP遺伝子をターゲットし、核移植によりCETP・ノックアウトウサギを作製することを試みた。
著者
寺崎 弘昭 白水 浩信 河合 務 山岸 利次
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の目的は、欧米における「学校衛生」の歴史的展開を、とくにその「精神衛生」化の過程に焦点を合わせて明らかにすることである。学校衛生の「精神衛生」の過程を凝縮したかたちを示す事例を、われわれは、1904年から1913年にかけて4回にわたり開催された「学校衛生国際会議」の展開と転回に見出した。そこで、「学校衛生国際会議」記録の分析を綿密に実施し、その成果を軸に、学校教育の「衛生」化・「精神衛生」化のプロセスを詳細に跡づけることができた。成果として、「学校衛生」の歴史的特異性に関する分析を含む、最終報告書(102頁)を刊行した。
著者
佐々木 大策 荻原 能男
出版者
山梨大学
雑誌
山梨大學工學部研究報告 (ISSN:05131871)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.136-144, 1967-12-20

The estimations of this storm runoff on a 0.806km^2 natural catchment by means of (1) hydrograph method (2) continuity method at lake Saiko (3) dynamic equation method have been discribed in this paper. Especially the analysis of the dynamic equation is a new method in which the probable discharge is used. The results of this study indicate that probably peek discharges are 30-100m^3/s water and 500-700m^3/s total.
著者
鳥養 映子 三宅 康博 門野 良典 岩崎 雅彦 西田 信彦 秋光 純 杉山 純 永嶺 謙忠 齋藤 直人
出版者
山梨大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

超低速ミュオン顕微鏡は、表面・界面が関与する物理、化学、生命の諸現象の解明から、ミュオン異常磁気能率の精密測定までの広い分野において、研究を飛躍的に発展させる突破口となる。研究期間前半で共通基盤装置を開発し、後半でこれを用いた新たな学術領域の開拓をめざした。加速器施設の事故等による長期ビーム供給停止にもかかわらず、ビーム再開直後の平成28年2月に初の超低速ミュオン発生に成功した。海外実験施設等による予備実験により、磁性、超伝導、半導体、電池材料に加えて、触媒化学や生命科学などこれまで未開拓の分野においても基礎データを蓄積できた。さまざまな分野において、新量子ビームへの期待が高まっている。
著者
堀 哲夫
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.64-71, 2009

近年,大学における授業改善に対する関心は高まりつつあるが,具体的にどのような方法で行ったらよいのか,明確な提案がない.本研究では,大学の講義の中で,毎時間学習した最重要事項を学生に書かせ,自分自身の学習履歴をふり返らせ学ぶ意味を伝えるというOPPA(One Page Portfolio Assessment:一枚ポートフォリオ評価)を採用し,実践を行ってみた。OPPA の内容を確認することにより,教師自身は,自らの授業が適切であったのか否かを判断できる。その結果,学生は授業内容の最重要事項は何かを考えながら受講するようになる,受講内容の意味を明確にすることができる,授業評価が可能になるなどの効果を確認できた。しかし,講義時間が長い場合には最も重要なことが不明確になるなどの課題も明らかになった。
著者
宮嶋 尚哉 棚池 修
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

特徴的なナノ構造を有するバクテリアセルロースゲル(ナタデココ)を用いて,金属塩担持バインダレスカーボン電極の合成を試みた。種々の金属イオン(Mo, Mn等)を含む水溶液にナタデココを含浸,乾燥を行い,引き続き窒素雰囲気下で加熱処理を行った。セルロース中の酸素と含浸金属塩が反応することで,それらの金属酸化物がセルロース炭化物中に高分散担持され,さらに,加熱前のセルロースファイバのナノフィブリルがそのまま保持炭素化されることで,ミクロ孔性のバインダレス電極が得られた。担持金属酸化物はレドックス反応の活性種として機能し,ポーラスカーボン由来の電気二重層容量に加えて疑似容量の増加が認められた。
著者
喜多川 進
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、まず、環境政策に関する歴史的研究の動向を整理し、環境政策史が必要とされる背景を確認した。そして、環境政策の性格変容の解明をはじめとし、これまでの環境政策の実態を詳細に把握する環境政策史は、これからの環境政策を構想するうえでも有用であることを示した。さらに、発展した一方で分断化も進んだ環境経済学、環境政治学、環境法学、環境社会学といった環境政策に関わる諸学問を、環境政策史が架橋する可能性についても検討した。また、環境政策史は、都留重人や宮本憲一らによる日本の公害研究の流れを再発見し、発展させるものでもあることを示した。そのうえで、日独の容器包装廃棄物政策に関する環境政策史研究もおこなった。