著者
舩場 貢 泉 省吾 西村 勝久
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.59, pp.6-8, 1992-12-21
被引用文献数
4

水稲品種ヒノヒカリおよびユメヒカリの作期移動試験において,両品種は出穂後の異なる生育段階で台風17号・同19号の2回の台風に遭遇した。そこで,その被害様相を明らかにするため調査を行い,次の結果を得た。1.ヒノヒカリ,ユメヒカリとも出穂後早い時期に台風に遭遇したほど登熟歩合の低下が大きい傾向が見られた。また,乳熟期以降の台風遭遇では早い時期の台風ほど減収程度が大きい傾向が見られた。2.ヒノヒカリ,ユメヒカリとも出穂後早い時期に台風に遭遇したほど整粒歩合が低下し,整粒歩合は最高約38%,最低約6%であった。3.未熟粒・奇形粒および青未熟粒の発生が多かった。未熟粒・奇形粒はヒノヒカリの6月10目植で少なく,それより遅く移植した場合には著しく増加し,台風時における穎花の発達段階によって被害が異なることがわかった。4.乳白米の発生も多く,とくに乳熟後期から糊熟期にかけて台風に遭遇すると乳白米か増加する傾向があった。5.薄茶米の発生は台風時における出穂後日数が少ないほど多かった。
著者
福田 直子 湯川 智行
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.505-509, 1998-12-05
被引用文献数
2

ソラマメの在来種を含む41品種を用いて積雪条件が異なる2ヵ年にわたり, 越冬前の生育特性と雪害程度を調査し, 品種の耐雪性との関連について検討した.雪害による枯死葉面積率と枯死株率をもとに供試品種は耐雪性強, 中, 弱の3品種群に分類できた.耐雪性強品種群は新潟市近郊の在来種とその突然変異品種の2品種, 耐雪性中品種群は原産地や育成地が西日本中心に分布する35品種, 耐雪性弱品種群は海外から導入された品種および鹿児島県の在来種の4品種であった.それぞれの品種群は原産地や育成地に共通性が認められ, 品種の耐雪性と育成環境との間に関連が示唆された.越冬前の生育特性と品種の耐雪性との間には密接な関係が認められた.耐雪性弱品種は花芽分化の時期が早く分化葉位が低いために越冬前に花芽の顕著な発育が認められたことから春播き型の品種であると考えられる.一方, 耐雪性強品種群は花芽分化の時期が遅く, 越冬前の花芽の発育ステージは初期段階であった.また耐雪性に関わる形態的特徴として, 耐雪性の強い品種は越冬前の草丈, 節間長, 茎葉生重が小さく, 茎葉乾物率が高い特性をもっていた.
著者
福嶌 陽 太田 久稔 横上 晴郁 津田 直人
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.43-52, 2018-01-05 (Released:2018-01-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

東北地域における水稲19品種を,1950年以前に育成された品種 (Ⅰ群品種),1980年以前に育成された品種 (Ⅱ群品種),1980年以降に育成され,現在,普及している品種 (Ⅲ群品種),東北農研が育成した最近の主食用品種 (Ⅳ群品種),東北農研が育成した最近の飼料用品種 (Ⅴ群品種) に分類し,その特性を少肥移植栽培において比較した.稈長は,Ⅰ群品種で長く,Ⅱ群品種,Ⅲ群品種で中程度,Ⅳ群品種,Ⅴ群品種で短かった.一方,少肥移植栽培における収量には,品種群による明確な差異は認められなかった.これらのことから,東北地域の水稲品種における収量の歴史的増加の要因としては,施肥量が増加し,それに伴い稈長がやや短く耐倒伏性がやや優れたⅡ群品種,Ⅲ群品種が普及したことが挙げられた.形質間の関係をみると,穂数が少ない品種は,葉身幅が広く,節間直径が太く,1穂籾数が多く,千粒重が重いという関係が認められた.しかし,稈長は,他の形質と密接な関係は認められなかった.これらのことから,品種育成の歴史の中で,稈長が短くなることによって,必然的に変化した形質は少ないと推察された.玄米の外観品質 (品質)・食味に関しては,Ⅰ群品種,Ⅱ群品種は,様々な品質・食味の品種が混在しているのに対して,Ⅲ群品種,Ⅳ群品種は,いずれも品質・食味が優れていると推察された.以上の結果をもとにして,東北地域における水稲品種育成の今後の方向性について論じた.
著者
渡邊 朋也
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.124-127, 2007 (Released:2009-07-03)
参考文献数
6

植物各器官の連結状態およびそれらの生長規則をL-systemの文法により記述し,前回報告した3次元デジタイザを利用して収集した形態情報,生理的生育情報と併せて,3次元「仮想植物」を作成する手順を紹介する.
著者
三十尾 修司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.275-283, 2009 (Released:2009-05-22)
参考文献数
3
被引用文献数
1 1
著者
箕田 豊尚
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.62-68, 2010 (Released:2010-02-12)
参考文献数
15
被引用文献数
3 5

埼玉県の農業試験場の畑圃場において1951年から1996年まで45年にわたり同一条件で栽培されたコムギ「農林61号」の収量に対する生育期間の気象条件の影響を検討した.その結果,播種期から成熟期までの平均気温と収量は有意な負の相関関係にあり,相関係数は1%水準で有意であった.そこで,生育の全期間を出穂期までとそれ以降に分けて調べたところ,播種期から出穂期までの平均気温と収量は負の相関関係にあり,相関係数は5%水準で有意であったが,出穂期以降の平均気温は収量に影響していなかった.一方,播種期から成熟期までの降水量と収量には有意な相関はみられなかった.このうち,播種期から出穂期までの降水量と収量には有意な相関関係がみられなかったが,出穂期から成熟期までの降水量と収量は負の相関関係にあり,相関係数は5%水準で有意であった.このことから,埼玉県において,コムギ「農林61号」は,播種から出穂までの平均気温が上がるほど減収する傾向にあること及び出穂期以降の降水量が増加することにより減収する傾向にあることがわかった.
著者
白土 宏之 伊藤 景子 今須 宏美 大平 陽一 川名 義明
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.185-194, 2020

<p>水稲の無コーティング種子代かき同時浅層土中播種栽培に適した播種後水管理を明らかにするために,耐倒伏性の強い水稲品種「萌えみのり」を用いて,播種後水管理が苗立ちや収量等に与える影響を検討した.秋田県にある東北農業研究センター大仙研究拠点圃場において,2013〜2017年に水管理処理として,湛水区,湛水後落水区 (7日湛水後5〜7日落水),短期落水区 (播種後7〜8日落水),長期落水区 (播種後12〜13日落水) の4水準を設け,苗立ちや収量等を調べた.苗立率は長期落水区が湛水区と湛水後落水区より多い傾向が見られた.生育や収量,品質は処理間で大きな違いはなかったが,倒伏程度は湛水区が短期落水区より大きかった.2014〜2016年に秋田県内の現地圃場2箇所で,水管理処理として,湛水後落水区 (8日湛水後3〜12日落水) と落水区 (8〜15日落水) の2水準と,対照として鉄コーティング直播区を設け (2014年を除く),苗立ちや収量等を調べた.同じ白化茎長で比較すると,所内試験と同様に落水区が湛水後落水区より苗立率が高い傾向が見られ,生育,倒伏程度,収量,品質は落水区と湛水後落水区に大きな違いは見られなかった.本栽培法は鉄コーティング直播より初期の葉齢が大きく,苗立率や収量等は同程度であった.以上より,本栽培法では播種後12日間程度落水するのがよいと考えられた.また本栽培法は鉄コーティング直播と同程度の実用性が認められた.</p>