著者
森田 茂紀
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.554-557, 2000-12-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
46
著者
松尾 和人 吉村 泰幸
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.1-8, 2015 (Released:2015-02-23)
参考文献数
41

遺伝子組換え作物は,米国を筆頭に,全世界の27か国,約1.75億haで栽培されている.中でも除草剤に耐性を有する遺伝子組換え作物は,その有用性から,1996年の大規模栽培の開始後急速に普及したが,その結果,新たな懸念が発生した.一つは除草剤に抵抗性を持つ雑草の出現であり,もう一つは搬送中の種子のこぼれ落ちによる遺伝子組換え作物の野生化である.除草剤耐性作物には,グリホサートとグルホシネートに耐性を持たせたものがほとんどであるが,このような特定の除草剤を頻繁に使用することにより,除草剤に抵抗性を持つ雑草が出現した.その発生は,米国をはじめ遺伝子組換え作物の栽培が盛んな国々で報告され,抵抗性抑止の提言や農家の意識調査など,多くの有用な研究や報告がなされている.また,油糧等の原材料として作物を輸入する複数の国で,野外で生育しているセイヨウナタネ等の遺伝子組換え作物の報告例がある.これまでの調査では,自然環境下で,除草剤耐性遺伝子組換えセイヨウナタネが,普通のセイヨウナタネと比べ競合性において優位性を持たないと判断されている.新たな遺伝子組換え作物の非生物的ストレス耐性品種や多くの形質がスタックされた品種に対しても,その有用な技術を長く使用するためには,過度に依存せず,これまでに培われてきた機械的な除草方法や栽培学的な手法も取り入れ,除草剤抵抗性作物を利用した持続的な雑草管理技術を開発していくことが重要である.
著者
鬼頭 誠 山城 美代 道山 弘康
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.87-97, 2020

<p>本研究は,ソバのリン吸収特性を明らかにし,沖縄の国頭マージにおいてソバの子実収量が黒ボク土より低かった原因を探ることを目的とした.リン無施肥区において,赤玉土およびバーミキュライトで栽培したソバは,前報のリン無施肥の黒ボク土で栽培した場合と同様に植物体乾物重および子実重ともに著しく減少することが明らかになった.低リン環境では開花から収穫までの根の乾物重増加が大きくなるために収穫期の根の乾物重が高リン環境より重くなることが明らかになった.この根の生長の促進は生育後期の養分の吸収を促進するものと考えられた.また,子実のリン含有率は概ね2.5 g/kg以上に保たれるように吸収されていることに対して,葉と茎ではリン含有率だけでなくリン含有量も開花期から収穫期にかけて減少し,葉と茎からは子実へリンが再移行していることが考えられた.以上の2つのソバのリン吸収の特性から,ソバの低リン抵抗性が獲得されていることが考えられた.Al型難溶性リン施肥では生育および収量の抑制が小さかったが,Fe型難溶性リン施肥では生育および収量が著しく抑制された.よって,ソバはAl型難溶性リンをある程度吸収できるが,Fe型難溶性リンの吸収は困難であるために,根系発達とリンの再移行性はあるものの国頭マージにおいて黒ボク土より収量が低かったことが示唆された.</p>
著者
中津 智史 奥村 理 山木 一史
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.416-422, 2007 (Released:2007-08-10)
参考文献数
22
被引用文献数
2 4

道内の主要なコムギ8品種(秋まきコムギではホクシン, タイセツコムギ, ホロシリコムギ, キタノカオリ, きたもえとチホクコムギ, 春まきコムギでは春よ恋とハルユタカ)について, 主として麺帯の明るさ(L*)とゆで麺の硬さ(切断抵抗値)の面から, 中華麺への加工適性を評価するとともに, 市販の中華麺用粉と比較をおこなった. 麺帯のL*は品種間差が大きく, タンパク含有率の高い春まきコムギでは製麺後のL*の低下程度が大きく, タンパク含有率の低いホクシン, タイセツコムギ, ホロシリコムギ, きたもえとチホクコムギはL*の低下程度が小さかった. 一方, キタノカオリと市販中華麺用粉は春まきコムギと同程度のタンパク含有率にもかかわらずL*の低下程度が小さい特徴を有していた. 小麦粉の灰分含有率はL*と有意な負の相関が認められたが, アミロ値とL*との相関は判然としなかった. ゆで麺の抵抗値と小麦粉のタンパク含有率との間には高い正の相関が認められ, 春まきコムギとキタノカオリと市販中華麺用粉が高い抵抗値を示した. 道産コムギ品種の特徴として, チホクコムギ, タイセツコムギ, ホクシン, きたもえの秋まきコムギ5品種はL*が高いが抵抗値が低く, 逆に春よ恋やハルユタカの春まきコムギ2品種は麺の抵抗値が高いがL*が劣っていた. 供試した8品種の中で中華麺適性の最も高いと考えられたのはキタノカオリで, ゆで麺の抵抗値が最も高くL*も比較的高かった. 同一地域で収穫されたホクシンにおいて, タンパク含有率が高いほど麺帯のL*は低下したが, ゆで麺の抵抗値は高まった.
著者
松井 勤
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.303-311, 2009 (Released:2009-07-13)
参考文献数
55
被引用文献数
14 19

地球の温暖化に伴い,高温によるイネの不稔の発生頻度が増すのではないかと懸念されている.温暖化が高温不稔を通じてイネの収量に及ぼす影響を明確にすること,それに対する対策をその効果と共に示すことは,作物学分野の重要な課題である.この総説は,主に開花期の高温によるイネの不稔発生を対象とした.まず,開花期の高温による不稔の発生条件に関連するこれまでの報告を整理した.次に,高温不稔の発生の仕組みに関する研究について解説し,最後に,耐性品種の育種を中心とした対策技術の創出において重要な,高温不稔に対する耐性に関する研究の現状について解説した.
著者
渡邊 和洋 中園 江 中村 大輔 西谷 友寛 西村 奈月 松島 弘明 谷尾 昌彦 江原 宏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.373-384, 2016-10-05 (Released:2016-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1 8

コムギの多収栽培技術の開発を目的に,耐倒伏性品種「さとのそら」を供試し,慣行の基肥重点型の施肥体系に対して,基肥を減らし追肥で窒素を増施用する生育後期重点施肥の効果を2カ年にわたって検証した.その結果,生育後期重点施肥により,茎立期以降の乾物成長量の大きくなる時期にLAIが高まったこと,登熟期後半まで葉色,NARが高く維持されたことでCGRが高く経過し,成熟期の総乾物重が大きくなった.一方で,茎立期の茎数が少なくなったことに加えて,この時期に窒素を増肥したことで,茎間の同化産物および窒素の競合が緩和され,茎の生存率が高まり,穂数が増加するとともに,シンク容量の大きな穂が形成されて1穂粒数も増加したものと考えられた.さらに登熟期後半までNARが高く維持されたことで1000粒重も増加した.以上の乾物成長経過および収量構成要素の形成の結果,生育後期重点施肥により,収量を15~50%増加させることが可能であった.一方で,成熟期が遅れること,外観品質の低下や子実タンパクの過剰,土壌の酸性化の助長などの普及技術化に向けて改善すべき課題も明らかとなった.
著者
宮﨑 成生 関和 孝博 吉田 智彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.234-241, 2009 (Released:2009-05-22)
参考文献数
23

栃木県内の主要農業用用水85 地点および農業用排水6地点の水質を1996~1998年の3年間にわたり,水稲栽培期間を中心に調査した.その結果,農業用用水の水質基準値内の割合はpHが70%,ECが88%,CODが84%,T-Nが30%,SSが100%であった.調査時期による水質の変化は小さかった.水質汚濁は渡良瀬川流域と鬼怒川流域で進行していた.また,汚濁の激しい地点は県南部および西部の都市下流域で,人口,下水道普及率との関係が示唆された.農業用排水は用水に比較してSiO2を除き栄養塩類濃度が高かった.調査地が同一である53地点について10年前と比較したところ,栄養塩類の濃度は低下する傾向にあり,特にT-Nで顕著であった.
著者
柏木 めぐみ 村田 和優 ペルマナ ハディアン 山田 哲也 金勝 一樹
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.177-185, 2017-04-05 (Released:2017-04-14)
参考文献数
17
被引用文献数
2

化学農薬を使用しない水稲の種子温湯消毒法は,クリーンな技術として注目され,「60℃で10分間」という処理条件が広く普及している.しかし,この条件では完全に防除できない病害もある.したがって,この消毒法を安定した技術とするためには,多くの品種に高温耐性を付与し,より厳しい条件で処理できるようにすることが重要である.温湯消毒時の種籾の高温耐性には明らかな品種間差があり,この形質は育種学的な手法で改善できる可能性がある.例えば,日本型品種の「ひとめぼれ」の種籾は強い高温耐性を有することが示されている.一方で,インド型品種や糯米品種は一般に種籾の高温耐性が弱く温湯消毒に適さないことも報告されている.これらのことを踏まえて本研究では,「ひとめぼれ」のような有用な遺伝資源となりうる品種を見出すことを目的に,農業生物資源ジーンバンクが確立した「世界のイネコアコレクション」の種籾の温湯消毒時の高温耐性を評価した.その結果,日本型品種の「Rexmont」と「Tupa 729」,インド型品種の「Badari Dhan」の3品種の種籾が,極めて強い高温耐性を有していることが明らかになった.さらに,「Badari Dhan」以外のインド型品種や,糯米品種の中にも「ひとめぼれ」と同等,あるいはそれ以上の高温耐性を示す種籾が存在することが明らかとなり,温湯消毒時の高温耐性に関して有用な遺伝資源となり得る複数の品種を特定することができた.
著者
山城 美代 鬼頭 誠 道山 弘康
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.161-167, 2019

<p>近年,沖縄島北部と宮古島でソバ栽培が始まっている.両地域にはそれぞれ酸性の国頭マージ(赤色土)と概ね中性の島尻マージ(暗赤色土)が分布している.これら土壌は日本のソバ栽培地の多くに分布する黒ボク土とは土壌有機物量やリンの存在形態など,土壌の理化学性に大きな違いがある.本試験では,国頭マージと島尻マージおよび黒ボク土を用いてソバを栽培し,生育量,収量および各種養分吸収量を比較した.ソバの生育量と収量は黒ボク土に比べて島尻マージより国頭マージで低下し,側枝花房数の減少と結実率の低下が主因と考えられた.窒素含有率は茎と子実において国頭マージで低かった.リン含有率は子実では国頭マージが黒ボク土よりわずかに低かったが,茎では有意に高かった.カリウム含有率は全ての器官で黒ボク土が著しく高く,国頭マージ,島尻マージの順に有意に低下していた.施肥を行っていないカルシウム含有率は子実では土壌間に顕著な違いがなかったが,茎では土壌の交換性カルシウム含有率を反映して国頭マージは黒ボク土と同程度であり,島尻マージでは高かった.マグネシウム含有率は全ての器官とも黒ボク土で最も低く,島尻マージ,国頭マージの順に高くなった.子実重,茎重,側枝花房数は土壌の窒素含有率とAl型リン含有率と高い正の相関が認められたが,Fe型リンや可給態リンとは有意な相関がなく,施肥リンがFe型で固定される沖縄の土壌とは異なり, Al型で固定される黒ボク土ではリン吸収が高まることで生育量と収量が増加したと考えられる.</p>