著者
古屋 忠彦 松本 重男 嶋 正寛 村木 清
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.1-7, 1988-03-05
被引用文献数
2

ダイズの成熟異常個体が発生する過程を明らかにする一環として, 成熟異常個体の出現頻度の高い寒地品種(ナガハジロと刈系73号)と出現頻度の低い暖地品種(オリヒメ)を用い, 地上部諸器宮の成熟および稔実莢の登熟経過について比較調査した. 主茎葉の落葉(成熟)経過についてみると, オリヒメは各葉位で落葉が早く, 収穫期にはすべて落葉した. ナガハジロと刈系73号の成熟異常個体では下位葉の落葉は遅く, 頂葉から2〜3枚の葉の落葉が著しく遅延した. 成熟正常個体と成熟異常個体とにおいては, 特に成熟に伴う茎の水分減少経過に差異が認められ, 茎の水分含有率の高い品種ほど葉の落葉が不完全で個体の成熟・枯死も遅延した. また, 稔実莢の登熟経過にも大きな差異が認められた. すなわち, オリヒメでは開花日の異なる各英ともほぼ揃って, 短期間に登熟を完了した. 一方ナガハジロと刈系73号では, いずれの開花日の莢においても莢の登熟日の変異は大きく, 最初の登熟莢の出現から最後の登熟莢まで10〜14日も要した. このように成熟正常個体では, 莢実の成熟に伴ってすみやかに地上部諸器官が枯死したのに対して, 成熟異常個体では, 程度の差はあるものの, とくに茎の成熟が遅延したが, 個々の稔実莢の登熟日数は品種本来の登熟期間を示した. 以上の結果から, 今後, 著者らは, 成熟に伴いダイズ構成器宮(葉, 葉柄, 茎, 根, 莢殻, 子実)の成熟が同調的に進行する(オリヒメ)現象を成熟整合, 非同調的に進行する(ナガハジロ, 刈系73号)現象を成熟不整合と呼称する.
著者
後藤 雄佐 中村 聡 酒井 究 星川 清親
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.473-479, 1994-09-05
被引用文献数
2

スイートソルガムの生長の解析法を確立するために, 疎植区(100 cm×50 cm)と密植区(50 cm×20 cm)とを設け, 節間の伸長と肥大とを調べた. 供試品種は早生のSucrosorgo 301 (S 301)と晩生のSucrosorgo 405 (S405). 収穫物の中心となる茎は, 伸長した節間の集合体であり, 収穫物からその個体の生長を解析するためには, どの節間がいつ頃伸長・肥大したものかを推定できなくてはならない. すなわち, 外観から測定できる個体の齢と内部での節間の生長との関連性を把握する必要がある. そこで, 葉身が抽出完了した時点ごとに, その葉位で個体の齢を表し(葉位齢と呼んだ), 節間の伸長・肥大との関係を調べた. 葉位齢を用い第9節間〜第12節間の伸長過程を基に概念的な節間伸長の生長曲線を描いた. すなわち, 第n節間(IN n)は葉位齢n+1頃から急激な伸長を始め, 葉位齢n+2頃に最も急速に伸長し, 葉位齢n+3〜n+4頃に伸長が終わった. 節間伸長への栽植密度の影響は, 伸長の速度として認められた. 節間の太さについては, 同じ節間位で比較すると, 両品種とも疎植区のほうが密植区より常に太かった. 節間の肥大は, 一つの生長曲線にはまとめられなかった. 最も単純化した場合, 栽植密度によって異なる2つの生長曲線にまとめられた. INnは, 葉位齢nくらいまでは栽植密度の影響を受けずに肥大したが, 密植区は葉位齢n+1くらいから肥大速度が鈍り, 葉位齢n+2くらいで最大径となった. ところが疎植区は, 葉位齢n+5くらいまで肥大が続き, 最大径は密植区を上回った.
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.456-457, 2012 (Released:2012-10-31)
参考文献数
2
著者
鯨 幸夫 前野 寿有 山口 順司 寺沢 なお子 木下 栄一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
no.47, pp.113-118, 2012-03-31

栽培環境を異にするヤブツルアズキを材料に用いて,土壌硬度や施肥量を変化させた栽培試験を行い栽培品種(大納言)と比較した.土壌硬度を高め3.5kg-NPK/10aの施肥を行うと成育量は増大した.成育地を異にするヤブツルアズキのITS領域およびrbcL領域のDNA解析を行った結果,葉身形状,茎の色等,地上部形態に明らかな差異が認められても遺伝子情報は全く同じであった.種子のポリフェノール含有量は栽培種よりヤブツルアズキの方が多い傾向が認められ,これは種皮比率が高い事が原因と考えられた.
著者
斎藤 邦行 柏木 伸哉 木下 孝宏 石原 邦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.255-263, 1991-06-05
被引用文献数
13

早生,中生水稲計5品種を用いて,1988,89年の2ヵ年にわたり乾物総生産量,収量および収穫指数の比較を行い,その相違する要因を穂への同化産物の分配から解析した. 出穂期以降の穂,葉身,茎の部位別乾物重の推移を品種間で比較したところ,茎葉重は出穂期以後全品種で減少し,登熟後期には再び増加することが認められ,これには明らかな品種間差があった. 茎葉重の減少は,葉鞘と稈から穂への貯蔵同化産物の移行により,茎葉重の再増加は,稈への出穂後同化産物の再蓄積によっており,以上の乾物重の変化は,全糖濃度,デンプン濃度の変化に対応していた. 以上の検討の結果,早生品種の南京11号はアキヒカリに比べて,出穂後の乾物生産はやや小さいものの,出穂前貯蔵同化産物が多く,そのほとんどが大きいシンクヘ移行することにより収量が多く,収穫指数も高いこと;中生品種では出穂前貯蔵同化産物量には大きな違いはなく,むさしこがねは日本晴に比べて,出穂後の乾物生産が高いことにより収量が多いが,シンクの容量を越えた多くの同化産物が程に再蓄積することにより収穫指数が小さいこと;密陽23号は日本晴に比べて,出穂後の乾物生産が多いことに加えて,その大部分が穂へと移行することにより,収量,収穫指数が高いこと;密陽23号はむさしこがねに比べ出穂後の乾物生産はやや小さいが,シンクが大きく出穂前貯蔵同化産物,出穂後の同化産物の大部分が穂へ移行することによって,収量,収穫指数が著しく高いことが明らかになった.