- 著者
-
中野 正敏
- 出版者
- 日本作物学会
- 雑誌
- 九州作物談話會報
- 巻号頁・発行日
- no.11, pp.45-50, 1957-03
従来水田裏作の菜種栽培と言えば,移植栽培が普通であり又,菜種は移植するものだと認識されていた観があった。しかし近年に於いて菌核病の発生が非常に多くなり,しかも此の病害が菜種に致命的な打撃を与えるものであることから,これが対策には種々研究もされて来たが未だに完全な方法は発見出来ない現状である。しかし乍ら著者等は,直播する1二とにより最も恐るべき菌核病と合せて萎縮病の発生が少なく,しか'も労力賢材等の節約如出来て・経営的に見ても一石二鳥の効果があることがわかった。此の点佐賀県に於いては上記効果の認識と,苗床を必要としない為,近年直播栽1書が急速に増加し,昭和28年播付けでは,県計面積4,556町に対し其の25.2%,昭和29年度では,5,486町の45.1%,昭和30年度では,67.7%と言うように毎年増加し又,本県に於いては昭和25年より菜種多牧穫競作参を実施しているが,29年は約半数が直播栽培で出品し30年でほ県審査の対照となった21点中,1点だけが移植で殆んどが直播栽培であった。佐賀県に於ける菜種の多收穫地帯は山麓部の畑地で菌核病の発生の少ない地帯に限定されていたが,最近は直播栽培の普及により,菌核病の為半ばあきらめ的与感があった。平坦部の水田裏作地帯から高位多收穫者が続出するようになった。以上の事実から如何に菌核病の被害が致命的なものであったかが思考される。然しながら菜種は元来移植によって栽培され発達もして来たものであり,(北海道及び南九州の畑地帯では一部分直播されているが)水田裏作に於ける菜種の直播栽培についての研究は,殆んど行なわれていない現状であったので,著者等はこれ等直播に関する幾らかの問題について,試験を実施して来たが尚今後究明されねばならない問題も多々あるが,今回はすでに実施した研究