著者
西田 佐知子
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.137-151, 2004-08-31 (Released:2017-03-25)
参考文献数
22
著者
徳田 御稔
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.184-186, 1963-03-30
著者
邑田 仁
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.185-208, 1995-01-28 (Released:2017-09-25)
参考文献数
32

マムシグサ群は長い偽茎と, 葉軸の発達する鳥足状小葉により特徴づけられるテンナンショウ属マムシグサ節sect.Pedatisectaの一群である。形態的に多型であり, 多くの分類群が記載されてきたが, 遺伝的には分化がきわめて小さいことが明らかになっている。また, 群内で認められた形態群間に低頻度ではあるが中間型がある, 自然雑種がある, F_1雑種の花粉稔性が低下しない, など雑種形成を通じて遺伝的な交流があることを示唆する状況証拠もある。しかし一方では, 多くの場所で, 異なる形態群が形態上の差異を保ちつつ同所的に分布しているのも事実である。本稿では, 低頻度の中間型を除いた場合, マムシグサ群内にどのような形態群が認められ, どのような分布を示すかについて現在までの知見をまとめることを試みた。また, 認めた形態群に関して発表されている学名との対応を試みた。マムシグサ群を, 花期が遅く, 仏炎苞が葉よりも遅く展開し, 舷部内面に細かい縦皺がある第1亜群(カントウマムシグサ亜群), 花期が早く, 仏炎苞が葉よりも早く展開し, 舷部内面が平滑な第2亜群(マムシグサ亜群), 花期や仏炎苞展開のタイミングがそれらの中間的で, 舷部内面や辺縁にしばしば微細な突起を生ずる第3亜群(ホソバテンナンショウ亜群)に大別する。第1群にはカントウマムシグサ(トウゴクマムシグサ), ミクニテンナンショウ, コウライテンナンショウ, ハチジョウテンナンショウ, オオマムシグサ(イズテンナンショウ, ヤマグチテンナンショウ), ヤマトテンナンショウ, ヤマザトマムシグサ, ヤマジノテンナンショウ, スズカマムシグサ, 第2群には, マムシグサ(ヤクシマテンナンショウ), ヒトヨシテンナンショウ, タケシママムシグサ, 第3群にはホソバテンナンショウ, ミャママムシグサ, ウメガシマテンナンショウ, "中国地方型のホソバテンナンショウ", などが認められる。しかし, 現地調査はまだ不十分なものであり, フェノロジーやポリネーターに関することも含め, より詳細な検討が必要である。
著者
北村 四郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.27-36, 1936-01-30

ノツポロガンクビザウ (Carpesium Matsuei TATEW. et KITAMURA). ガンクビサウの類に二三年前から氣になつてゐたものがあつた,それは小生が加賀,市ノ瀬に採集した時普通のガンクビサウとは變異のちがふ群落を見つけて,それを研究したが充分な自信がなかつた.本年札幌に研究に行つた時館脇博士が變なガンクビサウがあるから野幌まで行かないかといふのでお伴して觀察したところそれがあれであつた.野幌には澤山箇体を見たがこればかりで尚後に室蘭でも澤山採集したがその附近に眞正のガンクビサウはない.それで別のものだと自信を得て研究したところガンクビサウに比するに頭花は半球形,總苞外片は長く先端は草質,雌花の花冠は上部が狹まつてゐるので全く別の種であると考へる樣になつた.北海道より本洲東北,北陸に分布する種類である.松江氏は館脇博士と共に野幌の植物を研究され且つこのガンクビサウ採集についても色々と御教へ下さつた方である. Chrysant hemum vestitum (HEMSL.) KITAMURA. これは英國の學者,HEMSLEY,HENRYの兩氏,並びに米國の BAILEY氏などが家菊と原種と考へ〓々論んぜられ且つ方々で圖説にされた有名な植物である.私はこの植物の標品即ちHENRY氏が支那湖北省宜昌で採集し HEMSLEY氏が研究した標品の Duplicate type を東京帝大標品庫で拝見し久しく見たいと思つた標品を見て大變禧しかつた.これは日本のリュウノウギクに似たもので葉の裏に灰白色の綿毛が厚く葉底は楔形であつて,家菊では葉の裏の毛が薄く葉底は心臟形で無論別種であると思ふ.この植物の研究を中井教授に御願ひ申し上げたところ,先生は心よく御許し下さつた.謹んで深謝する次第である. ミヤトジマギク(Chrysant hemum miyatojimense KITAMURA.) 陸前宮戸島は先住民族の貝塚などある古くそして美しい島であるが,木村有香氏がこの島に變つた菊があるから研究してはどうかと云つて下さつたのは本年の初春であつた.今秋同氏のお伴してこの島に渡り問題の菊を勸察したのは美しい思ひ出である.もつとも前から其の菊の性状をくわしく話して頂いたので小生の勸察は蛇足であつたかもしれない.この島に澤山に咲きほこつてゐるコハマギクに比するに莖が長く50-70センチあり下部は長く地に匐ひ葉がなく上部が上昇し葉と花をつける.葉の裏面にはコハマギクの程んど毛なきに反し可成り毛多く,尚莖にも總苞片にも毛が多い.花梗はコハマギクの樣に長く剛直でなく短かくて細く繖房状につく,それでこの菊の自生地が墓塲であることから考へれば或ひは墓塲にあげられた小菊系のものとコハマギクとの間に自然に出來た雜種ではあるまいかと想像もされる.
著者
北村 四郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.97-111, 1934-06-30

ユキヨモギ(Artemisia Momiyamae KITAMURA). 同好の友人籾山泰一氏は小生の願ひをかなえて,この珍種を送つて下さつた.從來のヨモギ群のもので,葉は上面にも白柔毛があつて,頭花は筒状4粍,長1.5粍幅の小さいもの,これが非常に澤山につく.相模,稲村ケ崎の産. ウスバヨモギ(Artemisia debilis KITAMURA). 珍種,葉は有柄二回羽状中裂,両面とも白柔毛がなく,緑色薄質,頭花は少なく大きく球形である.小泉源一博士の朝鮮智異山で採集されたものである. タイトウヤマヂノギク(Aster altaicus WILLD.) 從來我が國では Aster altaicus WILLD. が産する樣に考へられてゐたが,私はアルタイ地方の本場の Aster altaicus WILLD. を昨年ロシヤのトムスク大學から送つてもらつた.驚いた事には我が國のヤマヂノギクとは全く異なり葉は非常に細く針金の如く,びつしり短毛が生えてこれこそ私が先年台灣の台東ヒナン大溪のガラガラの河原で採集し,タイトウヤマヂノギク(Aster altaicus var. taitoensis KITAM.)なる學名を附したのと同じである.不明を謝し訂正する.この植物は沙漠の植物で滿州里で佐藤潤平氏の採集されたものが北の方では分布の東限である.蒙古にもある. コウライヤマヂノギク(Aster ciliosa KITAMURA). 上述の理由に依り朝鮮のヤマヂノギクに新學名を附する.尚本州でヤマヂノギクと云われてゐる者の中には Heteropappus 屬の邊花の冠毛が祖先返りで一部延長したものも入つてゐるがこの場合は延長したと云つても非常に發達が悪く,これは Heteropappus 屬に入るべきである.朝鮮には上述の如きでない Aster ciliosa KITAMURA を産する.内地のヤマヂノギクに就いては今後の研究が必要である.尚筆者には草木圖説のヤマヂノギクの圖は Heteropappus hispidus LESS. の樣にも思える. バンヂンガンクビサウ(Carpesium Hosokawae KITAM.) ホソバガンクビサウに似てゐるが頭花小さく花梗長く,葉は小さく質硬く毛多き点で異なる,台灣の山地處々に生ずる.細川隆英氏の下さつた標品から出た新種.
著者
高橋 弘
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.33-40, 1994-09-30

ヤマホトトギスの花部生態学的研究を行い, 近縁なヤマジノホトトギスと比較した。両種は受粉様式の特徴の多くが似ている。花は2日間咲いており, 雄性先熟で, 自家和合性がある。主要なポリネーターはトラマルハナバチである。しかし, ヤマジノホトトギスは花被が基部から1/3のところで平開するのに対して, ヤマホトトギスは下方へ折れ曲がる。トラマルハナバチは折れ下がった花被片に止まってから折れた部分の稜によじ登るか, あるいは直接稜部に止まって, 吸蜜する。隣の蜜腺を探るためには, その狭い稜部を歩かなければならない。ホトトギス属の直立型の花を持つほとんどの種には, 花被の基部近くの内面に黄橙色の蜜標がある。また, ヤマジノホトトギスは同じ場所に大きな紫色の斑点があり, それも蜜標と考えられる。しかし, ヤマホトトギスのその場所には可視斑点は認められず, 特別に紫外線を吸収するか反射する部分もない。花被の稜に紫斑点が集中し, また折れ下がった花被部の紫斑が少ない花では, その斑点は均一に分布せずに稜近くに集まる傾向があるが, そこは他の種の蜜標がある位置より上である。大部分のホトトギス属植物がほととんど同じ蜜標を持っていることなどから, ヤマホトトギスはそれを退化させたと考えるのが自然であろう。いくつかの植物種で, 蜜標を持たない植物は持つものより適応度が下がることが知られている。ヤマホトトギスは蜜標を退化させても, 適応度を低下させないと考えられる。トラマルハナバチはヤマホトトギスの折れ下がった花被に止まると, 頭が必然的に花の基部近くに来るし, 稜部にいても, そこが狭くて窮屈なため, 頭は基部近辺から遠く離れることはない。従って, 蜜の匂いを感じて, 蜜標がなくても正確に蜜腺を探るのかも知れない。ヤマホトトギスに蜜標がないのは, その特殊な花被の形態と関連があると思われる。稜上とその近辺に集まっている斑点は, ポリネーターの着地目標になっている可能性がある。
著者
福田 一郎 堀井 雄治郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.117-123, 2004-08-31 (Released:2017-03-25)
参考文献数
15

About 1,000 plants of Trillium camschatcense (2n=2x=10) are growing well in the Sashimaki marshland (5 hectare area) near Lake Tazawa in Tohoku district. These plants are located in the most southern limit of their distributions (Trillium camschatcense). 13 plants of Trillium apetalon (2n=4x=20) also grow there. Only 3 plants of Trillium yezoense (2n=3x=15) have been found growing in this area. By means of chromosome analysis of cold-induced banding karyotype, it has been confirmed that their plants are hybrid between T. camschatcense and T. apetalon.
著者
織田 二郎 村長 昭義
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.163-173, 2015-10-14 (Released:2017-03-25)

Color of pollen grains of Chrysosplenium album Maxim. (s.l.) in vital conditions were yellow from Fukushima Pref. to north-east Gifu Pref., while those were white from south-west Gifu Pref. to Miyazaki Pref. These results are geographically so stable that color of pollen grains is valuable for diagnostic character between C. album var. album (white) and var. stamineum (yellow). Boundary area between var. album and var. stamineum is probably located around Gujo-shi, Gifu Pref., concordant with Wakabayashi(2001)'s recognition.
著者
工藤 洋 マルホルド K. リホバ J.
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.41-49, 2006
参考文献数
51

Four species of European Cardamine have been considered to occur in Japan. Cardamine impatiens L. and C. ftexuosa With, have been treated as pan-Eurasian species that are also native to Japan. Cardamine hirsuta L. and C. parviflora L. have been listed as introduced species. In this study, we compared material from Japan and Europe to evaluate previous treatments. We confirmed the occurrence of C. impatiens and C. hirsuta in Japan, and consider the latter to be an introduced species, as indicated in previous treatments. The Japanese plants identified as C. flexuosa are likely to be different from the original C. flexuosa of Europe. The eastern border of the natural range of the European C. flexuosa is in European Russia, with a wide geographic disjunction between the European and eastern Asian plants. Cardamine flexuosa in central Europe occurs along the edges of montane forests, but the plants in Japan are most common in ricepaddy fields. We found no specimens from Japan of true C. parviflora in the major herbaria of Japan. Further rigorous systematic and nomenclatural studies are required to determine the status of the plants that have been treated as C. flexuosa in Japan.
著者
大井 次三郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-36, 1933

112)チシマルリサウ チシマルリサウは碧色の花の美しい海岸植物で南千島の色丹島から得撫島にかけて分布する,その学名は巴里博物館のH.HUMBERT教授の厚意に依ってSteenhammera pterocarpa TURCZ. を改めたMertensia pterocarpa (TURCZ.) TATEWAKI et OHWIと成らねばならぬ事が明らかに成った.従来はMertensia rivularis DC. の変種と考えられていたが此の植物は沿海州産のもので小果の周縁に鋸歯がある別種でHULTEN氏が勘察加植物誌に図解して居る.又著者の一人は誤って色丹植物誌中にMertensia kamtscbatica DC.の名を用いたが此れは北千島から勘察加に分布するタカヲカサウの異名であって小果の形ちは似て居るが全体に多少の絨毛があり,萼列片の形ちも質も少々違う別種である.113)チシマイハブキ 真のSaxifraga panctata LINN. は本邦では朝鮮の北部にのみ産する花序の疎な茎葉に軟毛のある種類であってチシマイハブキにあてるのは正しくない.チシマイハブキは北米北部に生するSaxifraga Nelsoniana DON に最も近似して居るがそれよりも花序が密でないのと葉身や葉柄に密毛の無い点が違う.チシマイハブキは北海道,千島,樺太及び勘察加に分布して居るが本州及び朝鮮では未知のものに属する,従って朝鮮産の真のS. punctata LINN. には和名がなくなるので新しくテフセンイハブキと呼ぶことにする.114)リウキウヒエスゲ 琉球の国頭郡佐手で小泉博士が採取せられたヒエスゲ近似の新種で,本州四国等の南海岸に分布するアヲヒエスゲに酷似して居るものであるが雌花鱗片が卵状三角形で漸尖頭であるのと果〓が平滑で脈が多いのとその肩の部分が急に狭まらぬ点が違う,又果〓の脈が多い点等台湾産のタツタカスゲとも似て居るが果〓が平滑でその側面が膨れて居る事や痩果の頂部に円盤状の付属物がある点が違う.Carex xollifera OHWIと呼ぶ.
著者
大井 次三郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.81-87, 1934

168) ヤマイチゴツナギ 本州,四國,及び朝鮮に分布するトボシガラの芒の無くした樣な外形のものであるが此れはその外尚台灣の山地にも産する. 169) シバカモノハシ,ヤエヤマカモノハシ 松村任三氏植物名鑑には Ischaemum muticum LINN. の名が出て居るが本田博士に從へばそれはオニシバに過ぎず眞の此の學名の植物ではない,從つて琉球の此の植物は本邦に於ける初めての記録と成る,他の Ischaemum に比べて隨分違つたもので芒が全くなく,葉が短かくて一見オニシバを少し大形にした樣なものである,吾が近隣地方では比律賓にある. 170) ヒメネヅミノヲ 台灣の新竹州,十八尖山で島田彌市氏が一見ネヅミノラを小形にして穂に赤味を帶びさせた樣な植物を採集せられた,台灣の對岸,福建及び廣東に知られて居た Sporobolus Hancei RENDLE で和名は島田彌市氏がヒメネヅミノヲと名付けられた,本邦のフロラには新品である.171) カニツリグサ 之れも台灣では未記録であつたが同地のピアナン鞍部,太平山等で採集した,ピアナン鞍部ではリシリカニツリと混じて附近の草原に可なり澤山あつた,此のカニツリグサは歐洲産の Trisetum flavescens BEAUV. 及びその變種で本邦北部や中部の山地等にあるチシマガニツリとは明かな別種であつて,容易に出來る區別點としてはカニツリグサでは護頴の先端の二個の裂片が針状に尖る事と葯が楕圓形又は長楕圓形で護頴の長さの1/5-1/6に過ぎぬ(チシマカニツリ及び Trisetum flavescens BEANV. では2/3-2/5.その形ちは線形披針形であるが上部の花のものではそれよりも多少短かい)點等を擧げる事が出來る. 172) イヌフト〓 Scirpus littoralis SCHRAD. の新和名である,琉球本島の産でフト〓に似て痩果の剛毛に比較的長い毛がある,莖は三稜形である.