著者
平原 友紀 矢野 興一 星野 卓二
出版者
日本植物分類学会
雑誌
日本植物分類学会誌 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.23-30, 2007
参考文献数
21
被引用文献数
1

ビャッコイ(Isolepis crassiuscula Hook, f.)は日本とインドネシア,パプアニューギニア,オーストラリア,ニュージーランドに分布することが報告されている.日本では福島県白河市のみに生育しており,絶滅危惧種(IB)に指定されている.本研究では日本産ビャッコイの染色体と葉緑体遺伝子の解析を行った.その結果,ビャッコイの染色体数は2n=96であり,今までに報告されたビャッコイ属の他種よりも高次の染色体数を持つことが明らかになった.また,ビャッコイ属10種について葉緑体rbcL遺伝子とtrnL intron傾城の比較を行なった結果,日本産ビャッコイは同属9種よりも,オーストラリア産ビャッコイと相同性が高いことが明らかになった.
著者
北村 四郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
Acta Phytotaxonomica et Geobotanica (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.127-130, 1979

数年前に大英博物館からネパール産のキク科植物標本が京都大学理学部植物学教室に到着した。私に種名の同定をしてほしいとのことであった。そのうち,わかったのは同定して返送したが,むずかしいのが残った。パリー自然史博物館から中国やベトナムのキク科植物標本を送ってもらって,それらを調べつつ,ネパールのキク科植物を再検討した。このほどようやく仕事が一応終った。そのうちの新種を報告する次第である。ヨモギ属の一種。姿や葉は日本のヤマヨモギに似ていて,頭花は大きく,球形で幅5mmほどある。英人が採集したが,1976年には田端英雄氏等もこれを採集した。田端氏等のは花が蕾である。そのほか,キケルビタ属一種。トウヒレン属2種。キオン属2種の発表である。ネパールは中国の四川,雲南と陸続きなので,多数のキク科植物が報告されている四川,雲南と共通する種も多いが,然しネパールに特産する種も可成りある。
著者
釘貫 ふじ 村田 源
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.349-358, 1987-09-25 (Released:2017-09-25)

An attempt was made as to the epidermal system of both adaxial and abaxial surfaces of foliage in some species of Rhodoendron which has been scarcely investigated. Using our original method, an observation of wide scope can be made concerning the epidermal layers of leaves by the light microscope from the polar view. The epidermal cells of the adaxial surface are found to be amoeboid in shape in R. aureum, R. brachycarpum and R. makinoi, while those to be not amoeboid but polygon in shape in R. metternichii var. metternichii, R. metternichii var. hondoense, R. yakushimanum and R. degronianum. In R. brachycarpum, the epidermal system of the adaxial surface is observed to be 2-layers near midrib, but to become one layer at the margin of leaves. there is sporadically an aggregate of cells which are well stained by fuchsin. In R. aureum, the hair stalks which are multicellar are observed in the abaxial surface of leaves. In R. brachycarpum, the base of hairs is found to be 2 cells, while that in the other species examined to be 2-4 cells. Considering the unique mode of the distribution and the density in stomata and hairs, and the epidermal cells being elliptic polygon, R. yakushimanum is thought to be clearly distinguished from R. metternichii and R. degronianum.
著者
坂本 亮太 廣田 峻
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.137-145, 2015-10-14 (Released:2017-03-25)

本研究は,19世紀後半に日本国内に帰化したと考えられている,コマツヨイグサOenothera laciniataの繁殖生態を明らかにする.福岡,岐阜の2地点における7種類の袋がけ処理の結果,処理区間のいかなる組み合わせでも,果実あたりの種子生産数に有意な差異は検出されず,コマツヨイグサは開花前の自動同花受粉によって,外交配花粉に頼らずとも種子を生産できることが明らかとなった.これらの結果は,原産地である北米での研究報告と矛盾せず,日本国内においても,開花前の自動同花受粉と同時に,Permanent Translocation Heterozygotes(PTH)と呼ばれる繁殖様式を維持していることが強く示唆された.PTHは受粉を必要とするものの,クローン種子を同花花粉で作るため,繁殖相手が少ない帰化先において分布を拡大できた大きな要因であると考えられた.コマツヨイグサは現在までに,環境省の要注意外来生物種に指定され,日本各地で定着防除策がとられている.PTHのような侵入に適した形質の認識不足は,防除対策の課題となり得るため,今後の更なる周知および新たな調査が必要である.
著者
増田 道夫
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.149-156, 1978

北海道大学探検部アリューシャン列島踏査隊によって採集された紅藻フチトリベニ属 Rhodophysema 二種について報告した.Rhodophysema elegans (C_<ROUAN> frat. ex J. A_G.) D_<IXON> には四分胞子体の他に雄性配偶体が確認され,本種の精子嚢形成について報じた.キクイシコンブ Thalassiophyllum clathrus の茎状部に着生していたものを新種 Rhodophysema nagaii M_<ASUDA>, sp. nov. として記載した.本種は千島列島の海藻を研究した故永井政次博士が Rhododermis parasitica B_<ATTERS> (和名,コブノハナ) としたものと同種であるが,真の R. parasitica (=Rhodophysema elegans) とは四分胞子嚢が長い柄細胞列を持つこと及び,側糸が長いことで異なる.これらの形質において, R. nagaii は R. africana J_<OHN> et L_<AWSON> 及び R. feldmannii C_<ABIOCH> に似ているが,種々の点で区別される.
著者
菅原 敬 堀井 雄治郎 久原 秦雅 平田 聡子
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.21-26, 1999-08-28

アオモリマンテマは本州北部の青森県然岳とその周辺地域(白神山地の一部),秋田県男鹿半島,和賀山塊の限られた地域に産するナデシコ科の多年草である。この植物は,垂直に切り立った岩壁に生育し,また生育地も互いに離れていることから集団間に何らかの分化が生じていることが予想され,実際野外調査で和賀山塊産の個体は一見して花が大きいように思われた。そこで青森県および秋田県の5集団を用いて,この種の花形態(特に花冠サイズに着目)ならびに核形態を調査した。その結果,秋田県の集団(男鹿,和賀山塊の3集団)は花弁の幅が確かに青森県の集団(然岳,暗門)より広い傾向にあるが,全体としては連続した変異であることがわかった。また,染色体数は2n=72で,集団間に核型においても違いは認められなかった。この染色体数はこれまで報告された日本産種のなかではもっとも多く,同属の染色体基本数x=12を考慮すると倍数性(6倍体)由来と推定された。形態比較や染色体のデータに基づいて近縁と考えられるタカネマンテマとの関係についても若干の考察を試みた。
著者
秋山 弘之
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.p21-26, 1993-08
被引用文献数
1

インドネシア科学院ボゴール標本館と東京大学との共同研究として, 1991年に西カリマンタンにおける渓流沿い植物の調査が行われた.その際見いだされた, ホウオウゴケ属(蘚類)の新種Fissidens dalamairを記載した。本種はアジアに広く分布するホウオウゴケF.nobilisに近縁であるが, 細く長い茎を持つこと, 葉が急角度で茎につくこと, 葉の舷が強く発達するといった形態的特徴, また, 常に流水中に生育するという生態的特徴を有しており, 渓流沿い環境により適応して二次的に種分化をおこした種であると考える。