著者
井上 賢 佐野 浩史 武捨 賢太郎
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.239-244, 2012

今春も,東京における21回目の「今春の物理入試問題についての懇談会」(通称「入試懇談会」)が実施された。今年は,現行の学習指導要領下での7回目の大学入試が行われる一方,4月には,高校1年生の理科(及び数学)において,新学習指導要領先行実施による授業がスタートした。そのため,大学入試を巡る議論においては,現行課程における課題もさることながら,新課程下における大学入試やセンター試験に向けた課題や危惧の提示,これまでの課程の変遷及びこれからのカリキュラムの在り方に対する意見なども含まれることとなる。その意味で,今回の入試懇談会においても,今春の大学入試問題を素材としつつ,広範な疑問や意見が交換され,入試問題という枠に限られない課題,そしてそれぞれの現場・立場における苦悩についての共有化が図られ,有意義な懇談会として終了できたことを,ここに報告したい。
著者
杉原 瑶子 三田 覚 岩佐 真弓 山上 明子 若倉 雅登 井上 賢治
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.64-70, 2018-03-25 (Released:2018-03-31)
参考文献数
11

網膜硝子体手術後の合併症の一つに斜視がある.その原因として局所麻酔薬による筋毒性,外眼筋の損傷,機械的因子などが挙げられる.今回硝子体手術後に斜視を呈した3症例を経験した.3例とも術眼の下斜視と上転制限を呈していた.手術時の麻酔はbupivacaineによる球後麻酔であった.2例ではMRIで下直筋の球後での肥大を認めた.硝子体手術後の斜視はbupivacaine筋毒性による下直筋障害が原因と考えられた.2例は斜視手術により良好な眼位を得られた.
著者
井上 賢治 森 美紀 志村 和可 千葉 マリ 桑波田 謙 間瀬 樹省
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
巻号頁・発行日
vol.9, pp.4, 2008

【目的】ロービジョン者ならびに高齢者が、駅からお茶の水・井上眼科クリニックまでのアクセス環境において、不便に感じていることはないかを調査した。<BR>【方法】JRお茶の水駅あるいは東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅を通院のために利用しているロービジョン者あるいは高齢者20名(男性9名、女性11名)を対象とした。「駅から当クリニックに来るまでに困っていること」を駅構内、横断歩道、ビル入り口までの通路・階段、ビル入り口からのエレベーターに分けて、各地点の不便を調査した。<BR>【結果】JRお茶の水駅を利用している患者10名(男性5名、女性5名)は、平均年齢74.0±7.4歳、疾患は緑内障および白内障7名、糖尿病性網膜症 2名、黄斑上膜 1名であった。駅からクリニックまでに困っている場所は、駅構内80%、通路・階段50%、横断歩道30%、ビル入り口からのエレベーター 10%で、駅構内が一番多く、特にホーム・階段が狭い、案内が見づらいなどの声が多かった。東京メトロ新御茶ノ水駅を利用している患者10名(男性4名、女性6名)は、平均年齢70.8±5.4歳、疾患は緑内障8名、糖尿病性網膜症 1名、ぶどう膜炎1名であった。駅からクリニックまでに困っている場所は、駅構内70%、通路・階段 50%、ビル入り口からのエレベーター 30%で、駅構内が一番多く、特に千代田線のお茶の水口は駅ホームから改札までが長いエスカレーターのため不便と言う声が多かった。<BR>【結論】JR、東京メトロ利用者に共通していたのは、駅構内で困っていることが多かった。特に駅ホームから改札へのアクセスが階段や長いエスカレーターのみで利用しづらく、案内表示が見づらいと感じていた。患者さんのことを考えると、クリニック内にとどまらず、まち全体のユニバーサルデザイン化を検討すべきである。
著者
山崎 美香 岩佐 真弓 山上 明子 塩川 美菜子 井上 賢治 若倉 雅登
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.137-147, 2023-06-25 (Released:2023-07-11)
参考文献数
15

我々は,新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種後,2か月以内に発症した視神経炎を5例経験した.2例(症例1,2)は典型的な抗myelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)抗体陽性視神経炎で1例目は片眼,2例目は両眼発症であった.3例目は,非典型的な両側抗MOG抗体陽性視神経炎にぶどう膜炎を併発していた.4例目は,非典型的な両側視神経炎であり,視神経周囲炎様の所見と著明なくも膜下腔の拡大を伴っていた.5例目は,非典型的な片眼抗MOG抗体陽性視神経炎であり,ワクチン接種から活動的な進行がみられるまで,約2か月を要していたが,ワクチン接種時期と視神経炎の発症の時期から,SARS-CoV-2ワクチンの副反応の可能性を十分考慮すべきと考えた.今回経験した5症例は,それぞれ,全く異なる臨床所見を示しており,SARS-CoV-2ワクチン接種後の視神経炎は,典型的な視神経炎を呈する症例から,一見視神経炎以外の疾患を疑うような非典型的な視神経炎まで,多様な臨床像を呈する可能性がある.また最も注目すべきことは,5例中4例で抗MOG抗体陽性であったことであり,ワクチン接種と抗MOG抗体陽性視神経炎がどのように関連しているのか,その真偽と機序の解明を待ちたい.
著者
長尾 真弓 廣政 幸生 井上 賢哉
出版者
日本フードシステム学会
雑誌
フードシステム研究 (ISSN:13410296)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.219-224, 2023 (Released:2023-03-23)
参考文献数
13

The purpose of this study was to clarify the actual status of game meat consumption and consumption intentions in urban restaurants, and to examine measures to increase consumption. The implications of the analysis are as follows. 1.Game meat served at casual restaurants tend to be a low evaluation. Cooking techniques and menu development will be important. 2. Potential consumers are consumers with a strong desire to explore food and a strong sense of meat-loving, but at present, concerns about sanitation are having a negative impact on the expansion of consumption. Therefore, providing information from restaurants to consumers about safety between is important.
著者
山上 明子 岩佐 真弓 井上 賢治 若倉 雅登 龍井 苑子 石川 均 高橋 浩一
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.162-171, 2021-06-25 (Released:2021-06-22)
参考文献数
23
被引用文献数
2

脳脊髄液減少症と診断された28例(男性13例,女性15例)の自覚症状,眼所見,調節力を検討した.また視力・視野障害のない症例に輸液治療施行前後で近見時瞳孔反応と調節をTriIRISとARK-1を用い測定し比較検討した. 眼科的な自覚症状は眼痛71.4%,ピントが合わない60.7%,単眼複視42.9%,両眼複視35.7%,視力低下 28.5%,羞明25.0%,視野異常7.1%であった. 視力低下例では眼内に異常所見がなく,視野異常例では半数で求心性視野狭窄を呈した.調節力は75.0%で年齢に比し低下傾向を示した.輸液治療施行前のTriIRISを用いた検査では輻湊時の視標への追従が悪い,瞬目が多いなど近見視に伴う輻湊や縮瞳にノイズが多かったが,輸液治療後は全例見え方の改善を自覚し,一部の症例でTriIRISでの輻湊時視標への追従の改善,瞬目の減少がみられたが,ARK-1の結果では調節微動および瞳孔径に差がなかった.脳脊髄液減少症に対する輸液治療後の見え方の改善は輻湊系の機能の改善を示唆している可能性がある.
著者
棚町 千代子 吉永 英子 水島 靖子 齊藤 祐樹 天本 貴広 井上 賢二 中島 収 山口 倫
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.447-452, 2016-07-25 (Released:2016-09-10)
参考文献数
7

2012年9月より,当院の手術室の手洗い水は滅菌水から水道水へ変更となった。これに伴い,2箇所の手洗い場の7つの蛇口から採取した水道水の細菌汚染調査を行い,適切な管理方法について検討した。以前は一般細菌と大腸菌について検査されていたが,従属栄養細菌を追加し調査した。手洗い水から一般細菌と大腸菌については検出されなかった。しかし,従属栄養細菌は目標値とされる集落数2,000 CFU/mLを超えていた。優勢菌種はSphingomonas pausimobilisとMethylobacterium sp.であった。対策として,まず蛇口の清掃,使用前の流水の確認,塩素濃度の測定を行った。これらの結果では塩素濃度は十分であったにもかかわらず,従属栄養細菌が多く検出された。すなわち塩素に対し耐性を示す細菌が存在することから,塩素以外の熱水殺菌が有用であると思われたため,次に65℃の熱水による処理を実施した。この対策後,現在まで従属栄養細菌は2,000 CFU/mL以下となっている。これまでの管理を見直し,徹底することで手洗い水の改善に至った。今後も手洗い水に含まれる従属栄養細菌を検査することにより,清浄度が保たれると思われる。
著者
原 晃一 岡野 栄之 伊藤 豊志雄 疋島 啓吾 井上 賢 澤本 和延 金子 奈穂子 豊田 史香 小牧 裕司 牛場 潤一 武見 充亮 塚田 秀夫 岩田 祐士
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

コモンマーモセットを用いた、開頭を必要としない低侵襲脳梗塞モデル作成法が確立された。統一した手技によって信頼度の高い確率でモデル作成が可能となった。本モデルは大脳基底核を中心とした広範囲な脳梗塞を呈し、病巣と反対側の半身運動麻痺を来たす。本モデルにおいてはこのような神経学的異常所見を客観的に評価するための行動学的解析や、MRI、PETを含めた放射線学的解析が可能であり、げっ歯類に比べ、よりヒトに近い脳梗塞モデルであると考えられる。さらに神経新生などの評価のための組織学的検討のみならず、定位的脳手術による細胞移植も可能であり、今後の脳梗塞治療研究に非常に有用なモデルであると考えられる。
著者
柴田 俊子 奥住 祥恵 篠原 有由子 森田 文子 光永 知和子 嶋本 圭 大音 清香 井上 賢治
出版者
日本視機能看護学会
雑誌
日本視機能看護学会誌 (ISSN:24333107)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.28-31, 2023 (Released:2023-11-22)
参考文献数
3

目的:A病院における夜間・休日の救急患者電話対応の業務の統一化を図るためにマニュアルを作成し評価を行う。 方法:調査期間:2020年3月~ 7月 対象:看護師が電話対応をした66件 方法:電話対応アンケートに記載されたアンケート内容を収集分析。 結果:電話総数66件のうちマニュアルを参照しなかったのは57件(86%),マニュアルを参照したのは9件(14%)だった。この9件の内訳は手術後の症状3件,アトロピン硫酸塩水和物に対する副作用2件,病状2件, ボトックス®注射1件,クレーム1件だった。 考察:マニュアルを作成することにより病棟では関わらない処置の確認や医師への連絡が簡便になり,病棟看護師の電話対応の統一や看護師の不安の軽減に繋がった。夜間や休日は病棟看護師に他部署の役割が求められる為,定期的にマニュアルの見直しや,追加修正等を行う必要がある。
著者
井上 賢一
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.207-213, 2023 (Released:2023-04-05)
参考文献数
15

肺胞の表面を覆う肺サーファクタントは,主成分である脂質の両親媒性により,呼吸機能の維持に重要な役割を果たしている。最近,この肺サーファクタントに含まれる不飽和脂質が空気中に含まれる程度の極低濃度オゾンによっても酸化されることを示唆する結果が報告されている。極低濃度オゾンの呼吸器への影響を明らかにする上で分子レベルでの反応機構を明らかにすることは重要であるが,技術的な難しさのためにその詳細はこれまでに十分には明らかになっていない。和周波発生(SFG)分光法は,2次の非線形光学効果に基づき分子の界面構造に非常に敏感な分光法である。特に,SFG光の干渉信号を検出するヘテロダイン検出は,従来の光強度測定と比較してより多くの情報を得ることが可能である。本稿では,ヘテロダイン検出SFG分光法の原理と極低濃度オゾン環境下における不飽和脂質単分子膜の酸化反応のその場測定への適用例について紹介する。
著者
森田 文子 柴田 俊子 奥住 祥恵 光永 知和子 嶋本 圭 大音 清香 井上 賢治
出版者
日本視機能看護学会
雑誌
日本視機能看護学会誌 (ISSN:24333107)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.30-32, 2020

目的:A 病院における夜間・休日の救急患者電話対応を振り返り現状と課題を明らかにする。対象と方法: 調査期間:2017 年1 月~ 12 月 対象:電話相談をした166 件方法:救急患者記載表に記載された相談内容を収集分析結果:電話総数517 件に対して救急患者記載表使用は166 件。年齢別では70 歳以上が87 件(52.4%)。時間帯では17・18 時台が各21 件ずつ(12.7%) と最も多く,17:00 ~ 23:00 では85 件(51.2%)。疾患は,緑内障が61 件(36.7%)で最多。相談内容は,目の不調について122 件(73.5%),点眼・内服について29 件(17.5%) の順。考察:電話相談は,病棟看護師の多忙な夜間帯に多い。多忙な時間帯での救急患者電話対応では,入院患者への安全な看護行為の提供は難しく,又,電話相談患者が安心できる対応も同様である。これらのことから,電話対応のマニュアルを作成する必要があると考える。
著者
小野 啓一 井上 賢 広井 禎
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.343-345, 2000

本年も5月27日(土)に東大駒場で13大学の参加を得て,今春の入試問題の懇談会が行われた。東京でのこの会は1991年に始まり,本年は9回目になる。この会の実務にあたった高校に属する3人で,いくつかのことを報告する。
著者
岩佐 真弓 塩川 美菜子 山上 明子 井上 賢治 若倉 雅登
出版者
日本神経眼科学会
雑誌
神経眼科 (ISSN:02897024)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.55-58, 2018

Leber遺伝性視神経症(LHON)は10~20代の若年男性に好発するとされるが,比較的高齢発症する症例の臨床的特徴を検討した.2002年から2015年に受診したLHON92例のうち,発症年齢が50歳以上であった14例に対し,その年齢・性別・ミトコンドリアDNA変異の種別,臨床経過をレトロスペクティブに検討した.50歳以上で発症した14例(男性11例,女性3例)のDNA変異はm.11778G>Aを有し,そのうち8例で家族内発症が明らかであった.最低視力の平均は0.01,最終視力の平均は0.02であり,視野はゴールドマン視野計で5~30度の中心暗点を呈した.また,アルコール依存症,網膜静脈閉塞症,胃全摘などの既往歴がみられた.当院で経験したLHONのうち,50歳以上の症例は10%を超えており,稀ではなかった.いくつかの既往歴は,誘因としての役割という観点から今後注意していくべきものと考えられる.
著者
竹村 智子 枯木 幸子 光永 知和子 飯嶋 幸子 大音 清香 井上 賢治
出版者
日本視機能看護学会
雑誌
日本視機能看護学会誌 (ISSN:24333107)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.23-26, 2018 (Released:2019-02-01)
参考文献数
8

目的:A 病院病棟看護師の手指衛生についての認識や実施状況を調査し、今後の院内感染防止活動の示唆を得ることを目的とした。 方法:期間は2017 年3 月~ 4 月。対象者は病棟看護師15 名。 日勤業務に就いている看護師1 名に観察者1 名が30 分間同行し、直接観察法を用いて看護行為に伴う手指衛生を行うタイミングと手順について観察した。また、手指衛生の5 つのタイミングについてアンケート調査を実施した。 結果:手指衛生の実施率は72.7% であった。患者に触れる前より後の実施率の方が高かった。手順の遵守率は、アルコール手指消毒剤が3.8%、手洗いが12.1% であった。実践できない理由で多かったのは「忙しい」で11 名が回答した。 考察:手指衛生の手順が遵守できないのは、認識の低さが影響しているといえる。不十分な手指衛生行動を自覚できるような啓発活動が必要であり、適切な手指衛生が習慣化できるよう継続的に行うことが必要である。
著者
山崎 敏昭 井上 賢 谷口 和成 内村 浩
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.101-107, 2011
被引用文献数
2

多くの問題点が指摘されている日本の高校物理における実験について,2006年に,約2,500名の大学新入生を対象とした大規模な高校物理実験の実施状況に関する実態調査を実施した。その結果,生徒実験,演示実験とも回数が少ないだけでなく,実験を数多く実施している学校とそうでない学校の間に大きな差があること,それが全国的に共通していることがわかった。今回2009年に,約3,800名を対象とした同様の調査を実施して3年間の変化をみるとともに,「高等学校理科教員実態調査」との比較も行い,物理実験を取り巻く状況を総合的に分析し,今後のあり方についての検討を行った。
著者
井上 賢治 間瀬 樹省 桑波田 謙
出版者
一般社団法人日本福祉のまちづくり学会
雑誌
福祉のまちづくり研究 (ISSN:13458973)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.A1-A13, 2011-07-15

お茶の水・井上眼科クリニックの開院時にユニバーサルデザインの観点から高齢者やロービジョン者にも分かりやすいサインを目指した。文字フォント、案内表示、トイレピクトグラム、フロアマップの調査を4回行った。クリニック職員220名、緑内障、白内障患者及び高齢者91名を対象とした。パフォーマンス測定法、リカード法、SD法で評価した。文字フォントはロダン、数字フォントはセンチュリーゴシック、誘導サインは濃い青の背景に白文字、フロアマップは最も情報量の少ない形、トイレピクトグラムは男性が標準形、女性がスカートを広くした形、多目的トイレピクトグラムは男女を上段にしたものを採用した。利用者による調査を基にサインを作成し、高齢者やロービジョン者に分かりやすいサインが完成した。
著者
桑波田 謙 間瀬 樹省 原 利明 千葉 マリ 南雲 幹 石井 祐子 大石 奈々子 井上 賢治
出版者
日本ロービジョン学会
雑誌
日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集 第9回日本ロービジョン学会学術総会
巻号頁・発行日
pp.5, 2008 (Released:2009-01-17)

【目的】白杖を利用する視覚障害者の誘導について、屋外では点字ブロックの整備が進んでいるが、公共施設や病院等の屋内では点字ブロックは限定的な整備に留まっている。白杖利用者がより自由に行動でき、同時に高齢者や車椅子利用者等にとっても負担の掛からない新たな仕組みを目指して、床の素材差による誘導の有効性を調査した。【方法】タイルカーペット敷きの空間に点字ブロックとホモジニアスビニル床タイル(以下床タイルとする)による2通りの経路(距離6m、幅50cmのL字型誘導ライン)を設置した。被験者(全て晴眼者)は全員アイマスクを装着し、オリエンテーションの後白杖を使ってそれぞれの経路をエンド部まで辿り、辿りつけるかの成否、掛かった時間、エラーの場所と回数を計測した。学習効果による優位性を考慮し、調査の先行は点字ブロックと床タイルを交互に変えて行った。調査後それぞれの印象についてSD法、リカート法による評価を行った。被験者は52名(男性26名、女性26名)、平均年齢は39.4歳±12.6歳であった。【結果】エンド部まで辿りつけなかった人数は点字ブロック2名、床タイル4名で、共に高い誘導効果が示された。先行した群での辿りつけなかった人数は、点字ブロック1名に対し床タイル4名で同等だった。到達時間は点字ブロック54秒(±29秒)、床タイル50秒(±24秒)で双方に有意差は無かった。印象についての評価では、SD法、リカート法共に点字ブロックの方が評価が高かった。【結論】健常者を対象にした今回の比較調査では、点字ブロックは誘導効果の高いものであるが、その代替案として屋内空間においてはカーペットにタイルを埋め込む等、床の素材差による誘導も可能であることが示唆された。 しかし、本調査は白杖を使用しての歩行に不慣れな健常者にアイマスクを装着してもらって、実験的に作った空間を歩くという調査の為、実証には、日常的に白杖を使用者している人を対象とした実際的な調査が必要だと思われる。