著者
藤野 英己 祢屋 俊昭 武田 功
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.218-224, 1997
参考文献数
10
被引用文献数
3

嚥下第2相では,呼吸運動と特に密接な関係が必要であると考えられている。そこでフォーストランスジューサおよび呼吸ピックアップセンサーを用いて,喉頭運動曲線,呼吸曲線を記録し,嚥下と呼吸の相互連関について検討した。嚥下時には安静呼吸に比較して,小さな呼吸が喉頭挙上に同期して生じた。この呼吸と喉頭運動の時間的相互連関を明らかにすることによって,正常嚥下の生理学的反応を推定した。その結果,喉頭挙上の開始直後に嚥下呼吸が発生し,喉頭が降下開始後に嚥下呼吸は呼息相に移行した。これは喉頭が挙上した後に嚥下呼吸の吸息が生じることによって気道内圧が下降し,気道閉鎖を完全な状態とすることを意味すると推測された。また,"むせ"の状態では嚥下呼吸が喉頭挙上に先行した。さらに,姿勢による影響について背臥位(頸中間位,頸前屈位,頸後屈位)で測定し,比較検討した。一方,この測定方法が嚥下の定量的評価として有用かについても考察を加えた。
著者
楠本 泰士 菅原 仁 松田 雅弘 高木 健志 新田 收
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.168-173, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
15

【目的】本研究の目的は,痙直型脳性麻痺(以下,CP)者における安静時と足関節等尺性背屈時のH 波の振幅値変化の違いを明らかにすることとした。【方法】対象は粗大運動能力分類システムにてレベルⅠ,Ⅱ,ⅢのCP 群14 名と健常者である対照群14 名とした。CP 群では下肢随意性検査を行い,利き足を決定した。両群で利き足でのヒラメ筋のH 波最大振幅値を安静時と等尺性背屈時とで比較した。【結果】対照群は等尺性背屈時にH 波最大振幅値が有意に低下したが,CP 群は振幅値が低下した者が8 名,上昇した者が6 名であり,全体としては変化がなかった。【結論】CP 者は足関節等尺性背屈時にヒラメ筋への相反抑制がかからない者がおり,健常者と比べて脊髄前角細胞の興奮性が十分に制御されていなかった。CP 者の腓腹筋やヒラメ筋のストレッチでは,背屈時のH 波振幅値の上昇と低下に合わせて,相反抑制の効果を組み合わせるか判断する必要性が示唆された。
著者
杉元 雅晴
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.248-252, 2004-06-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
6
著者
川崎 翼 河野 正志 兎澤 良輔
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.306-310, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
21

【目的】本研究の目的は,経験した運動スキルを他者に教授することの即時的な運動学習効果を明らかにすることであった。【方法】参加者は若年成人23 名であり,教授群12 名,コントロール群11 名に分けられた。運動学習課題は,2 つの球を非利き手で回す課題とした。教授群は球回しの練習後,1 分間の球回しパフォーマンスが計測された。この後,球の回し方について教授群は聞き手に教授した。その直後と2 分後に再度,パフォーマンスを計測した。コントロール群は教授群と同様の手続きであるが,教授は行わず科学雑誌を音読した。【結果】教授群のみ球回し回数が有意に増加した。また,教授群はコントロール群に比べて,球回しの改善回数が有意に多かった。【結論】他者に経験した運動スキルを教授することは,即時的に運動学習を促進する可能性が示された。
著者
大城 昌平 松本 司 横山 茂樹 藤田 雅章
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.463-468, 1990-09-10 (Released:2018-10-25)

全身性関節弛緩症(GJL)が足関節不安定性の発症や病態にどのように関与しているか,特に足関節の捻挫既往,及びスポーツ活動の関連について知るため,GJLの58例116足関節を対象に,中等度以上の捻挫既往の有無と3年以上のスポーツ歴の有無について問診し,足関節の機械的不安定性の指標としてストレスX線撮影,機能的不安定性の指標として片脚立位での重心動揺の測定を行った。まず,症例を捻挫既往の有無により2群に分けて検討した。次に,3年以上のスポーツ歴の有無と,さらに捻挫既往の有無により分けた4群について検討した。その結果,GJL,あるいはGJL存在下でのスポーツ活動そのものは足関節不安定性に直接的に関与しているのではなく,捻挫既往の有無が,足関節不安定性の重要な関連因子であることが示唆された。
著者
佐藤 仁 高橋 輝雄 加藤 宗規
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.286-287, 2001
被引用文献数
1

学内において,学生が抱く障害イメージを教員が客観的に把握する指標を見出すことを目的とし,Barthel Index(以下,BI)を用いて検討した。「脊髄損傷に対する理学療法」の授業初日および最終日において,学生33名に対麻痺者に対するイメージをBIで得点化させた。BI平均点は,授業初日50.0 ± 12.4点,授業最終日には77.9 ± 12.4点と増加した(p<0.01)。授業最終日には,上肢機能を要する日常生活活動を自立のイメージとした学生数が増加した。また学生は授業聴講以前より,対麻痺者に対して整容は自立,移動は車椅子というイメージを抱いている傾向にあり,他の教科やマスメディアによる先行学習が形成されていることが推察された。学生が抱く障害イメージを客観的に把握するには,BIがひとつの指標として利用できることが示唆された。
著者
田平 一行 関川 則子 岩城 基 河戸 誠司 関川 清一 川俣 幹雄 大池 貴行
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.59-64, 2007-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
19

症状の安定した慢性閉塞性肺疾患患者16名を対象に胸郭モビライゼーションを行い,即時効果について検討した。治療手技は米国Rancho Los Amigos病院で体系化された徒手胸郭伸張法を一部変更して実施し,治療前後の肺機能検査,胸郭拡張差,動脈血酸素飽和度,脈拍数,呼吸困難感を比較した。その結果,治療後に有意に第10肋骨部の胸郭拡張差は増加,心拍数は減少したが,その他の項目には変化を認めなかった。対象者の中から拘束性換気障害を合併した11症例を抽出し検討すると,更に腋窩部,剣状突起部の胸郭拡張差,肺活量,比肺活量でも有意な改善が認められた。これらは胸郭モビライゼーションによって,呼吸筋の柔軟性,関節可動性などが改善することによる効果と考えられた。慢性閉塞性肺疾患患者でも,特に拘束性換気障害をも合併した混合性換気障害の症例が胸郭モビライゼーションの良い適応になると思われた。
著者
高取 克彦 梛野 浩司 山本 和香 下平 貴弘 森下 慎一郎 立山 真治 庄本 康治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.352-356, 2003
参考文献数
15
被引用文献数
2

変形性膝関節症にて全人工膝関節置換術(total knee arthroplasty:以下TKA)を受けた症例に対して,深部静脈血栓症(deep venous thrombosis:以下DVT)の予防を目的とした下肢の神経筋電気刺激(neuromuscular electrical stimulation:以下NMES)を実施し,その臨床的実用性を検討した。対象は,本研究に対して同意を得られた16例(男性2名,女性14名,平均年齢68.6 ± 8歳)とした。NMESは術直後から離床まで継続的に実施し,その臨床的実用性を以下の3項目(1.電気刺激に対するコンプライアンス,2.刺激強度の定常性,3.電極の皮膚への影響)で評価した。DVTの有無については,腫脹,Homan's徴候などの理学的所見と凝固線溶系マーカーのFDP D-dimer(以下D-dimer)値によるスクリーニング評価にて実施した。刺激に対するコンプライアンスは15例が手術直後からドレーンチューブ抜去までNMESが実施可能であり良好であった。1例のみ刺激に対する不快感によりNMESを一時中断した。刺激強度は麻酔の影響,発汗などにより定期的な調節が必要であった。電極の皮膚への影響は1例のみ皮膚の発赤が認められた。DVTスクリーニング評価では明らかな下肢腫張が3例,腓腹筋把握痛が3例に認められたが,D-dimer値は全症例正常範囲内であった。今回の結果から,本法は刺激強度の定常性や皮膚への影響などの課題を改善することで,臨床的実用性が獲得できるものと考えられた。
著者
小林 孝誌
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.374-379, 1995-11-30 (Released:2018-09-25)
参考文献数
16
著者
吉田 剛
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.226-230, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
12
被引用文献数
1
著者
阿部 長 丸山 泉 原 直哉 明吉 康則
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.232-236, 1996
参考文献数
10
被引用文献数
1

脳卒中片麻痺患者(CVA患者)21例を対象に,下肢筋の能力の一部である筋持久力が歩行耐久性に及ぼす影響について検討した。対象は屋内歩行自立以上の歩行能力を有するCVA患者の内,麻痺側下肢のBrunnstrom stageがIV・Vの者に限定した。両側下肢の筋持久力及び歩行耐久性の指標として,膝伸展最大収縮20回前後の膝伸展筋力と300m最速歩行前後の歩行速度の低下率を用いた。また,歩行耐久性評価時に歩行率・重複歩距離に関しても前後比を求め,それぞれ比較した。その結果,麻痺側下肢のみ,筋持久力と歩行耐久性とに正の相関関係を認めた。また,歩行率及び重複歩距離の前後比はt検定で有意差を認めなかった。これらの結果より,麻痺側下肢の筋持久力が高い者程,歩行耐久性も高いと考えられた。