著者
阿部 千恵 吉原 真紀 真鍋 祐子 村上 賢一 藤澤 宏幸
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.130-134, 2004-04-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
6
被引用文献数
3

今回我々は,片麻痺患者を対象(n = 33)に,端坐位において体幹側屈による速い側方への重心移動動作時の圧中心点(center of pressure ; COP)の変化量を測定し,体幹運動機能(頸・体幹・骨盤運動機能検査 ; N.T.P.)との関係を検討した。COP変化量の指標は,動作関始直後にみられる重心移動をしようとする方向と逆方向の振幅(A1)・COP最大移動速度(Vmax),重心移動距離(Dcog)とした。また,独歩可能な患者の10m最大歩行速度を計測し,COP変化量との関係を併せて検討した。結果,側方重心移動時のA1とN.T.P.ステージには有意な相関関係があり,N.T.P.ステージが良好であった患者のA1は麻痺側・非麻痺側への重心移動動作共に大きかった。これより,体幹運動機能が良好な片麻痺患者では速い動作を遂行する為の重力のモーメントを作り出すことが可能であると思われた。最大歩行速度とDcogの関係は麻痺側方向と非麻痺側方向共に有意な相関があり,A1においては非麻痺側へ重心移動を行った場合,相関が認められた。これより,歩行時の体幹機能は骨盤掌上の要素に比べ骨盤帯や下肢の支特性がより影響するものと思われた。本研究より,端坐位における側方重心移動動作時のCOPの解析は,体幹運動機能評価に有用であり歩行能力に関連していることが考えられた。
著者
延本 尚也 岡野 生也 篠山 潤一 山本 直樹 安田 孝司 代田 琴子 安尾 仁志 相見 真吾 橋本 奈実 太田 徹 深津 陽子 鳥井 千瑛 田村 晃司 山口 達也 陳 隆明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11247, (Released:2017-05-01)
参考文献数
27

【目的】本研究の目的は在宅脊髄損傷者の退院後の褥瘡発生の有無を調査し,在宅脊髄損傷者の褥瘡発生危険因子を明らかにすることである。【方法】1996 年1 月~2005 年12 月までの10 年間に,当院を退院した脊髄損傷者310 名を対象に,郵送法による自記式アンケートを実施した。アンケート回答結果とカルテ診療録の情報を基に,後方視的に検討した。【結果】アンケート回収率は51.0%であり,約半数の対象者は退院後に褥瘡を経験していた。損傷の程度,入院中の褥瘡既往の有無,調査時の介助量,介助量の変化,外出頻度,自家用車の運転の有無が有意な因子として認められた。【結論】在宅脊髄損傷者において,完全損傷であること,入院中の褥瘡の既往があること,介助量が多いこと,活動性が低いことが褥瘡発生危険因子となることが明らかとなった。一方で,同居人の存在や在宅サービス利用の有無については褥瘡予防に有効に作用していない可能性が示唆された。
著者
生方 瞳 丸山仁司 霍 明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.348-356, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
35
被引用文献数
1

【目的】本研究は,中高年女性における腹圧性尿失禁とインナーユニットの関係について検討した。さらに,動作課題の妥当性について,骨盤底拳上量による腹圧性尿失禁検出度を比較した。【対象と方法】中高年女性101 名を対象とした。質問紙表にて尿失禁群と非尿失禁群に群分けした。握力,CS-30 テストに加え超音波画像診断装置を用いて腹横筋厚,多裂筋横断面積,骨盤底拳上量を測定した。【結果】尿失禁群はすべての筋で,同時収縮および抵抗運動で非尿失禁に比べ有意に低値を示した。尿失禁を従属変数としたロジスティック回帰分析で選択された因子は,抵抗運動時の骨盤底挙上量であった。【考察】インナーユニットは協同運動しており,特に抵抗運動時の骨盤底挙上量の低下は腹圧性尿失禁のリスクファクターであることが示唆された。さらに,抵抗運動時の骨盤底挙上量が4.88 mm 以下である場合は腹圧性尿失禁の可能性が著しく高いことが示唆された。
著者
入谷 誠 山嵜 勉 大野 範夫 山口 光国 内田 俊彦 筒井 廣明 黒木 良克
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.35-40, 1991-01-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
3

今回,我々は足位,すなわちFOOT ANGLEの変化が,骨盤の側方安定性に関与する中殿筋活動の動態と距骨下関節の内外反角度にどの様に影響をするかをX線学的及び筋電図学的に検索した。その結果,X線学的には,TOE-OUTで距骨下関節は内反し,TOE-INで距骨下関節は外反した。筋電図学的分析では,中殿筋の活動はTOE-OUTからTOE-INに向かって,明らかに増加した。さらに中殿筋の活動量が最も大きかったTOE-IN 30°でアーチサポートを挿入すると,中殿筋の活動量が明らかに低下したことから,中殿筋の活動量はFOOT ANGLEの変化のみならず,足部アーチの状態も大きく影響を及ぼしていることを示唆した。
著者
小澤 和夫 白石 久富 大野 恭子 西川 隆 田伏 薫
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.21-25, 1990-01-10 (Released:2018-10-25)

顔面運動においてMotor Impersistence(MI)が認められる患者では,車椅子駆動のような複合的な動作に関して,健側上下肢いずれかの肢における連続動作や上下肢の同時動作においても障害が認められる。この病態をより要素的に分析する目的で,手足の等尺性運動の維持能力を検討した。MI陽性左片麻痺群(6例)と対照群であるMI陰性右・左片麻痺群(各7例)の3群について,指腹つまみ単一動作,踏みつけ単一動作,指腹つまみと踏みつけの同時動作,の3種類の動作を各20秒間行わせ,圧力とその変動および保持時間を調べ各群を比較検討した。その結果,顔面運動でみられるような動作の中断はみられなかったが,上肢ではMI陽性左片麻痺群の圧力が他の群に比べ,時間の経過とともに有意に減衰していた。このことは,顔面と上肢および下肢の運動制御の水準の段階的な差を反映しており,より意図的な努力を要する動作において,定常的な運動の維持が困難になるものと考えられる。
著者
竹林 秀晃 宮本 謙三 宅間 豊 井上 佳和 宮本 祥子 岡部 孝生 滝本 幸治 八木 文雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.82-87, 2006-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2

筋力評価や筋力トレーニングは,徒手筋力検査法や等速度運動機器など,一側を対象として行われることが多い。しかし,身体運動の多くは,左右の四肢を非常に巧みに協応させて行われており,左右肢間の相互作用を考慮した両側性運動を考慮する視点も必要と思われる。本研究では,一側に筋力調節課題を与えることで注意の方向を統一し,その調節水準を変化させることによる対側との相互干渉の変化を,下肢運動課題を用いて検討した。対象は健常成人9名とし,運動課題には右膝伸展筋筋力の筋力調節下(等尺性収縮による100%最大随意収縮 : Maximal Voluntary Contraction(MVC),75%MVC,50%MVC,25%MVC)で,対側である左膝伸展最大等尺性筋力を発揮するという両側性運動を用いた。加えて,左側単独での膝伸展最大等尺性筋力も測定した。測定に際しては右膝伸展筋力の調整量保持を絶対条件とし,注意の方向性を統一した。データ分析対象は,各運動課題遂行時の左膝伸展最大筋力の変化とした。その結果,右膝伸展筋力を調整することによる左膝伸展最大筋力への影響は,右膝伸展筋力の調節水準が低くなるに従い,左膝伸展最大筋力も同様に低下するという同調的変化を示した。これは,両側性機能低下のメカニズムの一つである認知・心理レベルでの注意の分割が関与しており,神経支配比が大きい下肢筋での筋力調節の要求は,課題の難易度が高く,運動の精度を高めるためより多くの注意が必要性であるため,左膝伸展最大筋力が低下したと考えられる。
著者
伊藤 創 葉 清規 松田 陽子 室伏 祐介 川上 照彦
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11772, (Released:2020-08-05)
参考文献数
21

【目的】本研究目的は,肩関節疾患保存例に対して理学療法を行い,初回時の夜間痛の有無における治療経過,また,関節注射による影響を調査し,理学療法の有用性を示すことである。【方法】対象は,肩関節疾患保存例72 例である。初回時の夜間痛の有無で2 群に分類し,また,夜間痛あり群のうち,初診時に関節注射実施の有無で2 群に分類し,治療開始1,3 ヵ月後までROM,動作時VAS,アテネ不眠尺度(以下,AIS)の治療経過の差について解析した。【結果】 夜間痛あり,なし群の経過に交互作用がみられ,夜間痛あり群でROM,動作時VAS,AIS の高い改善度が得られた。また,関節注射併用例で初回から1 ヵ月後で動作時VAS の高い改善度が得られた。【結論】肩関節疾患保存例に対する理学療法により,夜間痛の有無にかかわらずROM,VAS,AIS の改善が得られ,夜間痛を有する場合,関節注射を併用することで早期に疼痛の改善が得られる。
著者
高橋 哲也
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.233-235, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
小ノ澤 真一 染矢 富士子 塗谷 栄治
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.411-419, 2020 (Released:2020-10-20)
参考文献数
42

【目的】長期人工呼吸器管理患者の肺コンプライアンス関連因子を検討すること。【方法】静肺コンプライアンス(以下,Cstat),動肺コンプライアンス(以下,Cdyn)を測定し,無気肺,胸水,自発呼吸の有無に分け2 標本t 検定を行い,換気状態,患者基本データ,血液生化学所見について相関分析を行った。【結果】無気肺がある患者のCstat が有意に低下し,Cstat とCdyn ともにBMI,Rapid shallow breathing index(RSBI),肺胞気動脈血酸素分圧較差,人工呼吸器管理日数に有意な相関を認めた。またCstat では年齢,CRP,肺炎発症回数においても有意な相関を認めた。【結論】Cstat,Cdyn に対する体格の影響は大きく,またCstat は無気肺,肺炎発症回数,炎症性変化に影響を受ける可能性が示唆された。またCstat,Cdyn の低下が換気効率に影響を与える可能性が示唆された。
著者
細井 匠 小枩 武陛 石橋 雄介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11679, (Released:2020-05-27)
参考文献数
56

【目的】我が国の統合失調症患者に対する運動介入の効果に関して,身体機能の向上,精神症状の改善,ADL の向上,これら3 点についてこれまでの知見を検証すること。【方法】4 種類の電子データベースを用いて,2017 年までの全年代を対象に複数の検索式で検索した。検索結果を統合し,2 回のスクリーニングを実施して採択文献を決定した。【結果】38 編が対象となり,身体機能の向上について記述した30 編,精神症状の改善について記述した24 編,ADL の改善について記述した9 編の内容を検討した。【結論】対応の工夫や精神科治療と併用する必要はあるが,運動介入は統合失調症患者の身体機能の向上,精神症状の改善,ADL の向上に寄与し得ることが示唆された。
著者
藤澤 宏幸 星 文彦 武田 涼子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.268-274, 2001-10-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
10
被引用文献数
5

本研究の目的は端座位における側方重心移動時の筋活動と運動力学的関係を明らかにすることである。被験者は健常成人男性10名とし,右側へ側方重心移動した際の左右脊柱起立筋および大殿筋活動,圧中心変動,体幹アライメントを測定した。側方重心移動動作を3分類し,各動作とも速度条件を1)可能な限り速く,2)普通の2条件とした。可能な限り速く側方重心移動した場合,各動作とも初期に圧中心は一旦左側へ移動し,その後急速に移動方向である右側へ移動した。普通の速度という指示で側方重心移動した場合は約半数でこのような機構がみられなくなった。このことより側方重心移動動作における動き始めには各動作に共通する機構が存在すること,またその機構が速度依存性に機能することが示唆された。また,制動に関しては移動側の大殿筋活動および反対側の脊柱起立筋活動が重要であった。脊柱起立筋は高位による活動の違いがみられ,特に下部腰椎部は初期の骨盤運動にも深く関与していると考えられた。
著者
桑原 知佳 柴 喜崇 坂本 美喜 佐藤 春彦 金子 誠喜
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.505-515, 2011-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
22

【目的】発達に伴い変化する背臥位からの立ち上がり動作の完成までの,動作パターンおよび動作所要時間の変化を縦断的に調査し,発達に伴う健常児の立ち上がり動作の変遷を明らかにする。【方法】健常児11名を対象とし,平均年齢4歳0ヵ月から1年ごとに6年間継続して立ち上がり動作を観察し,動作パターン,個人内の動作パターンの一致率,動作所要時間の変化を調査した。【結果】立ち上がり動作パターンは,階段状に難易度が高い動作に変化し,8歳10ヵ月以降変化が生じなかった。動作が変化した時期には,個人内でも様々な動作パターンが観察された。また,動作所要時間は発達に伴い短くなり,動作パターンの変化が終了後も短くなった。【結論】縦断調査により,立ち上がり動作は,非線形に変化をしながら9歳頃に完成することが明らかになった。動作獲得においては,個人内・個人間の多様性に富み,個々に適切な動作を選択しながら発達していくことが示唆された。
著者
間野 忠明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.75-79, 1999-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
28
被引用文献数
1