著者
峯松 亮 羽崎 完
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.128-129, 2011-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
2

本研究は,デイサービス利用高齢者を対象に,足底への振動刺激(FVS)がバランス機能に与える影響を調査することを目的とした。対象高齢者は要支援1から要介護4のいずれかの介護認定を受けている18名(84.9 ± 5.0歳)であった。対象者へのFVSを15分間/回,2回/週で3ヵ月間実施した。対象者へのFVSの介入前後に,重心動揺計にて開眼時と閉眼時の重心動揺パラメータを測定した。また,10 m自然歩行時間(10 m歩行),Timed Up & Goテスト(TUG),ファンクショナルリーチテスト,体重負荷率を測定した。さらに足底の痛覚および二点識別覚を調べた。その結果,開眼時の総軌跡長,外周面積,実効値面積,実効値,Y方向最大振幅および閉眼時の総軌跡長はFVS介入後に有意に低値を示した。10 m歩行,TUGはFVS介入後に有意に低値を,体重負荷率は有意に高値を示した。痛覚は小指球および踵部はFVS介入後に有意に低値を示した。本研究では,FVSの実施によりバランス機能の改善が認められた。FVSは足底感覚を改善することにより,体重負荷率の増加をもたらすと考えられ,これにより重心動揺が減少(特に前後方向動揺)し,立位時の安定性が改善したと考えられる。また,10 m歩行,TUGの有意な減少は動的バランス機能が改善したためと考えられ,FVSの実施による足底感覚の改善,体重負荷率の増加が下肢の運動機能に何らかの影響を与えた可能性が考えられる。
著者
石毛 里美 柴 喜崇 上出 直人 大塚 美保 隅田 祥子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.417-423, 2010-10-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
25

【目的】介護予防事業において,自己効力感(self-efficacy: SE)を向上させる4つの情報源に対応した取り組みを行い参加者のSEの変化を観察した。【方法】1回90分,週1回,3ヵ月間行われた介護予防事業の運動教室に参加した虚弱高齢者9名(男1名,女8名,平均年齢72.6 ± 6.4歳)に対し,4つの情報源である遂行行動の達成,代理的体験,言語的説得,生理的・情緒的状態に着目した取り組みを行い,3ヵ月間の前後において虚弱高齢者の身体活動SE,老研式活動能力指標(以下TMIG-IC),WHO-5精神的健康状態表(以下WHO-5),身体機能を聴取,測定した。【結果】虚弱高齢者の身体活動SE合計点は有意に向上し,下位項目の歩行SEにおいて大きな効果量が得られた。またTMIG-IC,WHO-5,8項目中6項目の身体機能に有意な改善,大きな効果量が得られた。また身体活動SEと歩行時間に有意な相関がみられた。【結論】介護予防事業におけるSEに着目した取り組みを紹介した。今後は統制群を設定するなどさらに検証が必要である。
著者
辻井 洋一郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.69-75, 1993-03-01 (Released:2018-09-25)

理学療法の痛み治療の効果判定のため,痛みを生理学的に解説し,理学療法の治療効果判定の基盤を探った。近年,痛みの問題は痛覚の話にとどまらず,鎮痛系や神経性炎症及び神経・免疫連関をも含む生体防御系の領域にまで広がっている。そのような痛み研究の展開・進歩にしたがって,治療は鎮痛機構を促通させて一時的な痛みの軽減・消失をえる“症候治療”と,痛みの原因病変の改善を目的とした“原因治療”とに明確に分類されるようになったといえる。現在,理学療法は両方の“治療”を行っているが,鎮痛系の生理的作用の存在からして,痛みなどの原因である病変に対する“原因治療”がこれからもより発展されるべきである。
著者
藤田 信子 桝田 康彦 山野 薫 三木 晃 糠野 猛人 鎌谷 秀和
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.27-30, 1990-01-10 (Released:2018-10-25)

中枢神経疾患に見られる姿勢運動パターンを正しく理解し,より効果的な治療を行なう指標にするため,健常人9名,平均年齢23.6歳を対象に椅坐位にて側方傾斜刺激を加え頚部・体幹・四肢の筋活動を表面筋電図によって分析した。測定は椅坐位にて坐面の右側を下降させて行ない,その刺激は角速度2.2゜/sec,角度を0〜30゜の範囲とした。結果は以下の通りである。1. 傾斜上位側の頚部・体幹筋群に筋放電の増加を認めたが,両側の上下肢筋群では特に筋放電を認めなかった。2. 傾斜下位側の体幹筋群は 被験者に安静を保たせている時より自発的な持続放電を認めた。これらより,姿勢を保持する上で頚部筋・体幹筋の活動が重要であることが示唆された。
著者
只石 朋仁 鈴木 英樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.351-359, 2019 (Released:2019-10-20)
参考文献数
46

【目的】高齢在宅パーキンソン病(以下,PD)患者45 名を対象に,生活空間の評価と関連する因子を検証した。【方法】評価項目はLSA,MDS-UPDRS part Ⅲ,転倒予防自己効力感尺度(以下,FPSE),10 m 歩行テスト,Timed up & go test とした。MDS-UPDRS part Ⅲの下位項目を振戦,固縮,無動,軸症状にそれぞれ割りあてた。LSA と各項目の関連性をスピアマンの相関係数で検討し,LSA を従属変数とする階層的重回帰分析を行った。【結果】LSA に関連したのはFPSE(β = 0.39, p < 0.01)と軸症状(β = –0.54, p < 0.01)であり,自由度調整済み決定係数は0.66 であった。【結論】軽症から中等症のPD 患者において生活空間の狭小化にはFPSE と軸症状が関係していた。PD 患者の活動支援には軸症状に対する理学療法と,運動能力に見合った自己効力感を保つための心理的支援が必要と考える。
著者
加藤 倫卓 森 雄司 光地 海人 森本 大輔 角谷 星那 鬼頭 和也 濱 貴之 小鹿野 道雄 田邊 潤
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11375, (Released:2018-05-23)
参考文献数
32

【目的】植込み型除細動器(以下,ICD)あるいは両心室ペーシング機能つき植込み型除細動器(以下,CRT-D)を装着した慢性心不全(以下,CHF)患者に対するストレッチング体操が,血管内皮機能と運動耐容能に与える影響を検討した。【方法】対象をICD あるいはCRT-D が植え込まれた運動習慣のないCHF 患者32 名(男性27 例,平均年齢69 ± 9 歳)とし,ストレッチング体操を実施するストレッチング群と対照群に無作為に分類した。4 週間の介入前後の反応性充血指数(以下,RHI)と6 分間歩行距離(以下,6MWD)を評価した。【結果】ストレッチング群のRHI と6MWD は,介入前と比較して介入後に有意に増加した(P <0.01,P <0.01)。介入前後のRHI と6MWD の変化量は,有意に正相関(r =0.53,P < 0.05)を示した。【結論】ICD あるいはCRT-D 患者に対するストレッチング体操の効果として,血管内皮機能障害と運動耐容能の改善が考えられた。
著者
赤澤 直紀 原田 和宏 大川 直美 岡 泰星 中谷 聖史 山中 理恵子 西川 勝矢 田村 公之 北裏 真己 松井 有史
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.71-78, 2013-04-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
27

【目的】健常成人男性のHip Flexion Angle(HFA)値にハムストリングスのマッサージ部位の違いが及ぼす効果を検証することである。【方法】健常成人男性32名(32肢)へのマッサージ部位について無作為に筋腱移行部群(11名),筋腹群(11名)およびコントロール(対側下肢筋腹)群(10名)に割りつけ,3分間のマッサージ介入を同一の圧迫圧で行った。アウトカムは盲検化された評価者によって測定された介入前,介入直後,3分後,6分後,9分後,15分後のHFA値とした。【結果】マッサージ介入直後,3分後,6分後の筋腱移行部群のHFA値はコントロール群より有意に高値を示した。【結論】ハムストリングス筋腱移行部へのマッサージはHFA値を拡大させる可能性を示唆した。
著者
日髙 恵喜 青木 光広 村木 孝行 泉水 朝貴 藤井 岬 鈴木 大輔 辰巳 治之 宮本 重範
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.325-330, 2008-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
20

【目的】本研究の目的は,未固定遺体8股を用いて腸骨大腿靭帯の上部線維束と下部線維束を選択的に伸張することができる股関節肢位を明らかにすることである。【方法】変位計測センサーを各線維束の中央部に設置し,伸び率を測定した。また3次元動作解析装置を用いて股関節角度の測定を行った。靭帯を伸張させた際に緩みがなくなったときの変位の値を開始距離(L0)として計測を行った。上部線維束は6肢位,下部線維束は7肢位で伸び率を測定した。【結果】上部線維束の伸び率は内転20°+最大外旋,最大外旋,内転10°+最大外旋の順に大きく,最大伸展の伸び率より有意に大きな値を示した。下部線維束の伸び率は最大伸展,外旋20°+最大伸展の順に大きく,最大外転の伸び率より有意に大きな値を示した。【考察】上部線維束では最大外旋,内転位の最大外旋,下部線維束では最大伸展,外旋位の最大伸展が腸骨大腿靭帯のストレッチング肢位として有用であると考えられた。本研究結果は腸骨大腿靭帯の解剖学的走行に基づいた伸張肢位と一致した。
著者
有田 真己 岩井 浩一 万行 里佳
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11477, (Released:2019-02-08)
参考文献数
27

【目的】在宅運動の実施者・非実施者における運動効果の実感の有無および自己効力感の差を明らかにし,運動効果の実感を認識する日常生活場面および身体部位を特定する。【方法】要支援・要介護者117 名を対象に質問紙調査を行った。調査項目は,属性,在宅運動実施状況,運動効果の実感の有無,在宅運動セルフ・エフィカシーとした。運動効果を実感する者に対しては,実感する日常生活場面および身体部位について聞き取った。【結果】運動効果の実感有りと回答した者は運動の実施者に多く,自己効力感の得点も有意に高かった。運動効果を実感する日常生活場面は,「歩く」,「立ち上がる」,「階段昇降」であり,実感する身体部位は,「下肢」,「腰」,「膝」であった。【結論】実感といった内在的報酬は,身近な日常生活の中で獲得されており,運動の継続に関与していることが示唆される。今後は,運動による効果を実感するタイミングについて明らかにする必要がある。
著者
堤 文生 半田 一登 下畑 博正
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.51-54, 1990-01-10 (Released:2018-10-25)

毎日のリハビリ施行患者数の動向を把握することは,病院経営の面で重要なことである。リハビリ診療箋の集計作業の繁雑さは,どこの病院でも頭の痛い課題である。当院では,受付業務の省力化としてパソコンを用いてリハビリ診療箋の集計作業を行っている。今回,昭和63年4月の社会保険及び老人診療報酬の一部改定に伴い,従来のプログラムを大幅に改正したので紹介する。入力操作は,↓キー・↑キー・リターンキー・テンキーを主に用い簡素化した。
著者
藤澤 宏幸 末永 直樹 三浪 明男 石田 和宏
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.75-81, 1997-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
8

肩関節内旋運動時の肩甲下筋などの筋活動を検討した。対象は成年男性8名(平均年齢28.3 ± 4.4歳)の右肩,被験筋は肩甲下筋,大胸筋鎖骨部・胸肋部線維,広背筋,三角筋前部・中部・後部線維,棘上筋,棘下筋の9筋とした。テスト肢位はlift-off test(以下,LOT)middle・low・high position,下垂位,90度外転位,最大屈曲位の6種類で,運動の種類は自動運動と等尺性最大抵抗運動(以下,抵抗運動)とした。結果,各LOTにおける自動運動では肩甲下筋活動が他の筋活動よりも有意に高かった。抵抗運動では広背筋活動も高く肩甲下筋活動と有意な差はなかった。その他のテスト肢位における自動運動では,肩甲下筋活動が平均で2.0〜12.1%とLOT middle positionの場合と比較して有意に低かった。抵抗運動では,肩甲下筋活動が全ての肢位で高く,各肢位間で有意な差はなかった。また,最大屈曲位では肩甲下筋活動が他の筋活動と比較して相対的に高かった。以上より,3種類のLOTでは自動運動において肩甲下筋活動が選択的に高いこと,また肩甲下筋損傷・筋力低下の臨床テストとして,最大屈曲位での抵抗運動がLOTと相補的な役割を果たせる可能性のあることが示唆された。
著者
河津 弘二 槌田 義美 本田 ゆかり 大田 幸治 緒方 美湖 吉川 桂代 山下 理恵 山鹿 眞紀夫 古閑 博明 松尾 洋
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-29, 2008-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
18

本研究は,地域における一般高齢者向けの,介護予防を目的とした運動プログラム「長寿きくちゃん体操」の紹介をするとともに,地域主体での教室運営による運動プログラム介入前後の身体機能面と精神活動面で変化がみられたことを報告する。教室の対象は,老人クラブの21名(74.1 ± 3.7歳)で,期間は3ヶ月問であり,教室は他機関の健康運動指導士が運営した。身体機能面の変化に対し,教室の前後で,10m全力歩行,開眼片脚立ち,握力,長座位体前屈,Timed Up & GO Test(TUGT),6分間歩行を評価した。また,日常生活活動や精神活動の変化に対し,アンケート調査で,主観的健康観,Falls Efficacy Scale(FES),MOS Short-Form-36-Item Health Survey(SF-36),グループインタビューを実施し,また痛みの変化ではNumeric Rating Scale(NRS)を実施した。結果は,身体機能面で,10m全力歩行,TUGT,6分間歩行,握力で有意な改善を認めた。また,精神活動面は,主観的健康観で有意な変化を認め,他項目でも改善傾向があった。地域リハビリテーションでの介護予防教室に対し,ポピュレーションアプローチでの間接的な運動プログラムの提供により,心身の変化の可能性を示唆したと考えられた。
著者
鶴見 隆正 川村 博文 辻下 守弘
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.635-638, 1991-11-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
2

多忙な臨床現場の中で関節可動域訓練(以下 ROM訓練)が実際にどのように行なわれ, その科学性をどのように感じているか, などについてアンケートを実施し, また ROM訓練時にどのような筋活動が生じているかを中心に電気生理学的な検討を行なった。
著者
竹井 仁 柳澤 健 岩崎 健次 富田 浩 齋藤 宏
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.294-299, 1993-09-01 (Released:2018-09-25)
被引用文献数
4

歩行速度と勾配の変化に関して,生理的コスト指数(Physiological Cost Index : PCI)と METSとの関係を検討した。対象は健常男性10名で,MacGregor等による1周30mの8字型平地歩行でPCIを測定した。またトレッドミルを用いた平地歩行,勾配歩行,Bruce法による連続歩行について各々PCIとMETSを測定し比較検討した。PCIと歩行速度との関係は,各負荷とも有意な相関を示した。同速度に対するPCIの値はトレッドミル平地歩行が最も低く,勾配歩行,Bruce法による連続歩行の順に高かった。PCIとMETSとの関係は,勾配歩行で最も高い相関(r = 0.87)を示した。臨床的にはPCIという簡便な方法を用いてエネルギー消費を間接的に推測出来るが,運動負荷方法によりPCIが異なるため,応用するには注意が必要である。
著者
荒井 一樹 松浦 大輔 杉田 翔 大須 理英子 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.364-371, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
17

【目的】延髄外側梗塞患者において自覚的視性垂直位(以下,SVV)と静止立位バランス,歩行非対称性の関係を検討する。【方法】Body lateropulsion(BL)を呈する延髄外側梗塞患者9 名において,SVV 値と立位重心動揺計の総軌跡長,矩形面積,足圧中心左右偏位および加速度計より算出した歩行非対称性との関係をSpearman の相関係数を用いて検討した。【結果】SVV 値は平均7.4(SD:9.5)度であった。SVV 値と開眼足圧中心偏位とは相関しなかったが,閉眼足圧中心偏位と相関を認めた(r = 0.75, P < 0.05)。また,SVV 値の絶対値は歩行非対称性と有意な相関を認めた(r = –0.78, P < 0.05)。【結語】BL を呈する延髄外側梗塞患者において,SVV 偏位は閉眼の静止立位バランスと歩行非対称性と関連した。その因果関係については今後の検証が必要である。
著者
三根 幸彌 中山 孝 Steve Milanese Karen Grimmer
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11145, (Released:2016-03-18)
参考文献数
43

【目的】非特異的慢性腰痛を有する患者に対する痛みの神経生理学に基づいた患者教育(pain neurophysiology education;以下,PNE)の効果を検討することを目的とした。【方法】英語・日本語の無作為化比較試験を対象として2015年6月5日までの系統的検索を行った。バイアスのリスクの評価にはPhysiotherapy Evidence Database スケールを用いた。データの統合は記述的に行われた。【結果】6 編の英語論文が低いバイアスのリスクを示した。PNE が他の患者教育よりも効果的であるという明確なエビデンスはなかった。また,PNE と他の介入を併用した際に効果が減弱する可能性が示唆された。【結論】PNE を用いる場合は,患者特性と他の介入との相性を考慮する必要がある。将来の研究はこの研究で明らかになった方法論的欠点を解消し,PNE の効果についてより質の高いエビデンスを提示する必要がある。
著者
木村 大輔 岩田 晃 川﨑 純 島 雅人 奥田 邦晴
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.59-66, 2012-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

【目的】本研究では,運動学的視点から,車いすテニス選手のサーブ動作の特徴をあきらかにすることを目的とした。【方法】三次元動作解析装置と表面筋電図を用いて,車いすテニス選手8名による通常のサーブ動作を計測し,一般テニス選手のサーブ動作と比較した。【結果】車いすテニス選手と一般テニス選手のサーブ動作を比較すると,車いすテニス選手では,最大外旋位で肩関節外旋角度が有意に低値を示し,インパクト時では,水平内転角度が有意に高値を示し,外転角度が有意に低値を示した。最大外旋位からインパクトまでのフォワードスイング相における水平内転・内転運動が特徴的であった。【結論】車いすテニスのサーブでは,もっとも肩関節への負荷が大きいとされるフォワードスイング相において,肩関節が固定されず,水平内転・内転運動しており,肩甲骨と上腕骨を安定させた状態での上腕骨の回旋を困難にしている。これより車いすテニスのサーブ動作は肩関節障害の発生リスクを高めることが示唆された。