著者
村上 祐介 時田 春樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11316, (Released:2017-09-06)
参考文献数
23

【目的】慢性期の脳卒中片麻痺患者に対して就労支援を行った経験について報告する。【症例紹介】症例は右片麻痺と失語症を呈した40 代の女性である。2012 年10 月,左の被殻出血を発症した。他院にて6 ヵ月間の入院リハ実施後,2013 年3 月に退院し,以後,当院外来リハが開始となった。来院時の移動能力は4 点杖利用下にて短距離歩行自立,その他は車椅子自走レベルであった。【経過】理学療法では,歩行能力の向上や公共交通機関の利用に関するリハを実施した。結果,T 字杖利用下での屋内外の歩行が可能となり、介入36 ヵ月目にはバスや電車の利用が可能となった。また,多職種とも連携を図り,結果として新規の就労が可能となった。【結論】就労支援の問題点は多岐にわたるため,個々の症例の問題点を把握し,包括的に支援することが重要と思われた。
著者
今井 亮太 大住 倫弘 平川 善之 中野 英樹 福本 貴彦 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.1-7, 2015-02-20 (Released:2017-06-09)

【目的】術後急性期の痛みおよび運動に対する不安や破局的思考は,その後の痛みの慢性化や機能障害に負の影響を及ぼす。本研究は,術後急性期からの腱振動刺激による運動錯覚の惹起を起こす臨床介入が痛みの感覚的および情動的側面,ならびに関節可動域の改善に効果を示すか検証することを目的とした。【方法】対象は,橈骨遠位端骨折術後患者14名とし,腱振動刺激による運動錯覚群(7名)とコントロール群(7名)に割りつけて準ランダム化比較試験を実施した。課題前後に,安静時痛,運動時痛,Pain Catastrophizing Scale, Hospital Anxiety and Depression Scale,関節可動域を評価した。介入期間は,術後翌日より7日間,評価期間は,術後1日目,7日目,1ヵ月後,2ヵ月後とした。【結果】反復測定2元配置分散分析の結果,VAS(安静時痛,運動時痛),関節可動域(掌屈,背屈,回外,回内),PCS(反芻),HADS(不安)の項目で期間要因の主効果および交互作用を認めた(p<0.05)。期間要因では,両群ともに術後1日目と比較し,7日目,1ヵ月後,2ヵ月後に有意差を認めた(p<0.05)。【結論】術後翌日から,腱振動刺激を用いて運動錯覚を惹起させることで,痛みの程度,関節可動域,痛みの情動的側面の改善につながることが明らかにされた。また,痛みの慢性化を防ぐことができる可能性を示唆した。
著者
佐藤 瑞騎 倉田 昌一 岩倉 正浩 大倉 和貴 新田 潮人 照井 佳乃 佐竹 將宏 塩谷 隆信
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.197-202, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
27

【緒言】片麻痺患者に対する部分免荷型トレッドミル歩行練習(以下,BWSTT)の即時効果を明らかにする。【方法】片麻痺患者10 名(平均年齢71 ± 11 歳)にBWSTT と非免荷型トレッドミル歩行練習(以下,FBWTT)を施行し,10 m 歩行試験の結果を比較・検討した。評価項目は歩行速度,歩幅,歩行率,左右・上下重心移動距離,左右・上下RMS,麻痺側脚・非麻痺側脚の1 歩行周期変動係数とし,3 軸加速度計を用いて抽出した。【結果】BWSTT により最大歩行速度,歩幅,歩行率,麻痺側脚の1 歩行周期変動係数,上下RMS が有意に改善した。また同様の項目と非麻痺側脚の1 歩行周期変動係数においてBWSTT がFBWTT より有意な改善が認められ,歩行速度変化率は歩行率変化率と正の相関が認められた。【結論】BWSTTは片麻痺患者に対して歩行能力向上の即時効果が期待され,FBWTTよりも有意であった。また歩行速度の改善は歩行率の改善が寄与していた。
著者
松永 玄 山口 智史 宮本 沙季 鈴木 研 近藤 国嗣 大高 洋平
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.106-111, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
12

【目的】本研究は,脳卒中者において,リハビリテーション特化型の通所リハビリテーション(以下,デイケア)の終了理由を利用期間別に調査し,デイケアの役割や利用の在り方を検討することを目的とした。【方法】脳卒中者114 名のデイケア終了理由を改善,死亡,入所,拒否,入院,その他に分類し,利用期間別に検討した。【結果】終了理由は,改善が24 名,死亡が16 名,入所が15 名,拒否が14 名,入院が9 名の順であった。その他は36 名であった。利用期間別でもっとも多い終了理由では,1 年未満では拒否,1 年以上2 年未満では死亡,2 年以上3 年未満および3 年以上4 年未満では改善と入所,4 年以上5 年未満では拒否,5 年以上では改善であった。【結論】終了理由は利用期間により異なることから,リハビリテーション特化型デイケアの役割が,脳卒中後の心身状態や生活環境の変化に関連して変化することが示唆された。サービス提供にはこの点に配慮が必要である。
著者
飛田 良 園田 悠馬 谷口 匡史 前川 昭次 越田 繁樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.97-105, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
25

【目的】NICU におけるリハビリテーションスタッフによる介入(以下,リハ介入)の現状と課題について調査する。【方法】近畿圏内の周産期母子医療センター62 施設・各2 診療科(新生児科・リハ科)に対しアンケート調査を行った。【結果】全体回答率55.6% で,リハ実施率は新生児科74.4%,リハ科86.7% であった。多種多様な疾患を対象とし,介入内容はポジショニングが各々最多を占めた。非実施の理由として,新生児科は,対象患者がいない,自施設の役割ではない等の問題を挙げた一方で,リハ科は,専門性が高く人員・技術不足などの問題を挙げた。リハ介入の必要性がないと回答したのは新生児科で多かった(60% vs 25%)。【結論】NICU のリハ介入率は高く,近年の障害の重度化および多様化に対し相応の介入で対応していた。しかし,非実施施設では介入の必要性がない理由として,専門性が高い領域と認識されており,人材等の課題が明らかとなった。
著者
井上 優 原田 和宏 佐藤 ゆかり 樋野 稔夫
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.158-159, 2016 (Released:2016-04-20)
参考文献数
4

本研究の目的は,二重課題処理能力,転倒リスク,転倒発生率に対する二重課題トレーニング(Dual-task training:以下,DTT)の効果に与える脳機能障害の影響を検証することである。本研究に参加した脳卒中患者は18 名で,DTT 実施後,Dynamic gait index(以下,DGI)得点は有意に改善し,転倒リスクが軽減する傾向が示された。前頭葉機能はFrontal assessment battery,注意機能はTrail making test part A とpart B の差分により評価し,DGI 得点変化量との関連性を相関分析により検証した。その結果,両者ともに有意な相関関係は示さなかった。この結果は,加齢や脳の損傷により生じた脳機能障害の程度に影響を受けずDTT の効果が得られることを示唆するものであり,DTT 導入に対する基礎資料として有用な結果と推察された。
著者
飛田 良 園田 悠馬 谷口 匡史 前川 昭次 越田 繁樹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11346, (Released:2018-02-02)
参考文献数
25

【目的】NICU におけるリハビリテーションスタッフによる介入(以下,リハ介入)の現状と課題について調査する。【方法】近畿圏内の周産期母子医療センター62 施設・各2 診療科(新生児科・リハ科)に対しアンケート調査を行った。【結果】全体回答率55.6% で,リハ実施率は新生児科74.4%,リハ科86.7% であった。多種多様な疾患を対象とし,介入内容はポジショニングが各々最多を占めた。非実施の理由として,新生児科は,対象患者がいない,自施設の役割ではない等の問題を挙げた一方で,リハ科は,専門性が高く人員・技術不足などの問題を挙げた。リハ介入の必要性がないと回答したのは新生児科で多かった(60% vs 25%)。【結論】NICU のリハ介入率は高く,近年の障害の重度化および多様化に対し相応の介入で対応していた。しかし,非実施施設では介入の必要性がない理由として,専門性が高い領域と認識されており,人材等の課題が明らかとなった。
著者
藤本 修平 大高 洋平 高杉 潤 小向 佳奈子 中山 健夫
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.38-47, 2017 (Released:2018-02-20)
参考文献数
27

【目的】理学療法士(以下,PT)の診療ガイドラインの利用,重要度の認識とエビデンスに基づいた実践(以下,EBP)への態度,知識,行動との関連性を明らかにすることとした。【方法】対象は千葉県のPT1,000 名としEBP や診療ガイドラインの利用,重要性の認識の項目を含む無記名自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。統計解析は診療ガイドラインの利用,重要性の認識に関連するEBP の関連項目を明らかにするために多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】診療ガイドラインの利用,診療ガイドラインの重要性の認識と関連が強いものは「EBP に関する必要な知識や技術を学びたいと思いますか」(OR = 10.32, 95%CI: 1.82–197.16) であった。【結論】千葉県のPT において診療ガイドラインの利用は十分ではなく診療ガイドラインの利用や重要性の認識に関連する要因は,EBP の必要性の認識とEBP を行ううえで必要な行動であった。
著者
和田 崇 松本 浩実 谷島 伸二 萩野 浩
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11361, (Released:2018-03-24)
参考文献数
30

【目的】術前腰部脊柱管狭窄症患者における痛みの破局的思考の実態および関連因子を明らかにすること。【方法】腰部脊柱管狭窄症の手術予定患者45 名(男性:25 名,女性:20 名,平均年齢:68.4 ± 9.4歳)を対象に横断研究を行った。基本属性を収集し,下肢痛,腰痛,Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS),歩行速度,Timed Up and Go test,握力測定,筋量測定,連続歩行距離を評価した。PCS のカットオフ値を30 点とし「重度PCS 群」と「軽度PCS 群」に分け比較し,多変量解析を行った。【結果】PCS は平均34.7 点であった。多変量解析の結果,歩行速度(OR: 0.036,95%CI: 0.001–0.937,p = 0.046)がPCS 関連因子として抽出された。【結論】本患者群のPCS は高値であり,歩行速度がPCS の関連因子であることが示唆された。
著者
辻本 直秀 阿部 浩明 大鹿糠 徹 大橋 信義
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.340-347, 2017 (Released:2017-10-20)
参考文献数
31

【目的】本研究の目的は,pusher syndrome(以下,PS)を呈した脳卒中片麻痺者におけるsubject visual verticality(以下,SVV)の偏倚量の推移とPS の重症度およびPS の改善経過との関連について明らかにすることである。【方法】対象は,理学療法初回介入時にSVV の測定が可能であったPS 例14 名とした。調査期間はSVV の初回評価から3 週間とした。週2 回,計6 回の各測定時のPS の重症度とSVV の偏倚量の変化の推移,ならびに2 項目の相関関係を調査した。【結果】PS の重症度とSVV の偏倚量は有意に改善した。しかし,両者の改善する時期は異なり,すべての測定時期で有意な相関を認めなかった。【結論】SVV の偏倚量の推移はPS の重症度とその改善経過に関連しない可能性が高いと思われた。
著者
内田 智也 大久保 吏司 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 野田 優希 石田 美弥 佃 美智留 土定 寛幸 藤田 健司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11373, (Released:2018-01-24)
参考文献数
22

【目的】投球中の肩関節ストレスの軽減には,良好な下肢関節動作が重要となる。そこで,本研究はFoot Contact(以下,FC)以降のステップ脚膝・股関節の力学的仕事量と肩関節トルクの関係について検討した。【方法】中学生の投手31 名の投球動作解析で求められた肩関節内旋トルクについて,その平均から1/2SD を超えて低い群(以下,LG)10 名と1/2 を超えて高い群(HG)10 名の2 群に分け,ステップ脚膝・股関節の力学的仕事量(正・負仕事)を群間比較した。【結果】FC から肩関節最大外旋位(MER)におけるLG の膝関節屈曲-伸展の負仕事量が有意に低値を示した。【結論】ステップ脚膝関節伸展筋力は良好な投球動作獲得に寄与し,FC 以降の膝関節の固定および下肢関節からの力学的エネルギーを向上させることは肩関節ストレスを軽減させると考えられた。
著者
三根 幸彌 中山 孝 Steve Milanese Karen Grimmer
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.247-254, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
43

【目的】非特異的慢性腰痛を有する患者に対する痛みの神経生理学に基づいた患者教育(pain neurophysiology education;以下,PNE)の効果を検討することを目的とした。【方法】英語・日本語の無作為化比較試験を対象として2015年6月5日までの系統的検索を行った。バイアスのリスクの評価にはPhysiotherapy Evidence Database スケールを用いた。データの統合は記述的に行われた。【結果】6 編の英語論文が低いバイアスのリスクを示した。PNE が他の患者教育よりも効果的であるという明確なエビデンスはなかった。また,PNE と他の介入を併用した際に効果が減弱する可能性が示唆された。【結論】PNE を用いる場合は,患者特性と他の介入との相性を考慮する必要がある。将来の研究はこの研究で明らかになった方法論的欠点を解消し,PNE の効果についてより質の高いエビデンスを提示する必要がある。
著者
野村 卓生 浅田 史成 高野 賢一郎 佐藤 友則 川又 華代 廣滋 恵一 坂本 和志 明崎 禎輝
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.146-147, 2017 (Released:2017-04-20)
参考文献数
5

本研究は,日本における産業理学療法の推進をめざした3 年度計画の研究である。初年度(平成25 年度)においては,Web メールを用いた腰痛予防を目的とした理学療法士による指導効果に関する予備調査の検証を行った。2 年度(平成26 年度)目においては,初年度行った予備調査の検証から得られた成果を参考にして,産業理学療法指導システム(Consulting system for physical therapy in occupational health:以下,Compo)を開発し,介護労働者の腰痛予防を目的として,Compo を用いた臨床介入研究を計画した。最終年度(平成27 年度)においては,Compo を用いた臨床介入研究を始動させた。