著者
中野渡 達哉 鈴鴨 よしみ 神先 秀人 沖井 明 菅 俊光 出江 紳一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.30-37, 2016 (Released:2016-02-20)
参考文献数
41

【目的】本研究の目的は,人工股関節置換術(以下,THA)後の健康関連QOLに対して機能的脚長差が影響を及ぼすまでの一連の障害構造モデルについてパス解析を用い検討することである。【方法】THA 後患者42名を対象に,術後3週の構造的脚長差と機能的脚長差,術後6ヵ月後の主観的脚長差,SF-36のサマリースコアを評価した。モデルへ投入する項目を選択するために単変量解析を行い,その後にパス係数とモデルの適合度を求めるためにパス解析を行った。【結果】モデルには機能的脚長差,主観的脚長差,身体的コンポーネント・サマリースコア(以下,PCS)が選択された。パス解析の結果,機能的脚長差は主観的脚長差に影響し,主観的脚長差はPCSに影響していることが示された。このモデルは十分な適合度を示した。【結論】THA後主観的脚長差をもち身体的健康関連QOLが低下した患者に対して,機能的脚長差に対する治療的介入が重要であることが示唆された。
著者
島添 裕史 綾部 仁士 森口 晃一 香月 一朗 原口 和史 田山 尚久 里村 匡敏
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.423-428, 2005-12-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
5

本調査の目的は,人工股関節全置換術後早期の股関節外転筋筋力の推移を明らかにすることである。対象は,当院整形外科で人工股関節全置換術を行った女性14例とし,術側・非術側外転筋筋力,疼痛,および術側股関節屈曲・外転可動域を術前,術後2日,5日,10日,14日,28日の計6回調査した。術側外転筋筋力の推移は術前が1.71 ± 0.49N/kg,術後2日で1.13 ± 0.45N/kg,5日で1.64 ± 0.60N/kg,10日で1.85 ± 0.55N/kgと術前を上まわることが分かった。14例中9例(64%)は術後5〜10日で術前筋力値まで回復した。以上のことから,THA後の外転筋筋力トレーニングを行う際は,10日以内は術前筋力に達していない点に考慮しなければならない。
著者
三木 啓嗣 新田 收
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.282-289, 2014-08-20 (Released:2017-06-27)

【目的】寝返り動作はベッド上での移動性スキルの重要な要素で,理学療法評価や治療に用いられる。しかし,起立や歩行など他の基本動作とは異なり,定量的データに基づいた正常動作の運動学的特性はあきらかにされていない。そこで,本研究の目的は寝返り動作を定量的データに基づき類型化し,各動作パターンの特徴をあきらかにすることとした。【方法】対象は健常男性30名とし,各3試行の寝返り動作を三次元動作解析装置にて計測した。3試行目の各1試行を測定値として体幹の関節角度を算出した後,クラスター分析を用いて動作パターンを類型化し,各類型の特徴を統計学的にあきらかにした。【結果】寝返り動作を3群に類型化し,体幹の回旋と屈曲伸展の特徴を定量的にあきらかにすることができた。【結論】寝返り動作において体幹の動きを分析することによって,定量的な大分類が困難であった寝返り動作において動作パターンの大分類が可能となり,さらに各動作パターンにおいて抽出された運動学的指標により正常運動を示すことができた。
著者
中川 法一 森実 徹
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.238-241, 1990-05-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
6
著者
有薗 信一 小川 智也 渡辺 文子 寶門 玲美 西村 正士
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.289-295, 2006-08-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
18
被引用文献数
1

肺葉切除術後患者における理学療法の介入頻度の違いによる効果を無作為化比較対照試験によって検討した。研究の同意を得た肺癌患者63例を手術に先立って無作為に2群に割り振った。通常の看護ケアに,理学療法士による理学療法介入を1日1回行う群を1回群とし,理学療法介入を1日3回行う群を3回群とした。当院の理学療法は,排痰,早期離床,呼吸練習などを中心に行い,手術当日から介入した。手術後1週間毎日の肺活量,酸素投与期間,歩行開始日,歩行自立日,手術後呼吸器合併症の有無を評価した。肺葉切除術を実施した症例は51例であり,1回群27例,3回群24例であった。手術後1週間毎日の肺活量,酸素投与期間,歩行開始日,歩行自立日は1回群と3回群の間に差を認めなかった。また,手術後呼吸器合併症は,1回群に膿胸1例,遷延性肺瘻1例,無気肺1例,肺炎1例の計4例であり,3回群には呼吸器合併症を認めず,2群間で有意な差を認めた。肺葉切除術後患者における多頻度の理学療法介入は,手術後呼吸器合併症を減少させるかもしれない。
著者
浅野 賢 熊井 初穂 新田 富士子 桜井 真由美 里宇 明元
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.137-140, 1991-03-10 (Released:2018-10-25)
被引用文献数
5

脳卒中片麻痺患者40例を対象に,背臥位で両膝屈曲位での腰上げ動作(ブリッジ)を行なわせ,両下肢の足底にかかる荷重を左右別々の体重計を用いて測定した。その時の患側の荷重量の変化と,下肢のブルンストロームステージとの関係を検討したところ,ブルンストロームステージⅣ以降において,患肢にかかる荷重及び荷重量の変化は,ステージが高いほど大きかった。以上の結果から荷重量の変化は,麻痺の回復段階の客観的な指標として利用しうる可能性があることが推測された。
著者
塚越 累 建内 宏重 大畑 光司 江口 悟 奥村 秀雄 市橋 則明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.41-48, 2009-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
22
被引用文献数
4

【目的】人工股関節全置換術(THA)後早期の股関節と膝関節筋力の推移を比較し,術後に最も回復の遅延する筋を明らかにすること。【方法】変形性股関節症によりTHAを施行した女性53名を対象とし,術側と非術側の股関節外転,伸展,屈曲,膝関節伸展および屈曲の最大等尺性筋力を術前と術後2週,4週,6週時点で測定した。【結果】術側の股関節筋力は術後2週で術前より有意に低く,術後4週および6週では術前値と有意な差は認められなかった。一方,術側膝関節伸展筋力は術後2週,4週,6週の全測定時期において術前値より低い値を示した。術後の筋力推移を術前比で比較した場合,術後6週では術側の股関節筋力および膝関節屈曲筋力の術前比は114〜124%で有意な差は無かったが,膝関節伸展筋力は術前比86%と他の4つの筋力と比べて有意に低い値を示した。【結論】THA後には股関節周囲筋力および膝関節屈曲筋力に比べて,膝関節伸展筋力の回復が遅延することが判明した。
著者
佐々木 誠
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.160-163, 2002-08-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
8
被引用文献数
3

従来の立位重心動揺測定は膝関節伸展位で行われており,膝関節屈伸運動を伴う立位での動作や移動を直接には反映していない。そこで,膝関節屈伸運動時の足圧の作用中心点(以下,COP)を特定するために,若年健常者27名を対象に,スクワット動作時のCOPのフォースプレートによる測定再現性と特性について検討した。級内相関係数(ICC1,1)は,総軌跡長(LNG)とY(前後)方向最大振幅(YD)で0.6を上回り,X(左右)方向最大振幅(XD),矩形面積(REC AREA),X(左右)方向動揺平均中心変位(DEV OF MX)で0.6を下回った。従来の重心動揺測定のパラメータとの関連を検討した結果,静止立位条件と相関のあるパラメータがあったが,関連性は必ずしも強くはなかった。また,スクワット動作時のLNGとCross TestのREC AREAとの間に示された関連は弱かった。以上より,健常者におけるスクワット動作時のCOPは,LNGと前後成分で再現性が示される一方で,左右成分およびREC AREAで冗長性が示され,静止立位での側方不安定性に起因する動揺性を反映するが,その関連性は必ずしも強くはなかった。従来の測定でのパラメータとの間に相関を認めなかったパラメータが多かったことからも,本COP測定によって新たな情報が提供される可能性が示唆された。
著者
内尾 優 長谷川 三希子 猪飼 哲夫 内山 温 楠田 聡 藤本 泰成 新田 收
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.347-357, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
33

【目的】超低出生体重児の自発運動の特徴と新生児枕による即時的影響を明らかにすることである。【方法】対象は,神経学的異常のみられない超低出生体重児群8 名(平均出生体重729 ± 144 g,平均在胎期間24.6 ± 2.0 週),正期産児群8 名とした。評価時期は,修正月齢1 ヵ月に行った。評価機器は,乳児自発運動評価を目的に開発された小型の三次元動作計測システムを用い,児の自然な自発運動を新生児枕有無の2 条件で記録した。得られた三次元座標データより自発運動の平均速度,対称性,流暢性,突発性を算出し,比較した。【結果】超低出生体重児の自発運動は,正期産児と同様の平均速度,流暢性,突発性を示したが,正期産児と比較し非対称性を示した。また,新生児枕の使用により即時的に非対称性が軽減した。【結論】神経学的異常のみられない超低出生体重児の自発運動の特徴は,非対称性であり,新生児枕の使用により軽減できる可能性が示唆された。
著者
飛山 義憲 谷口 匡史 紙谷 司 和田 治 水野 清典
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.263-271, 2017 (Released:2017-08-20)
参考文献数
29

【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)後運動機能について標準的な入院期間のプログラム(Standard Program;以下,SP)に対する早期退院プログラム(Early-discharge Program;以下,EP)の非劣性の検証を目的とした。【方法】二施設間前向きコホート研究とし,対象は初回TKA を行うSP 施設59 名,EP 施設45 名とした。主要アウトカムは術後6 ヵ月のTimed Up & Go test(以下,TUG),副次アウトカムは同時点の膝関節可動域,膝関節伸展筋力,患者立脚型膝機能とした。TUG は非劣性の検証を,副次アウトカムは施設間の差の検証を行った。【結果】傾向スコア・マッチングにより患者背景を調整した43 ペアにおいて,EP 施設のTUG の非劣性が示され,副次アウトカムはいずれも有意差を認めなかった。【結論】TKA 後早期退院プログラムは標準的な入院期間のプログラムに対して,術後運動機能の回復は劣らないことが示された。
著者
佐藤 房郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.249-253, 2003-06-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
8
著者
網本 和
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.118-121, 1996-05-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
8
被引用文献数
2
著者
深田 亮 村田 淳
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11633, (Released:2020-01-09)
参考文献数
21

【目的】長母指屈筋(以下,FHL)の損傷で母趾と示趾にClaw toe 変形が後遺し,Forefoot rocker 機能が破綻した歩行障害に対する理学療法について報告する。【対象】左FHL を切除後に,母趾と示趾にClaw toe 変形を認めた40 歳代前半の男性である。Terminal Stance(以下,TSt)において中足趾節関節が伸展するとFHL が伸張し,母趾と示趾のClaw toe 変形が増悪し疼痛が発生した。【方法】Forefoot rocker 機能を再獲得するために中足趾節関節の伸展を抑制したヒールレイズ,片脚膝立ち位でのステップ,8 の字固定バンドつき足底板を試みた。【結果】術後175 日後,母趾と示趾のClaw toe 変形は後遺したが歩行時の母趾底側先端の疼痛は消失し海外旅行が達成できた。【結語】TSt においてFHL を伸張させずに,かつ足底外側荷重を促すことで歩行時の疼痛は消失し,歩容の改善が得られた。
著者
大畑 光司 市橋 則明 竹村 俊一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.175-181, 2004-06-20 (Released:2018-09-25)
参考文献数
19

本研究の目的は外側ウェッジが歩行中の下肢筋活動,足圧中心,骨盤の運動に与える影響について,明確にすることである。健常成人10名を対象とし,被験者にトレッドミル上を時速3kmで歩行させ,立脚期の下肢筋電図,足底圧と足圧中心移動,歩行中の骨盤中心の移動距離に生じる変化を測定し,外側ウェッジの有無により比較した。筋電図解析では,通常の歩行と比較して外側ウェッジ歩行では,長腓骨筋が立脚初期から中期にかけて有意な筋活動の増加を認めた。足圧中心は踵接地時に有意な外側変位を認め,立脚後期から有意な内側変位を認めた。しかし歩行時の側方への骨盤中心の移動には変化がなかった。本研究の結果,外側ウェッジにより,踵接地時に足圧中心を外側に変位させ,その後,腓骨筋の筋活動を増加させることが示された。