著者
辰喜 亮介
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.513-521, 1990-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
17

骨格筋として横隔膜の機能的特徴を明らかにするために, その筋線維構成の比較検討を行った.研究対象は46~86歳の病理解剖屍8例 (男性3, 女性5) から得られた横隔膜で, 胸骨部, 右肋骨部, 腰椎部右外側脚の各々の起始と停止の中間部で採取したものである.筋組織の染色はSudan Black B染色により, 筋層の厚さ, 1mm2中の筋線維数, 三筋線維型の比率, 太さ, 密度を各部について検討するとともに, 同一方法による他筋と比較した.結果は次の如くである.1) 横隔膜筋層の厚さは各部の平均2.1~2.5mmで, 腰椎部が最も厚く, 以下肋骨部, 胸骨部の順であったが, その差は僅かであった.他筋と比べて, 棘腕筋よりも薄く, 側腹筋や下咽頭収縮筋と大よそ等しかったが, 内腹斜筋よりもやや劣っていた.2) 1mm2中の筋線維数は各部の平均532~608で, 腰椎部が最も多く, 女性が男性よりも多い傾向が見られたが, その差は僅少であった.他と比較して, 下咽頭収縮筋および大腰筋よりも男女ともに少なく, 上腕の筋よりも男性では多く, 女性では等しかった.3) 三筋線維型の比率は各部とも大よそ白筋線維2/3, 中間筋線維1/3, 赤筋線維1/30で性差を認め難く, 他筋に比べて赤筋線維が著しく少なかった.4) 筋線維の太さは一般に肋骨部では白筋線維, 中間筋線維, 赤筋線維の順に大の傾向が見られたが, 胸骨部と腰椎部では白筋線維と中間筋線維との間には差がなく, 赤筋線維のみ小であった.男性は常に女性よりも大で, 赤筋線維ではその傾向が著しく, 部位別には各筋線維型とも常に腰椎部が最も小であった.他と比べると, 白筋線維は上腕の筋よりも男性では小, 女性では大であり, 大腰筋, 下咽頭収縮筋よりも男女とも大であった.赤筋線維は下咽頭収縮筋よりも男女とも大, 上腕の筋よりも男性は小, 女性例は等しく, 大腰筋とは男女とも等しかった.5) 筋線維の密度は90%前後で, 胸骨部と肋骨部はほぼ等しく, 腰椎部がやや劣る傾向が見られた.以上のことから, 横隔膜の高さや運動についての個体差には, その厚さや筋線維構成の部位差が密接に関連することが考えられた.
著者
宇内 康郎 伊東 昇太 古川 正 本田 常雄 中野目 有一 河合 真 北村 勉 釜谷 園子 樋口 輝彦 大嶋 明彦 平沼 郁江 山下 さおり 崎岡 岩雄 村田 琢彦 白山 幸彦 小滝 ミサ 中村 良子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.18-29, 1998-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
41

最近, 精神・神経系と免疫系との関連や類似性が注目され, 免疫能と脳の局在との関係, 免疫細胞と神経細胞との関係が次第に明らかになっている.そこで今回は, 精神機能と免疫機能との関係を追求する一環として, 主として精神状態と免疫機能との関係を横断的に調査し, その後対象を中等度以上のうつ状態にしぼり, 縦断的に免疫機能と精神状態との関係を総合的に調査した.対象は昭和大学藤が丘病院を1991年11月から1993年3月までに受診した初診患者で, 自己免疫疾患, 感染症, がん, 肝臓疾患, 血液疾患, 皮膚疾患, アレルギー性疾患などを除外した17歳から65歳までの症例である.精神状態像との関係では16名 (男性12名, 女性4名) , うつ病の経過との関係では8名 (男性4名, 女性4名) が選ばれた.免疫機能の指標として, T細胞数, B細胞数, CD4, CD8, CD4/CD8比, Phytohemagglutinin (PHA) によるリンパ球幼若化検査, 更に精神状態との関係では液性免疫 (IgG, IgA, IgM, IgD, IgE) , うつ病の経過ではIL2レセプター数 (マイトジェン刺激後のリンパ球IL2レセプター数) , IL2反応能試験, NK細胞活性, 白血球数, リンパ球数が測定された.うつ病の評価はハミルトンのうつ病評価尺度が用いられ, 測定は初診時と状態改善時に行い, その期間は3週間から19週間に及び, 両時点においてうつ状態と免疫機能との関係を比較検討した.精神状態像と免疫機能との関係では明確な関係は見出せなかったが, うつ病の経過との関係では, うつ病時には, PHAによる幼弱化反応の減少が8例中7例に, またIL2反応能の低下, CD8の減少, CD4/CD8比の上昇が8例中6例に認められ, うつ病時には免疫機能が低下することが示唆された.以上の結果を現在までの報告と比較し, うつ病時に免疫機能が低下する機序について考案した.
著者
永井 大介 長谷川 賢一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.27-34, 1986-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
14

中枢性聴覚障害は, その障害部位により種々の特異的異常現象を示す.しかし, 聴覚中枢経路が極めて複雑であるが故に, 未だその原因は明確にされていない.そこで聴覚刺激反応時間を測定し, 時間的要因より聴覚中枢経路の機能の解明を試みた.即ち, 正常者と脳血管障害による片麻痺患者の聴覚刺激反応時間を測定し, その対照として視覚刺激反応時間をも測定して聴覚中枢機能について考察した.検査対象は, 熱海綜合病院に入院している脳血管障害による左・右片麻痺患者 (各25名) , 及び生理的加齢変化以外の難聴のない正常者 (20名) とした.検査方法は, 全身反応装置 (八神理化器製, Y.B.1000) を改良し, 与えられた聴・視覚刺激を感受したら被験者は直ちにスイッチを押す (Tapping) 方法を用いた.刺激反応時間測定は7回行い, 最高値と最低値を除く5回の平均値を算出し, これを反応時間とした.Tappingは, 利き手, 非利き手による反応時間差がないことを確認した上で, 片麻痺群では健側手を用いて行った.正常群, 左・右片麻痺群における聴覚・視覚刺激反応時間を測定した結果は次の如くであった.正常者について1) 聴覚刺激反応時間は両耳聴にて293msecであり, 左・右片耳聴の323~326msecよりも短い.2) 視覚刺激反応時間は両眼視, 左・右単眼視で差はなく, 277~279mesecである.3) 視覚・聴覚刺激反応時間には有意差は認められない.片麻痺患者について1) 正常者群に比べ, 視覚・聴覚刺激反応時間は, 全ての項目で100~150msec有意に延長している.2) 聴覚・視覚刺激反応時間にて左右差は殆ど認められないが右片麻痺群の聴覚刺激反応時間では右耳聴が左耳聴に比べて有意に延長している.3) 聴覚・視覚薊激反応時間には有意差は殆ど認められないが, 右片麻痺群の右耳聴と右眼視の間には有意差を認める.以上のことから, 脳血管障害による片麻痺群においては, 正常者群に比べて聴覚・視覚ともほぼ同様の反応時間の延長を認める.このことは, 片麻痺群では刺激に対する認知時間, 感覚・運動両中枢での伝達時間, 運動領での指示・組立時間の延長に起因すると考えられる.しかし, 右片麻痺群の右耳聴の反応時間が左耳聴よりも明らかに延長し, また視覚刺激反応時間における同群の右眼視よりも延長していた.これより右片麻痺群の右耳聴の反応時間の延長は四丘体から左側頭葉聴覚領へ到る部位での伝達障害によることが最も考えられる.
著者
中島 功
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.146-149, 2012 (Released:2012-12-14)
参考文献数
4
著者
石川 直将 高橋 伸佳 河村 満 塩田 純一 荒木 重夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.232-237, 2008-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

Marchiafava-Bignami病 (以下, MBD) 自験8症例において, 急性期および慢性期の症候と病巣について検討した.8例中6例は意識障害にて発症し, 慢性期に構音障害と半球離断症候を呈し, 画像検査にて脳梁に限局した病変を認めた.これらは従来報告されているMBDの臨床像と一致していた.一方, 発症時に意識障害を呈さない例が2例みられた.これは, 発症時の意識障害の存在が必ずしもMBDの診断に必須ではないことを示している.また, 2例では肢位の異常, 固縮などの錐体外路症状がみられ, そのうちの1例ではMRIで両側の被殻に病変が認められた.同様の症例の報告は過去に4例のみであるが, この症候もMBDの症候の1つとして注目される.慢性期には意識障害, 前頭葉症状は消失するが, 錐体路症状が構音障害, 半球間離断症候とともに長期にわたり持続することが示された.以上から, MBDの臨床像は急性期, 慢性期ともに従来考えられていたよりも多彩である可能性がある.従って, アルコール多飲者が急性の構音障害, 歩行障害, 痙攣などを呈し, 局所徴候が明らかでない場合には, MBDの可能性も考え, 画像検査で脳梁病変の有無を確認する必要があると思われた.
著者
鈴木 慎太郎 中村 陽一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.87-91, 2007-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
10

症例は31歳の女性.夕食に寿司を食べていた最中, 顔面の痒み, 口唇の腫脹や喉頭の掻痒感, 閉塞感を自覚したため精査目的で当科を受診した.花粉症の既往がある.当初, 寿司の魚肉アレルギーもしくは醤油の原材料である小麦や大豆に対するアレルギーによる口腔アレルギー症候群を疑った.しかし抗原特異的IgE検査で調べた食餌抗原は全て陰性であり, 大豆, 小麦粉など醤油の主要成分は皮膚試験でも陰性だった.そこで実際に摂取した醤油の材料を取り寄せ, 各成分そのもので皮膚試験を行い, カツオ抽出物で強陽性を認め, カツオなど魚肉由来の醤油添加物が口腔アレルギー症候群の原因ではないかと強く疑った.市販の醤油の中には風味付けのため「だし入り」と称し, 魚肉抽出物が添加されている場合がある.小型の個別包装にはアレルギー成分表示義務がないため, こうした添加物の記載がないことも多く, 食物アレルギーの既往がある患者では指導上注意が必要である.
著者
小松崎 茂
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.195-204, 1961-05-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

Accidental deaths due to the compression of the chest by blunt onjects or by the burying in sand or soil are encountered not infrequently, but as it is extremely rare to employ them as the means of killing, descriptions on the traumatic asphyxia in the text books of legal medicine are rather simple.Employing the corpses of traumatic asphyxia (caused by the compression of the chest) occurred in the past decade in Tokyo, a statistic observation was made on the relationship of the mechanism of the assaulting objects causing the compression and the findings of corpses, and at the same time considerations were given on each case of the corpses. Stated in the following are the results obtained thereof:1. The action of assaulting objects in traumatic asphyxia can be classified into two major groups of one two-dimentional compression (pinned under the object) and multi-dimentional compression (buried in the sand) . Dermal congestion caused by pressure, in the case of two-dimentional compression, appears on the sides which do not receive oppression.2. The most important finding for knowing the mechanism of the assaulting object in the case of the corpse died of two-dimentional compression is the dermal congestion caused by pressure. In many occasions, the dermal congestion can tell the position of the person at the time of receiving the fatal blow.3. In the case of multi-dimentional compression, it is impossible in many cases to judge the position at the time of the fatal blow, but if there is a gradual spread of the oppression, the portion of the skin received retard oppression and that received no oppression can be knows by the changes in dermal congestion caused by pressure.4. In the case of traumatic asphyxia and when there is an elapse of several, hours before the removal of the external oppression, the portion of the skin free from immediate oppression develops post mortem bulla caused by pressure.5. As for the histological findings of the visceral organs, they are the changes of sudden death (including suffocation) characterized by congestion and edema. Especially, the changes caused by anoxia owing to the acute circulatory disturbance are remarkable in the brain, cardiac muscles, liver, kidney and skeletal muscles. Emigration of eosinophiles in the spleen, moreover, and localized disappearance of adrenal lypoid are considered as the reactions against the stress.6. In the case of deaths caused by thoracicoabdominal oppression and when the fatal trauma is not known by external appearance and when it is known to be the visceral trauma on autopsy, they are mostly the cases of heaptic rupture.
著者
西田 幸典 佐藤 啓造 藤城 雅也 根本 紀子 足立 博 岩田 浩子 米山 裕子 李 暁鵬 松山 高明 栗原 竜也 藤宮 龍祥 浅見 昇吾
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.168-182, 2018 (Released:2018-09-11)
参考文献数
27

今日の在宅看取りは,地域の診療所医師が大部分を担っているが,2040年をピークとする多死社会の看取り体制として,それが適切に機能するかの問題がある.そこで,本研究は,診療所医師の在宅看取りにおける負担軽減策として,看護師による死亡診断および死亡診断書の作成について,多死社会を担う若年層の認識を踏まえて,その是非を法医学的観点から考察するものである.研究方法は,質問紙調査(対象:医学生242名,一般学生402名)と看取り制度に関する文献調査である.質問紙調査の結果は,看護師による死亡診断について,看護師のみが死亡に立ち会う状況で是認する割合が高く,死亡診断について研修を受けて試験に合格した看護師が良いとする割合が高かった.また看護師による死亡診断書の作成について,看護師のみが死亡に立ち会う状況で是認する割合が高く,死亡診断書の作成について研修を受けて試験に合格した看護師が良いとする割合が高かった.しかし,死亡診断を是認する割合は,死亡診断書の作成を是認する割合よりも高かった.一方,医療制度改革の潮流には,①医師の働き方の見直しとしてタスク・シフティングの提案,②看護師の特定行為の創設,③地域包括ケアシステムの推進,④欧米における看護師による死亡確認の現状がある.本研究では,上記の調査結果と医療制度改革の潮流を踏まえ,診療所医師の負担軽減策の一つとして,看護師による死亡診断を,①特定行為の一つとする方法と ②保健師助産師看護師法の「診療の補助」とは別の新たな枠組みとする方法を提案する.一方,看護師による死亡診断書の作成については,原則として時期尚早と考える.しかし,診療所医師の負担軽減および死後のエンゼルケアやグリーフケアの実施の観点から,末期がん患者のような特定の患者に限定し,かつ,死亡診断書の作成プロセスの一つである異状死でないとの判断までであれば検討の余地があると考える.ただし,これを実現するためには,異状死の判断を適切に行い得る程度の知識と技術を担保できる教育システムが必要不可欠であると考える.
著者
田中 宏典 古森 哲 富田 一誠 瀧川 宗一郎 稲垣 克記
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.509-513, 2012 (Released:2013-03-14)
参考文献数
7

症例は5日前からの左下肢痛を主訴に当科を初診した67歳の男性である.合併疾患として直腸癌があり,2回の手術を受け,その後の抗癌剤治療が進行中であった.初診時所見で左第4腰椎神経根領域に疼痛を認め,腰部脊柱管狭窄症など念頭に精査,治療を開始した.初診から5日経過後に疼痛の増悪と共に左第4,5腰椎神経根領域に水疱を伴う皮疹を認めた.下肢帯状疱疹と診断し抗ウィルス薬の点滴と軟膏による治療を開始した.治療開始から1か月後に下肢痛も軽快し水泡も痂皮化した.本症例では,当初腰椎疾患を疑ったが,下肢痛の出現から10日後に皮疹が出現して初めて診断が可能となった例である.腰椎疾患が多い高齢者では下肢痛の病因としての帯状疱疹は初診時の診断が難しい.免疫能低下が考えられる高齢者の下肢痛では,帯状疱疹も念頭に置いて注意深く診察する必要があると思われた.
著者
西野入 尚一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.159-165, 1956-07-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
8

In order to investigate the influences of all-night playing of mahjong, which is experienced not infrequently in our daily life, on various body functions, especially on the disease resistance of the individuals, 4 volunteers were selected to play mahjong all through the night. During the course, gas metabolism, pulse rates and the values of the dermal current were determined according to the lapse of time. Further, specimens of blood and urine were taken at 1 hour's intervals to determine the timely changes in the phagocytic activity of the leucocytes and in the number of the circulating eosinophil cells. In addition to these, oxydation coefficient determination and Donaggio's test were conducted to obtain roughly the following results.1) with the usual sleeping hours, the values of the phagocytic activity of the leucocytes are roughly the same in each morning. However, in the case of all-night mahjong playing, the activity gradually diminished towards the dawn showing approximately 45 less value in the following morning compared with that of the usual morning. Approximately 4 hours' sleep in the morning, however, helped the value to recover to a certain extent. A good sleep in the following night recovered the value to almost full extent.2) The number of circulating eosinophil cells showed almost the same fluctuation during the course as that of the phagocytic activity of the leucocytes.3) Unlike during the sleeping hours, the oxygen up take and the pulse rate were not found diminished, but the flicker value and the value of the dermal current were found diminishing as the time elapsed. The former showed approximately 13% less value at dawn, at which time the volunteers felt most sleepy, with a gradual recovery thereafter. The latter, however, continued lower values during the whole course.The lowering in the number of circulating eosinophil cells and the phagocytic activity of the leucocytes were found greater when these functions were maintained greatly in adverse to those during the sleeping hours.4) In the case of all-night playing of mahjong, Vakat's iodic acid coefficient, which usually shows a gradual increase according to the lapse of time. Moreover, this condition teded unrecovered for 2 or 3 days after one all-night sit up.5) As stated in the above, in the case of all-night playing of mahjong during the night, when usually the excitability of the cerebrum gradually become lowered by the time lapse and when the vagus tends to high tension, various body functions seem not to show their phenomena under sleep, and the bearing degree observed from the changes in the number of circulating eosinophil cells seemed great; further, extreme lowering in the disease resistance observed from the phagocytic activity of the leucocytes seemed to be noted with enhanced dissimilating metabolism.
著者
駒谷 壽一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.677-685, 1986-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
22

大腰筋は股関節屈曲の主作動筋であるが, その筋線維構成についての記述は見られない.筆者は大腰筋について, その筋線維構成を検討し, これまでに同様の方法で検査されてきた骨格筋と比較検討を行った.研究対象ならびに方法: 研究対象は23~87歳 (平均年齢65.4歳) の成人10名 (男性4, 女性6) の病理解剖屍から得られた大腰筋である.筋組織片は第5腰椎下縁高で, 筋走行に直角な断面の全域を採取, ホルマリン固定後, ゼラチン包埋, 凍結切片とし, Sudan Black B染色によって筋線維を濃染性の赤筋線維, 難染性の白筋線維及び中間染色性の中間筋線維に分別した.これらの組織標本について, 筋腹横断面積, 1mm2中の筋線維数, 断面の筋線維総数, 3筋線維型の頻度と太さの平均値および密度を算出した.結果: 1.ヒト大腰筋では筋腹横断面積は平均581mm2で, 男性が女性よりも優り, 1mm2中の筋線維数は平均830で他の筋よりも多く, 女性が男性よりも優り, 断面積と逆相関の傾向を示した.断面の筋線維総数は平均507, 579で, 大きな筋の部類に入り, 男性が女性よりも優り, 加齢的減少の傾向が認められた.2.3筋線維型の頻度の平均は白筋線維62.8%, 中間筋線維21.2%, 赤筋線維16.0%で, 他筋に比べて白筋線維の頻度が高く, サルの大殿筋と等しい組成であった.3.3筋線維型の太さの平均は, 赤筋線維, 中間筋線維, 白筋線維の順に大で, これまで検査した多くの筋の筋線維の太さに関する報告と全く逆であった.また, 白筋線維の太さの平均値はこれまでの報告例中最も小であった.4.筋線維の太さの分布型から見て, 加齢的に右方に偏し, 低分布型となる傾向が見られ, 筋線維の減少に伴う代償性肥大と考えられたが, 最終的には筋線維縮小に至る傾向が認められた.5.筋線維の密度は平均91.6%で, 他に比べて非常に高かったが, 男女とも高齢者程, 密度は低くなる傾向が認められた.
著者
水牧 功一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.530-541, 2011-12-28 (Released:2012-08-03)
参考文献数
72
著者
村永 信吾
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.362-367, 2001-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
9
被引用文献数
30

歩行, 階段など移動能力の改善に下肢筋力は重要な因子である.今日, 客観的筋力評価としてダイナモメータを用いての報告が散見されるものの, 機器が高価であり, かつ多くが固定式使用のために, 使用場所が制限され診療現場で広く活用されているとは言い難い.本研究はダイナモメータでの下肢筋力値を簡便に推定する方法として, 立ち上がり能力に着目し, その臨床応用について検討した.対象は筋力低下を主症状とする入院中の男性74名 (年齢60.2±18.5歳) , 女性68名 (年齢57.6±15.5歳) , 総計142名 (年齢58.9±17.0歳) とし, 股関節, 膝関節さらに足関節に著明な可動域制限なく, 痴呆等の精神障害もない者とした.立ち上がり評価は, 40cm, 30cm, 20cm, 10cm高のそれぞれのボックスに腰かけ, 反動を使わず両脚及び片脚にて立ち上がり可能な高さで判定した.ダイナモメータによる下肢筋力値として体重と膝伸展筋力の比率である体重支持指数 (WBI; weight bearin gindex) を算出した.また移動能力は, アンケート調査をもとに (1) 平地歩行, (2) 椅子からの立ち上がり, (3) 床からの立ち上がり, (4) 階段昇り, (5) 階段降りの各移動動作を全介助 (EAR) ・重介助 (SAR) ・軽介助 (MAR) ・修正自立 (MI) ・不完全自立 (II) ・完全自立 (CI) の自立度に分類し, この自立度とWBI, さらに立ち上がり能力との関係を明らかにした.立ち上がり能力とWBIに明らかな正の相関 (両脚r=0.67, p<0.01, 片脚r=0.75, p<0.01) が見られた.40cm, 30cm, 20cm, 10cmブロックでの立ち上がりに必要なWBIは, 両脚立ち上がり (BLS: both legs standing) の場合, 片脚当たりそれぞれ28.9±7.2%, 35.3±5.0%, 44.3±3.5%, 51.9±14.0%, 片脚立ち上がり (SLS: single leg standing) の場合, それぞれ62.3±14.3%, 68.0±13.7%, 90.2±9.2%, 102.7±11.8%であった.移動能力とWBIとの関係では, 平地歩行に比較して床からの立ち上がり, 階段昇降など重心の垂直成分を多く含む動作ほど高いWBIを必要とすることが示された.階段等を含めた移動動作におけるMIにはWBI43.8±7.5%, BLS20cm, IIにはWBI55.5±15.8, SLS40cm, さらにCIには72.2±19.9%, SLS20cmを必要とすることが明らかとなった.本結果から, 今回考案した立ち上がり評価は, 下肢筋力や移動能力が簡便に推定可能であり, 広く臨床場面で活用できると考える.
著者
村井 紀元 村上 雅彦 東 弘志 加藤 博久 草野 満夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.103-107, 2009-02-28 (Released:2011-05-12)
参考文献数
14

房総半島沿岸地域において,一般に食される,カタクチイワシにより急性腹症をきたした3例を経験した.主訴はいずれも腹痛,嘔気,嘔吐であり,食後3~5時間で発症した.腹部所見では,腹部全体におよぶ強い圧痛を認め,腹部単純X線写真ではいずれも小腸ガス像を認めた.血液検査所見では,いずれも白血球数の増加を認めたが,発熱はみられなかった.また,腹部エコー・上部消化管内視鏡検査では特に異常所見はみられなかった.全例ともに絶飲食による保存療法により,1~3日以内に症状は消失した.魚類摂食後の腹痛の原因としては,寄生虫によるもの,食中毒によるものなどが挙げられるが,今回の症例ではアニサキス症などは否定され,便培養の結果で有意な所見なく,発症までの時間的経過や,大量摂取という状況より,ヒスタミン中毒によるものと推察された.ヒスタミン中毒とは,ヒスタミンの蓄積した赤身魚を摂食後,数分から数時間以内に様々なアレルギー様疾患を起こす病態のことをいう.マグロやサバ,イワシなどが主な原因食として挙げられ,カタクチイワシもヒスタミン中毒魚の一種である.ヒスタミン中毒による症状は,比較的軽度とされており,その診断には問診が重要ともいわれている.今回のように腹部所見の強い症例では,緊急手術の要否の判断に難渋する可能性もあり,急性腹症の患者の診察においては,ヒスタミン中毒も念頭において,問診,診断,治療にあたる必要があると思われた.
著者
島村 忠勝
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.58-69, 2010-02-28 (Released:2011-05-27)
被引用文献数
1
著者
岡部 万喜 佐藤 啓造 藤城 雅也 入戸野 晋 加藤 礼 石津 みゑ子 小渕 律子 福地 麗 大宮 信哉 李 暁鵬 九島 巳樹
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.190-210, 2014 (Released:2014-09-27)
参考文献数
25

近年,医療事故訴訟が絶対数の増加にとどまらず,相対的にも増加している.しかし,どのような事例で刑事責任を問われ,あるいは民事訴訟を提起されるかを,実際の裁判例と医療死亡事故解剖例の両面から分析した報告はみられない.本研究では医療訴訟が提起される確率の高い,医療死亡事故と重い後遺障害が残った事例の判例を分析するとともに,法医学講座で扱われた医療関連死の解剖12例を分析することにより,どのような事例で刑事責任を問われるか,あるいは高額な損害賠償を命じられるか,もしくは低額の慰謝料の支払いにとどまるか,さらに,まったく責任を問われないか,裁判と解剖の実際例の分析をもとに同種の事故発生および訴訟提起を予防することに重点を置いて検討した.その結果,まず判例の分析から,診療を拒否すると民事責任を問われる可能性があること,患者本人に詳細な病状説明が困難な,たとえば末期がんの事例では家族への説明義務を果たさないと民事責任を問われること,昭和末期から平成10年代にかけ癌の告知が家族主体から本人主体へと移行し,時代の変化に対応した告知を行わないと民事責任を問われること,その時点での医療水準に適った医療を行わないと民事責任を問われること,治療に際し,患者は医師に協力しないと損害賠償・慰謝料の支払いを受けられないこと,医療行為と患者の死亡との間の因果関係の存在が証明されなくても,医療水準に適った医療が行われていれば,患者がその死亡の時点で,なお生存していた可能性が証明されるときは医師が不法行為による損害を賠償する責任を負うこと,看護師の薬物誤認が原因の過誤であっても指示した医師も民事責任を問われる可能性のあること,医師の指示自体が誤っていても,それを医師に確認せず,そのまま処置をした看護師にも民事責任が問われること,医療過誤刑事裁判では「疑わしきは罰せず」という刑事裁判の鉄則が適用されず,被告の過失というより医療機関の設備や医療システムの問題が主因の場合でも直接,医療行為に当たった医師,看護師が刑事処罰される危険性があること,重大な過誤の場合,主治医だけでなく,指導医,さらに診療科長まで刑事処罰される危険性があることなどが明らかとなった.次に,解剖例の分析から,事故および訴訟の予防対策として,医師は看護師から要請があったら必ず真摯に診察すること,医師は常に患者の急変の可能性を念頭におくこと,看護師も患者の病状を常に念頭に置き,当直医に連絡して診察がないときは主治医まで連絡すること,医師は必要でない治療を行わないこと,医師は自分の専門領域の疾患だけにとらわれず,患者の全身,心の中まで診ること,腹痛や頭痛を訴える患者には医師も看護師も特に慎重に対応することなどが挙げられた.以上の結果から,民事訴訟の発生を防ぐには,医師や看護師らの医療従事者は至誠一貫の精神のもと,常に患者および家族に対して誠実に対応するとともに,医療従事者間の壁を取り除き,チーム医療によるダブルチェックシステムを構築することが肝要であると考えられる.
著者
小橋 京子 平野 勉
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.661-668, 2014 (Released:2015-08-04)
参考文献数
28

糖尿病治療の根幹は食事,運動療法であるが, 目標の血糖コントロールが達成されない場合には薬物療法が開始される.欧米ではビグアナイド(以下BG)薬が第1選択薬となっているが,日本では特に治療ガイドラインがないため第1選択薬は実地診療医に一任されている.このような現状の中,われわれは東京都内における医師を対象に,症例に則した糖尿病治療薬の処方動向を専門医,一般医に分けて調査した.2013年1月~6月にかけて,東京都内で勤務する医師に対して以下の1)~3)の項目についてアンケート調査を行った.1)現在の糖尿病診療の状態:診療人数と治療内容の割合,食事・運動療法中の2型糖尿病患者さんに対して薬物投与開始を考えるHbA1c(NGSP値)の目安について.2)患者の状況別治療方法の選択; 4症例に対しての第1,第2,第3選択薬について<症例1>56歳,女性,BMI 23.9kg/m2,HbA1c 7.2%<症例2>56歳男性,BMI 26.0 kg/m2,HbA1c 7.2%<症例3>56歳,男性,BMI 22.9kg/m2,HbA1c 8.5%<症例4>67歳男性,BMI 23.9kg/m2,HbA1c 8.5%.3)DPP-4阻害薬の処方状況について; DPP-4阻害薬処方後にHbA1c悪化症例に対する対処方法について.各質問項目について専門医,一般医に分けて解析した.回答した1086名の(回収率85.5%)医師の内訳は専門医290名,一般医796名であった.アンケート1)専門医でインスリン治療の使用率が高かった.薬物治療を開始するHbA1cの目安は専門医,一般医とも7%であった.アンケート2)BMI<25m2/kg未満の症例で血糖コントロールが比較的良好例に対する第1選択は専門医ではBG薬,一般医ではDPP-4阻害薬であった.少量のスルホニル尿素(以下SU)薬は,一般医,専門医とも第3選択薬であった.症例3,4のHbA1c 8%以上のコントロール不良糖尿病例に関しては専門医,一般医ともDPP-4阻害薬が第1選択薬であった.少量のSU薬に関しては,専門医では血糖コントロール不良例に対しても選択しない傾向が判明した.アンケート3)第1選択は「食事・運動療法を再徹底する」が最も多く,第2選択としては「BG薬を追加する」が多かった.専門医では非肥満例に関してもBG薬の処方が選択される傾向があり,少量のSU薬は血糖コントロール不良例に対しても選択順位が低下することが判明した.DPP-4阻害薬の処方選択順位は様々な症例に対して高まっており,その傾向は専門医より一般医に強く認められた.
著者
濱田 裕子 笠 ゆりな 平野 由似 宇野 裕和 大歳 晋平 中田 土起丈 末木 博彦
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.636-641, 2019 (Released:2020-02-06)
参考文献数
20

フラジオマイシン,ゲンタマイシン等のアミノグリコシド系抗菌剤を含有する外用薬は熱傷を含む創傷や感染性皮膚疾患の治療,術後創傷処置などに汎用されている.このうち硫酸フラジオマイシンは感作能を有しているため,アレルギー性接触皮膚炎の代表的な原因物質を網羅しているジャパニーズスタンダードアレルゲンにも含まれている.この硫酸フラジオマイシンの感作率および感作原を検討する目的で10年間のパッチテスト結果を検討した.対象は2009年5月より2018年5月までに昭和大学病院附属東病院,横浜市北部病院,藤が丘病院の皮膚科外来を受診し,硫酸フラジオマイシンのパッチテストを施行された242名(男49名,女193名,16〜92歳,平均年齢52.4,SD±18.7歳)である.パッチテストは試薬を背部の健常皮膚に貼布し,2日後に除去した.判定は貼布2,3,7日後にICDRG(International Contact Dermatitis Research Group)基準に基づいて行い,7日後に+〜+++と判定された者を陽性とした.陽性反応が認められたのは14名(陽性率 5.8%)で,男性に比して女性で高値であった(4.1% versus 6.2%).陽性者の平均年齢は61.8歳で,年代別では60〜69歳の陽性率が最も高く(9.8%),以下,50〜59歳(8.6%),40〜49歳(7.0%),70〜79歳(6.5%)の順で,40歳未満には陽性反応は認められなかった.陽性者14例中10例(71.4%)が接触皮膚炎の患者で,全例で顔面に皮疹が認められた.そのうち眼囲に皮疹が認められた8例は,いずれもステロイドと硫酸フラジオマイシンを含有する眼軟膏による治療歴を有していた.硫酸フラジオマイシンの感作者が高齢者に多いのは医療行為,特に眼軟膏によって感作が成立した可能性が高い.本邦の陽性率は米国(11.4%)よりは低いものの,ヨーロッパ諸国(2.6%)と比較すると高値で,フラジオマイシンを含有する外用薬を減少させたカナダでは感作率も著明に低下している.また,硫酸フラジオマイシン感作者では,硫酸ゲンタマイシンなど他のアミノグリコシド系抗菌剤にも交叉感作を生じうることが知られている.フラジオマイシン系抗菌剤は抗菌作用が期待されて創傷等に多用されているが,第一選択薬になる必然性は認められない.長期間の使用による耐性菌の発生に加え,外用による感作の成立にも注意が必要であり,その使用法について再考を要すると考える.