著者
岡野 訓尚
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は, マルチエージェント系を含む通信が中心的な役割を果たす制御糸を対象に, 通信路を介して伝達される情報や, 制御対象の動特性を表すモデルに不確実性がある場合を想定し, これらの不確実性がシステムの挙動に及ぼす影響を理論的に解析することである. 昨年度までに, システムの安定化(または合意)を達成するために必要/十分な通信ビット数と通信障害の発生確率の限界を導出し, これらの安定化限界が不確実性によってどう変動するかを明らかにした. 本年度の主な成果は以下の2点となる.(1)昨年度に構築したシステムモデルを, より一般的な枠組みに拡張し現実的な問題設定に近づけた. 具体的には, 制御対象のモデルについて, これまで既知としていたアクチュエータ側のパラメータにも不確かさがある場合を扱えるようになった, さらに, 通信される情報の不確実性についても, ある期間に集中的に通信障害が発生する場合を表現できるように障害の発生モデルを一般化した.(2)システムの安定性に加え, 収束速度についても解析を行った. Markov Jump Linear Systemsの結果を基に, 状態の収束速度が, ある行列のスペクトル半径で評価できることを示した. これにより, 安定化限界を満たしている場合にっいても, 不確実性が収束速度をどの程度悪化させるかを評価することができるようになった.以上の成果の一部を, 学術論文誌や国際学会に投稿し2編の採録が決定したほか, European Control Conference (7月, Zurich, Switzerland)にて発表を行った. 本発表はBest Student Paper Award Finalistとして選出される評価を受けた.
著者
淺輪 貴史 小林 秀樹
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本年度は、研究手法に関する定式化を理論的・実験的に行った。具体的には、気温分布の逆推定手法の数学的定式化と熱赤外域分光センサの利用可能性の理論的・実験的検討に関する課題に取り組んだ。まず、衛星リモートセンシング分野で用いられている気温分布や大気濃度分布の逆推定手法を調査し、都市大気の水平気温分布推定に適用する方法を理論的に検討した。特に、パスの終点が既知の温度(放射率)の物体である場合と大気の無限遠である場合とで、定式化がどのように異なるのかを示した。これらは、建築空間でパスが短く、且つパスの終点が壁面等である場合と、都市大気を対象として比較的遠距離のパスに適用する場合との違いに相当する。次に、熱赤外域分光センサを利用して、上記で定式化した逆推定手法を都市大気の気温分布逆推定に適用した場合に、どの程度の精度が得られるのか、また課題点は何かを実験的に検討した。実験は7月に東京都多摩市で実施した。4階建物の最上階から、500m遠方と2.7km遠方の森林までの区間を対象に熱赤外域分光センサによる観測を実施した。同時に、パスの終点が大気の無限遠である場合についても観測を実施した。パス間を4層に分割して気温分布の逆推定を行った結果、いずれのパスにおいても第1層目から誤差が大きく気温の過小推定が起こっていた。第2層目以降では、MAP法による事前分布に近い結果が得られており、実際の大気からの温度情報の寄与が小さい結果となった。上記の点について放射伝達モデルを用いて数値実験的に検討を行った。放射伝達モデルでは、実験のような誤差は生じなかったこと、また実験においてはいずれのパスにおいても同様の誤差傾向を示していることから、今回の実験に含まれるバイアスの原因であると考察した。これらは、実験と数値解析の両方を用いて、今後要因の感度分析を行って行く必要がある。
著者
佐藤 誠 赤羽 克仁
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本の重要な無形文化財である「あやつり人形」遣いの技能を特徴別に分類し、技能の記録、技能の難易度の数値化を行い、糸を使った芸術表現を提示するために年度ごとに設定された研究目標に向かって研究開発を行った。・平成26年度【生き生きとしたあやつり人形の要因の解明】・平成27年度【あやつり人形を工学的に再現】以上の研究開発を行い、操作性、有効性、実用性などの評価実験を行い、今後の課題を明らかにした。
著者
高村 大也 笹野 遼平
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

要約技術の開発に必要となる大規模要約データを自動構築する技術、またそれを効果的に利用する技術を開発した。また、入力文書に対し、文分割、文圧縮、文融合などの演算を施した上で要約を生成する技術、およびウェブページの推薦システムにおいて、ユーザにカスタマイズしたスニペットを生成する技術を開発した。また、野球のイニング速報を自動的に生成する技術を開発した。さらに、ニューラルネットワークに基づく文要約手法において、出力長を制御する技術を開発した。また、日本語の文圧縮のための大量のデータを自動的に抽出する手法を開発し、実際にこの手法を用いて大規模データを構築し、文圧縮モデルの学習を行った。
著者
畑 辻明 関根 光雄 高久 洋 石戸 良治 大塚 栄子 上田 亨
出版者
東京工業大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1988

本研究は重点領域研究を申請するに際し、その準備段階として我が国で核酸化学の研究が濃縮されている核酸化学シンポジウムの中からメンバーを選び、本年度に研究を実施した。その結果、9月におこなわれた核酸化学シンポジウム(札幌)をはじめとして各所で貴重な新しい事実が発表された。たとえば、核酸とタンパク質の相互作用を調べたものとして上田らは制限酵素BalII、Sau3AI、MboIを選びDNA鎖の酵素認識部位のチミンの代りに3種類のウラシルに変換し、制限酵素の認識の特異性を明らかにすることができた。一方、大塚らはいわゆる"ribozyme"の機能が発現するためにどのようなRNAの塩基配列が必要であるかを調べイモリサテライトRNAの切断部位を含む切断鎖と相補鎖の塩基配列を変化させたオリゴヌクレオチド(21量体)を化学合成し、どのような塩基配列が切断に重要であるかを明らかにすることができた。また、関根らはオリゴヌクレオチドの合成で通常用いられているトリチル型の保護基が酸性条件で除去された性質を変換し、アルカリ条件で除去できるトリチル型の保護基を開発した。畑らは、mRNAのキャップ構造を構築する反応形式を検討し、RNAフラグメントを効率よくキャップ化する方法を開発することができた。
著者
坂井 典佑
出版者
東京工業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

我々は可積分系の典型的な例として行列模型を取り上げ、繰り込み群を用いて研究した。行列模型で表されている二次元重力の可積分系としての数学的構造を場の変数についての変数変換の自由度として理解し、ビラソロ代数の表現として恒等式を導いた。我々は、この恒等式を用いて繰り込み群を厳密に解くことに成功した。中心電荷が1を越えるような物質場と相互作用するような解けない場合にも臨界指数などの有用な情報を得るために、繰り込み群理論が役立つと思われる。我々はまず、1行列模型については、中心電荷が1以下の場合について、繰り込み群方程式を導くことに成功した。この繰り込み群方程式は予想に反して、非線形となる。我々はさらに、2行列模型についても、変数変換の恒等式を具体的に求め、厳密な繰り込み群方程式を導くことに成功した。この繰り込み群方程式を解いて厳密解が得られることを示した。一方、量子重力のもう一つの定式化として2+ε次元での量子重力理論がある。この考え方は、二次元では重力が繰り込み可能になるはずだという点に着目して、高次元での量子重力を解析接続によって得ようとするものである。我々はこの理論に、ディラトンを取り入れることによって、従来の困難を解決した。すなわち、重力理論は二次元で位相的理論となり、不連続となる。我々は、ディラトンを導入することによっては解析接続可能な量子重力理論が構成できることを示した。
著者
武藤 滋夫
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
1988

博士論文
著者
岡田 章
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
1982

博士論文
著者
船木 由喜彦
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
1985

博士論文
著者
駒田 雅之 伝田 公紀
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

1)PTEN阻害タンパク質CSIGがNrk結合分子として同定され、NrkがAkt経路を抑制して胎盤スポンジオトロホブラストの増殖を抑制することが示唆された。また、Nrk欠損スポンジオトロホブラストで細胞周期停止因子p27の発現低下が見出され、Nrkがp27の発現誘導あるいは分解抑制を引き起こすことが示唆された。2)乳腺腫瘤を発症したNrk欠損♀マウスにおいて血中および卵巣のエストロゲン・レベルが上昇していることを見出した。また、授乳期および高齢の野生型マウスの卵巣でNrkの発現が検出され、Nrkが卵巣でエストロゲン産生を負に制御することにより、乳腺上皮細胞の過増殖を防いでいることが示唆された。
著者
大浦 弘樹
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は,統計的思考の育成を目標に「データ分析と論証活動を支援する探究型学習環境」を開発することである.平成28年度は「未来の学習のための準備(Preparation for Future Learning: PFL)」の支援原理をもとに,学習者が講義などの説明を受ける前に学習者が他の学習者とデータ分析と論証を通した統計的問題解決を体験できるノベルゲーム型の学習環境を構築し,小規模の評価実験を実施した.29年度の研究計画として,1)学習コンテンツの制作と2)学習環境(システム・コンテンツ)の評価の2つがあった.まず1)について,28年度の実験結果の詳細な分析から既存のシステムではにPFLに必要な足場かけが十分でなかったと判断し,システムとコンテンツの仕様を変更して修正を行った.具体的には,既存のシステムでは統計的問題解決を体験できるものの,サンプリング(対象とサイズの選択)と収集したデータに対する統計量の選択のうち,サイズの決定しか学習者側で指定できない仕様だった.そこで,サンプリングの対象や統計量の選択も学習者側で指定できる仕様に変更してシステムとコンテンツを修正した.これにより,学習者は問題解決型シナリオの中での意思決定機会が増え,統計的問題解決のプロセスをより深く体験できるようになった.一方,2)については,修正したシステム・コンテンツで評価実験を実施した結果,想定した人数の被験者が集まらなかったため,実験計画を練り直し30年度に評価実験を再実施することにした.
著者
佐々 政孝 山下 義行 徳田 雄洋 脇田 建
出版者
東京工業大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、属性文法に基づくコンパイラ生成系をフリーソフトウェアとして公開するものである。1.Rieは,1パス型属性文法に基づく生成系である.これは,GNU Bisonをベースに,C言語で実装してある.Rieについては,平成5年度に1.0.3版と1.0.4版,平成6年度に1.0.5版を公開したが,平成7年度は寄せられたコメントやバグ情報へ対応などを行い,GNU規約に基づいたフリーソフトウェアとして1.0.6版を公開した.これらは,fjのニュースグループおよび世界的なネットワークであるusenetのニュースグループcomp.compilersでアナウンスし,具体的にはfip.is.titech.ac.jp:/pub/Rieよりanonymous ftpで入手できるようにした.これに対し,海外からはGNU規約をゆるめられないか等の問合せがあったり,国内ではfjのニュースグループで取り上げられたりしている。また,Rieを用いたコンパイラ記述に関する解説を図書に掲載した.2.Junは,木の上の属性文法に基づく,コンパイラのバックエンド用の生成系である.これはCommon Lispで実装してある.Junは,属性の依存関係にサイクルがある場合も扱えることが特徴で,これにより最適化器の定式化が可能になった.Junについては,初期版に対し,入力記述の仕様を改訂し,継承属性と合成属性とを対称的に扱うよう生成される属性評価器の形を変更し,全面的な書き直しを行った.これをfj.lang.misc,fj.sources.dなどでアナウンスし,具体的にはftp.is.titech.ac.jp:/pub/Junよりanonymous ftpで入手できるようにした.3.RieとJun双方を用いた実用規模言語に対するコンパイラ作成を行った.具体的には言語Cのサブセットについて,フロントエンドをRieにより,最適化器,レジスタ割付け,コード生成器をJunにより記述することで,コンパイラ作成を行った.