著者
小長谷 明彦 池田 将 湯川 博 川又 生吹 野口 洋文 柳澤 実穂 豊田 太郎 梅田 民樹
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

リポソームそのものに感覚,知能,運動の機能を付加するために、リボソーム凝集体の作成、小動物における/in vivo/蛍光イメージ、リポソーム凝集体の評価、グルコース応答性有機分子の合成、膜透過性調整法の確立、DNAハトメ構造の設計、リポソームシミュレーション、可視化シミュレーションを行った。リポソーム凝集体の作成に関しては、インスリンを内包し、血清共存下での膜破裂、血管網を模した/in vitro/評価において血流速度でのマイクロ流体デバイス内部での滞留を確認した(豊田)。小動物における/in vivo/蛍光イメージに関しては、/in vitro/のジャイアントベシクル凝集体に蛍光標識用量子ドットを導入し、量子ドット由来の鮮明な蛍光を確認した(湯川)。リポソーム凝集体の評価に関しては、/in vitro/評価に用いる糖尿病モデルマウスを作成し、膵島移植により血糖を改善できることを確認した(野口)。グルコース応答性有機分子合成に関しては、グルコースに応答して親水-疎水バランスが変化する新規のボロン酸誘導体を設計した(池田)。膜透過性調整法の確立に関しては、タンパク質ゲルを内包したリポソームの形成法およびリポソーム内に封入したペプチドホルモンの膜透過性調整技術について検討した(柳澤)。DNAハトメの創成に関しては、DNAハトメ前駆体のコレステロールによる脂質膜上への固定法ならびに平面脂質膜上におけるDNAハトメ前駆体の拡散・反応による凝集の観察実験を行った(川又)。リポソームシミュレーションに関しては、コンパートメントが2つの場合について数値シミュレーションを行い,実験を再現するための形状と膜面に働く張力との関係について調べた(梅田)。可視化シミュレーションに関しては、超分子設計支援環境を整備しDNAオリガミ構造体ならびにリポソームの原子モデルを作成した(小長谷)。
著者
丹治 保典 宮永 一彦
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

単一個体から採取した卵塊からウジ→蛹→成虫へと変態させ、それぞれの過程に於ける個体の腸内細菌叢を培養法及びPCR-DGGE法により解析した。6種の抗生物質を含むLB寒天培地上に、ウジ、蛹、成虫それぞれ12個体から分離した腸内細菌懸濁液を塗布し、抗生物質を含まないLB培地上と各抗生物質を含む培地上に形成されたコロニー数を比較することで、薬剤耐性化率を求めた。各変態の過程において高い割合で抗生物質耐性能を示した菌体が分離された。特にAmpicillin,Cefpodoxime,Kanamycinに対し耐性を示した菌体の割合が高く、ウジと蛹から分離した菌体叢の耐性化率はほぼ等しかった。一方、成虫から分離した腸内細菌叢は、使用した6種の抗生物質すべてに対し70%以上の高い耐性化率を示した。ウジと蛹から単離した菌体の染色体DNAを分離し、16SrRNAをコードするDNA領域のシーケンスを行ったところ、多くがProteus mirabilisと100%の相同性を示した。P.mirabilisは広く自然界に存在し、ヒトの腸管常在菌であり病院感染としての尿路感染を起因し、腎盂腎炎をもたらすことで知られている。P.mirabilisの各抗生物質に対する最小生育阻止濃度を測定したところ、極めて高い値を示した。また、多剤耐性化も進んでいた。一方、成虫腸内細菌叢からはS.saprobhyticus, S.cohniiなどのバクテリアに加え、C.tropicalisやI.orientalisなどの真菌類が単離された。人間にとって最も身近な存在であるイエバイから高頻度で多剤耐性菌が検出されたことから、これら多剤耐性菌がイエバエを介して広く伝播される可能性が強く示唆された。
著者
長谷川 豪 Hasegawa Go
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
2015

identifier:oai:t2r2.star.titech.ac.jp:50264814
著者
堀 克敏 海野 肇 丹治 保典
出版者
東京工業大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1999

遺伝子がファージを介して形質転換又は形質導入される機構と、その頻度を左右する環境因子を解明するために、P1ファージによる大腸菌JA300株へのテトラサイクリン耐性マーカーの形質導入系をモデルに実験を行った。その結果、形質導入頻度はファージ/大腸菌の比(MOI)と共に増加し、MOI=1.6で最大値を示した。また、形質導入頻度は感染時間が10分まで増加し、その後ほぼ一定となった。形質導入の律速段階は未感染ファージと大腸菌の衝突過程であると考え、衝突頻度は両者の濃度に比例し、1菌体に感染するファージの数はポアソン分布によるとしたモデルを構築した。このモデルにより、感染時間およびMOIの変化による形質導入頻度を予想することができた。上記モデル実験と並行して、難分解性物質の分解に係わる遺伝子の伝播を研究するため、トルエン資化菌であるPeudomonas putida F1とP.putida mt-2に関するファージのスクリーニングを行った。トルエンで汚染された土壌を用いた集積培養の後に、Fl株に対して感染能力を有するファージを一種、得ることができた。ホストレンジを調べたところ、単離したファージはFl株だけでなくmt-2株に対しても感染能を有するが、P. putida PpY101株や他のトルエン資化菌に対しては感染しないことがわかった。次に培養環境の一つである基質の相違がファージの感染効率に与える影響を調べた。LB培地と気相トルエンを与えた無機塩培地でF1株を増殖させ、OD_<600>の値がそれぞれ0.7になった時点で、MOIが1と10になるようにファージ液を添加した。その結果、LB培地ではファージの感染による濁度の減少が見られたのに対し、トルエンを炭素源とする無機塩培地ではMOI=10の条件でも溶菌現象が見られなかった。
著者
黒川 信重 染川 睦郎 水本 信一郎 盛田 健彦 加藤 和也
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

各研究分担者は次のような研究を行った。黒川はゼータ関数の行列式表示しを研究し、絶対数論の見地に達した。加藤はモチーフの数論的ゼータ関数の特殊値の研究を行い普遍行列式の考えに至った。盛田はセルバーグ型ゼータ関数の研究を行った。水本はゼータ関数の中心零点の研究を行った。染川は数論的代数幾何学の研究を行った。これらを総合するとゼータ関数の全体像がより一層はっきりしてきた。とくに、すべてのゼータ関数の統一理論の鍵となる絶対数字の考え方を注意しておきたい。これはセルバーグ型ゼータ関数はもちろん,数論的ゼータ関数の研究において絶対なる力を発揮する。理論ができつつある段階であるが,たとえば,加藤による対数スキームの理論やトーリック多様体論はその例と見なすことができる。零点の絶対テンソル構造を経由するとリーマン予想にも到達する。このようにして,ゼータ関数が実体に一歩近づいた。
著者
海野 肇 けい 新会
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

上下水の最終処理に広く用いられている塩素消毒は残留微量有機物質との反応によってトリハロメタン等の発ガン性物質を生成する可能性が大きく,その代替法として紫外線処理法が注目されている.一方,紫外線殺菌により一旦不活性化された細菌は近紫外線によって再び活性化するという現像がある.本研究では,最近水環境汚染の一つとして指摘されている腸管系ウイルスについて,紫外線処理による不活化過程を検討した上で,その不活化したウイルスの近紫外線照射下での挙動を調べた.実験には,ポリオウイルス1型のワクチン用弱毒株(LSc.2ab株)を用いた.紫外線によるウイルスの不活化実験は低圧水銀ランプ(波長253.7nm)の真下に一定濃度のウイルスを添加したPBS溶液を置き,異なる紫外線強度の条件下で連続攪拌して行った.また,紫外線処理したウイルスに波長300〜400nmの近紫外線を照射しウイルス活性の変化を調べた.ウイルス活性はプラーク形成法により評価した.紫外線照射によるウイルスの不活化過程は,いずれの紫外線強度においても紫外線量(強度と時間の積)増加と共に一次的に減少した.しかし,大腸菌の不活化に比べて同程度の不活化率を得るにはかなり大きい線量の照射が必要であった.また,異なった紫外線線量下で不活化したウイルスは近紫外線照射と未照射とでは同様な挙動をし,光による活性回復(光回復)現象を示さなかった.これは紫外線照射したウイルスと細菌への近紫外線の影響が異なったことを示した.本研究の結果から,上下水の紫外線処理法では,細菌の光回復による活性化を問題視する必要があるが,ウイルスはそのような問題がないことがわかった.
著者
小尾 高史
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

公的個人認証サービス(JPKI)に対して,新たに電子利用者証明サービスが追加されたが, 1つの公開鍵証明書を利用することによるプライバシーの侵害につながる可能性や,不正にインストールされたマルウエアによりサービス利用時のデータ書き換えなどが発生する可能性が指摘されている.本研究では,JPKIを安全安心に民間分野のサービスで利用可能とするために必要となる,利用者のプライバシーに配慮した利用者を識別するID番号をサービス機関が個別に発行する仕組みの提案,マルウエア等からのJPKI利用端末で受けるサービスの保護について検討及びプロトタイプ開発を行った.
著者
下嶋 浩
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
1972

博士論文
著者
北沢 五郎
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
1935

博士論文
著者
赤松 良久
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
2003

博士論文
著者
藤井 聡 谷口 綾子 羽鳥 剛史
出版者
東京工業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は,土木計画における公共受容や合意形成の問題を考える上で,個人の心理的傾向性として「大衆性」に着目した.そして,オルテガの政治哲学理論を踏まえ,行政行為が一切変化しない状況でも,公衆が大衆化することで公共事業に対する合意形成が困難となるであろうという仮説を理論的に措定した.そして,大学生100名を対象としたアンケート調査を通じて,その仮説を実証的に検証した.その際,大衆社会論の代表的古典であるオルテガ著「大衆の反逆」(1930)を基にして構成された個人の大衆性尺度を用い,それら尺度が,政府・行政や公共事業に対する態度に及ぼす影響を分析した.その結果,本研究の仮説が支持され.大衆性が公共事業に対する合意形成を阻害する可能性が示された.以上の結果は,人々の大衆性が昨今の行政不信と公共事業を巡る合意形成問題をもたらし得る本質的な原因であり,そうした問題の解消にあたっては,人々の大衆性を低減することが本質的課題であることを示唆するものである.次に,以上の先行研究を受けて,個人の大衆性を低減するための方途を探ることを目的として,人々とのコミュニケーションを通じた態度変容施策の一つとして,「読書」の効果について実証的に検討した.そして,内村鑑三著「代表的日本人」(1908)に着目し,本書を通読することによって,人々の大衆性が低減するという仮定を措定し,実証実験を通じて本仮説を検証した.その結果,本研究の仮説が支持され,「代表的日本人」を通読することによって,人々の大衆性が低減し得る可能性が示された.
著者
上野 昭彦 池田 博
出版者
東京工業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

シクロデキストリン(CD)は環状オリゴ糖であり水溶液中でさまざまな分子を包接することができる。本研究では、蛍光性単位(ダンシル)とタンパク質結合性単位(ビオチン)を有する修飾CDを合成し、タンパク質アビジンが結合すると修飾CDの分子認識センサーとしての能力がいかに変化するか検討した。これまでのダンシル修飾CDでは、タンシル単位がCD空孔内に自己包接され強い蛍光を発するが、ゲスト包接に伴いダンシル単位は空孔外の水環境に追い出され蛍光強度が減少する。この減少がゲストの検出に利用されてきた。本研究では、CDとしてはグルコース単位を7個有するβ-CD、ダンシルを含む単位としてはダンシルそのもの及びダンシルグリシン残基を用いた(各修飾CDを1、2とする)。ダンシル単位は1よりも2の方が、グリシン部分を介するだけ自由に動きやすくなっている。両者とも励起波長360nmで測定すると550nmに蛍光のピーク示した。そして、ゲストである1-アダマンタノール添加による最大の蛍光強度減少は1ではアビジン不在下で19.2%,アミジン存在下では10.9%であった。他方、2では、それぞれ39.2%,4.2%であった。このように両センサー系とも、タンパク質の存在によってゲスト添加による蛍光強度の減少の程度が抑制された。この事実は、タンパク質が結合することによってダンシル単位がCD空孔外に出ることが制限せれていることを示唆している。なお、結合定数は2-1-アダマンタノールの系でアビジン存在、不在下で9730M^<-1>、63700M^<-1>となり、アビジンの存在によって著しく増大した。タンパク質がCD空孔近傍の疎水的環境を増大てさせいるのもと推測される。