著者
清水 康敬 前迫 孝憲 坂本 昂 高野 綏 森 政弘
出版者
東京工業大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

9.研究成果の概要(最終まとめ) 本研究は, 留学生が日本語を習得するためのCAIシステムの構築を目的としている. すなわち光ビデオディスクに書き込んだ画像を動画教材とし, パーソナルコンピュータによる提示画像とのスーパーインポーズの制御を行っているが, 機器類の操作を学習者が自らの意思でインタラクティブに行うことができるよう構成したことに特徴がある. 本システムにより, 学習者は主体的に学習に取り組むことが可能となった. 本研究により, 書き込み可能な光ディスクをパーソナルコンピュータで制御するためのソフトウェアシステムの構築と改善を行った. また, 世界有数のCAIオーサリングシステムであるPLATOシステムに, 本研究で実現したインタラクティブ制御機能を組み込む実験を行った. そして, これらのCAIシステムの学習コースを作成し, ビデオディスクに付加したインタラクティブな制御機能が, 学習成績と深い相関を持ってょいることを実証するなど, インタラクティブなCAI環境でビデオディスクを利用する際の基本的な要件を明らかにした. また遠隔教育における通信量の適正化を図るため, ビデオテックス・NAPLPSを利用するCAIシステムの可能性を調査し, 色再現性の支持等適切な制御を行うことで高い効果の得られることを確認した. そして入力インタフェースとしての手書き漢字入力装置の可能性について調査研究を行った. 今後は, 本研究の成果に基づき, 学習コースの開発と利用を進めていく予定である.
著者
鈴森 康一 脇元 修一 安積 欣志
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

現在の人型ロボットと実際の人の身体の駆動機構は大きく異なっており,これが両者の運動特性に様々な違いを生んでいる.しなやかで「生き物らしい」運動特性を持ったロボットを実現するには,十分な収縮能力を持ち,集積して超多自由度機構を駆動できる「人工筋肉」の実現が鍵になる.本研究では,①「電気駆動」と「多繊維構造」を特徴とする「次世代マッキベン人工筋肉」を実現し,②「筋骨格ロボット機構」に適用してその可能性を実証することを目的としている.①マッキベン人工筋肉の電動化に関しては,本年度は,プロトン交換膜表面の電極形成の工夫により,1~2秒程度の速さで動作する「電動細径マッキベン筋肉」の動作に成功した.電気駆動に関しては,安定した製造方法と反応速度の向上については今後検討する必要があるものの,ほぼ当初の目的であった動作性能を実現することができた.多繊維化に関しては,紡錘状筋肉を対象に多繊維化に伴う筋肉間の干渉をモデル化し,細径人工筋肉単体の特性と多繊維化した場合の特性を理論と実験から検討し,多繊維化により収縮率が10%程度上昇することを示した.②筋骨格ロボット機構に関しては,一昨年度の脚,腕,昨年度の顎の動作実現に加え,首および脛骨へ適用,動作に成功し,超冗長駆動システムの駆動が本多繊維人工筋で行えることを実証した.以上のように,②については,研究が当初計画より約1年前倒しに当初目標を達成し,①の電動化については安定した製造方法と反応速度の向上については今後検討する必要があるものの,4年間でほぼ当初の目的を達することができた.今後はさらに高性能化を目指して油圧駆動に取り組みたい.
著者
太田 秀樹 桑野 二郎 竹村 治朗 日下部 治 小林 一三 飯塚 敦
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

平成11年度はジオシンセティックスで補強された土構造物の力学的挙動を合理的に説明することを目的とし,ジオシンセティックスと締固め土の力学的相互作用と補強効果の関連に着目し,締固め土のせん断特性を考慮したモデル化を行った.すなわち締固め土と等価と考えられるような過圧密粘土を想定し,締固め試験に対する一連の等体積一面せん断試験結果に基づき,計算に必要なパラメータの決定方法を提案し,2つの実物大現場試験を有限要素解析によりシミュレートした.その結果,・ジオシンセティックスの敷設が,せん断による土の体積膨張を拘束すると,その補強効果は土の違い(締固め度合いの違い)によってどのように現れるかを解析的に調べ,関口・太田モデルを用いた場合には,強く締め固めすぎるとジオシンセティックスの拘束効果をかえって減ずる場合があることを示した.・締固め土を対象として,解析に必要な入力パラメータの決定法を提案した.締固め管理図を描くことにより,締固め土を過圧密粘土の概念を用いて置き換え,締固め度合いを過圧密比で表すことができた.・実物大現場試験を有限要素解析にてシミュレートし,実測された変形挙動,特にせん断ひずみの集中を説明を説明することができた.
著者
佐藤 由利子 野水 勉 近藤 佐知彦 堀田 泰司 太田 浩 鈴木 雅久 恒松 直美 高浜 愛 水戸 考道
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

非英語圏として英語による授業という弱みを有する日本の短期留学を強化するには、縦横2つの軸からの拡充を検討する必要がある。縦とは、留学前、留学中、留学後の3つの時間軸にそった拡充策で、 特に「留学前」の海外における日本語・日本文化普及活動、「留学後」のキャリア形成支援活動との連携が必要である。横とは、企業、自治体、他大学、研究助成機関、国際協力機関、国際機関等との連携で、日本留学の魅力を高めることが可能になると 考えられる。
著者
青木 尊之 森口 周二 下川辺 隆史 高木 知弘 滝沢 研二
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2014-05-30

① AMR法を適用した複雑形状物体を含んだ非圧縮性単相流体(乱流LES)シミュレーション:格子ボルツマン法により、複雑形状を含んだ物体回りの流れとして、複数台の自転車を含む競技を想定した流れのシミュレーションを行った。計算のTime-to-Solutionを大幅に短縮するAMR法を適用した。また、検証として行った球周りの流れでは、レイノルズ数が50万程度で抗力が急激に低下するドラッグ・クライシスを再現することができた。②マルチ・フェーズフィールド法による動的領域分割:粒成長を並列計算の領域分割に適用し、時間発展させることで各領域の体積(計算負荷)を均一にしつつ、各領域が凸形状になるようにトポロジー最適化が行えることを確認した。これまでのスライス・グリッド法や空間重点曲線による領域分割と比較し、領域間通信量を低減できることを確認した。③AMR法による気液二相流シミュレーション:Octreeベース細分化によるAMRを用いて最細格子を気液界面に適合させ、弱圧縮性流体計算による気液二相流計算を行うことができるようになり、均一格子を使う場合と比較して1/100の格子点数で計算することができた。④流体-構造連成問題:物体適合格子における要素の消滅および出現させる手法を開発した。この手法の自由度を増すため、接触物の間に互いにスライド可能なメッシュに分割する手法を提案した。これにより接触位置が互いに変わる状況も再現できるようになり、これまでの物体適合格子の並列効率を保つことができる。⑤フェーズフィールド法による凝固と粒成長のシミュレーション:強制対流下で成長するデンドライト形態変化を詳細に検討した。また、自然対流を伴うデンドライト凝固シミュレーションを行い、自然対流が凝固組織を大きく変えることを明らかにした。800 GPUを用いた世界最大の理想粒成長シミュレーションを行い、理想粒成長の統計的挙動を初めて明らかにした。
著者
森川 治 戸田 賢二 前迫 孝憲
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

Windowsで動く、遠隔学習システム(動画の解像度が320x240画素)を試作し動作確認した。動画部の解像度不足のため、教育現場で実証実験はできないとの評価が出た。高解像度化・映像合成のハードウエア化を検討した。映像合成システムの使いにくさは、ディスプレイが単一のビデオ信号だけを表示するように設計されている点にあると考えた。全画面、フレームレートという概念を持たない、新しいビデオ信号の提案を行った。提案したビデオ信号を使って、お互いに情報交換することで、表示位置と縮尺率を決定する自律型カメラと、それを表示する表示装置を設計した。出願していた映像表示装置の特許 5548898を取得した。
著者
橋爪 大三郎
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は本居宣長の業績が日本プレ近代思想において占める位置と、明治日本のネイションの形成に果たした役割を知識社会学的に明らかにすることを目的とした。平成23年度~平成24年度にわたる研究の結果、以下のことが明らかになった。第一に、本居宣長の古事記研究のモチーフは、日本朱子学、古義学、古文辞学、蘭学、神道学、国学の複合のうえに構想されていること。この事実は、ハーバード大学燕京図書館で朱子学大系/水戸学全集/荻生徂徠全集/賀茂真淵全集/契沖全集/続神道大系などの該当個所を相互参照することで確証された。また、プロテスタント神学者ネイピアの『ヨハネ黙示録注釈』を比較参照することで、本居宣長の古事記読解の同時代的価値を検証することができた。第二に、本居宣長の古事記研究の方法が、ヴィトゲンシュタインの言語ゲームと通底する方法にもとづくことを、『直毘霊』の読解を通じて明らかにした。すなわち、テキストに対応する直観的読解(あはれ)を同時連立的に解析することで、漢意を排除した純正言語共同体としての「やまと」を再現できるというロジックである。第三に、以上の考察は、従来の先行業績(村井典嗣『本居宣長』、小林秀雄『本居宣長』)の宣長理解を更新するものであり、宣長の古事記読解が開く意味空間は言語ゲームのアプローチによってはじめて明らかになること、言語共同体としてのネイションの形成にいたる道筋が再構成できるを結論的に明らかにした。本研究の成果は、なお数年の彫琢をへて、単行書として出版される予定である。
著者
西田 亮介
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、公職選挙法が改正され、インターネットを用いた選挙運動が解禁された2013年の公職選挙法改正以後の情報化が進む日本におけるソーシャルメディアを用いた国会議員の情報発信に関する研究である。2013年の参院選等を中心に国会議員の情報発信のパターンとケーススタディを実施した。さらに、政党の情報発信手法、戦略、ガバナンスに関する分析に着手し、同選挙などにおける自民党のそれらの実践、またその歴史的変遷などを明らかにした。
著者
小坂田 耕太郎 NELI Mintcheva NELI N.Mintcheva-Peneva
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

前年度までの成果に基づき、かさだかい有機ケイ素配位子であるシルセスキオキサンを配位子とする有機白金およびパラジウム錯体の合成を行った。キレート配位するテトラメチルエチレンジアミンや2,2-ビピリジンを支持配位子とするフェニル(ヨード)およびジヨード錯体をシルセスキオキサン配位子の置換反応で新規錯体に導いた。シルセスキオキサンパラジウム錯体は、これまで合成例がなく、本研究がはじめての報告となる。錯体の構造は単結晶構造解析で明らかにしたが、溶液中の構造をNMRスペクトルで検討すると動的な挙動を示すことがわかった。H,C,FなどのNMRスペクトルを種々の温度で測定し、精密に解析することによって、この錯体はこれまでに申請者がみいだした、O-H-O水素結合のスイッチングに加えて、シルセスキオキサンが回転することによってコンフォメーション異性体の変換がおきていること、シルセスキオキサン配位子がきわめてかさだかいために、そのコンフォメーション異性体が低温では区別して観測されることが明らかになった。類似の錯体を多数合成し、比較することによって、中心金属の電子状態とコンフォメーション変化速度とに相関があることがわかった。このような結果と以前の結果とをあわせて、後期遷移金属のシルセスキオキサン配位錯体の合成法、構造変化について広範な立場からの区分をおこなった。その結果、種々の動的挙動のパラメーターがモデル化合物であるシリルオキソ錯体とは大きく異なることを明らかにすることができた。本研究によってシルセスキオキサン錯体についての重要な知見が得られ、これを米国化学会発行のOrganometallics誌に2報の論文として報告した。
著者
野口 明生
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

私の研究課題はAlexander多項式における解析的性質の研究である.この研究は私が行ってきたAlexander多項式をLefschetzゼータ関数という力学系ゼータ関数に翻訳することによって性質を調べる手法をさらに推し進めていくものである.初年度にあたる平成16年度は計画どおりにLefschetzゼータ関数の零点の研究をとおしてAlexander多項式の零点の研究をした.この結果,Alexander多項式の零点のp進数論的振る舞いが,ある力学系のエントロピーの情報を与えていることが解明された.このことは一般的に力学系ゼータ関数と呼ばれるゼータ関数の零点がエントロピーの情報を与えているとされる事実と符合し,Alexander多項式をLefschetzゼータ関数と見なす視点が有効に働くということが確認された.この零点とエントロピーの関係は単にAlexander多項式にゼータ関数としての正当性を与えるだけではなく,以下の2つの応用を導いた.1つは結び目の上で分岐する3次元球面のr重巡回被覆空間に対する1次のホモロジーの位数の指数的増大性をAlexander多項式の零点を使って明示的に記述した。この増大性の問題はGordonに始まりRiley, Gonzalez-Acuna and Shortといった人たちによって研究されてきたもので,今回の研究はそれを引き継ぐものである.もう一つはAlexander多項式の最高次の係数も同様にある種のエントロピーであって,その零点によって明示的に記述することが出来た.Alexander多項式はAlexander加群が有限生成かどうかを判別するという重要な因子であるとされている.しかしこの研究を通じて,この有限性に対する障害は零点の分布によって引き起こされ,最高次の係数はそれらの和になっていることが解明された.
著者
美多 勉 劉 康志 三平 満司
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

ロバスト制御理論の中核としてH_∞制御があるが、実際問題に応用する場合、問題が非標準となり、標準的な解法を適用できないことがしばしばある。すなわちa.サーボ系を構成するため不安定重みを選んだり、推定問題において制御対象が不安定なとき、(A,B_3)が可安定、(A.C_2)が可検出性という標準仮定が満たされない。b.入出力のアンバランスで、D_<12>が列フルランク、および、D_<21>が行フルランクであるという標準仮定が満たされない。c.制御対象が虚軸上に極や零点をもつ特殊な問題では、G_<12>(s)やG_<21>(s)が虚軸上に零点を持たないという標準仮定が満たされない。本研究ではこれらの問題のうち、重要なものに解を与え、その結果を使い、d.外乱オブザ-バを中心とした制御則に期待できるロバスト性の理論的解明、e.外乱零化と言う共通の究極的目的を持った、スライディングモード制御、非干渉制御、H_∞制御のロバスト性の比較と融合、を行うと共にf.炭鉱のトロッコの位置決め制御、電力系統のH_∞制御に得られた結果を適用し効果を確かめた。その結果、応用も含めて数々の成果が得られ、産業応用のためのH_∞制御、H_2制御の適用指針が得られた。
著者
グブラー P
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

去年までに開発したQCD和則の新しい解析手法を今年度に入り、有限温度におけるチャーモニウムの解析に応用し、チャーモニウムの様々な量子数を持つ状態がどの温度で溶けるかを調べました。この研究成果を論文にまとめ、Physics Review Lettersにpublishしました。また、同じアプローチをボトモニウム系にも応用し、それぞれのチャンネルの融解温度を計算しました。この結果も論文にまとめ、現在雑誌に投稿中です。このように、様々なクォーコニウムの有限温度を持つ物質中の振舞いを調べることが、LHCなどで行われる重イオン衝突において、どのような温度のクォーク・グルーオン・プラズマが作られたかを理解するために非常に重要な意味を持ちます。さらに、新しい解析手法の応用範囲を広げるため、三つのクォークからなる核子に関するQCD和則に適用可能であることを示し、その結果を論文としてpublishしました。また、核子に関するQCD和則の信頼性を高めるためには、これまでは無視してきたα_s補正を取り入れ、パリティ射影を行った和則を解析しました。この解析の結果として、核子の基底状態だけではなく、その負パリティを持つ励起状態も再現できることを示しました。この結果は現在論文にまとめているところです。研究計画の中にあったもう一つのテーマは格子QCDによるΛ(1405)と呼ばれる粒子の研究です。この研究では、クエンチ近似を使わずに、しかも比較的に軽いクォーク質量で得られているゲージ配位を用いて、Λ(1405)の性質を調べています。そのためにはいくつかの演算子を用意し、その演算子と結合する状態を対角化することによって分離します。これまでは、いくつかのテスト計算を行い、以前の研究に得られた結果が再現できることを確認しました。