著者
中本 高道 石田 寛
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では小型嗅覚ディスプレイを開発し、香るバーチャル空間の実現を目指した。まず、電気浸透流ポンプと弾性表面波デバイスを組み合わせた超小型嗅覚ディスプレイを開発した。この嗅覚ディスプレイはクレジットカードより小型で鼻元で最大8成分の香りを調合できる。低揮発性香気成分で残香の評価を行い、良好な結果を得ることができた。また、広範囲の香りをカバーできる要素臭の検討を行った。質量分析器データを用いてNMF(Nonnegative Matrix Factorization)法で基底ベクトル探索を行い、その基底ベクトルが得られるように要素臭調合を行う。精油に関して30要素臭を用いて香り近似の実験を行いオレンジ、ミント、ブラックペッパーの近似臭を約9割の確率で正しく識別できることがわかった。さらにNMFで用いる距離指標を検討し、IS(Itakura-Saito)-divergenceを用いればKL-divergenceやユークリッド距離よりも広範囲の検出器強度に渡って良好な近似性能が得られることがわかった。それから、流体シミュレータを用いて、障害物がある環境で任意の位置の香り濃度を計算させる方法を開発した。与えられた室内環境の幾何学的形状をレーザスキャナで計測しさらに壁面温度分布をサーモグラフィにより計測して、それらの結果を利用して流体シミュレーションを行った結果、室内に広がる匂いの分布を計算により求めることができた。また、風感を導入するために匂いと気流を同時に体験者に提示する装置を製作し、モニタから風や匂いが出てくるような感覚を与えることができ、仮想的な発生源の位置を制御できることがわかった。さらにヒータを追加し、温かい食べ物や飲み物から匂いが立ち上る様子を再現できるように改良し、学会で実演を行い、多くの人々に体験してもらうことができた。
著者
岡本 浩二
出版者
東京工業大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

【平成21年度】マイトファジー・タンパク質Atg32とAtg8およびAtg11との相互作用の解析1. Atg32のドメイン解析マイトファジーに必須なタンパク質Atg32の膜貫通型タンパク質のトポロジー、マイトファジーに働くドメイン、ミトコンドリア標的化シグナル等を、生化学的アッセイ、蛍光顕微鏡観察等の手法により解析した結果、Atg32はN末端側のドメインを細胞質側に露出したトポロジーをとること、C末端近傍の膜貫通ドメインとC末端側ドメインがミトコンドリア標的化に必要であることがわかった。また、マイトファジー活性には、細胞質側ドメインが必要かつ十分であることが示唆された。2. タンパク質間相互作用を特異的に破壊するatg32, atg8およびatg11変異の単の離と変異タンパク質の機能能解析部位特異的変異導入法と免疫共沈降アッセイにより、Atg32-Atg11のタンパク質間相互作用が特異的に阻害されたatg32の変異を単離した。この変異タンパク質を発現した細胞では、マイトファジーが顕著に抑制されることから、Atg32-Atg11間相互作用がAtg32の機能発現に重要であることが示唆される。
著者
十代田 朗 津々見 崇
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本年度は、昨年度末に現地での空間調査・資料収集を行った米国グアム・サイパンを対象にリゾート再生に関する分析を行った。両リゾートについて、日本人のリゾート志向を考慮したいので、下記のような日本側の資料により、調査分析を進めた。グアムについては、旅行業の業界誌「トラベルジャーナル」を用い、1974年から2017年までの記事を抽出し、現地で得た“tourism2020”やアニュアルレポートなどの情報を加味し年表を作成した。その上で時代区分を設定した。次に、代表的旅行ガイドブックである「るるぶ」と「地球の歩き方」をバックナンバーを含めて購入し、キャッチコピーやアクティビティの記載を元に時系列変化に注目して分析した。現在、前者と後者のクロス分析中である。サイパンについても、1976年から2016年までの記事を抽出し、“2017 Sustainable Tourism Development in the Marianas”を加味し同様の作業をした。こちらも分析の途中。
著者
益 一哉
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

シリコンCMOS集積回路は、あらゆる情報処理機器のハードウエアの構成要素である。これを支えてきたのは、スケーリング則を指導原理として微細化し、高性能化、低消費電力化し、さらにチップ面積も低減させ低コスト化してきたことにある。再認識すべきは、チップ面積が低減による低コスト化と高性能化を実現してきたことである。することである。デジタル集積回路においては特に長距離配線委おいてはリピータ挿入による面積増大、RF/アナログ集積回路ではインダクタなどの受動素子を利用することから面積低減阻害が大きな課題になっている。本研究ではプロセス世代が進展した際にも、これまでとおりの面積削減と性能向上が両立し得る回路技術の提案、ならびに開発を行った。これらを180nm、90nm、65nm、45nmCMOS集積回路試作を通じて実証した。
著者
木村 淳
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

3つの巨大氷衛星の異なる内部および表層の特徴を説明するために,含水シリケイト始原核(以後,含水核)を導入したモデルを構築した.半径・密度ともに最大のガニメデでは,岩石中の放射性核種が含水核を加熱して深部が脱水すると,脱水に伴う高粘性率化からさらなる昇温が起こり,含水核深部温度はやがて金属成分の融点を超え,金属核が形成する.脱水したH2Oは上昇して衛星全体が膨張し,表面の伸張性テクトニクスを作り出す.半径と平均密度がガニメデよりやや小さいカリストでは脱水が不十分で金属核は形成しない.2衛星の中間的な半径と密度を持つタイタンは,ガニメデより規模は小さいものの脱水と衛星膨張が生じることが分かった.
著者
小栗 慶之 長谷川 純 小川 雅生
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

注射針を患部に刺入して針内部に粒子線を通し,先端の標的に照射してガンマ線を発生し,ガン治療に用いる新しい方法について調べた.予備実験でガンマ線強度が小さいことが判明し,代りに陽子線照射により重金属標的から発生する特性X線を用いた.針の軸出しを精密に行い,内径で決まる値の80%のビーム透過率を得た.先端にAg標的を取り付けてX線を発生させたところ,針の壁の遮蔽効果により目的とするAgの特性X線のみを取り出すことに成功した.
著者
小池 康晴
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

筋電図によるアクティブな制御が可能な防水型福祉機器のために、筋電図用防水アクティブ電極を開発した。また、水中と空気中で計測した波形の質を比較し、性能の低下がほとんど見られずに計測できることを確認した。また、無線による通信のために、消費電力を抑えるシステムを構築した。さらに、防水型の義手の試作として、安価なサーボモータを用いた義手を製作した。関節角度とインピーダンスを可変に設定することで、位置だけでなく力の大きさも筋電図による制御可能とした。
著者
北野 政明
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-11-18

チタン酸ナノチューブの合成条件の制御および異種元素ドーピングによる高機能な固体酸触媒の合成を行い、炭素-炭素結合形成反応への応用を試みた。合成条件を制御することで、チューブやロッド構造に変化し、ナノチューブ構造を有するときのみ触媒表面にルイス酸点とブレンステッド酸点が多く形成されることが明らかとなった。また、チタン酸ナノチューブの骨格にNb5+やTa5+をドープすると触媒活性が最大で10倍程度まで向上することが明らかとなった。
著者
神田 学 稲垣 厚至
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

対流性集中豪雨の予測精度を向上させるため都市気象学的なアプローチによって以下の成果を得た。(1)詳細な都市気象データベースの解析から、集中豪雨頻発域である東京-練馬-埼玉ライン上に都市化による海風遅延領域が見出された。(2)詳細な建物GISを利用した乱流計算により実都市の流体力学的粗度を推定する新しい推定式が提案された。(3)都市陸面に関する最新知見を導入した都市気象モデルによる豪雨シミュレーションにより、都市化により集中豪雨が強化されることが示された。
著者
MIRANDA MARTINSANTIAGO (2014-2015) MIRANDA MARTIN SANTIAGO (2013)
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本年度は量子気体顕微鏡の技術を活用して、原子が2次元光格子中に欠陥なく並んでいる状態を生成する段階に踏み込んだ。まず、Bose-Hubbard模型で実現される超流動状態からMott絶縁状態への相転移を、飛行時間測定法を用いて観測した。超流動状態では原子の位相が揃っているため、波動関数が拡散するとともに干渉縞が現れる。ポテンシャルの深さを徐々に上げていくとMott絶縁状態が誘起され、原子の位置が確定されると同時に位相が不確定になり、干渉縞が消えていくことが確認された。実験において相転移が生じたポテンシャル深さは、理論的な予想と一致していた。Mott絶縁状態が誘起されても、系の温度が十分に低くなっていない場合、一つのサイトに2個以上の原子が入ったり、あるいは欠陥が生じたりしてしまう。私が構築した量子気体顕微鏡は、サイト内原子数が0か1かを区別することはできるが、原子数が1か2以上かを判断することはできない。そこで、光会合技術を導入することで、同一サイト中の2原子を分子に変換・排除し、原子数の偶奇を判定することにした。実際に光会合光を照射した後、量子気体顕微鏡を使って光格子中の原子分布を直接観測したところ、各サイトの原子数が予想に反して揺らいでいることが確認された。原子数のゆらぎを抑圧するためには系の温度を1nK程度まで下げる必要性がある。別途、系の加熱レートを評価したところ、30nK/sec程度であることが判明した。超流動相からMott絶縁相への相転移を誘起し、顕微鏡で観測するためには、1sec程度の時間が必要となるため、上記した超低温度下での観測は難しいと言える。光格子を生成しているレーザーを吸収・自然放出することによる不可避な加熱レートを見積もったところ、僅か50pK/secであり、測定された加熱レートが、主に、レーザーの周波数・強度ノイズや、実験系の音響振動といった技術的なノイズによるものであることが明らかとなった。
著者
廣田 薫 董 芳艶
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

5体の眼球ロボットをRTM(Windows版)でインターネット接続をしたマスコットロボットシステムを構築、4人の人間と5体の眼球ロボットがホームパーティを楽しむというシナリオのもとで複数の人間・ロボットがさりげないコミュニケーションを実施する例として15分程度のデモビデオを作成、理論的にはファジィ雰囲気場の概念およびその可視化手法を提案してビデオに反映、成果を都合10件以上のジャーナル論文・国際会議招待講演などで発表。
著者
田中 寛
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本年度の研究では、主にシゾンにおけるアブシジン酸(ABA)の作用について解析を行なった。これまでの研究で、シゾン細胞から内生ABAが検出されること。暗所で増殖停止したシゾン培養にABAを添加することでオルガネラDNA合成(ODR)が阻害されることを見いだしていた。しかし、ABAによる抑制効果は長期には持続しないことから実験的な問題が残されていた。今回、ABAを数時間ごとに再添加したところ継続的な抑制効果が見られたことから、ABAがシゾンの酸性培地中で急速に失活することが効果低下の原因であると考えられた。また、ABAの光学異性体((+)型、(-)型)を用いた実験より、+型のみが抑制活性を示したことから、植物ホルモンとしての機能と同様に、特異的レセプターを介した生理活性であることが強く示唆された。ABAの作用機作を明らかにする目的で、その添加によりODR促進効果がみられるHemeとの、培地への共添加実験を行なった。その結果、Hemeの添加によりABAのODR抑制効果が解消することを見いだした。従って、ABAはHemeシグナルを抑制することによりODRを抑制していることが示唆される。ABAとHemeの関係性については、シロイヌナズナにおいて、Heme結合性をもつTSPOタンパク質がABAにより誘導されることで、フリーのHemeによる細胞障害を抑制する機構が提唱されている。そこでシゾンゲノムを検索したところ、シゾンにもTSPOタンパク質が存在することが判った。さらに、この遺伝子がABAで発現誘導されることが判明したことから、TSPOによるHemeシグナルの吸着が、ABAによるODR抑制効果の分子機構であることが考えられた。ABAによるTSPO遺伝子の発現誘導機構について、現在解析中である。
著者
金山 浩司
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

1940年代日本における技術論--技術とはどういう性格をもつものかという論点をめぐる--論争を、従来は知られていなかった当時の論者の論考を渉猟・精読しつつ、再構成する作業を行った。1930年代に日本の技術論論争はマルクス主義に傾倒していた論者たちの間でマルクス主義の概念装置を用いて行われており、戦後もこの傾向が引き継がれていたが、言論弾圧が苛烈化した1930年代後半から終戦までの時期の技術論論争史はよく調べられてこなかった。代表的論者の一人である相川春喜に着目することで、かつてマルクス主義に傾倒し「転向」した知識人の一部が、戦時下の日本でもてはやされた反機械論、全体論の観点--これはマルクス主義の基本的観点と相反するものではない--を技術論の中に持ち込むことで、従来の論争を換骨奪胎しつつ、また当時の状況下で要請されるような理論的装置を用いつつ、高度な言論活動を維持しようとしていたことが明らかになった。また、当時の相川の議論は高名な物理学者である武谷三男との討論を通じて一面においては鍛えられたものでもあり、これを精読することは戦後の武谷の技術論を再検討するうえでも役立つものである。こうした成果は2月、東京工業大学において開かれたセミナーの席上で口頭発表され、現在学会報告・論文化の準備を進めている。また、ソ連と日本との科学哲学分野における知的交流についても若干の調査を行った。日本の物理学者坂田昌一が、最晩年(1960年代末)にソ連の科学哲学者オメリャノフスキーの慫憩に応じて素粒子論の哲学的問題に関する論考を執筆していたことが明らかになった。ロシア語で発表された同論考を訳とともに日本人読者に紹介する準備を進めている。ソ連における物理学をめぐる哲学論争についてロシア史研究会年会において発表し、この内容を英語の論考にまとめ科学史の学術雑誌に投稿した。現在、査読結果に応じた修正を行ってしいる。
著者
LAGA HAMID
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は非剛体形状の理論と時系列的に変化をする表面(Time-varying surface)の3次元モデルの再構築手法に注目する。自然物は複雑な形態を持っている上複雑な変形を受けるからリアルタイム三次元再構成が混乱である。平成21年度には3次元形状データ取得システムを開発し、スキャンデータから3次元モデルの検索手法と非剛体スキャンデータ間のレシズトレーションフレームワークも開発しました。このフレームワークは三次元データ検索に基づいて高レベル知識を再構成プロセスに取り込む。その結果は、カメラの数を最小限度にすることが出来、静止することが出来ない物も3次元取得ことが出来るようになった。平成21年度にも三次元形状データベースと検索ツールを開発しました。あと、次の研究ステップに使用するためにステレオと陰影からの形状の復元と構造化照明に基づいた三次元再構成システムを開発しました。
著者
大隅 良典 鎌田 芳彰 中戸川 仁 中戸川 仁 鈴木 邦律
出版者
東京工業大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2007

オートファゴソーム形成の基部をなすPASでは、飢餓条件下にAtg17, Atg29, Atg31からなる安定な3者複合体にAtg1, Atg13が結合した5者複合体が形成され、次いで他のAtgの機構単位が階層的に集合する。In vitro再構成系を用いて、ユビキチン様結合反応系の産物である、Atg8-PE, Atg12-Atg5の理解が進んだ。選択的オートファジーによるミトコンドリア分解に関わるミトコンドリアが膜因子Atg32を同定し,その機能を明らかにした。Atgタンパク質群の立体構造を多数明らかにした。
著者
布村 成具 山中 昇 下条 雅幸 熊井 真次 肥後 矢吉 福井 泰好
出版者
東京工業大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

KISCC(応力腐食割れ臨界応力拡大係数)は厳しい環境下での構造物の機械的機能を保証する指標とし重要な値である。その物理的意味は確立しているが、統計的バラツキと時間に依存する因子を含むため、この値を高精度に求めるためには過大な設備労力と時間が必要とされるのが現状である。KISCCを高効率にに求める方法を開発して、十分な量のKISCC試験の実行可能にして厳しい境下で用いられる構造物や機械要素の安全を確保することをこの研究の目的とした。本機の試作の成果を検証するためには長時間計測が必要であり、循環系及び計測系をを整備し、長時間安定に関する各種の検討実験を行った。無人計測系の整備は市販ソフト及び研究室開発ソフトによて行っているが、一長一短があり、目的とした市販パソコン程度の機器による信頼性の高い汎用手法の確立がまだなされていない。極微電圧の計測に用いるアナログ回路のノイズの統計的な除去に別のアルゴリズムの適用が必要と思われる。これらの検討はすでに準備された機器、ソフトを駆使して解決出来るものと考える。高力アルミニウム合金の3%NaCl溶液中でKISCC試験を続行され、貴方のデータの確認を行った。破面からのき裂伝播による情報と計測速度を関連づけるべく数百の破面SEM写真の画像解析を行った。この関連は現在のところあまり明瞭でなく、より高度(トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡)の観察に基づく必要があると結論づけられた。き裂伝播速度を測定しない超集積8試片の試験の可能な装置の設計を行った。分担研究者山中はアルミニウム基シラス傾斜機能複合材料の食塩水中でKISCC試験を行こない、プラトウ域のき裂伝播速度とシラス傾斜配分の関連を検討し、地域の要望の高いこの材料の実用化を図った。付加電位によるき裂先端挙動を解析し加速試験の可能性の検討及び腐食環境中のアコーステックエミッション法によるき裂検出精度の改善は、有意な結果は得られなかった。予定した3000時間試験は装置の安定性より行えなかった。研究場所を代表者の新職場に移し、これを完成させる。
著者
藤井 晴行 古川 聖 諏訪 正樹
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

デザイン知の形成と適用のプロセスを創造的認知プロセスとして解明すること,デザイン研究の方法論を構築することを目的とし,デザインの内部観測と外部観測の融合によって,従来の科学では捉えられないデザイン知を浮き彫りすることを試みた.デザイン主体の会話記録やインタビュー記録を資料とし,概念空間の遷移を創造的認知プロセスの現れとして分析した.概念空間を提示して創造的認知のメタ認知を促進し,概念空間の遷移に現れる影響を考察した.避難行動を生存のためのデザインとみなし,避難行動の証言の構成的構造を抽出した.概念空間を表現する手法の構築,「一人称」的デザイン研究の方法論を構築した.
著者
中村 良子
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

宇宙を飛び交っている10^<15.5>eV以下の粒子(宇宙線)は、銀河系内の超新星残骸(SNR)で加速されていると信じられている。しかし、現在見つかっている~TeVまでの加速が行われているSNRは、系内のSNR 270個のうち10個程度しかなく、そのほとんどが爆発からん1000年経った若いSNRとなっている。従って、宇宙線加速とSNRの環境との関係、宇宙線加速の進化、そして宇宙線の主成分である陽子加速については未だ解明されていない。そこで私は加速源の環境と加速の進化を解明するために、(i)爆発から数万年経ったSNRから、電子加速の証拠となるシンクロトロンX線を発見すること、(ii)系内SNRのうちシンクロトロンX線が受かっているサンプルを集め、光度の時間変化を追うことの2点に着目して研究を行った。(i)については、古いSNR W28と、CTBS7Bという2つのSNRがら初めてシンクロトロンX線を発見した。次に、(ii)に述べたサンプルにW28とCTB37Bのデータを加え、光度の時間変化を見た。その結果、年齢の若いSNRはシンクロトロンX線の光度が10^<34>erg/secと明るく、古くなるにつれて光度がさがる傾向が見られた。この傾向を説明するために、我々はSNRの進化に基づいて衝撃波の速度、磁場、電子の最高エネルギーを計算し、シンクロトロンX線の半径に対する光度を求める簡単なモデルを構築した。その結果、プラズマの密度が0.01-1cm^<-3>の時に観測データを良く再現でき、密度が低い環境下にあるSNRほど高いエネルギーまで電子が加速され、加速のタイムスケールも長くなること発見した。同様のモデルを宇宙線の主成分である陽子加速にも適用した。その結果、陽子はSNRの進化の早い時期に一気に~1015eVまで加速されること、また最高到達エネルギーの密度依存性が小さいことがわかった。このように電子加速、陽子加速の進化を追った研究は世界で初めてであり、モデルを構築することによって宇宙線加速と環境の関わりを示唆できたことは、宇宙線加速解明への重要な成果であると言える。
著者
石井 大輔
出版者
東京工業大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

連続変化と離散変化の振る舞いをするハイブリッドシステムに対する,安全性や安定性といった性質の検証を,区間制約プログラミングと演繹的推論を用いて実施するための技術を開発した.本研究は,制約概念を軸に,高信頼な数値計算と,数式処理や時相論理式検証などの記号計算とを統合した点を特色とする.非線形算術制約を高速に求解する並列区間制約ソルバーを構築するとともに,本ソルバーを利用したハイブリッドシステムの検証器を構築,既存ツールでは検証が難しかった複数の事例について,提案ツールにより検証可能であることを示した.
著者
梅谷 陽二 広瀬 茂男
出版者
東京工業大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1985

本研究は、顕微鏡下において、プレパラート上に置かれた真核をもつ生物細胞を操作対象とし、この細胞を微小操作器で切断,切除,開口などの手術を行ない、さらに細胞内の核を吸出して他の断片を注入するなどの操作を、非熟練者でも自由に行なえるようなマイクロマニピュレータ(微小操作器を含む)を開発することを目的としている。咋年度にひき続き、本年度は3自由度のバイモルフ型微小操作器の性能向上を目的として試作を重ねた。この微小操作器はピエゾ素子(セラミック素材)をバイモルフ形に構成しており、微小並進運動を実行させるとき、極めて感度の高い位置制御が可能となり、最終試作器では容易に1/10ミクロンメータの感度を実現させることができた。微小操作器の先端には、通常ガラス製の針やピペットが取り付けられ、これを介してプレパラート上の細胞と接触している。そこで、この微小操作器システムをサーボ化するに必須とされる接触反力信号検出を行なうため、咋年度に確認した自律振動形に微小歪ゲージ機構を適用した方式を採用し、針先端での印加力の検出感度を【10^(-3)】dyne域にまで高めるべく解析と設計試作を繰り返したが、実際の操作條件では、針やピペットが液浸状態となるため、目標よりも2桁低い感度にならざるを得ないことが分った。画像処理系による自動位置決め系は予定通りの機能をもつことが分った。しかし画像処理系とマイクロマニピュレータ系との連けいについては問題がある。つまり顕微鏡の視野は非常に狭いから、マニピュレータの一連の作業動作の大半は視野外となるため、この画像処理系が有効に働くのは実際に細胞操作を行なっている期間に限られている。このため、シーケンス制御回路によって駆動するように設計した。総合試験の結果、おおむね予期された充分な性能を有することが検証された。