著者
増田 一男 宮岡 礼子 小島 定吉 岡 睦雄 森田 茂之 丹野 修吉
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

多様体の葉層構造の葉の法方向に関しては色々な不変量が定義されて多くの研究があるが、葉の接方向に関する研究は余り多くない。接方向にアファイン構造を持つ場合には各葉がアファイン多様体になり、その上のアフィン関数が考えられるが、最も基本的なトーラスの場合、アフィン関数はコンパクト葉の上の値で完全に決定され、関数空間の次元がホロノミーによって決まる状況がほぼ完全に解明された。シンプレクティク多様体のラグランジ部分多様体による葉層構造の各葉は接方向にアフィンであり、任意のアフィン多様体はこのようにして実現される。又、コンタクト多様体のルジャンドル部分多様体による葉層構造の各葉は接方向に射影構造を持ち、任意の射影多様体はこのようにして実現される。これらのことが同次座標を使うことにより平行して見通しよく示された。コンタクト多様体の典型的な例であるリーマン多様体の単位接束はCR構造を持つがこれのある(1,3)型のゲージ不変量が消えるための必要十分条件は、リーマン多様体が定曲率-1であることが示された。葉層構造の不変量として最初に発見されたGodbillon-Vey不変量は位相不変が、又G-Vが0なら葉層構造が0に同境かという2大問題はC^<1+α>、P.L.葉層にまでGVを拡張し、かなり研究が進展した。一次元葉層構造と考えられる力学系に関しては、平面の位相同型写像が力学系(=流れ)にうめ込めるかという問題が、写像の非ハウスドルフ集合と関連して研究された。又3次元多様体上の法方向にアフィンである流れで完備であるものについて古典的なり一群を用いて多くの例を構成し、ほぼ分類が完成された。
著者
吉川 邦夫
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、水蒸気加熱処理を用いて、微細藻類から効果的に油分を抽出するだけでなく、副生成物も有効に利用することにある。水蒸気加熱処理技術を微細藻類からの油分抽出に利用することによって、単に高い発熱量を有するバイオオイルが抽出できるだけでなく、固体肥料と微細藻類の培養液も製造することができる。バイオオイルから製造された脂肪酸メチルエステルは、適切に改質することによって、バイオディーゼルとして利用することが可能である。水溶性残渣は、微細藻類の培養液として有効に機能し、固体残渣も植物の成長促進に効果的であることも示された。
著者
寺田 暁彦 石崎 泰男 吉本 充宏 上木 賢太
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

土壌気体水銀(GEM)放出率測定方法を構築して,箱根火山大涌谷噴気地において観測試験を行い,有効性を確認した.この結果に基づき,草津白根火山においてGEM観測を2017年に行った.その結果,将来噴火口になり得る破砕帯に相当すると思われる,高GEM放出域を白根火砕丘の南および南西斜面に見出した.また,地質調査に基づき,白根火砕丘南側から本白根山にかけて,過去に爆発的噴火が繰り返し発生してきたことが判明した.既存の物理観測網は湯釜火口湖を取り囲むように配置されている.現状よりも南側領域における観測点の整備が,今後の草津白根火山の監視上の課題である.
著者
大上 雅史 Ohue Masahito
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
2014

Protein–protein interactions (PPIs) are fundamental in the majority of cellular processes and their study is of enormous biotechnological and therapeutic interest. The computational prediction for elucidation of PPI networks is crucial in biological fields. However, the development of an effective method to conduct exhaustive PPI screening represents a computational challenge.In this dissertation, we proposed a novel PPI network prediction system called MEGADOCK based on protein–protein docking calculation with protein tertiary structure information. MEGADOCK reduced the calculation time required for docking by using new score functions, rPSC and RDE, and was implemented on recent parallel high-performance computing environments by employing a hybrid parallelization with MPI and OpenMP and general-purpose graphics processing unit technique.We showed that MEGADOCK is capable of exhaustive PPI screening and completed docking calculations 9.8 times faster than the conventional method (Mintseris, et al. 2007) while maintaining an acceptable level of accuracy. When MEGADOCK was applied to a subset of a general benchmark dataset to predict 120 relevant interacting pairs from 14,400 protein combinations, an F-measure value of 0.231 was obtained. Moreover, the system was scalable as shown by measurements carried out on two supercomputing environments, TSUBAME 2.0 and K computer.It is now feasible to search and analyze PPIs while taking into account three-dimensional structures at the interactome scale. We demonstrated the applications to pathway analyses, bacterial chemotaxis, human apoptosis, and RNA binding proteins by using our system. As an example of the results, when analyzing the positive predictions of bacterial chemotaxis pathway from MEGADOCK, all the core signaling interactions were correctly predicted with the exception of interactions activated by protein phosphorylation.Large-scale PPI prediction using tertiary structures is an effective approach that has a wide range of potential applications. This method is especially useful for identifying novel PPIs of new pathways that control cellular behavior.
著者
井手 智仁
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は,昨年度合成した第1世代大環状化合物をテンプレートとして用いた,より大きな環サイズを有する第2世代大環状化合物の合成を行った.第1世代大環状化合物は,6個のベンジルアルコール側鎖を有しており,これが第2世代大環状化合物の骨格ユニットを取り付ける足場となる.この側鎖をメシル化した後,第2世代の骨格ユニットである,2,6位にフェニレンエチニレン2量体側鎖を有するフェノールを,Williamsonエーテル合成によって導入した.この2段階の反応によって,36%の収率で第2世代大環状化合物の前駆体を得ることに成功した.この前駆体の閉環は,擬希釈条件下において,大過剰量の銅塩を用いたGlaserカップリングにより行った.その結果,収率14%で第2世代大環状化合物を得ることに成功し,新規精密合成法を立証できた.得られた第2世代大環状化合物は,テンプレート部分も含めて分子量11636に達する,単一構造を有する巨大な化合物である.また,2重の環構造と,第1世代大環状化合物合成に用いたヘキサフェニルベンゼンテンプレートをコアに有しており,複数のπ共役系がアルキル鎖・エーテル鎖で隔離された,特徴的な構造を有している.このため,それぞれのπ共役系間でのエネルギーや電荷の移動が期待される.そこで,コアの最大吸収波長を励起波長として蛍光スペクトル測定を行ったところ,コアのテンプレート・第1世代の環骨格からの蛍光は微弱に観察されるのみであり,最も外側の第2世代の環骨格の蛍光が主として観察された.これは,π共役系間における蛍光エネルギー移動が起きていることを示唆する結果である.以上のように,大環状化合物をテンプレートとしてさらに大きな大環状化合物を得るという,新規精密合成法を実証することができ,また,合成した2重大環状化合物において,コアから外周部への放射状の蛍光エネルギー移動を見出すことができた.
著者
田中 幹子 黒川 大輔 村上 安則
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、古代魚の鰭が四肢へと進化したプロセスを解明することを目的として研究を行った。その結果、鰭から四肢への過程において、前側領域と後側領域のバランスが大きくシフトして「後側化」すること、この過程には前後軸パターンを制御する Gli3 の発現制御領域の機能の変化が関連することを明らかにした。さらに、サメの鰭を人為的に「後側化」すると、鰭の3本の基骨が 1本になることを実証した。神経パターンについては、神経ガイダンス因子のSema3A の発現様式の変化が四肢神経の多様性を生み出すことが示された。筋肉パターンについては、従来報告されていた形式とは異なる形式で、鰭の筋肉が進化したことが示された。