著者
二木 昭人 服部 俊昭 辻 元 石井 志保子 黒川 信重 丹野 修吉
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

二木は、ケーラー・アインシュタイン計量の存在、Mumfordの意味での代数多様体の安定性および二木指標の非自明性との関連について研究した。丹野は、E^<m+1>の中の完備、向きづけ可能で、安定な極小超曲面上では、0≦p≦mについてL^2調和形式は0に限るのではないかという予想について、m≦4では正しいことを証明した。黒川は著書『数論1』を著した。石井は、任意の非退化超曲面特異点の標準モデル、極小モデル、対数的標準モデルを構成した。またコンパクトトーリック多様体の因子の極小モデルを構成した。また16年前に出された標準特異点に関するリ-ドの予想の反例を構成した。辻は、特異計量を用いて標準環の構造を解析した。特に一般型の代数多様体のモジュライ空間の構成を考察した。服部はリーマン面の射影構造が導くホロノミー群が離散群になる場合を考察し、それが安定な場合には擬Fuchs群しか現れないことを示した。
著者
吉田 朋好 辻 元 志賀 啓成 二木 昭人 小島 定吉 北野 晃朗
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

向きづけられた3次元閉多様体のWitten不変量を共形場理論のコンフォーマル・ブロックに属する真空ベクトルの内積により定義することができた。この定義の仕方はハンドル体に分解された3次元多様体のWitten不変量の計算のアルゴリズムを与え、そのガウス和としての表示が得られる。この表示は従来の量子群の3次元多様体のリンク表示から得られるWitten不変量のガウス和表示のフーリエ変換にあたるものであることを見出した。これは上記の方法によるWitten不変量の定義が単なる定義の変更ではなく、本質的に異なる知見をもたらすものであることを意味している。実際Witten不変量の古典極限に関する情報が、この表示によりもたらされる。
著者
森田 茂之 二木 昭人 藤原 大輔 藤田 隆夫 岡 睦雄 丹野 修吉
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

研究代表者、各研究分担者のそれぞれの分野における、当研究課題に関連する研究計画にもとづいて、研究を進めた。その結果、当初の目標を完全に遂行し、更にこれからの発展に関する展望を込めた、大きな成果をあげることができた。以下に3の概要を簡単に記述する。研究代表者(森田)は、ここ数年来研究している、向きづけ可能閉曲面をファイバ-とするファイバ-バンドル(曲面バンドル)の特性類の理論を更に発展させ、主要な応用として、リ-マン面のモジュライ空間のトポロジ-に関するいくつかの結果と、曲面の写像類群の構造と3次元多様体の不変量との深い関連を示す定理とを得た。特に写像類群の重要な部分群であるTorelli群と、ホモロジ-3球面のCasson不変量と関連を与える決定的結果を得た。次に、各研究分担者の成果のうちおもなものを列記する。丹野は三角関数の積を変数の巾ぐ割った形の関数の無限巳間での積分に関して新しい公式を求めた。またCR構造、接触構造についても、微分幾何的研究を発展させた。岡は非退化完全交差系に関する一連の研究を推し進め、自然な滑層分割の存在、生ゼ-タ関数を与える公式等を得た。藤田は弱異点のあるDel Pezzo多様体の分類をほぼ完成した。また一般ファイバ-がDel Pezzo多様体であるような偏極多様体の一次元変形栓に出現し得る特異ファイバ-の型を分類した。藤原はFeynmanの経路積分をソボレフ空間上の広義積分として収束を証明した。道具として停留位相法における誤差の大きさを、空間次元に無関係に評価出来るという新しい結果が使われる。また二木はKa^^¨hlerーEinstein計量の存在に関する二木不変量のeta不変量による解釈を与えた。
著者
稲上 誠
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、枯山水庭園の魅力を科学的に解明するため、全体的な空間構成と鑑賞者の印象評価との関係を調べた。始めに、京都にある18の庭園を対象として、3Dレーザースキャナーによる実測調査を行った。続いて、バーチャルリアリティ装置を用いて、それらの庭園の評価実験を行った。その結果、周囲の環境による包囲が、鑑賞者が感じる印象を向上させることが明らかになった。この結果は、庭自体のデザインだけでなく、庭園全体のデザインも、その空間の魅力に寄与していることを示唆している。
著者
松岡 聡 實本 英之 遠藤 敏夫 佐藤 仁 丸山 直也 滝澤 真一朗 佐藤 賢斗 Leonardo Bautista Gomez Jens Domke
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2011-04-01

エクサ(10の18乗)フロップス・10億並列のエクサスケール・スーパーコンピュータ実現には、規模の増大による故障率の増加に対応する必要がある。このための耐故障性基盤を確立することを目的として耐故障にかかわる複数の要素を対象とした複合的数理モデルの提案とそれを用いた軽量かつ高度な耐故障化手法を提案・評価した。また、開発したシステムの一部についてはオープンソースでの公開を行っている。
著者
坂東 桂介
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本研究では、企業と労働者の雇用関係を「外部性のあるマッチング理論」の枠組みで考察している。外部性とは、各企業の利潤が、ライバル企業が雇っている労働者にも依存する事を意味する。例えば、プロスポーツのチームと選手の市場を考えれば、チームは選手を雇ったうえで、さらにライバルチームと競合する構造になっている。従って、各チームの利潤はライバルチームがどの選手を雇っているのかに依存していると考える方が自然である。本研究では外部性のあるマッチング問題において、企業と労働者間の望ましいマッチング方法について考察している。特に、安定マッチングという「どの企業と労働者のペアも現在の契約を解消し新たに契約を結ぶインセンティブがないマッチング」に着目して研究を行っている。今年度の研究では、外部性のあるマッチング問題において「安定マッチングをみつける効率的なアルゴリズムの設計」(以下、研究(1))、および「安定マッチングの形成プロセスについての考察」(以下、研究(2))を行った。研究(1)については、「安定マッチングの存在条件を満たすような環境では、安定マッチングの集合の中で全ての労働者にとって最も好ましい安定マッチングが存在し、それは拡張不動点アルゴリズムによって計算量の意味で効率的に見つける事が出来る」という結果を得た。研究(2)では「ライバル企業が追加的に労働者を雇った際に自社の利潤が増加するという正の外部性があるときは、分権的な労働市場において安定マッチングは必ずしも達成されるとは限らない。」という結果を得た。
著者
中野 隆 相沢 慎一 桃園 聡 平野 元久
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究では,べん毛モーターの構造について研究している協同研究者の一人(相沢)の協力により、彼が構造解析によって明らかにしたべん毛モーターの部品の構造を用い,具体的にべん毛モーターの実際の構造に近いモデルを作り上げ、流体古典的な潤滑理論の手法を用いてべん毛モータの軸受けが潤滑可能であるかを調べた.べん毛の運動を推進力に変換する機構を流体力学的に研究するべん毛のスケールを考えると通常の流体力学的計算のみでは不十分で分子の大きさの効果やブラウン運動の影響も考えた運動解析が必要である.今年度は流体力学的計算は研究分担者の二人が(中野,桃園)が担当し、まず古典的な数値解を得た.その結果古典的な理論からは潤滑が困難であるとい結果を得た.べん毛モータの場合にはマクロな系では問題にならなかった分子間力の効果も重要になるが、この効果はさらに潤滑状況を悪化させることもわかった.従ってなんらかの非古典的潤滑機構の存在が示唆された.このような潤滑機構として考察した機構には電荷の離散性の効果,拡散電気2重層の効果,超潤滑の効果などがある.来年度においてここに述べた効果の定量的評価をおこなう.またべん毛モーターの軸受け部分の摩擦に関する理論的な解析を目的としてべん毛モータの表面粗さを特徴づける量を由出するためウェーブレットを用いた.今年度はウェーブレットをべん毛の表面粗さ解析に用いるための数学的枠組みを構成した.流体古典的な潤滑理論の手法を用いてべん毛モータの軸受けが潤滑可能であるかを調べた去年の結果から、べん毛のスケールを考えると通常の流体力学的計算のみでは不十分で分子の大きさの効果やブラウン運動の影響も考えた運動解析が必要であることがわかったので,今年度は拡散電気二重層の効果を取り入れ、この効果によってどの程度の潤滑性能を達成することができるか似ついて研究分担者の二人が(中野,桃園)が担当し、まず古典的な数値解を得た.その結果拡散電気二重層によって分子間力を相殺するために十分な反発力を得ることができるという結果を得た.この他の非古典的潤滑機構の存在として考察した機構には電荷の離散性の効果がある.電荷の離散性の効果も定量的評価をおこなった.バクテリア内部で妥当と思われるイオン濃度において,この離散性の効果もまた、分子間力と拮抗する反発力を得ることができることが分かった.またべん毛モーターの軸受け部分の摩擦に関する理論的な解析を目的としてべん毛モータの表面粗さを特徴づける量を抽出するためウェーブレットを用いた昨年度構成したウェーブレットをべん毛の表面粗さ解析に用いるための数学的枠組みを用い分子の大きさと同じ程度の領域における粗さと形状の分離を試みた.
著者
齊藤 正樹 井頭 政之 鈴木 正昭 関本 博 赤塚 洋 飯尾 俊二
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

使用済み燃料中に存在するプルトニウム以外の超ウラン元素は、現在、高レベル放射性廃棄物として長期間管理が求められているが、大きな中性子捕獲断面積を持つため、原子炉内に初期に装荷することにより、初期の余剰反応度を抑えつつ、中性子によって核変換し、新しい核分裂製物質に変換され、長期間原子炉内は核分裂を維持することが可能となる。本研究では、これらの超ウラン元素を適切に原子炉内に再装荷することにより、長期間新燃料補給の必要のない超長寿命原子炉(軽水炉・重水炉・高速炉)の成立性に関する研究を実施した。その結果、^<237>Npを軽水炉及び重水炉に装荷した場合、燃焼度150-200GWd/tを持つ長寿命炉心が成立すること、また、6種類の冷却材(軽水、重水、Heガス、CO_2ガス、ナトリウム、水蒸気)を選択し、長寿命特性及び炉心の安全特性に及ぼす中性子スペクトルの影響について系統的に検討を行った結果、黒鉛減速Heガス冷却の場合がその特性を良く発揮することがわかった。また、^<237>Npと同様な中性子工学的性質を有する^<241>Am等を軽水炉に装荷した場合、約100GWd/tの高燃焼度が達成できることを確認した。また、いずれの場合も使用済燃料中に^<238>Puが多く生成されるため、核拡散に対して高い抵抗性を持つPuが生成されていることがわかった。また、核燃料交換や反応度制御が一切不要となる可能性のある原子炉燃焼概念(核反応敵に活性な領域が自立的に移行する燃焼方式)について検討し、約400GWd/tの高燃焼度を持つ高速炉炉心の可能性を確認した。また、関連する解析コードの改良や核反応データベースの整備を行った。
著者
丸山 茂徳 圦本 尚義 中嶋 悟 礒崎 行雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

本研究を要約すると以下のようになる。(1)一連の記載研究と精密分析(論文数;丸山32、磯崎9、中嶋8、圦本8)。(2)総合化(丸山:Dynamics of plumes and superplumes through time,in Superplumes;Beyond Plate Tectonics,Springer,441-502,2007、磯崎:Plume Winter Scenario for Biosphere Catastrophe,ibid,409-439,Springer)。(3)P/T境界の精密解析(磯崎:掘削試料;6)と化石(太古代1、原生代末1、古生代末5)の記載。(4)35.6億年前(世界最古生命化石)のSIMSスポット分析(δ^<13>C)と化石の認定基準(圦本、発表準備中)。(5)化石認定の新しい指標の開発と応用(中嶋;1、実験結果と認定の新基準(古細菌か真性細菌か)の提案図については投稿準備中)。以上の成果は、これまでの地球史標準モデルを更に精密化し、誕生後徐々に冷却してきた地球システムが起こす物理的必燃として説明しうるが、新たな原因として、銀河内部で起きた3回のスターバーストとの緊密な関係が浮かび上がってきた。これらは日本のみならず世界最前線の研究を更にリードするものである。これらは、地球惑星科学の中の諸分野へ大きな影響を与えるが、地球惑星科学以外の分野である天文学、ゲノム生物学、分子生物学、生命進化学、更に気象学にも大きな影響を与えるだろう。
著者
額田 彰
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010

NVIDIA社製のCUDA対応GPU向けの自動チューニングFFTライブラリであるNukadaFFTライブラリを開発した.その性能は多くの場合にNVIDIA社のCUFFTライブラリを上回る.また複数GPU版についても複数GPUを搭載するシングルノードと複数ノード版を実装し,さらなる速度向上を達成した.
著者
青木 一勝
出版者
東京工業大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

三波川変成帯最高変成度岩石の昇温および後退変成作用の温度-圧力-時間(P-T-time)条件を明らかにするため、三波川変成帯の模式地である四国中央部汗見川地域の最高変成度地域に産するザクロ石と石英が主要構成鉱物であるガーネタイトの岩石学的および熱力学的研究を行った。その結果、この岩石の最高変成P-T条件は、P=15-19kb,T=500-520℃であり、エクロジャイト相変成作用を被ったことを明らかにした。さらに、この地域に産する変成岩中に現在観察される鉱物組み合わせは、変成帯上昇時においてP=7-11kb,T=460-510℃(緑簾石角閃岩相)の条件で加水後退再結晶作用を被ったことにより生成したことも明らかにした。更に、Nano-SIMS(東大、佐野研設置)を用いてジルコンU-Pb年代分析を行った結果、その加水後退再結晶作用が85.6±3.0Maに起きたことが分かった。以上のことから、汗見川地域に産する最高変成度岩石は、エクロジャイト相の変成作用を被った後、上昇過程で85.6±3.0Maに緑簾石角閃岩相の条件で加水後退再結晶作用を被ったことが示された。以上の結果とこれまでに明らかにしてきた結果を組み合わせ,三波川変成帯の変成・形成プロセスを考えると、三波川変成岩の原岩は、沈み込み後、累進変成作用が進み、120-110Maに変成ピークを向え、最高変成度部では、エクロジャイト相に達した。その後、造山帯の走向と直交した南方向に、薄いスラブ状に上昇を開始し、66-61Ma頃に地殻中部(15-17km深度)で下位の四万十変成岩の上位に定置し、貫入を停止した。上昇中に昇温変成作用が進行している四万十変成岩から大量の流体が三波川変成岩を通過することにより、加水後退再結晶が進行し、三波川変成岩の多くは再結晶化して、累進的な構造、鉱物、年代の記録を失った。その後、地殻の隆起が起こり、50Ma頃に表層に露出し、現在に至ったと考えられる。
著者
澤田 敏樹
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

繊維状ウイルスからなる機能性ハイドロゲル構築を目的とし、繊維状ウイルスの一種であるM13バクテリオファージ(ファージ)の末端と金ナノ粒子が特異的に相互作用するよう分子設計して用いた。適切な濃度比で混合すると、両者は自己組織的にハイドロゲル化した。その際、ファージは三次元的に配向しながら集合化して液晶化し、また金ナノ粒子はフラクタル様のネットワーク構造を構築し、構成要素それぞれの構造が制御されたゲルとなることがわかった。両者の間の特異的な相互作用を制御したゲルを調製することで、ゲルの機械的強度が分子間相互作用に支配されることもわかった。また、自己修復能や大腸菌応答性を示すことも見出した。