著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究において、数百ナノメートルの真空隙間を隔て向い合せたナノサイズピラーアレイ構造表面間のふく射エネルギー輸送がピラー高さにより波長選択的に黒体表面間ふく射輸送をおよそ100倍程度上回ることが明らかにされた。さらにナノサイズのフィッシュネット状電極と薄膜半導体を組合わせた波長選択光電池を製作し、これにピラー構造放射体を向い合せた波長選択近接場光発電システムの足掛かりを構築した。
著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、薄膜状の光起電力半導体を裏面側の基板電極と光入射側のナノグリッド電極により挟み込み、ナノピラーアレイ構造を有する加熱面と数百nmの真空隙間を隔てて向い合せ、ピラー側面とグリッド電極側面に生ずる表面プラズモンとそれらの高さとのファブリペロー干渉により、発電に寄与する波長範囲のみを選択的に増強および吸収することによって高効率かつ高密度な近接場光起電力発電を構築することを目的とし、数値計算により期待される選択波長近接場ふく射輸送の増強機構を明らかにするとともに、ナノグリッド電極・薄膜半導体・基板電極の3層構造光起電力電池を製作し、そのシャープな波長選択性や発電密度の高度化を試みる。
著者
花村 克悟
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究で考案されたヘリウムガス衝突噴流式冷却システム内蔵型発電装置を用いて、ボタン型燃料電池を800℃で発電中に、酸素同位体を導入後、300℃まで1秒以内に冷却し、2次電子イオン質量分析により、同位体酸素濃度分布マッピングを取得した。その結果、ScSZ粒子(酸素イオン伝導体)とLSM粒子(電子伝導体)の混合酸素極において、YSZ電解質との界面から数ミクロンの領域において、ScSZ粒子から電解質へ同位体酸素が拡散すること、さらにLSM粒子内部にも同位体酸素が多く拡散し、この狭い領域においてのみ電荷移動電流が高く、酸素極過電圧の要因となっていることが、初めて実電極により明らかとなった。
著者
菅原 聡
出版者
東京工業大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究では新型PETによって,0.2V程度の超低電圧駆動で劇的な低消費電力化と,現状CMOS技術と同等以上の高速性能を有するロジックシステムの基盤技術を創出する.具体的には,電力遅延積が現状より2桁小さいロジックシステムの実現を目指す.ここで提案する技術群はCMOS構成のロジックシステム技術を踏襲し,現行のアーキテクチャを継承して,究極の省エネ化を可能とする新たなロジックシステムを構築することができる.本技術はPET以外の同等のBeyond-CMOSにも応用が可能である.
著者
永田 和宏 後藤 和弘 須佐 匡裕 丸山 俊夫 永田 和宏
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1988

高温材料の耐酸化性の向上はAl_2O_3、SiO_2またはCr_2O_3などの酸化物皮膜を表面に形成することにより達成される。まず、高温材料表面に生成するSio_2膜の形成に関してそのモデルとしてSiの高温酸化を行い、酸化速度と生成するSiO_2の性質について研究した。また、薄い膜の熱伝導率を測定する新しい手法を開発した。(1)Siの熱酸化機構に関する研究:Siの熱酸化速度からSiO_2中の酸素の拡散係数を求めた。さらに、酸化速度の酸素分圧依存性はSiO_2中の酸素の溶解度の変化によることを明らかにした。また、臭素ガスの酸化速度に及ぼす効果を明らかにした。(2)薄膜材料の熱伝導率測定法の開発:昭和63年度で開発したスポット加熱法を改良したパルススポット加熱法を完成した。この方法はレ-ザ-ビ-ムを試料表面にパルス状に照射し、表面の温度変化を測定する方法である。これにより、25μm以上の膜厚のSiO_2の熱伝導率を測定できることを明らかにした。次に、金属材料の超高温使用を目的として高融点金属のモリブデン(Mo)の表面にパックセメンテ-ション法によりAlを拡散処理して、その耐酸化性の向上に関する研究を行った。(3)パックセメンテ-ション法によるMo表面のAlコ-ティング:Moに塩化アンモニウムを活性剤としてAlをパックセメンテ-ション法によりコ-ティングした。コ-ティング層は冷却時に導入された多数の亀裂を有するMo_3Al_8から成っている。Mo_3Al_8自身は高い耐酸化性を有しているが、高温酸化時にコ-ティング層中の亀裂が進展してMo基板にまで達する事により、耐酸化性が失われることを明らかにした。これは、小量のSiを予めコ-ティングした後、Alコ-ティングすることで解決できることを見いだした。さらに、コ-ティング層の生成過程を、新たに作成したMoーAlーSi系の状態図を用いて、解明した。さらに、薄膜中の陽イオン拡散のモデルとしてWO_3中のLiの拡散について調べた。また、超高温材料として有望な炭素材料のAlによる耐酸化性コ-ティングに関する基礎研究にも着手した。
著者
長井 嗣信 藤本 正樹 町田 忍 篠原 育
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.人工衛星Geotailによる観測をもとに、34の磁気リコネクションのイベントと174の南向き磁場をもつ反地球向きの高速プラズマ流について解析を行った。イベントの起きる数時間前からの太陽風の状態を調べることにより、太陽風の何が磁気リコネクションに関係しているかが明らかになった。もっとも重要な因子は、太陽風の電場(速度x南向き磁場)であり、磁気リコネクションは、この積分値が大きいほど、より地球に近い所(地球半径の20倍以内)で起こり、小さい時には、より遠方(地球半径の20倍以上)で起きることがわかった。太陽風の電場が強い時は、磁気圏対流が地球の近くで磁気圏赤道面方向に流れ、磁気リコネクションを引き起こすと考えられる。さらに、近い所で起きる場合は、遠方で起きる場合に比べて、電場の積分量、すなわち太陽風のエネルギーの流入量の積分値が大きくなることを示した。2.磁気リコネクションのトリガーについて、電流層の厚さがイオン慣性長程度の電流層の安定性について,電流層の厚さ,ガイド磁場の効果,初期温度異方性の効果を研究した。素早い磁気リコネクションのトリガーはほとんどの場合において電流層の厚さがイオン慣性長よりも薄い場合のみにしか発生しないことを示した。3.磁気リコネクションの標準モデルは、ジェットを駆動するエンジン部分(Xライン)をひとつだけ想定する。電子慣性を考慮した二流体方程式系を用いて「自然に」磁気リコネクションを駆動する状況を数値実験し、複数のXラインが共存する可能性が高いことを示した。4.磁気リコネクションが大規模に発展する時、背景にある低温電子と加速されたビーム電子との間で励起される電子二流体不安定性に伴う電子加熱・混合が、その領域で頻繁に観測されるフラットトップ型の電子の分布関数を形成し、さらに、電子二流体不安定性が非線形的に発達することによって静電孤立波(ESW)が生じることを見出した。
著者
田中 圭介 河内 亮周 安永 憲司 小柴 健史
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、インセンティブの設計を様々な暗号技術 (電子署名・相手認証・ブロックチェーン技術) に拡張することである。このため、研究課題を2つ設定し、各課題に対して研究期間を大きく3つに分けている。課題(A)の既存暗号技術に対するインセンティブ設計では、合理的証明にもとづいた委託計算で利用されている報酬の技術的な設定手法を電子署名や相手認証などへ応用し、さらにその手法をその他の技術へ適用可能な形へ一般化させる。課題(B)のブロックチェーンに対するインセンティブ設計では、ブロックチェーンに対して適切にインセンティブを設定する手法を考案し、そのインセンティブの設定を、課題(A)で発展させたインセンティブの技術的設定手法で実現する。課題(A)に対しては、今年度は2018年度までに行った第1フェーズ「インセンティブ設計技法に関する調査と研究」で得られた知見を活用し、第2フェーズ「インセンティブを用いた電子署名・相手認証のモデルと技術の設計」を行った。今年度は特に、これらの要素に密接に関わるSecure Message Transmission (SMT)と呼ばれる要素に着目し、複数ある通信路がすべての敵に支配されたとしても、合理的な敵を考える場合には、安全に通信を行うことができることを示した。課題(B)に対しては、今年度は2018年度までに行った第1フェーズ「ブロックチェーンに関する調査と研究」で得られた知見を活用し、第2フェーズ「インセンティブを用いたブロックチェーンのモデルと技術の設計」を行った。典型的なproof-of-workにおいてはハッシュ関数の特定の要件を満たす値を出力するような入力を見つけることが行われている。これはある種の計算問題を解くことに対応しており、この問題を別の計算問題に置き換えたときのインセンティブ設計についての可能性についてに考察を行った。
著者
玄田 英典 中村 智樹 兵頭 龍樹 黒川 宏之 臼井 寛裕
出版者
東京工業大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2020-10-27

火星衛星の起源と形成過程の解明を目指した日仏共同研究体制の構築と強化を行う。研究代表者と分担者が年に1回程度1ヶ月間渡仏し、パリ地球物理研究所とパリ天文台にて、それぞれ、火星衛星の起源に関する理論研究と、火星衛星のスペクトルに関する分析と観測を行う。また、宇宙望遠鏡(Twinkle)を用いたフォボスとデイモスの観測も行う予定である。
著者
東京工業大学広報委員会
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
vol.1995, no.(290), 1995-06-26
著者
東京工業大学広報委員会
出版者
東京工業大学
巻号頁・発行日
vol.1995, no.(289), 1995-05-26
著者
青木 尊之 吉田 正典 奥村 晴彦 矢部 孝 塙 雅典 野澤 恵
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

昨年度導入した20台のプレイステーション2 Linux kitで、並列の数値流体シミュレーションを行った。非圧縮性流体の場合、大量のネットワーク通信を伴うポアソン方程式の解法が最も大きな課題となる。並列化が容易なSOR法で2次中心差分法による離散化式と、局所補間微分オペレータ法による4次精度の離散化式を解いた。Linux kitに付属するGNUのコンパイラは、プレイステーション2のCPUであるEmotion Engine(EE)の高速化アーキテクチャを利用する最適化が行えず、インライン・アセンブラにより直接EEのベクトル・レジスタVU0を利用することにした。ベクトル・レジスタVU0を4並列で効率よく実行する必要があるが、メモリーからデータをロードするのに時間がかかり、その間はVU0が休んでしまう結果となった。これを回避するために、VU0の演算スケジュールを工夫し、データのロード・ストアを含めて450MFlopsの計算速度を達成した。プレイステーション2が高速のRAMBUSメモリーを用いているために、CPUキャッシュに入りきらないデータに対するアクセスに対しても余り速度が低下しないことが明らかになった。EEのもう一つの問題点として指摘されている「VU0が単精度演算しか行えないこと」を解決する必要がある。倍精度計算に対しては浮動小数点演算プロセッサが働かなくなり、計算速度は100分の一以下に低下してしまう。単精度計算で直接従属変数からポアソン方程式を計算すると桁落ちが生じてしまうので、残差から修正方程式を導出し修正量を求めて従属変数に加算・減算して修正する方法を開発した。修正方程式を解く際に桁落ちなどの誤差が入るが、反復ごとに修正値が小さな値に移行し、従属変数の精度範囲をまかなえることが明らかになった。非圧縮性流体の移流部分や圧縮性流体に対しては局所補間微分オペレータ法が少ないメモリーに対して高精度な計算を行うことができ、プレイステーション2に適していることが分かった。また、ルンゲクッタ時間積分を行うことにより安定な計算ができることが明らかになった。
著者
篠田 浩一 井上 中順 岩野 公司 宇都 有昭
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

音声に関する音声認識、音声合成、話者認識などの様々なタスクを担当するエージェントが互いに競争・協調・調整しながら個々のタスクを学習する、マルチエージェントによる深層学習基盤を構築する。個々のタスクに関わる音声因子の間の含有・排他・共有などの関係を用いて音声データを因子分解することにより、個々のタスクの性能を高める。マルチタスク学習に比べ、少量・非均一のデータでより高い性能を得ることを目標とする。
著者
清尾 康志
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

生体分子の多くはリンを含み、何故リンが生命の必須元素になったのかを理解することは生命起源を知る上で重要である。冥王代の地球ではリンはシュライバーサイト[Fe3P]として存在していた。Fe3Pは水と反応し様々な還元的リン化学種を生成する。また、リボヌクレオチドと反応し、2', 3'-AMPも生成する。本研究では、冥王代のFe3Pの役割をさらに解明するためにFe3PやFe3P由来リン化学種と様々な生体分子との反応を調べた。特に、アミノ酸、糖、グリセルアルデヒド等との反応生成物を解析し、これら生成物から複雑な生命分子や代謝反応が誕生した可能性を明らかにするための実験を行った。その結果、シュライバーサイトから生成するピロ亜リン酸(H4PO5)はpH9程度の弱アルカリ性の条件下、セリン、チロシン、トレオニンなどのアミノ酸の側鎖に存在する水酸基、リボース、グリセルアルデヒドなどの炭水化物の水酸基と反応し、対応する亜リン酸モノエステルを与えることを31P-NMRにより明らかにした。また、生成した亜リン酸エステルが酸化されてリン酸エステルに変換される可能性を検証するために、種々の酸化反応を検討したところ、ペルオキソ二硫酸カリウムなどの酸化剤やパラジウムなどの金属触媒の存在下、亜リン酸モノエステルからリン酸エステルが生成することを明らかにした。以上の結果より、冥王代において比較的穏和な条件下、シュライバーサイト由来リン化学により、様々な生体分子の亜リン酸モノエステルやリン酸エステルが生成する可能性が示された。
著者
大場 武
出版者
東京工業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

火山ガスはマグマに溶存していた揮発性成分から構成され,火山噴火がマグマから揮発性成分が抜けることを駆動力としていることを考えれば,その観測は火山噴火メカニズムの解明に必須であると言える.しかしながら,火山ガスを火口で直接採取することは危険を伴う.その危険を回避する手段として,大気に拡散した火山ガスによる自然光の紫外域,赤外域での吸収を利用する遠隔観測が実用化されている.しかし自然光の光吸収による観測は,SO_2,HCl, CO_2など,限られた気体のみに可能である.火山ガスの重要な成分であるH_2,H_2Sに光吸収法は適応できない.本研究で試みた遠隔観測の手法では,火山ガスにレーザービーム光を照射し,後方散乱するラマン光を観測することにより化学種の特定と濃度の推定を行う.この手法は,ごく一部の気体を除き,火山ガスを構成する主要な気体を全て感知することが原理的に可能である.実験は,532nm cw 0.6Wレーザー発振器,25cmニュートン式反射望遠鏡,CCDマルチチャンネル光ファイバー入力分光器を購入し,組み立てることにより実施した.実験では,レーザービームを夜空に向けて照射し,後方散乱する光を望遠鏡で集光し,分光器でそのスペクトルを観測した.分光器の仕様により露光時間は1分間に限られた.その結果,大気を構成するN_2ガスのラマン散乱光の検出に成功した.しかN_2以外の気体のラマン光強度は,ノイズ光強度以下であった.本研究の結果,実際の火山ガスに応用するために以下の改善が必要であるいえる.それは,レーザー出力の増強,分光器の感度向上,望遠鏡の集光力の増大である.結論として,最終的な目標への道のりは遠いものの,本手法の成功がもたらす革新的な観測能力の向上を考えれば,継続的に発展的な研究を続ける意義があると考えられる.