著者
舩度 忠男
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
no.45, pp.203-211, 2021-03-18

新型コロナウイルス(SARS-CoV)による新型コロナウイルス感染症(COVID-19,本症)は,半年以上も世界中で感染が拡大しバンデミックを来たし,当初の予想に反し蔓延が続き長期化している。今回,これまで大規模感染を呈した同じコロナウイルスであるMERS-CoV やSARS-CoV との異同を比較検討し,その中で本症感染が長期化に至っている要因について,文献におけるエビデンスを抽出し分析した。その結果,一定の結論は得られなかったが,ウイルス自体の感染様式および宿主における免疫能など複雑な要素がその要因であることが示唆された。
著者
庭野 賀津子
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.221-231, 2014

1999 年に発表されたLorberbaum の研究以降,ヒトの母親の子に対する反応の神経基盤を,fMRI を用いて脳を非侵襲的に計測することによって調べる研究が進められている。本研究では,乳児の泣き声,あるいは乳児の表情などの,乳児刺激に対してヒトが示す脳反応を,fMRI によって検討している研究の動向を調査するとともに,今後の課題について検討した。対象とした資料は,1999 年から2013 年までの間に海外で発表された,乳児の泣き声に対する反応を検討した論文12 件と乳児の表情への反応を検討した論文10件であった。各資料より,乳児刺激に対する脳の賦活部位として,扁桃体,帯状回,視床下部,視床,前頭葉眼窩皮質,島,側頭極,腹側前頭前野等が示された。これらの部位は,感情,感情統制,共感,ワーキングメモリー,報酬系等にかかわることが知られており,動物実験で養育行動を引き起こす部位として示された領域と共通していた。親の養育行動の解明には,脳機能計測の他に,内分泌や心理特性,親自身の生育環境など,他の要因も併せて検討していく必要があるが,脳内の神経基盤を明らかにするためには,fMRI による脳機能イメージングは有効な手段の一つであるといえる。
著者
花井 滋春
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
no.44, pp.1-20, 2020-03-19

これまで、橘長盛、直幹、忠幹等の生没年については、忠幹の没年を除いては長い間、未詳とされてきた。しかし、本稿では、兄直幹の申文から、父・長盛の没年を延喜十六(九一六)年、兄・直幹の誕年を昌泰元(八九八)年に特定することでき、そこから拾遺集忠幹歌の詠歌時期が延喜十六年頃もしくは天暦九年頃の二期、つまり忠幹の十代後半もしくは五十代半ばである可能性を指摘することができた。 この所詠時期に年齢を当て込み、且つ拾遺抄・集の詞書を検討する時、当該歌が巷間に歌語りされて伊勢物語に取り込まれたとする従来の考えが必ずしも妥当性を持たないことが明らかになる。かくして、拾遺抄・集から伊勢物語へ、あるいは忠幹周辺の限られた情報源から伊勢物語へという経路を再考する必要が生まれることとなる。
著者
田中 治和
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-21, 2010
著者
山下 祐一郎
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.79-93, 2018-03-20

2020年度から全面実施が予定されている小学校学習指導要領(平成29年3月公示)では,「プログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」が盛り込まれている。これに伴い,小学校教育養成課程では,プログラミング教育の実施に必要な知識・技能を修得するためのカリキュラムが求められている。そこで,本研究では,プログラミング教育に必要な知識・技能を大学生が修得するための授業計画を開発し,授業実践を行った。この授業実践では,プログラミング言語としてViscuitとレゴマインドストームを利用する。そして,大学2年生2名と大学3年生2名の計4名に対して全15回の授業を行った。授業を受講した学生らの自己評価の結果,4名中3名がプログラミング教育に関する理解が深まったと回答した。また,4名中3名が指導安略案にプログラミングを盛り込むことができた。
著者
福地 佳代子 濱田 淑子
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館年報 = Tohoku Fukushi University Serizawa Keisuke Art and Craft Museum annual report
巻号頁・発行日
vol.3, pp.67-84, 2012-06-23

昭和35(1960)年6月22日〜12月12日にかけて朝日新聞に連載された佐藤春夫の小説「極楽から来た」で、芹沢銈介は挿絵を型絵染の技法で表現するという初の試みに挑戦した。新聞連載「極楽から来た」は好評を博し、翌年2月に単行本が刊行、7月には挿絵のみを独立させた芹沢銈介作「極楽から来た挿絵集」が頒布されたが、その都度一部の挿絵には改変が加えられた。「極楽から来た」の制作において、芹沢と佐藤との間をとりもった明石・無量光寺の住職小川龍彦師は、連載の開始前から終了後まで、約130通の書簡を芹沢に送っており、その中には佐藤春夫の意向を受けた改変依頼をはじめ、図様の誤りや出版社による掲載順の間違いなど、重要な指摘がある。小川師書簡の精査を通して、「極楽から来た」制作のいきさつと、芹沢の試行の跡をたどる。
著者
福地 佳代子 濱田 淑子
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館年報 = Tohoku Fukushi University Serizawa Keisuke Art and Craft Museum annual report
巻号頁・発行日
vol.3, pp.67-84, 2012-06-23

昭和35(1960)年6月22日〜12月12日にかけて朝日新聞に連載された佐藤春夫の小説「極楽から来た」で、芹沢銈介は挿絵を型絵染の技法で表現するという初の試みに挑戦した。新聞連載「極楽から来た」は好評を博し、翌年2月に単行本が刊行、7月には挿絵のみを独立させた芹沢銈介作「極楽から来た挿絵集」が頒布されたが、その都度一部の挿絵には改変が加えられた。「極楽から来た」の制作において、芹沢と佐藤との間をとりもった明石・無量光寺の住職小川龍彦師は、連載の開始前から終了後まで、約130通の書簡を芹沢に送っており、その中には佐藤春夫の意向を受けた改変依頼をはじめ、図様の誤りや出版社による掲載順の間違いなど、重要な指摘がある。小川師書簡の精査を通して、「極楽から来た」制作のいきさつと、芹沢の試行の跡をたどる。"Gokuraku Kara Kita "by Sato Haruo was originally serialized in the Asahi Shinbun newspaper between June 22 and December12,1960, with 173 illustrations by Serizawa Keisuke. This was the first time, Serizawa had created newspaper illustrations usinga stencil-dyeing on paper process. The series proved very popular, and many readers took note of Serizawa's illustrations. Whenthe series came out in book form, in May 1961, Serizawa designed the cover. Then in July 1961, he independently republishedhis 173 dramatic, stencil dyed illustrations with hand-painted details. In developing a new project, illustrations are often changed.For the project that they undertook for the Asahi Shinbun newspapaer, Ogawa Tatsuhiko corresponded with Sato and Serizawa.The 130 letters which Ogawa wrote to Serizawa yield important insight into this process. For example, Sato's desire to modifyillustrations, errors in the figures, printing mistakes by the publishing company, etc. Examining Ogawa's letters in detail, we hopeto better understand the circumstances involved in producing "Gokuraku Kara Kita " and gain insight into Serizawa's process oftrial and error.
著者
佐藤 俊治
出版者
東北福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

ヒトの視覚情報処理過程を説明する数理モデルは、視覚の柔軟性や汎化性を考慮すると、画像工学的にも有効である必要がある。そこで、物体検出を行なっているV4野細胞の動作原理として、動的輪郭法を採用し、物体検出を行なう視覚モデルを提案した。また、動的輪郭法が抱える問題を、認知心理学研究で得られた視覚特性(凸性)を導入することで解決した。神経生理学的実験により、視覚的注意の影響はV4細胞の活動度に影響を及ぼすことがわかっている。そこで、提案した物体検出モデルに視覚的注意の効果を導入した、統合的な視覚モデルの提案を行なった。統合的視覚モデルの妥当性を評価するために、図地反転現象に関する視覚心理実験を行なった。この心理実験結果と、モデルの動作特性が一致することを数値シミュレーションにより見出した。さらに、提案モデルの理論的な動作解析から、注意の範囲が知覚に影響を及ぼすことを予測した。この予測の妥当性を評価するために現在、新しい心理実験を行なっている。提案モデルは基本的に、反応拡散方程式に基づいて動作するが、結果を得るまでに長い時間を要するという問題点があった。そこでこの問題を解決するために、多解像度理論であるスケールスペース理論を用いて、スケールで一般化された微分演算子を統合的視覚モデルに導入した。数値シミュレーションにより上記問題点が解決され、さらに、V4野における長距離水平結合の計算論的解釈が可能となった。より高次の視覚情報処理であるパターン認識に関しても研究を進め、大きな位置ずれや変形に対しても頑健に動作する視覚モデルを提案した。また、ICA(独立成分解析)とPCA(主成分分析)を複数回組み合わせたパターン学習方法を提案し、同時に、汎用性の高いパターン認識のための神経回路網モデルの提案を行なった。
著者
佐藤 洋介
出版者
東北福祉大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

腱・靭帯付着部症は,腱・靭帯が骨と結合している部位に誤った身体の使用を繰り返すことで過剰な負荷がかかり発症する炎症性疾患である.これまでに腱・靭帯付着部症の神経メカニズムについて検討した報告は少なく,有病者の運動時にどのような脳活動が生じているのか明らかになっていない.本申請課題では,腱・靭帯付着部症の有病者では健常人と異なる脳内神経回路が再構築されているという仮説のもと,代表的な疾患である上腕骨外側上顆炎の有病者を対象に申請者がこれまで使用してきた神経生理学的手法を用いて運動時の運動関連領野の活動量を計測し,健常者と比較して過剰な脳活動が生じているか明らかにする.
著者
濱田 淑子 本田 秋子
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館年報 = Tohoku Fukushi University Serizawa Keisuke Art and Craft Museum annual report (ISSN:21862699)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.63-70, 2013-06-23

人間の形をしたジャイナ教の宇宙像をローカ・プルシャと呼ぶ。考えうる限りの全世界と全時間を含み、世界の霊魂は上方世界、中央世界、下方世界の三界に住み分け、輪廻していると考える。最上位にあるのが完成者で上方世界は天上界である。下方には地獄界がある。中央には人間が住む円盤状の地上界がある。取り上げた資料はインド・ラジャスタン州かグジャラート付近で、17 世紀に制作されたものと考えられ、木綿地に顔料で描かれた掛け絵である。しかも、他に比べて大きく絵画的であり、サンスクリット語の詳細な説明書きが付されていて、きわめて貴重で、興味深い資料といえる。 The diagram of Loka-Purusa is a representation of the triple world, in the form of cosmic man. Interestingly, the diagram depicts the immense potential, no less than the size of the cosmos, contained within man. The ascending planes of experience are called lokas, while the descending are known as talas. In the center of these planes is the Earth-plane (madhya-loka)," shown as a circle. The complete drama of the universe is displayed here. This wall hanging from the museum's collection was painted on cotton in the 17th century in Gujarat or Rajasthan, India. Larger and more pictorial than others, it is a valuable and interesting artifact with detailed Sanskrit letters.
著者
高木 源
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.47-54, 2022-03-18

解決志向短期療法は目標に焦点を当てる支援モデルであり,特に,具体的で実現可能な目標を設定することが重要となる。そこで,本研究では,大学生・大学院生320 名を対象として実施された調査の目標に関する記述データおよび目標の具体性および実現可能性に対する専門家の評価を用いて,目標の記述内容を入力値,専門家の評価を出力値とする機械学習を行い,その精度を確認した。その結果,具体性の精度は83.75% から84.37%,実現可能性の精度は73.84% から76.25% であり,いずれも意味のある予測がなされていると考えられた。また,具体性が高いと評価された目標には,行動水準の記述が多く,目で見て確認ができるような目標が,具体性が高い目標として,評価されていると考えられた。次に,実現可能性が高いと評価された目標には,自分自身の行動や一人でも達成できるような目標が,実現可能性が高い目標として,評価されていると考えられた。これらの結果から,幾らか改善が必要となる点はあるものの,目標の具体性および実現可能性を機械的に評価することが可能だと考えられた。
著者
濱田 淑子
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学芹沢銈介美術工芸館年報 = Tohoku Fukushi University Serizawa Keisuke Art and Craft Museum annual report (ISSN:21862699)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.91-96, 2010-06-23

19世紀半ばに、アイヌ集落に天然痘が流行し多くのアイヌの人々が亡くなった。その状況を憂えた箱館奉行の村垣範正は、江戸幕府に医師派遣を要請した。医師の桑田立斎が選ばれ、江戸を出発してから1カ月で箱館に到着、1857年に世界で初めての集団強制種痘をアイヌ6,000余人に実施した。その顛末を商人の杉浦嘉七がアイヌ風俗画家・平澤屏山に描かせ、村垣家に献上した。立斎は1859年に原本をもとに模写を作らせて家蔵本とし、さらにこの模写本をもとに1941年に林司馬が模写をした2点が作られたが、肝心の原本の所在が長く不明であった。この絵は日本の医学史上、行政支配上記念すべき記録画とされているが、当館所蔵の平澤屏山筆「種痘施行図」が1857年に描かれた当初の原本と考える。 The Ainu people suffered from smallpox in the mid-nineteenth century. Muragaki Norimasa of the Hakodate magistrate`s office called on the government in Edo to send a doctor. Dr. Kuwata Ryusai went to Hakodate and compelled 6,000 Ainu people in allto be vaccinated. A merchant. Sugiura Kashichi had Hirasawa Byozan paint the scene and presented the picture to Muragaki Norimasa. Dr. Kuwata made a copy from the original painting by Hirasawa Byozan for his family in 1859. In 1941, a descendant had two copies painted by Hayashi Shime. This scroll is an important painting from the point of view of medical history and the administrative control.The original picture's where about had long been unknown. I believe that the scroll owened by Tohoku Fukushi University Serizawa Keisuke Art and Craft Museum may be the original.
著者
渡邉 誠 土谷 昌広 萩原 嘉廣 水野 康
出版者
東北福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

睡眠は心身の健康を維持する上で非常に重要な基盤であり,睡眠障害は精神および身体疾患を総じて増悪させる傾向にある.口腔環境においても同様であり,睡眠障害患者においては歯周疾患の高い罹患率が報告されている.しかしながら,これらの因果関係については不明な点が多い.我々は,大規模な被災者健康調査の結果から,歯周疾患と不眠症の罹患とが強く相関することを示した.それらの因果関係については不明であるが,本研究で介護施設において実施された,専門的口腔ケアの介入が口腔衛生状態の改善・維持が睡眠の質的改善に直結することを示唆したことから,睡眠障害患者への歯科的介入の有効性が示されたと考えられる.
著者
高橋 俊史
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
no.44, pp.79-96, 2020-03-19

情報社会の進展とともに情報リテラシーが求められているが、Society5.0の社会では,より必要性が高まると予測される。しかし,現状としてバイトテロなどの情報モラルに関連する問題が生じており,情報モラル教育の在り方を検討する必要がある。そのため,情報モラルに関する講義を履修している学生を対象に安心協ILASテスト2013版を活用した情報モラルの理解度把握と講義の効果検証を目的とした調査を行った。その結果,現在の大学生の情報モラルは,高い水準で理解しているが,過去の学生と比較するとインターネットリスクへの対処能力が低下している可能性があった。その要因としては,デジタルネイティブ世代がスマートフォンなどの情報機器を活用できている状況を,すべてのICT機器を活用できると誤認識していることが考察され,教育の必要性を妨げていると考えられる。したがって,今後の情報モラル教育の在り方として,各教員が大学入学前までに十分な情報リテラシー教育を受けていない学生がおり,デジタルネイティブ世代と呼ばれているがICTを苦手とする学生がいるということを認識し,学生に合わせた指導を行うこと,重要なことは重複しても教育するという視点が必要である。
著者
門脇 佳代子 渡邊 泰伸
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.93-107, 2016

船形山神社は宮城県北部南端の大和町に位置する。この地域は,古代において色麻柵を中心とした色麻郡の領域に含まれる。船形山神社に御神体として伝わる金銅仏「菩薩立像」は,久野健氏,松山鉄夫氏の紹介によって韓半島由来のものであることが指摘され,多くの識者の検討により百済仏とされてきた。本稿では従来までの美術史的な見方に,考古学的な知見を加味して,本像をこの地にもたらした人々の存在に迫った。古墳の変遷,官衙の成立,生産遺跡の操業などを視座にみると,渡来系の移民の姿が垣間見られる。中でも色麻古墳群より出土する須恵器は湖西窯跡品と考えられ,多数の移民の存在を推定できる。また色麻町土器坂瓦窯跡から出土した雷文縁4葉複弁蓮華文軒瓦によって7世紀末~8世紀初頭に紀寺系の軒瓦を使用した官衙と寺院が成立したことがわかる。古代色麻郡は多賀城以前の7世紀後半代には北進・西進の拠点となり,活発な動きのあった地域でもある。よって,従来まで8世紀~9世紀と考えれていた「菩薩立像」の当地への伝来の時期を見直し,渡来系移民による7世紀後半に位置付けたい。
著者
太田 聡一
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.173-181, 2020-03-19

英語によるオーラルコミュニケーション能力を重視する昨今の英語教育の流れにあって,大学を含む教育機関における英語カリキュラムは,従来の訳読中心の授業から英会話を中心とした,学習者がより多く英語を聴き,発話を行う形式の授業へと変化している。一方で,大学等高等教育機関に在籍する障害学生の数は年々増加しており,平成28年度に施行された「障害者差別解消法」によって,障害を持つ学生の就学に際し,教育機関は合理的配慮をすることが努力義務とされた。聴覚障害のある学生にとって,オーラルコミュニケーションを中心とした英語の学習は多くの困難を伴うものであり,支援を提供する教員および各教育機関もまた,適切な支援を模索し試行錯誤を続けている。本論では聴覚障害学生がオーラルコミュニケーションを含む英語の授業に参加する際の支援について,そこに関わる複数の要素(聴覚障害学生,英語教員,音声字幕システム,ノートテーカー)を先行研究,および東北福祉大学での事例をもとに整理・検討し,将来の支援体制向上に向けた考察を行った。
著者
花井 滋春
出版者
東北福祉大学
雑誌
東北福祉大学研究紀要 = Bulletin of Tohoku Fukushi University (ISSN:13405012)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1-20, 2020-03-19

これまで、橘長盛、直幹、忠幹等の生没年については、忠幹の没年を除いては長い間、未詳とされてきた。しかし、本稿では、兄直幹の申文から、父・長盛の没年を延喜十六(九一六)年、兄・直幹の誕年を昌泰元(八九八)年に特定することでき、そこから拾遺集忠幹歌の詠歌時期が延喜十六年頃もしくは天暦九年頃の二期、つまり忠幹の十代後半もしくは五十代半ばである可能性を指摘することができた。 この所詠時期に年齢を当て込み、且つ拾遺抄・集の詞書を検討する時、当該歌が巷間に歌語りされて伊勢物語に取り込まれたとする従来の考えが必ずしも妥当性を持たないことが明らかになる。かくして、拾遺抄・集から伊勢物語へ、あるいは忠幹周辺の限られた情報源から伊勢物語へという経路を再考する必要が生まれることとなる。