著者
関野 愉 相羽 玲子 田代 俊男
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.289-294, 2001-09-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

キシリトール配合製品と溶液, クロルヘキシジンを混合したキシリトール溶液のプラーク沈着抑制効果を比較した。健康な成人10名を被験者とした。材料は蒸留水 (DW), 65%キシリトール配合ガム (XG), 100%キシリトール含有キャンディー (XC), 5%キシリトール溶液 (5%X), 20%キシリトール溶液 (20%X), 5%キシリトール溶液と0.02%クロルヘキシジンの混合液 (XCHX) を用いた。実験開始前, 14日間にわたり専門家による歯面清掃 (PTC) と口腔衛生指導を行った。実験開始時から全ての機械的歯面清掃を中止し, XGまたはXCの場合は1日2回, 2個ずつ摂取するように, 溶液の場合は10mlで1日2回1分間の洗口を行うよう指示した。実験開始時と4日後に診査した (Plaque Index)。診査後PTCと被験者自身によるブラッシングを再開し, 10日後再び歯面清掃を中止し, XGまたはXCの使用, または洗口を4日間行った。以上を6回繰り返した。DWと5%Xの間 (p<0.05), DWと20%Xの間 (p<0.05), DWとXCHXとの間 (p< 0.01) に有意差が認められた。XGとXCによるプラーク沈着抑制効果はDWよりやや優れているが, 有意差はなかった。5%Xと20%Xの使用により有意なプラーク抑制効果がみられた。キシリトール溶液にクロルヘキシジン溶液を混合することによりプラーク沈着効果が高まった。結論として, 高濃度のキシリトール溶液とクロルヘキシジンを混合することによりプラークの形成抑制効果が高まるので, このような形での使用が歯周病や齲蝕の予防に有効であると思われる。
著者
村岡 宏祐 田中 達朗 久保田 浩三 森本 泰宏 横田 誠
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.121-128, 2008-06-28
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

本症例は, 慢性歯周炎広汎型の患者で, 歯周基本治療により, 咬合機能が改善された際, functional MRI(fMRI)のBOLD(blood oxygeneration level dependent)信号で咬合状態の改善を示す信号変化が確認されたので報告する。患者は60歳女性で, 全顎的な歯周治療を希望して来院した。既往歴は, 高脂血症である。臨床診査およびX線診査によって, 慢性歯周炎広汎型と診断した。歯周基本治療は, Tooth Brushing Instruction, Scaling, Root planingのみとし, 咬合調整は一切行わなかった。患者の同意を得て, 初診時と再評価時に, 咬合力の診査とfMRIを撮影した。初診時のfMRIでは, 噛み締め時に, 弱いBOLD信号を片側大脳皮質一次体性感覚野のみに認めた。歯周基本治療を行うと, 歯周組織, 咬合力の改善を認めた。同時に, fMRIによる脳血流を示すBOLD信号は, 左右対称性を示すと同時に増加傾向を認めた。<BR>この結果は, 慢性歯周炎広汎型の患者に対する歯周基本治療により片側のみの弱い咬合から両側性の強い咬合状態に変化したことをfMRIによりとらえた可能性を示唆する。<BR>日本歯周病学会会誌(日誌周誌)50(2) : 121-128, 2008
著者
中村 梢 中村 利明 上塘 正人 立石 ふみ 橋口 千琴 川俣 和弥 波多江 正紀 野口 和行
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.133-143, 2017-09-29 (Released:2017-09-28)
参考文献数
41

本研究は切迫早産 (TPL) 妊婦の歯周組織状態と糖代謝異常の関連を調べることを目的とした。被験者は15名の正常妊娠妊婦, 14名の切迫早産で糖代謝異常の妊婦 (TPL/糖代謝異常), 16名の切迫早産で糖代謝正常の妊婦 (TPL/糖代謝正常) とした。全ての妊婦にプロービングポケット深さなどの歯周組織検査を実施した。被験者から採取した唾液, 歯肉縁下プラーク, 絨毛膜組織のPorphyromonas gingivalis (P. gingivalis), Fusobacterium nucleatum (F. nucleatum), Prevotella intermedia (P. intermedia), Aggregatibacter actinomycetemcomitans, Treponema denticola, Tannerella forsythia (T. forsythia) の検出はPCR法で行った。歯周組織検査結果と口腔内の歯周病原細菌の検出率は, TPL/糖代謝異常とTPL/糖代謝正常の間に有意差はなかった。絨毛膜組織絨ではTPL/糖代謝正常はF. nucleatumとP. gingivalisが検出されたのに対し, TPL/糖代謝異常はF. nucleatum, P. intermedia, T. forsythiaが検出された。正常妊娠妊婦の絨毛膜組織はいずれの歯周病原細菌も検出されなかった。本研究は歯周病が切迫早産妊婦の糖代謝異常のリスク因子と示せなかった。しかし絨毛膜に存在するF. nucleatum, P. intermedia, T. forsythiaが糖代謝異常と関連する可能性を示唆した。
著者
小林 重行 加藤 熙 小栗 威 石塚 正弘 石川 純
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.328-334, 1974 (Released:2010-11-29)
参考文献数
18

Mouth breathing is an important etiological factor of chronic gingivitis and marginal periodontitis as well as dental plaque and calculus. The purpose of this study is to demonstrate (a) the frequency of clinical signs of mouth breathing in school children (b) correlation between 8 individual signs (c) relationship between prevelance of gingivitis (PMA Index) and clinical signs and symptoms of mouth breathing (d) relationship between oral hygiene status (OHI) and each clinical signs. The materials were examined, 1) lipseal insufficiency 2) lipdrying 3) over jet 4) open bite 5) mouth breathing line 6) tension ridge of palatal and lingual surface 7) hypertrophy of tonsils 8) lack of uvular reflex. As the result of this investigation, the followings were concluded. 1) Lip-seal insufficiency, mouth breathing line, hypertrophy of tonsils and lack of uvular reflex were found in more than 50% of children. 2) Lip-seal insufficiency, lip drying, over jet, mouth breathing line and tension ridge were related each other respectively. 3) Excepting hypertrophy of tonsils and lack of uvular reflex, all other signs were individually related to both of OHI and PMA.
著者
久保田 健彦 戸村 淳嗣 田井 秀明 村田 雅史 百瀬 学 吉江 弘正
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.30-40, 2015-03-28 (Released:2015-05-13)
参考文献数
40
被引用文献数
1

テトラサイクリン・エピジヒドロコレステリン含有歯科用軟膏は抗菌薬に抗炎症薬が配合された歯周炎局所治療剤であり,今回,歯周炎罹患歯肉への塗布塗擦による治療の有効性を検討した。新潟大学医歯学総合病院または研究協力3歯科医院を受診し,本研究の文書同意が得られた慢性歯周炎患者32名を対象とした。Supportive Periodontal Therapy(SPT)期で同意取得時にProbing Pocket Depth(PPD):6~8 mm, Bleeding on Probing(BOP)を有する患者を実薬群またはプラセボ群に無作為に割り付け,二重盲検法で比較評価した。薬剤投与は8日間,1日3回毎食後,患者自身が塗布塗擦を行い,臨床検査,細菌学的,生化学的検査による評価を術前,塗布8日目,塗布後21日に行った。臨床および細菌学的指標は両群とも経時的改善を示し,塗布後21日のplaque indexで,実薬群はプラセボ群に比し有意な改善を示した。中等度の炎症のある患者(gingival index:GI=2)を対象とした層別解析では,塗布8日目のBOPで実薬群はプラセボ群に比し有意な改善を示した。以上より,本剤の8日間の塗布塗擦はSPT期におけるGI=2の中等度の歯肉炎症のある歯周炎患者において,歯周ポケットからの出血を減少させる効果が期待できることが示された。
著者
伊藤 公一 荒井 法行 菅野 直之 戸村 真一 金子 和夫 村井 正大
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.642-651, 1990-06-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

健全な歯根を用いルートプ. レーニングを施した象牙質片を作製し, その象牙質片に2%NaF, 2および8% SnF2を塗布したものを口腔内に7および28日間装着させ, これらの薬剤塗布が象牙質面のプラーク形成にどのような影響を与えるか, 併せてブラッシングの影響をも組織学的に観察し, 以下の結論を得た。1. 非ブラッシング試片の7日目において2および8% SnF2群はコントロール群に比べプラーク形成量は小さかった。2. ブラッシング試片では7および28日目いずれにおいても各処理群はコントロール群と比較しプラーク形成量に差は認められなかった。3. 非ブラッシングおよびブラッシング試片を比較するとブラッシング試片が, いずれの条件においてもプラーク形成量は小さかった。4. 露出歯根象牙質面のプラーク抑制にSnF2の局所塗布が有効であることが示唆された。
著者
鴨井 久一 玉澤 修 岡本 浩 渡辺 隆 湊 貞正 服部 惇 岩田 正之
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.221-226, 1978-09-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
4

The purpose of these experiments are to detect on the stability of dextranase that was absorbed through either oral mucosa or skin of animals.The methods and materials are described as follows.MethodOne is the radioimmunoassay with 125I (RIA). (limited detection 25ng/ml)The other is enzyme activity (EA). The absorption through skin were detected with radioimmunoassay, other enzyme activity.Only the hair of rabbits on the back are trimmed, the skin was injured and dextranase was dressed on it.The absorption through oral mucosa.Gingivae in the mandibular anterior portion are applied for this research.Only control group is covered on lower oral mucosa, test group is injured in the marginal gingivae with dental hand instruments.The result was obtained as follows.(1) In control group, dextranase absorption into the tissue was not detected in normal skin, whereas it was detected on the injured skin of rabbits.(2) Neither normal oral mucosa nor injured one as to dextranase absorption was detected.(3) Dextranase absorption by means of subcutaneous injection to rabbits was detected decreased rapidly on the half life by two hours.(4) The absorption of dextranase was not significant factor as to surface active agents.
著者
大墨 竜也 竹中 彰治 坂上 雄樹 若松 里佳 寺尾 豊 大島 勇人 興地 隆史
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.291-301, 2014-09-19 (Released:2015-02-18)
参考文献数
49

本研究では,リステリン®の刺激性や使用感の改善を意図して開発された新規アルコール非含有洗口液®ナチュラルケア;N 群)の Streptococcus mutans 人工バイオフィルムに対する浸透性と殺菌能を既存洗口液[Listerine® Zero(Z 群),リステリン®フレッシュミント(F 群)および 0.12%グルコン酸クロルヘキシジン含有洗口液(CHG 群)]との比較により評価した。人工バイオフィルムはガラスベースディッシュ上で 24 時間嫌気培養することにより作製した。洗口液の浸透性は calcein-AM で染色したバイオフィルムの底面の蛍光消失を共焦点レーザー顕微鏡で経時的に解析することにより評価した。殺菌能は 30 秒作用後の生菌数測定およびバイオフィルム底面の Live/Dead 染色像により評価した。その結果,各洗口液とも 50%蛍光消失時間はバイオフィルムの厚みと正の相関を示し,N 群の浸透速度はZおよびF群と同等かつ CHG 群より有意に高値であった。 生菌数はN,ZおよびF群は同等で共に CHG 群より有意に低値であった。また, Live/Dead 染色像はN,ZおよびF群とも 99%以上が propidium iodide (PI)陽性細菌であり陽性率は CHG 群より有意に高かった。以上の結果から,N 群の浸透性と殺菌能は,Z 群および F 群と同等かつ CHG 群より有意に優れていることが示された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(3):291-301,2014
著者
渡辺 久 石川 烈 小勝 弘明 宮下 元 鈴木 丈一郎 新井 高 中村 治郎 岡田 昭五郎
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.711-718, 1993-12-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
27

ポビドンヨード配合歯磨剤の有用性を検討するために, ポビドンヨード, 酢酸トコフェロール, 塩化ナトリウム, エピジヒドロコレステリンを配合した薬用歯磨剤「PIP」と既に有用性が認められているグルコン酸クロルヘキシジンを配合した同種の薬用歯磨剤「NP」との比較を51症例につき臨床評価を行った。その結果, 薬用歯磨剤「PIP」は使用開始2週間目および4週間目で「NP」と比較して全症状で改善点数が優り2週間目では腫脹に, 4週間目では出血に有意差がみられた。有効率については2週間目で「PIP」59%, 「NP」39%, 4週間目で「PIP」78%, 「NP」59%でともに「PIP」が有意に優り, 歯周疾患の予防, 改善に有効であることが示唆された。