著者
佐藤 寿祐 土屋 昭夫 小林 則之 木村 純一 林 英昭 小林 博 保母 良基 鴨井 久一
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.752-757, 1986-06-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
7
被引用文献数
3 1

クマザサ原形質溶液が歯周疾患に対して効果があるか, また, 歯周治療に応用できるかどうかを検討した。口腔内の環境因子である唾液内微生物において, その殺菌効果および乳酸生成抑制効果について調べた。臨床的には, 実験的歯肉炎および中等度歯周疾患においてプラーク付着状態, 歯肉溝滲出液量, 歯肉の炎症状態を診査し, また, 口腔内規格写真撮影によって観察測定した。その結果, クマザサ原形質溶液の濃度が高くなるにつれて, 殺菌効果および唾液内微生物の乳酸生成抑制効果が認められた。含嗽または投与により, 実験的歯肉炎ではプラーク付着抑制には有意な効果はみられなかったが, 歯肉溝滲出液量の減少傾向および歯肉の炎症に対する阻止効果が認められた。
著者
前澤 和宏 川浪 雅光 小路口 研治 土佐 茂之 石川 純
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.110-123, 1984-03-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究の目的は下顎第1大臼歯の解剖学的形態の定量的観察と, その根分岐部に対する探針の適合性を検討することである。被検歯は歯周疾患のために抜去された100本の下顎第1大臼歯で, その形態および探針の適合性を直接ノギスで, あるいはトレース上で検索した。その結果, 歯冠頬舌幅径は平均10.7mm, 分岐部頬舌幅径は8.4mmであった。根頸部の高さは舌側に比べ頬側が約1mm低かった。エナメル突起は舌側より頬側に著明であった。各種曲率の彎曲探針を分岐部の頬側から舌側まで貫通させた場合, 多数例に対して良好な適合性を示す探針はなかった。そこで探針の挿入を分岐部頬舌断面で最根尖側部分までとしたところ, 頬側からは半径7mm, 舌側からは半径8mmの曲率の探針が最適であった。これらの探針が歯冠側基準点 (CRP-B or L)から, 9±1.1mm (頬側), 8.8±1.0mm (舌側) 挿入された時, その先端が根分岐部入口に達し, 13.5±0.9mm (頬側), 13.3±1.1mm (舌側) 挿入された時, その先端が根分岐部最根尖側部に達することがわかった。
著者
神田 浩 上田 雅俊 今井 久夫
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.443-455, 1997-12-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
23

加圧回転式ブラッシングの代表的方法あるローリング法における歯ブラシ線維の損耗が, ブラッシング時の歯みがき圧およびプラークの除去効果にどのような影響を及ぼすかをin vivoおよびin vitroの両面から検討した。すなわち, in vivo実験では, ローリング法を被験者に行わせ, 歯ブラシ線維の損耗と歯みがき圧との関連性について経週的に観察を行った。その結果, 頻回使用により, 歯ブラシが損耗する (歯ブラシ線維先端の位置の変化, 形態学的変化ならびに歯ブラシ線維の硬度試験) と歯みがき圧が増加することが確認できた。また, in vitro実験では, 独自に考案したin vivoにおけるローリング法と同じ動作が可能なブラッシングマシンを使用し, 歯ブラシの損耗が実験的プラーク除去効果にどのような影響を及ぼすかについて客観的に評価した。その結果, 歯ブラシが損耗する (歯ブラシ線維の硬化の低下) と, 実験的プラークの除去効果 (実験的プラークのscratching areaの面積%, 実験的プラークをほどこしたmetallic plateの重量差) が低下する傾向が確認できた。これらの結果から, 歯ブラシの形態変化のみならず, プラーク除去効果の面からも, ローリング法用歯ブラシの使用限界は, 使用圧の大小にかかわらず, 3から4週程度と考えられ, 主観的判断によりとらえられていたことが, より客観的に評価できたといえる。
著者
平岩 弘 森田 学 渡邊 達夫
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.602-609, 1985-09-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

外来患者40名を対象として刷掃指導を行った。顎模型を用いた群 (コントロール群), 位相差顕微鏡によりプラークの観察を行った後, 顎模型を用いて指導した群 (位相差群), 術者が実際に患者の口腔内を清掃し, 指導する群 (術者群), 位相差顕微鏡によりプラークの観察を行った後, 術者が患者の口腔内を清掃し, 指導する群 (術者+位相差群) の4群に分け, 歯肉炎指数, プラーク指数を4週間にわたって追跡した。その結果, 位相差顕微鏡の効果は, 実験初期においては認められるものの, 持続性に欠けていた。術者+位相差群では, すべての診査項目において著しい改善が認められた。以上のことから, 従来よりの顎模型を用いた刷掃指導に比べ, 術者による刷掃と位相差顕微鏡の併用が刷掃指導を行う際のモチベーションに有効であることが示唆された。
著者
森田 学 鶴見 真由美 平岩 弘 坂田 真理子 岸本 悦央 近藤 充宏 渡邊 達夫
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.205-210, 1987-03-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
21
被引用文献数
3 2

歯口清掃による歯の動揺度の改善を, より客観的に評価することを日的として, 動揺度測定装置 (TMC-01) を考案し, 臨床応用を試みた。この装置は, 歯を水平方向に移動させるのに必要な荷重を連続量 (g) で表示するものである。外来患者20名 (被検歯総数216本) を対象に, 来院時毎に, 徹底した歯口清掃と歯間部の清掃を主日的とした刷掃指導を行った。動揺度は, 初診時, 2週, 4週, 8週後にTMC-01を用いて測定し, 同時にプラーク付着状態も診査した。その結果, (1) 動揺歯の荷重平均は, 初診時101g, 2週後141g, 4週後147g, 8週後157gであり, 短期間のうちに著明な改善が認められた。 (2) 2週後で74%, 8週後で85%の動揺歯に改善が認められた。 (3) 初診時, 79g以下の力で動揺を示した歯は, 2週以後の改善傾向が減少したが, 809以上の力で動揺を認めた歯は, 期間全体を通じて改善した。以上より今回用いた装置は, 動揺度の測定に応用できる可能性が示唆された。
著者
深谷 芽吏 鈴木 綾香 船津 太一朗 松島 友二 八島 章博 長野 孝俊 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.27-37, 2020-03-31 (Released:2020-03-28)
参考文献数
28

歯科用CT装置(CBCT)は,診断に必要な部位とその周囲組織の3次元的形態を評価できるだけでなく,指定した部位からの距離や角度の計測も可能である。デンタルX線写真などから推測した骨欠損形態は,実際の骨欠損状態とは異なる場合がある。特に歯周組織再生療法を行う場合,事前に正確な骨欠損状態を把握しておくことは手術の成功に大きく係わる。そこで当講座では,歯周組織再生療法を予定する患者に対しCBCTの撮影を行い,さらに3Dプリンターで模型を作製し,事前に歯周組織再生療法のカンファレンスを行うことを義務づけている。本症例報告は,当講座における歯周組織再生療法のカンファレンスの流れと,実際に行った2症例について報告する。本症例は,検査所見にて垂直性骨欠損を確認した。その後,手術予定部位のCBCT画像,3次元模型,臨床データを基に術前カンファレンスを行った。歯周組織再生療法時に比較したところ,3次元模型は実際の骨欠損形態をほぼ再現していた。歯周組織再生療法を予定している患者に対して,CBCT撮影及び3次元模型を作成することにより,手術部位の骨欠損形態を事前に把握することができ,手術前の十分な討論が可能となった。我々の取り組みにより,手術をより安全かつ効果的に行うことができると示された。また手術前に十分なカンファレンスを行うことは,若手歯科医師の育成,および患者への説明のツールとしても有用であった。
著者
栗本 桂二 磯島 修 直良 有香 穴田 高 小林 芳友 小林 充治 新井 英雄 高柴 正悟 難波 秀樹 横山 雅之 光田 由可 水島 ゆみ 野村 慶雄 村山 洋二 上田 雅俊 寺西 義浩 藤原 一幸 橋爪 彰子 釜谷 晋平 細山 陽子 上羽 建二 大西 和久 白井 健雄 大橋 哲 東 浩介 木岡 慶文 南林 繁良 田中 真弓 北村 卓也 牧草 一人 山岡 昭 浦口 良治 萩原 さつき 福田 光男 小田 茂 林 成忠 竹蓋 弥 米良 豊常 峯岸 大造 梅田 誠 中元 弘 稲富 洋文 ラーシイシン ナロンサック 野口 俊英 石川 烈
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.191-205, 1988-03-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
17
被引用文献数
5 2

塩酸ミノサイクリン (MINO, 日本レダリー, 東京) を用いて歯周炎の局所治療法を確立するための研究を行なってきた。本研究は, MINOを2% (力価) に含有する軟膏製剤 (LS-007) を臨床的に用い, その有効性, 安全性ならびに有用性をもとに用法を検討したものである。4mm以上のポケットを有する辺縁性歯周炎患者45名の119歯を被験歯とし, LS-007とそのプラセボ, および市販のミノマイシン錠 (日本レダリー) を用い, 微生物学的および臨床的に用法を検討した。その結果, LS-007の局所投与は歯周病治療において, 臨床的有効性, 安全性および有用性があると結論した。
著者
田島 聖士 園田 央亙 小林 誉
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.119-128, 2021-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
59

AI(Artificial Intelligence)を用いたダブルチェックを行うことが医療の標準化に寄与できるとされている。歯科および口腔外科診療において日常的に撮影されるパノラマエックス線画像は,顎口腔領域の状態を把握できる標準化された画像である。今回われわれはパノラマエックス線画像を用いた根分岐部病変を検出するAIシステムを開発したので報告する。教師用データとして,根分岐部病変を認めるパノラマエックス線画像10,640枚を用い,深層学習アルゴリズムの転移学習により,根分岐部病変を自動検出するDCNN(Deep Convolutional Neural Network)を構築した。評価用データとして下顎大臼歯に根分岐部病変の所見が認められるパノラマエックス線画像170枚を用いた。正答率,感度,特異度,適合率,再現率,F値を評価した。結果は,正答率は96.4%,感度は95.6%,特異度は97.1%,適合率は96.3%,再現率は95.6%,F値は0.96であった。パノラマエックス線画像を用いたDCNNの深層学習により根分岐部病変を検出するAIシステムは,歯科医療従事者および患者にも有益なものと考えられる。
著者
西口 栄子 鈴木 幸江 山口 和美 神部 芳則
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-12, 2001-03-28 (Released:2010-08-25)
参考文献数
19
被引用文献数
3 1

歯磨剤, 洗口剤の安全性を検討する目的で, 市販されている歯磨剤, 洗口剤の多くに含まれているラウリル硫酸ナトリウム (SLS) とglycerineの各種ヒト細胞に及ぼす影響を検討した。ヒト歯肉上皮細胞に各種濃度のSLSを作用させて細胞の形態を観察した結果, 細胞は, SLSの濃度依存的に変化した。0.01% SLSを作用させた場合, 作用直後細胞が小型化し, 1分後にはほとんどの細胞が溶解した。0.001% SLSを作用させた場合,作用後3分で細胞が小さくなり始めたがその程度は弱かった。ヒト赤血球に各種濃度のSLSを作用させると,赤血球は,SLSの濃度依存的に形態が正常の円盤型から外方突出型の金平糖状に変化し, 0.004%以上では作用後1分で溶血した。ヒト大動脈血管内皮細胞(HAEC)に各種濃度のSLSを作用させると, 0.0022%以上では作用後1分で変化が起こり, 5分ではほとんどの細胞が溶解した。諸細胞にglycerineを作用させた場合, glycerineによる細胞の障害は低濃度, 短時間では大きいものではなかった。ヒト赤血球を用いてSLSの作用点を観察した結果, 膜蛋白質の関与が観察された。これらの結果から, SLSやglycerine, 特にSLSは, 微量で, 短時間の作用でも諸細胞に障害を与えるため,使用に際しては十分な注意が必要と考える。
著者
海津 健樹
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.1-12, 1976-03-28 (Released:2010-07-16)
参考文献数
46
被引用文献数
26 12

The purposes of this investigation were to research the major component and sources of halitosis. The subjects were based on the clinical findings and the intensity of odour by olfactory panel of trained judges. These were divided into three groups, subjects without halitosis: group N, periodontally healthy subjects with halitosis: group H-N, periodontally diseased patients with halitosis: group H-P.The test samples were withdrawn with a 5ml gas tight syringe consisting of glass barrel through capillary tubes after closing the mouth and continuing breath through nose for 1min. Entire 5ml mouth air sample was injected directly on to G-C column, and determined by a gas chromatograph equipped with. flame photometric detector to measure the amount of sulphur containing compounds in mouth air.The results were as follows:1. The concentrations of volatile sulphur compounds in mouth air were proportional to organoleptic ratings by a panel of trained judges.2. It seemed that methyl mercaptan was more closely related than hydrogen sulphide to halitosis, and dimethyl sulphide was little related to halitosis judging from the direct determinations of the volatile sulphur compounds, odour threshold and objectionabilities.3. The tongue coating score of group H-N were remarkably higher than group: N and group: H-P.4. The pH of whole saliva showed no statistically significance among three experimental groups.5. In group H-P, methyl mercaptan content in mouth air was observed high correlation with gingival score (P<0.01), but no significant correlation with pocket depth and bone loss.6. Rinsing, brushing with dentifrice and without dentifrice were temporarily caused a pronounced reduction in sulphur content.7. It was assumed that main sources of halitosis were periodontal pockets and coated tongue. Surgical elimination of periodontal pockets and mechanical removal of tongue coating were the most effective treatments for halitosis.It is therefore concluded that halitosis is closely related with the volatile sulphur compounds represented by methyl mercaptan produced in the periodontal pockets and on the coated tongue.
著者
牧野 智彦 大島 朋子 川崎 文嗣 五味 一博
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.303-315, 2009 (Released:2010-05-31)
参考文献数
41
被引用文献数
2 2

現在, インプラント治療が広く行われているが, その一方でインプラント周囲炎を発症する症例が増加する傾向がある。インプラント周囲炎は歯周ポケットからインプラント周囲溝へ歯周病関連細菌が伝播することにより生じると考えられることから, 一口腔単位での治療が必要である。重度歯周病患者に対して一口腔単位で細菌をコントロールする治療法としてアジスロマイシン(AZM)を用いたfull-mouth SRP (FM-SRP)が報告され, 早期に病態が改善し長期間維持されることが示されている。そこで本研究はインプラント周囲炎を伴う歯周病患者に対し, AZMを併用したFM-SRPを行い, 通常行われる1/3顎ずつのSRPと比較し, インプラント周囲炎ならびに歯周炎における効果を臨床的, 細菌学的に評価した。その結果, 実験群ではインプラント・天然歯ともに対照群と比較し臨床症状が有意に改善し,3ヵ月間維持された。また, PCR-Invader法により歯周病関連細菌5菌種の定量測定を行ったところ, 実験群においてインプラント・天然歯ともに細菌数は対照群と比較し3ヵ月間低く保たれていた。さらに, FM-SRPが細菌叢全体に与える影響を検索するため, T-RFLP法を用いて多菌種解析を行い, Cluster解析したところ, インプラント・天然歯とも治療前後で統計学的に細菌叢の変化が認められた。以上の結果から, 病態の改善には細菌叢の変化が深く影響していることが考えられ, AZMを用いたFM-SRPはインプラント周囲炎に対して臨床的かつ細菌学的に有効な治療法であることが示された。日本歯周病学会会誌(日歯周誌)51(4) : 303-315,2009
著者
大石 匠 深谷 千絵 笠井 俊輔 太田 淳也 国分 栄仁 齋藤 淳 石原 和幸 中川 種昭
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.406-413, 2015-01-30 (Released:2015-02-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1 1

本研究は,in vitro バイオフィルムに対するシタフロキサシン(STFX)の効果を検討することを目的とした。歯周病においてバイオフィルムは複数菌で構成され,抗菌薬に耐性を示すことが知られている。 STFX はニューキノロン系経口抗菌薬であり嫌気性口腔細菌を含む幅広い抗菌スペクトラムを示す。我々は微量流体デバイス BioFlux を採用した。BioFlux は嫌気条件下で自動的に培地を排出可能であり,本研究に有用と考えた。Porphyromonas gingivalis ATCC33277 および Streptococcus gordonii ATCC35105 の 2 菌種混合液を用い,37℃,2 時間かけバイオフィルムを形成させ,顕微鏡にて確認した。STFX または対照薬アジスロマイシン(AZM)を添加後,嫌気条件下で 5 日間作用させた。薬剤濃度は経口常用量投与時の歯肉組織および歯肉溝滲出液中濃度に基づき,STFX は 0.65 および 1.30 μg/ml,AZM は 2.92,3.95 および 7.90 μg/ml とした。薬剤作用後の生存率は,染色後の画像解析にて定量した。 その結果,抗菌薬作用群すべてにおいて,生存率の減少を認めた。STFX 作用後の生存率は,AZM 各群と比較して有意(p<0.05)に少なかった。以上の結果より,STFX はバイオフィルム中の歯周病原細菌に対して破壊効果を有することが示唆された。 日本歯周病学会会誌(日歯周誌)56(4):406-413,2014
著者
華岡 眞幸 華岡 千佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.87-99, 2017-06-30 (Released:2017-07-25)
参考文献数
44

ブラキシズムの関与した限局型慢性歯周炎患者に対し,tooth contact habit(TCH)のコントロールとナイトガード装着後にfull mouth disinfection(FMD)と歯周組織再生療法を行い,サーポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)移行後も良好に経過している一症例を報告する。患者は初診時64歳女性で右上臼歯部歯肉の腫脹・疼痛を主訴に来院した。臨床診査で上下左右臼歯部に限局した深い歯周ポケットと垂直性骨吸収像が認められTCHとブラキシズムの自覚があり,ナイトガードの装着と自己暗示療法の指導を行った。細菌検査でPorphyromonas gingivalisが16.67%,Tannerella forsythensisが3.48%,Treponema denticolaが3.68%と高い割合で検出されたため,アジスロマイシン投与下でfull mouth disinfection(FMD)を行い,その後1,2壁性骨欠損とLindhe下顎II度根分岐部病変にエナメルマトリックスデリバティブ,β-リン酸三カルシウム,吸収性メンブレンを併用した歯周組織再生療法を行った。FMD後は急性歯周膿瘍が再発せずコンプライアンスが得られた。歯周組織再生療法時の所見では肉芽組織や根面の歯肉縁下歯石量は少なく,そのため術野の確保が容易となり施術時間が短縮された。術後の診査では,probing pocket depth,bleeding on probing,clinical attachment levelの減少,垂直性骨吸収像の改善と根分岐部に硬組織の造成が認められた。P. gingivalis,T. forsythensis,T. denticolaは検出限界以下となり,SPT移行後の経過も良好である。