著者
鈴木 法臣 和佐野 浩一郎 川﨑 泰士 行木 英生
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.305-310, 2014 (Released:2015-03-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2

甲状腺癌のうち,高分化癌(濾胞癌,乳頭癌)は予後良好といわれているが,その中にも再発を反復,遠隔転移を来たすことで予後不良の経過をたどる一群が存在する。甲状腺癌の根治性をさらに高め,生存率を向上させるためにはこの予後不良群に対する診療方針の検討が必要と考えられる。当科における過去11年間の甲状腺高分化癌137例を対象として,再発規定因子を検討したところ,術後の病理所見で「静脈浸潤あり」,「頸部外側区域リンパ節転移あり」,「甲状腺被膜外浸潤あり」が再発規定因子になるという結果を得た。再発のリスクが高いと予測される高分化癌症例に対する今後の治療方針の指標作成を目指した。
著者
村上 大造 松吉 秀武 蓑田 涼生 鮫島 靖浩 湯本 英二
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.73-78, 2009-06-30 (Released:2010-02-10)
参考文献数
15
被引用文献数
1

今回われわれは3例の小児・若年者(19歳以下)甲状腺乳頭癌症例を経験し,主に治療方針について文献的考察を加えて報告する。3症例とも広範な両側頸部リンパ節転移を有し,1例に多発性肺転移,また,残りの2例にも肺野に小結節陰影を認めた。全例に甲状腺全摘出術,両側頸部郭清術を行い,1例は患側の反回神経浸潤を認めたため,神経切除のうえ神経再建術を行った。また,全例,術後にI131大量療法を施行した。多発性肺転移例は現在も肺野に結節陰影を認めているが,治療後16年経過し明らかな増大傾向はない。また,1例に術後鎖骨下リンパ節にI131の集積を認めたが,リンパ節径の増大傾向やサイログロブリン値の上昇がないため,現在は外来にて厳重経過観察を行っている。全例生存し,日常生活に支障を来す合併症は認めていない。小児・若年者甲状腺乳頭癌の場合,腺内転移,リンパ節転移,肺転移の頻度が成人症例よりも高いという特徴がある。そのため,甲状腺全摘出,徹底した頸部郭清術を行い,必要に応じてI131大量療法を施行する必要があると考えられる。
著者
川田 晃弘 宮本 佳人
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.209-214, 2015-10-30 (Released:2015-12-04)
参考文献数
15

WHO分類において,筋上皮癌は1991年の改訂で加わり,多形腺腫由来癌は2005年の改訂で独立した。多形腺腫由来癌は全唾液腺腫瘍の3.6%,悪性唾液腺腫瘍の11.6%を占める腫瘍であり,筋上皮癌は,全唾液腺腫瘍の中で発生頻度が0.2~0.5%のまれな腫瘍である。今回われわれは,多形腺腫由来癌の癌成分として筋上皮癌を認めた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。症例は75歳女性。15年前に検診で右耳下部腫瘤を指摘されており,徐々に増大したため当院紹介となった。右耳下腺浅葉に22×24mmの境界明瞭な腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診でclass III a多形腺腫疑いであった。その後1年間受診なく,再診時に腫瘍の増大を認めたため,悪性化の可能性も考慮し,右耳下腺浅葉切除術を施行した。術後病理は多形腺腫由来癌で悪性部分は筋上皮癌であった。現在術後2年9か月経過しているが再発や転移を認めず外来にて経過観察中である。
著者
物部 寛子 中西 わか子 石井 阿弥子 高岡 美渚季
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.229-232, 2018 (Released:2018-11-13)
参考文献数
15
被引用文献数
2

当科では慢性穿孔性中耳炎の穿孔閉鎖に対し,経外耳道的内視鏡下耳科手術TEES (Transcanal Endoscopic Ear Surgery)と同様に耳後部に切開を置かず,耳鏡アプローチによる耳珠軟骨を用いた鼓室形成術を施行しており,その術式について報告した。TEESが内視鏡を耳内に挿入することで広い視野を得られるのに比較し,本法では外耳道を削開することで穿孔縁の視野を得ている。耳珠軟骨を採取し,その両面の軟骨膜で鼓膜形成を行っており,軟骨による鼓膜形成が必要な症例では採取した耳珠軟骨を用いた。今回対象とした29耳では鼓膜穿孔閉鎖は28/29耳,96.6%で得られた。顕微鏡下にTEESと同等の低侵襲な鼓室形成術が可能であり,特別な経験や器具を必要とせず,取り入れやすい方法と考えている。
著者
末田 尚之 梅野 悠太 杉山 喜一 上野 哲子 福崎 勉 中川 尚志 福田 健治 東 登志夫
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.463-467, 2016-02-28 (Released:2016-04-06)
参考文献数
12

内視鏡下鼻内副鼻腔手術の合併症での動脈性出血の責任血管として内頸動脈,前・後篩骨動脈や蝶口蓋動脈は良く知られている。今回,非常にまれと考えられる眼動脈の走行異常に伴う出血を経験した。症例は71歳男性。慢性副鼻腔炎に対する手術操作時に篩骨洞内を走行する眼動脈を損傷した。通常の止血術では出血のコントロールがつかず,血管造影下での塞栓術を行った。この時,3D-造影CTと眼動脈3D-DSAを併施することでより的確に出血部位が同定され塞栓処置を行うことが可能であった。術後,一時的に眼窩内出血と眼瞼浮腫により視力低下を来したが,経過とともに視力は術前の状態にまで回復した。現在,術後9か月が経過するが視力障害等は認めていない。
著者
牧原 靖一郎 内藤 智之 津村 宗近 假谷 伸 岡野 光博 西﨑 和則
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.113-118, 2020 (Released:2020-07-17)
参考文献数
15

本症例は18歳の男性で,鼻ほじりが原因と考えられる13mm大の鼻中隔穿孔を認め,Unilateral mucosal advancement flap techniqueを使用して穿孔閉鎖施行した。術後は穿孔が閉鎖し,自覚症状が消失した。Unilateral mucosal advancement flap techniqueは片側鼻腔で穿孔の下方と上方に二つのflapを作成し,そのflap同士を縫合することで穿孔を閉鎖する方法である。Flapは双茎で血流もよく,Interposition graftと組み合わせることで,1cmを超える中等度の大きさの鼻中隔穿孔の閉鎖に有効な方法と考えられた。
著者
橋本 和樹 中島 寅彦 藤 賢史 安松 隆治 小宗 静男
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.195-199, 2014 (Released:2015-02-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

精神疾患を有する頭頸部癌症例においては,しばしば標準治療の遂行が困難となる。今回2008年1月から2013年6月の間に当院にて入院加療を行った精神疾患を合併する頭頸部癌症例27例について,治療経過や合併症に関する検討を行った。高度の認知障害を有する6例では治療を開始できなかった。放射線治療症例においては,治療の長期化に伴い精神疾患の増悪や身体合併症の出現がみられ,治療中断となる症例もみられた。手術を施行した症例では術後せん妄が多く,再建症例では皮弁に関連した合併症率が高い傾向を認めた。精神疾患合併頭頸部癌症例においては,進行度や全身状態,また精神社会的背景を十分に考慮した上での治療適応検討が重要と考える。
著者
藤田 信哉 山中 敏彰 成尾 一彦 北原 糺
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.333-337, 2016-02-28 (Released:2016-04-06)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

メニエール病の本態は内リンパ水腫であるが,真の病因は不明である。われわれは,保存的治療ではめまい発作の制御が困難であるメニエール病患者に対し,鼓膜換気チューブ (以下チューブ) 留置術を施行している。今回2年以上長期の経過観察が可能であった2症例について報告した。2症例ともチューブ留置後めまいは消失した。チューブ脱落後めまいが再燃したが,再留置後めまいは再び消失した。チューブの有用性についてはまだ不明の点も多いが,メニエール病のめまい発作に苦しむ患者にとって,チューブ留置は保存的治療と侵襲的治療の間を埋める一つの選択肢として有用な外科的治療と思われた。
著者
辻川 敬裕 木村 有佐 森本 寛基 佐分利 純代 光田 順一 吉村 佳奈子 森 大地 大村 学 椋代 茂之 杉山 庸一郎 平野 滋
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.117-120, 2022 (Released:2022-10-31)
参考文献数
14
被引用文献数
2

生命・機能予後の改善をめざし,口腔癌を含む局所進行頭頸部癌に対する導入化学療法・免疫療法を検証する臨床試験が国内外で複数進行している。1切片から14マーカーを可視化・定量化可能な多重免疫染色により,頭頸部癌においてリンパ球系優位,低免疫細胞,骨髄系優位の3種類の免疫特性の存在が示され,これらの免疫特性が免疫療法のみでなく,導入化学療法の効果と関連することが示唆された。免疫特性をふくむ組織バイオマーカーに基づいて適切な症例選択が可能になれば,口腔癌における将来的な導入化学・免疫療法や術式を含む治療方針の最適化が期待される。
著者
佐々木 崇博 竹中 幸則 山本 佳史 喜井 正士 中原 晋 西池 季隆 猪原 秀典
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.115-121, 2013 (Released:2013-07-09)
参考文献数
14
被引用文献数
1

軟骨肉腫は全悪性骨腫瘍の20%を占め,原発性骨悪性腫瘍の中では3番目に多い腫瘍であるが,頭頸部原発のものはまれである。今回,われわれは頭頸部領域に発生した軟骨肉腫を3例経験したので,文献的考察を加え報告する。症例1:67歳男性。右輪状軟骨より発生しており,喉頭摘出を行った。症例2:71歳女性。鼻中隔原発であり内視鏡下に切除を行った。症例3:67歳男性。下顎骨関節突起より発生しており,耳下腺,下顎骨の部分切除を行い摘出した。いずれの症例も安全域をつけた切除を行うことにより,無再発生存中である。
著者
花井 信広
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.167-171, 2020 (Released:2020-11-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1

乳び漏/リンパ漏は創傷治癒遅延や創部感染から重篤な結果をもたらす可能性のある合併症であり,それを回避する方法についての習熟が必要である。本教育パネルディスカッションでは,その為に必要な手術手技とトラブルシューティングについて講演した。 損傷はまず未然に防ぐ必要があり,リンパ系,胸管の解剖を知っておく必要がある。また胸管損傷を防ぐための予防的な手術手技であるtwo-bite法について解説した。 乳び漏が発症した場合の外科的治療として,特に頸部からの操作で上縦隔の胸管を結紮する方法を解説した。これは総頸動脈の内側,胸郭入口部,食道後面を目安として胸管を同定するものである。
著者
大道 亮太郎 假谷 伸 岡野 光博 牧原 靖一郎 小野田 友男 江口 元治 西﨑 和則
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.141-144, 2013 (Released:2013-11-15)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

glomangiopericytomaは鼻副鼻腔原発の血管周囲筋様細胞の表現型を伴う境界から低悪性度の新生物である。その発生頻度は全鼻副鼻腔腫瘍のうち1%以下とされており,非常にまれな腫瘍である。この腫瘍は従来hemangiopericytomaの一亜型とされてきたが,一般的な軟部組織に発生するhemangiopericytomaとは発生部位,生物学的挙動,組織学的特徴の観点から区別され,2005年のWHO基準にて正式に疾患分類として登録された。比較的新しい疾患概念であることなどから,hemangiopericytomaとの鑑別が十分なされていないことがあり,注意を要する疾患とされている。われわれは今回鼻出血を主訴に来院した右鼻腔原発のglomangiopericytomaに対し,内視鏡下に切除手術を施行し,良好な経過を得た1例を経験したので報告する。
著者
坂本 達則 菊地 正弘 中川 隆之 大森 孝一
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.147-150, 2020 (Released:2020-11-28)
参考文献数
6

耳管や破裂孔の周辺構造の内視鏡下局所解剖を明らかにするために,骨標本の観察およびカデバダイセクションを行った。破裂孔は蝶形骨,側頭骨,後頭骨に囲まれた不整形の穴である。内視鏡下に上顎洞後壁を除去すると,翼口蓋窩で顎動脈の分枝を確認できる。蝶形骨前壁の骨膜を切開すると,翼突管,正円孔を確認できる。蝶形骨の翼状突起基部・内側・外側翼突板を削開すると耳管軟骨が露出される。耳管軟骨は耳管溝と破裂孔を充填する線維軟骨に強固に癒着している。内視鏡で手術操作を行うとき,翼突管および破裂孔よりも尾側での操作を維持することで内頸動脈・海綿静脈洞の露出・損傷を防ぐことが出来ると考えられた。
著者
本間 明宏
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 = Journal of Japan Society for Head and Neck Surgery (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.29-31, 2012-06-30
参考文献数
17
被引用文献数
1

Robbinsが開発した大量シスプラチンの超選択的動注療法と照射の同時併用療法(RADPLAT)は,日本では多くの施設で行われている。しかし,オランダの比較試験で,静注のシスプラチンと照射の併用療法と比較し,RADPLATの有用性は示されなかった。通常の照射と静注の化学療法の併用療法も良好な成績が得られているため,動注のメリットを生かせる症例に適応を絞っていくこと,確実な動注を行うことが必要である。今後はRADPLATが有用な部位と予想される上顎洞などの腫瘍に対して,前向きの試験を行い動注が本当に有用であるかどうかを検討していかなくてはならない。
著者
朝戸 裕貴
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.303-305, 2017

形成外科的縫合法の基本は,1.繊細な器具で組織を愛護的に扱う,2.組織反応の少ない針付き糸を用いる,3.なるべく細い糸で密に縫合を行う,4.結紮はゆるく,正結紮で偶数回むすぶ,5.瘢痕が目立たない方向を考慮した切開線とする,6.真皮縫合法を活用する,などの点があげられる。縫合痕(suture mark)を残さないために,ゆるく密な皮膚縫合,創部の安静と早めの抜糸,抜糸後の後療法などにも配慮する必要がある。
著者
上里 迅 真栄田 裕行 金城 秀俊 安慶名 信也 平川 仁 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.233-238, 2020

肺癌患者において開胸下の右上葉切除術と,頸部アプローチによる巨大な腺腫様甲状腺腫(AG)摘出術の同時施行例を経験したので報告する。患者は頸部圧迫感を主訴とする70歳の男性。精査の結果,右肺上葉S2区の肺癌と同時に上縦隔におよぶ右甲状腺腫瘤が発見された。甲状腺腫瘤は気道を圧排し,頸部圧迫感の主因であると考えられたため,肺癌と同時に甲状腺腫瘤摘出が計画された。AGは頸部操作のみで摘出可能であった。術後の経過は極めて順調であったが,縦隔炎や膿胸,胸骨骨髄炎など合併症の発症リスクを抑えるため,気管切開を併施せず,気管内挿管による気道管理を選択したことが理由として考えられた。
著者
鈴木 健介 林 隆一 海老原 充 宮崎 眞和 篠崎 剛 富岡 利文 大幸 宏幸 藤井 誠志
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.169-174, 2014 (Released:2015-02-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

骨肉腫は骨原発の悪性腫瘍として最も多いが,頭頸部領域に生じる骨肉腫は全体の10%以下と比較的まれである。今回,われわれは下顎骨に発生した骨肉腫を6例経験したので,文献的考察を加えて報告する。治療法は6例全例で手術が施行され,4例は手術療法単独,2例で導入化学療法が併用された。導入化学療法が併用された2例においてはいずれも化学療法の効果は認められなかった。諸家の報告と同様に,初回治療で切除断端陰性の症例では長期生存が得られていた。頭頸部原発骨肉腫の治療の中心は外科的完全切除であるため,手術時期を逸することがないよう,導入化学療法の適応に関しては慎重になる必要があることが示唆された。
著者
朝戸 裕貴
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.303-305, 2017-02-28 (Released:2017-03-07)
参考文献数
3

形成外科的縫合法の基本は,1.繊細な器具で組織を愛護的に扱う,2.組織反応の少ない針付き糸を用いる,3.なるべく細い糸で密に縫合を行う,4.結紮はゆるく,正結紮で偶数回むすぶ,5.瘢痕が目立たない方向を考慮した切開線とする,6.真皮縫合法を活用する,などの点があげられる。縫合痕(suture mark)を残さないために,ゆるく密な皮膚縫合,創部の安静と早めの抜糸,抜糸後の後療法などにも配慮する必要がある。
著者
片岡 真吾 川内 秀之
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.103-111, 2010-10-30 (Released:2010-12-10)
参考文献数
19

小児において頸部腫脹をきたす疾患はリンパ節病変のほか,先天性の嚢胞性疾患や脈管性疾患が多い。われわれが経験した3症例(川崎病,下咽頭梨状陥凹瘻,嚢胞性リンパ管腫)を提示し,診断および治療上の問題点を検討した。川崎病の症例は,抗菌薬投与で改善されず,γグロブリン製剤とステロイド薬の併用投与で治癒した。下咽頭梨状陥凹瘻の症例は,診断の遅れから深頸部感染症を生じてから受診した例であった。嚢胞状リンパ管腫の症例は,他院で手術後再発をきたした症例であり,当科で再手術を行いその後経過良好である。嚢胞状リンパ管腫やがま腫などの嚢胞性疾患は,外科的摘出術だけでなく,近年はOK-432による硬化療法も有効であるとの報告もあり,十分検討のうえ治療法を選択する必要がある。