- 著者
-
北原 糺
- 出版者
- 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
- 雑誌
- 日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
- 巻号頁・発行日
- vol.121, no.8, pp.1056-1062, 2018-08-20 (Released:2018-09-11)
- 参考文献数
- 35
メニエール病診療ガイドラインにおける診断基準は, 回転性めまい発作に耳鳴, 難聴の増悪が随伴し, それらが発現, 消退を繰り返す, というように臨床症候を中心に定められている. 難聴は低音障害型の感音難聴から始まる. 進行すれば中高音域にも感音難聴が生じ, 全音域に増悪していく. めまい発作は自発性で, 10分以上数時間続く回転性を基本とするが, 浮動性の場合もある. メニエール病の側頭骨病理は内リンパ水腫である. 30~40歳代, やや女性に多く, ストレスや不規則な生活がメニエール病の発症と因果関係を持つとされている. しかしながら, ストレスと内リンパ水腫発生, メニエール病発症のメカニズムは未解明である. 両耳罹患率は10~40%, 罹病期間の遷延化によりその率は上昇する. 罹病期間の遷延化, 両耳罹患により, 神経症やうつ病の合併率も高まる. できる限り早期に適切な治療を見出すことが肝要である. メニエール病診療ガイドラインにおける治療アルゴリズムは, まず規則正しい生活指導, 水分摂取と有酸素運動の励行にはじまる. 指導が有効でない場合には, さらに利尿薬, 循環改善薬による内耳メインテナンスと抗めまい薬, 抗不安薬, 制吐薬による対症治療を手掛ける. 保存治療が無効であれば, 機を逸することなく外科治療を考慮する必要がある. 最近では, 外科治療を選択する前に, 鼓膜マッサージ器を用いた中耳加圧治療が提案されている.