著者
伊藤 清彦 ローズ エリザベス L. 趙 殷範
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.4-13, 2011-06-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
32
被引用文献数
1

企業固有の優位性,先発者の優位性,規模の経済の概念に基づいて,企業の国内競争力と多国籍度との関係を調査した.大手企業は経営資源を多く持つため,多国籍度が高いと思われる.しかし日本企業のデータの分析結果からは,企業規模と国際経験をコントロールすると,日本国内市場のリーダー企業は競合他社に比べて,多国籍度が低くなりがちであり,多国籍度に関してはリーダーが後続企業のあとを追っている状況がうかがえる.
著者
山口 栄一 水上 慎士 藤村 修三
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.30-44, 2000 (Released:2022-07-27)
被引用文献数
5

技術創造の方法論として,基礎研究から開発に至る線形モデルは衰退し,技術と科学とのフィードバック・ループによるモデルの有効性が高まってきた.そのため「実行情報」の担い手の共鳴場を作ることが急務の課題であり,大学等の研究施設を企業に開放するなど研究者の地域的集積を図る必要がある.公的な研究支援では,研究主体とは独立し自己革新の契機をもった目標設定と評価の主体が不可欠である.
著者
具 承桓 加藤 寛之
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.4-18, 2013-06-20 (Released:2013-11-07)
参考文献数
49
被引用文献数
2

1990年代後半〜2000年代前半に生じた日韓造船産業の競争力逆転の背景のメカニズムを明らかにする.長期の時間軸を設定し競合するプレイヤー間の相互作用を焦点とした分析を行った結果,長期停滞の後に造船市場が成長市場へと再突入を果たした際に,成長機会を捉えた韓国大手は必ずしも戦略的な行動の結果現在の地位を築いたわけではないこと,日本の旧大手企業ではまさにその時期に多角化の成功が成長の桎梏になっていたことを指摘する.
著者
山田 仁一郎 松岡 久美
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.17-28, 2014-03-20 (Released:2014-06-30)
参考文献数
32

本研究では,大学発ベンチャーにおける企業家研究者の中長期的な関与の変化と離脱に至る過程を,心理的オーナーシップの観点から考察する.バイオ系2社の比較事例分析の結果,企業家研究者の技術とその事業に対する責任の認識から生まれる心理的オーナーシップは,企業家研究者とベンチャーやその利害関係者との関係の変化や離脱に影響することが明らかになった.
著者
稲水 伸行 牧島 満 島田 祐一朗
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.17-32, 2022-09-20 (Released:2022-12-02)
参考文献数
27

ハイブリッド・ワークではどの場所にどのように時間を配分すべきかが問われる.本研究では,ある企業から取得したオフィス内の位置情報とオンラインチャットのデータ,質問紙調査のデータを分析した.その結果,オフィス内利用場所の多様性が中程度であるとクリエイティビティが高いことが明らかとなった.このことは,場所と時間の配分に関する制約がなくなる中,主体的にそれらの配分を選択できていることの重要性を示唆するものであった.
著者
金間 大介 西川 浩平
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.74-89, 2017-12-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
68

本稿は,どのような環境にある企業が自社以外の組織に技術を提供しているかを,第2回全国イノベーション調査の結果を用いて計量的に検証した.その結果,イノベーションの収益化のための専有可能性として法的保護の有効性が高い企業ほど,また自社の補完的資産を把握している企業ほど,多様な外部組織へ技術提供していることがわかった.さらに,市場環境の変化が企業の技術提供に影響を及ぼしていることも明らかとなった.
著者
臼井 哲也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.4-17, 2020-06-20 (Released:2020-08-20)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本稿は,日本に研究拠点を置く我々が,日本企業の研究を通じて世界の学界へいかに貢献できるのか,あるいは貢献すべきなのか,その戦略的方向性を明示する試みである.かつて日本企業研究が世界へ残した貢献を振り返るとともに,日本企業への関心が減退した2000年以降から現在まで,日本企業を対象としたトップジャーナル論文をレビューする.これらを踏まえ,世界の学界への貢献に資する日本企業研究の3つの戦略的方向性を提示する.
著者
藤川 なつこ
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.5-17, 2015-03-20 (Released:2015-06-19)
参考文献数
29
被引用文献数
1

高信頼性組織研究には,組織事故に対して,2 つの対立する見方がある.ノーマル・アクシデント理論では,高度な技術を有した複雑なシステムは組織事故が避けられないという悲観的な見方をするのに対し,高信頼性理論では,組織事故を防ぐことができるという楽観的な見方をする.本稿では,高信頼性組織研究の理論的展開を概観することで,高信頼性組織に内在するジレンマを明らかにする.その上で,理論的統合の方途を検討する.
著者
野中 郁次郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.76-85, 1996 (Released:2022-07-22)

企業組織は,これまでのように情報を処理する構造としてではなく,知識を創り出すプロセスとして概念化されなければならない.組織的知識創造の基本モデルを提示し,暗黙知と形式知のスパイラルを促進する要件について,新たにそのメカニズムを明らかにする.また,今後は一組織の枠をこえて展開されていくであろう知識創造理論の今後を展望し,なぜこの理論が日本から発信されなければならなかったかについても考察する.
著者
中西 和子 立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.18-31, 2018-09-20 (Released:2019-01-17)
参考文献数
38
被引用文献数
1

本研究は,製薬産業における産学共同研究成果の評価を目的として,特許の技術品質(被引用特許数)および開発プロセス品質(出願国数,特許登録)に対する発明形態・出願形態別の効果を回帰分析により検討した.その結果,技術品質は開発プロセス品質に対して強い正の効果を有している事,産学共同発明は技術品質に対して負の効果を有する事が明らかになった.一方で,対象とする疾患領域・技術タイプを選ぶことによって技術品質の高い成果を生み出す可能性がある事も明らかとなった.
著者
柳 淳也 山田 仁一郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
AAOS Transactions (ISSN:27582795)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.163-169, 2022 (Released:2022-09-16)
参考文献数
24

Mention of the entrepreneurship notion often makes it sound like an imaginary creature and does not reflect the reality of the real entrepreneurial realities. Images such as high performance, white male, able-bodied, heterosexual, and cisgender continue to be posited as role models. To “straighten” out the image of the entrepreneurship concept, this study conducted a systematic review of LGBTQ entrepreneurs, a topic that has received little attention in the Japanese-speaking world. In this study, we searched for literature containing words related to entrepreneurship (e.g. "entrepreneur”, "entrepreneurship”, "start-up”, "self-employment") and words related to lgbtq ("lgbt", "lgbtq", "queer", "gay", "lesbian", “bisexual", "transgender", "homosexual", "gender minority", "sexual minority"). Screening was conducted according to PRISMA guidelines, which ultimately obtained 20 references. The results indicate that most of the studies were qualitative studies, while quantitative studies were conducted mainly in North America and Europe. In addition, the purpose of each study were quite diverse, including not only issues of personal identity, but also gentrification and urbanism, keeping space for women and queer people, interdependence with national norms, and re-evaluating/documenting practices from an intersectional perspective with ethnicity and race.
著者
嶋口 充輝
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.44-55, 1992 (Released:2022-07-15)

企業が必ずしも利潤や成長に関係しない社会問題にもコミットすべきだという考え方はビジネス界で浸透しつつある.しかし,限られた経営資源の下で,すべての社会的要求に対応することは困難である.本論では,今日,なぜ企業が社会的かかわりを明示化すべきかの根拠を明らかにした上で,多様な社会責任を基本責任,義務責任,支援責任と分け,それぞれの責任分野への社会的かかわり方をマーケティングのコンテクストから議論する.
著者
難波 和明
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.44-50, 1997 (Released:2022-07-22)

軍事用語としての支援は,さまざまな場合に用いられる.軍の部隊は,直接戦闘部隊と支援部隊にわけられ,しだいに支援部隊の比重がたかまっている.西側諸国の軍隊は支援重視型の軍隊ということができ,ロシアの軍隊は中央統制型の軍隊であるといえる.この違いは,政府または支配者が自国の軍隊を信用できるかどうかによると思われる.次に支援―被支援関係が成り立つためには,相手を信用できることが必要であり,相手を信用できなければ,相手の自由を制限し,自立性を低くする統制,服従になる.これは,支援を考察する際の重要な点であると思われる.
著者
深見 真希
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.4-14, 2012-06-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
26

アメリカにおいて危機管理という学問を形成し概念化を進めてきたのは,組織論を中心とする管理科学だが,日本ではそのような理論構築はされていない.そこで,アメリカ危機管理の枠組みを援用して組織の構造と設計の観点から検討すると,危機管理の実行能力を向上させるならば,現場レベルにおける道具的組織設計および,政府レベルにおけるラインの創出が必要であることがわかった.
著者
福島 真人
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.15-24, 2012-06-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
49

本論文の目的は,急患対応システムである救急医療を,危機管理の一つの具体的な組織モデルと見なし,その特徴と問題点を探ることである.従来の臓器別分業体制を超えた救急医療は,緊急時の初療に限定しつつ広い病態をカバーし,他科との協働をその本質とする.だがその内部では,その対象や組織構造について異なる意見が存在する.これらを詳細に分析することで,危機管理型組織が実践面で持つ問題点を指摘し,解決法を探る.
著者
藤本 隆宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.25-35, 2012-06-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
12

東日本大震災によるサプライチェーン寸断に対し,在庫増加,標準部品採用,供給のデュアル化,海外移転などが提案されているが,災害のショックからの心理的過剰反応も目立つ.本稿は,グローバル競争時代の広域大災害に対するサプライチェーン強化策は,競争力(competitiveness)と頑健性(robustness)の両立を目指すべきだと主張する.相対的に小さなコスト負担で,災害からの復旧速度(たとえば2-3週間での全面復旧という目標)を確保する代替的方策として,設計情報の可搬性(design portability)を基礎とした「サプライチェ ーンのバーチャル・デュアル化」を提案する.
著者
谷口 勇仁
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.47-55, 2012-06-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
28

本稿の目的は企業事故研究の構図をもとに,安全文化の理論的特徴を明らかにすることである.企業事故研究の分析アプローチの前提を検討した結果,安全文化は,事故を引き起こさない理念的な組織を想定し,そこから規範的に導出された組織文化を概念化したものであるという理論的特徴を持つことが明らかになった.
著者
長瀬 勝彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.56-65, 2012-06-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
18

本論文では,組織に存続の危機をもたらすようなリスクが過小評価される現象について,リスクを外敵などのリスク1と天災や現代社会のリスクであるリスク2に分類することで説明を試みた.リスク1に適応した人間の認知のシステム1がリスク2には適切に対応できず,人間の認知の中で論理と分析を司るシステム2もまたリスク2に適切に対処できるには至っていないことが原因のひとつである可能性が見出された.
著者
江夏 幾多郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.80-94, 2012-03-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
38

人事システムがある方針を反映する際の首尾一貫性の程度が組織パフォーマンスに及ぼす影響について,統計的に解明した.人事施策の充実度における正規従業員と非正規従業員の間での均等度に着目し,その程度における「基本システム」と「個別の管理分野」のマッチングが中程度の時に組織パフォーマンスが最大化する,という傾向が見いだされた.人事システムにおける首尾一貫性の追求に際しては,機能と逆機能が同時に現われる.
著者
小松 威彦
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.87-100, 2011-12-20 (Released:2022-08-27)
参考文献数
25

本稿では取引費用理論と資源ベース理論の観点から,半導体製造における統合と分業の問題を取り上げ,両理論の妥当性とその関係について実証分析を行う.データは2006年世界の半導体企業118社387製品を対象としロジット分析により検証を行った.分析結果より,両理論による仮説は支持されその有効性が確認されたが,それぞれの理論による説明力は事業年数別のサブサンプル間で大きな違いがあることが示された.