著者
竹田 真木生 五味 正志
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

アメリカシロヒトリは戦後アメリカから侵入し、分布を広げており、侵入害虫の定着に伴う生活史の変化の研究のモデル生物である。生活史適応は、種の存在様式を決定する大事な形質で、この分化によって新しい種を生み出したと考えられる。このような適応の様式が地球温暖化の中でどのように動くかを、調査するのが本研究の目的である。アメリカに葉、日本に侵入したものとは異なる姉妹種がいて、本国では一部同所的な分布をする。また、競争種を欠く分布をするストックもある。本研究では全米から多数の個体群を採集し、その生活史形質と遺伝的分化、時間的な隔離機構の調査を行った。2種の生殖隔離には時間的な隔離が重要な役割を果たすことが明らかになった。また、北陸地方で温暖化に伴う、休眠の臨界日長の調査(すなわち3化型生活史の北上)をおこなった。二化と三化の境界は、現地の平均気温と明確な対応を見せることが分った。
著者
水野 利雄 氷上 雄三 中西 三生
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.151-155, 1971

ラットの尿石形成に及ぼす各種塩化物の影響を調べた。尿石の形成はラットの膀胱内へ亜鉛核をそう入することにより行ない, 塩化物は飲料水に溶解した形で与えた。結果は次の通りである。1. 塩化アンモニウム, 塩化ナトリウムおよび塩化カリウムはいずれも尿石の形成を予防する効果を有し, その効果の程度は塩化アンモニウム>塩化ナトリウム>塩化カリウムの順であった。なお, 塩酸は上記塩化物よりも尿石予防効果が大であった。2. 塩酸および塩化物の投与により, 尿のpHは処理対照区の7.4から6.2∿6.8に低下し, 尿の塩素量は増加した。
著者
奥村 武久 河原 啓 高野 新二 岡田 三千代 林 光代 鈴木 英子 野田 恵子 木村 純子 長井 勇 植本 雅治
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学保健管理センター年報 (ISSN:09157417)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.47-55,

定期健康診断に対する一般学生の持つ不安をアンケートによって調査した。1983年度と1984年度の回答を比較することにより,次の結果を得た。(1)1983年の結果と1984年の結果が非常に近似した。(2)健康診断の必要性は,1984年の新入生の89.6%,大学院生の94.3%が肯定した。否定は新入生の女性の12.8%が一番高い数字であった。(3)健康診断前の不安は,新入生の場合,男性の25.4%,女性の31.1%で女性の不安率が高かった。(4)不安の理由として,新入生の男性は視力,色覚を第1位に,新入生の女性は体重を第1位に挙げていた。(5)終了後の心配については,再検査の必要なものすべてが心配になるのではなく,20〜67%程度であることが判明した。(6)再検査の項目によっても差異があり,検尿の再検査者の中に心配になった者の率が高いことが分った。(7)批判・不満・要望の意見を検討すると,次の事が明らかになった。(a)一番多い批判は「時間がかかる。混む」という意見であること(b)尿検査の表示についての不満を解消するための努力によって,次年度にその効果が認められたこと(8)得られた意見と現状とのつき合わせを繰返すという息の長い努力が健康診断を望ましい方向へ近づけるのに重要であることを指摘した。
著者
市澤 哲
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本年度は尊氏・義詮期の公武関係を中心に研究を行った。従来当該テーマの研究は、公武の訴訟管轄、意思伝達システムなどの制度史的考察が中心であった。近年、公家家督の認定者が義詮期に室町殿に移行することが指摘されているが、治天の君の権限が室町殿に吸収されていくという従来の図式をでるものではない。そこで本研究では公家社会の根幹にかかわる公家所領の没収・安堵、儀式の運営への公武のかかわり方を検証し、公武関係の枠組みを仮説的に示すことをめざした。1. 公家所領の没収・安堵については、観応擾乱にともなう、不参公家の処分、回復の過程に注目した。まず南朝側の北朝貴族に対する厳しい処遇などの影響で、北朝貴族が北朝の治天の君を絶対視しなくなる傾向が見られること、かかる事態に対し、室町殿は旗幟不鮮明な北朝貴族の処分を実行したことを明らかにした。さらに室町殿による処分は、北朝の治天の君に諮られ、没収所領の返付については輪旨が発給されていることを指摘し、室町殿の行動は北朝の治天の君からの権限吸収ではなく、むしろその権威の維持をめざす行動と評価すべきであるとの仮説を示した。2. 公家儀式の研究では、『太平記』末尾部に天皇の朝儀復興の意志と武家の支持によって開催されたと位置づけられている貞治6年中殿御会に注目し、天皇の楽器演奏、実際の開催過程の検討という二点から検討を加えた。その結果、御会が天皇が公式行事で笙を吹く最初の機会であり、朝儀の復活と同時に新しい朝儀の始まりをも意味した重要なイベントであったこと、さらに他の記録史料から御会は発案の段階から室町殿の意志が強くはたらいたことがよみとれた。以上の結果、室町殿は北朝の権威を確立し、その権威を独占することを基本的な方針としていたという、1の仮説を補強する見通しを得た。
著者
一井 隆夫
出版者
神戸大学
雑誌
兵庫農科大學研究報告. 農芸化学編 (ISSN:04400216)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.33-37, 1957

1)昨年に続いて生長促進物質(主としてIBA, ラノリン1g当り12mg)による取木実験を行つた。取扱つた果樹は栗実生及び品種, 及び柿, 桃, 梨の若干である。2)栗品種は実生に比して発根に日数を要し, 発根率も低い。品種の中では豊玉早生及び銀寄の発根がよく, (60日で60%)岸根及び中国栗系統の利平, 傍土350は殆んど発根しなかつた。傍土350の実生も日本栗実生に比して発根は不良であつた。3)再処理によつて, 銀寄, 豊玉早生の場合は20日で約80%, 利平及び傍土350は約10%発根した。4)栗実生の取木の時期は6月中旬から7月初旬が適当である。品種の場合は5月下旬から6月下旬に亘つて3回処理した中, 6月10日処理のものが最もよかつた。5)発根の難易は主として穂の性質により決定され, 台木の性質は穂に影響しないようである。6)実生では2.4.5-T_pの1mgがIBAの2∿4mgに相当して代置できること, 単独で使用する時はラノリン1g当り5mgが適当のようである。7)桃は初期にIBAとB_1を併用することにより60%発根した。8)柿, 梨は未発根であつた。
著者
矢田 勉
出版者
神戸大学
雑誌
文化學年報 (ISSN:02868105)
巻号頁・発行日
no.25, pp.57-90, 2006-03
著者
蓬莱 政
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

研究を開始し、当院外来通院中及び入院となったうつ病患者の同意取得を試みたが、同意を得ることができなかった。その多くはDEX-CRH負荷試験について、ステロイド内服やCRHの静脈内投与に対する恐怖感を訴えてのものであった。加えて新型コロナウイルス感染拡大のため、初診患者、入院患者共に大幅に減少し、対象となる患者自体が減ってしまった。患者、健常者共に現時点での組み入れは極めて困難であり、今後、新型コロナウイルスの感染が落ち着き次第、再度検体収集を試みる予定である。他には気分障害や統合失調症に関する生物学的な研究を複数行った。
著者
藤岡 秀英 野口 理子 山岡 順太郎 鈴木 純 堀江 進也 佐藤 純恵 内種 岳詞 木下 祐輔 山岡 淳 足立 泰美 勇上 和史 張 帆
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では、勤労者の心身の健康の維持・増進に資する効果的な施策のあり方を検討するため、健康保険事業者と連携し、事業者、従業者への2回目のアンケート調査を実施して「統合パネルデータ」を構築する。これにより、A.特定健診や特定保健指導等の疾病予防施策の有効性、B.職場環境や企業の健康管理施策が勤労者の心身の健康に及ぼす効果、ならびに、C.勤労者の心身の健康の維持・増進が企業業績に及ぼす影響を実証的に検証する。新しく考案した「加点式健診事業」の実施と評価を行い、地域全体の健康づくりへのモチベーションを高めることで、住民の健康診断受診率の向上、就労、所得、地域生活への効果を調査検証する。
著者
栗栖 薫子 三浦 聡 小川 裕子 政所 大輔 赤星 聖 宇治 梓紗
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

近年、グロ―バル・ガバナンス(GG)構造の複雑性が増している。国連気候変動枠組み条約の下で排出権取引に関わる様々な実施枠組みが普及し、企業のサステナビリティやESG投資に関わる取組が林立し、持続可能な開発目標(SDGs)の実施に関わる取組は全体像の把握が難しいほどである。この構造の複雑性は、①問題領域の複雑化、②ガバナンスの手段の多様化、③アクターの多様化(権威の多元化)という3次元での「密度」の増加によって特色づけられる。本研究はSDGsにかかわる主要な問題領域(気候変動、人道、難民、保健等)を事例として「GGの複雑化とアクターとの間にどのような相互作用が見られるか」という問いに取り組む。
著者
笹 健児 川原 秀夫 箕浦 宗彦
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2018-06-29

当該年度は研究の4年目としてコンテナ船での実船実験について、1年目に設計した実験システムをアジア~欧州航路のコンテナ船(20,000TEU)に搭載、2019年5月 より実海域での実験を開始し現在も継続している。実船実験では船橋における気温、湿度、日射量をはじめ、本船位置、速力、海水温度、風向風速、 船体運動 等を時々刻々に観測、データを蓄積している。2019年12月にデータ回収し、分析を進めた。(1) 2019年5月~12月に至るアジア~欧州間の航海(3往復)における実海域データが計測できた。外気温、湿度、日射量についての変動特性を季節および航海ごとに 整理できた。また2018年度~2019年度に実施した大島商船高等専門学校で実施した陸上実験の結果についても同様に整理を進めた。(2) 陸上実験の結果をもとにコンテナ内外の関係を重回帰分析にて季節ごとにモデル化した。これを季節・海域ごとに組み合わせ、実船実験にて計測された3往 復の航海についてコンテナ内(日射の影響を直接的に受けるコンテナ)の温湿度、露点温度、汗濡れの状況を推定した。 (3)計測したパラメーター間の相関分析を行い、各パラメータ間の関係を明らかとした。この結果、コンテナ内の状態は単独のパラメータではなく、気温、水蒸 気圧、日射量の3変数からなる重回帰推定が最も高精度になることを明らかとした。 (4)この結果、季節および往航・復航による違いは見られるが、一航海にて30~50%の期間にて汗ぬれが生じうる結果となり、特に温度変化が著しく発生するスエ ズ運河~地中海を境界とした欧州前後で結露現象が顕著となりうるものと考えている。
著者
八田 卓也
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

以下の2つの知見を得た。①既判力を訴訟物を基準とせず判決理由中の判断に既判力を及ぼす必要がある局面が存在し得る。②既判力の作用局面のうちの前訴後訴の訴訟物が矛盾関係に立つ場合については、日本法・ドイツ法ともに近時これを拡大する傾向がある。しかし、ドイツ法は既判力の本質論として一事不再理説を採用しておりこの場合の処理が容易である(後訴の却下でよい)のに対し、日本法では拘束力説が採用されておりこの場合の処理が困難である(前訴判決の既判力を前提として後訴を判断しなければならない)。以上よりドイツと異なり日本ではこの場合の取扱いには慎重さが求められる。
著者
佐藤 英明
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

(1)アメリカの連邦遺産税と比較した場合、現在のわが国の相続税の下での非居住者への相続税は、無制限納税義務者たる居住者の場合ときわめて相違点が少ないという特徴が浮かび上がってくる。これは諸控除等の適用に関して顕著であるが、その他、日本の相続税負担がかなり重いことを考えると、租税回避に対応する規定等を整備する必要が強調される。(2)日本が現在結んでいる唯一の相続税条約であるいわゆる日米相続税条約は、相続される財産の所在を条約によって細かく決定し、それをもとに両国の課税権を決定していくという発想にもとづく所在地型条約である。しかし、1970年代以降は、被相続人の住所地をまず決定し、それをもとに各国の課税権の範囲・内容を決定していく住所地型条約が、国際的には一般化してきている。(3)わが国のように相続人の住所地によって制限納税義務者と無制限納税義務者とを区別する相続税法を有する国が、アメリカのように被相続人の国籍および住所地によって両者を区別する遺産税制の国と、住所地型条約を締結する場合には、相続人等に無制限納税義務を課す国がない場合が生じる可能性や、一見対等に見える条約により、わが国の課税権が実際上大きな制約を被る可能性が存在する。後者の問題を回避するためには、国内法において、特別な場合には、被相続人の住所地が日本である場合にも相続人に無制限納税義務を課す制度を設けることが必要であるが、そのような対処を行なうにあたっては、わが国の相続税法が遺産取得税という考え方にもとづいていることとの関係で、慎重な検討が必要である。