著者
西田 康太郎 高田 徹 由留部 崇 角谷 賢一朗 前野 耕一郎
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

椎間板研究にとって欠かせない、3種類の椎間板変性モデルを確立した。緩やかな変性を生じるモデルを用いて圧迫期間に伴い特に脊索由来細胞が早期に消失して非脊索由来細胞(軟骨様細胞を示唆)が相対的に増大していた。動的負荷培養装置を用いた実験では, 圧負荷により代表的なメカノレセプターであるintegrinの関与が椎間板変性に関与していることが明らかとなった。脊椎後方に小皮切から挿入可能なスペーサーを作成し、周辺機器も含めて改良を行い、有効性に関して大型動物実験を行い確認した。
著者
前山 花織
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症における役割を明らかにするために、新生児黄疸に関連するUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子多型の発生頻度をASD児の集団と日本人の一般頻度と比較し、ASDの発症に関与しているかどうかを検討した。回収したDNAを解析した結果、UGT1A1*6、UGT1A1*28の遺伝子多型の頻度は日本人の一般頻度と変わりなく、少なくともASDの発症に新生児黄疸の発症リスクの一つであるUGT1A1遺伝子多型は関与していないことが考えられた。
著者
佐藤 隆広 石上 悦朗 西山 博幸 絵所 秀紀 加藤 篤行 西尾 圭一郎 長田 華子 宇根 義己 鎌田 伊佐生 内川 秀二 安保 哲夫 上野 正樹 上池 あつ子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

代表のわたしは、日本的生産経営システムの海外移転を評価するハイブリットモデルにもとづく現地調査をインド西部地域で実施することができた。調査を行った8社についての会社記録を作成し、インドにおけるハイブリット調査のデータベースを拡充することができた。また、分担研究者と連携研究者は、バングラデシュ・インドのコルカタの繊維産業調査、インド・アーメダバードとスーラットの繊維産業・共同組合調査、インド・デリー首都圏の繊維産業・自動車産業調査などを行うことができた。研究開始年に相応しいパイロット的な調査を複数実施できたことを特記しておきたい。研究業績としては、代表のわたしは、『商工中金』にインド進出日系中小企業の実態(2013-14年調査)を分析した論文と『経済志林』に経済産業省個票データを利用して1995~2014年度までのインド進出日系企業の動向を分析した論文を公表できた。これら2つの論文によって、インド進出日系企業の歴史的推移とその特徴を明らかにし、本共同研究の土台を構築することができた。また、分担研究者や連携研究者は、国際価値連鎖(GVC)分野においてインドのタイヤ産業や製薬産業に関して複数の論文を執筆し、新新貿易理論に関する理論的・実証的研究も複数本公表している(そのうちの1本はQuarterly Review of Economics and Financeに掲載された)。また、新しい政治経済学(NPE)分野ではインドの地主の政治力に関する実証的な研究が公表された。このほか、経営学分野では『国際ビジネス研究』にインドを事例とした新興国戦略に関する論文が掲載されたこと、地域研究分野ではインドのEconomic and Political Weeklyに縫製産業におけるコミュニティの機能を分析した論文が掲載されたことを特筆したい。
著者
植木 淳
出版者
神戸大学
巻号頁・発行日
2001

博士論文
著者
小林 哲郎 松井 勇佑 佐藤 真一
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究は深層学習の技術をテレビニュースの内容分析に応用し、大量の映像情報を目視に頼ることな、自動的に分析する方法論を確立する。深層学習は、分析対象の分類に有効となる特徴を自ら学び取っていくため、様々な角度や表情で人物が映されるテレビ映像の分析に有効である。本研究の文脈では、事前に特定することが困難な政治家の顔の特徴をアルゴリズムが自律的に学習していくことで、ニュース内における特定の政治家の出現を高い精度で検出することが可能になる。こうした深層学習に基づいた計算アルゴリズムと網羅性の高いニュースアーカイブを組み合わせることで、従来の内容分析では回答できなかった社会科学的問いに答えることを目指す。
著者
塩谷 英之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

食後、心拍数、血圧などの血行動態は大きく変化するため、しばしば生体に悪影響を及ぼす。従って食後の血行動態の詳細を明らかにすることは健康教育のために重要である。そこで本研究では食事が心拍数、血圧、自律神経活動等に及ぼす影響について(1)食事摂取量による影響(2)食事摂取時間による影響(3)若年健常者、壮年健常者、糖尿病患者における影響の違いの3つの観点から研究を行った。食事量の影響に関しては食事量の増大により、食後の心拍数の増大がより顕著になり、中心血圧が低下することを明らかになった。食事時間に関して特に夕食摂取時間が遅くなることが、深夜の心拍、血圧、自律神経活動のリズムを大きく障害することが明らかになった。若年健常者、壮年健常者、糖尿病患者における比較においては比較的軽症の糖尿病患者においても食後の自律神経活動の低下の結果、上腕血圧のみならず、中心血圧の低下が生じることが明らかになった。
著者
岡田 健次 井上 大志 山中 勝弘 江本 拓央 山下 智也
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

大動脈解離の発生機序は未解明であり、治療法も発症後早期の緊急手術が選択され、新規の予防法および進展抑制法の開発が急務である。本研究の目的は、ヒト大動脈解離手術サンプルの単一細胞遺伝子発現解析を行い、病変部の炎症細胞と血管細胞の単一細胞ごとの遺伝子発現を調査することで、大動脈解離発生メカニズムの一端を解明することである。解離病変に特異的な遺伝子発現から関連分子を特定し、蛋白レベルでの解析も加えて病態との関係を検証する。新規治療標的の可能性のある炎症細胞とその関連分子に対して動物モデルによる介入実験を行い検証する。
著者
茶谷 直人
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2001

本年度は前年度に引き続き、アナロギア(アナロジー・類比)概念をキーワードに、アリストテレス哲学における解釈上の諸問題の解決、古代・中世哲学史の連続的把握、応用倫理学上の諸問題への新たな視点の提供を目指す、といった長期的展望のもとに研究を進めた。それにより、主に次の研究成果を生み出した。1.前年度からの継続課題として、アリストテレス『形而上学』Θ巻における二つのデュナミス(能力と可能態)の内実と関係、およびΘ6におけるアナロギアの意義を探った。両デュナミスの差異は排他的でなくパースペクティブ上のものであるがΘ3で両者の連続性が見出されること、Θ巻前半で提示される<能力:運動>というデュナミス:エネルゲイア図式は、Θ6でアナロギア(<現実態:可能態>関係の類比的説明)を展開する上で方法論的意義を有すること、などを示した。なお本研究については、日本哲学会編『哲学』へ論文を投稿の結果、審査を通過し掲載が決定した(論文題目:「アリストテレス『形而上学』Θ巻におけるアナロギアと二つのデュナミヌ」、本年3月公刊)。2.類比概念を、論証的知識から一歩距離を置きつつも単なる話術や修辞にも留まらない独特な知の様式として捉え評価し応用倫理学上の諸問題にアプローチする、という作業の一環として、インフォームド・コンセント(IC)に関し独自の観点からの考察を行った。そこではICについて、「医師の開示内容についての患者の有効な理解を如何に導得るか」という観点から検討し、それを実現する説明様式の一つとして、「アナロジーによる説明」を提示した。これは、高度に専門化された事象について患者の理解を促す策との一つとして有効である。本研究は、昨年11月に日本生命倫理学会大会において発表された(題目:「インフォームド・コンセントにおける<情報開示>と<理解>の関わりをめぐって--アナロジーの可能性」)。
著者
塚原 東吾 三浦 伸夫 小笠原 博毅 中島 秀人 隠岐 さや香
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は科学機器の歴史について、主に望遠鏡と顕微鏡に光をあて、イタリア・オランダ・イギリスのケースに加え、フランスの事例の研究を行った。この研究では哲学機器とも呼ばれた数学機器や、望遠鏡と四分儀を組み合わせた測地機器、また物理教育に使われた一連の力学機器などを検討したその際、科学機器自体の歴史を基礎に、科学の組織化、いわゆるアカデミーなどの制度化についても検討を行った。科学機器の歴史を通じて、科学史をより広く、また深い観点から検討するための基礎的な作業である。
著者
筧 楽麿
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1998

加速度記録のエンベロープ合わせによる高周波生成過程の推定に遺伝的アルゴリズムを用いる手法を開発した。モデルパラメータは加速度放射強度と破壊時刻である。1995 年兵庫県南部地震のシミュレーション記録をデータとして使った解析では,「現世代の上位5%はそのまま次世代の個体として残すという『エリートコース』」を設けることにより良好な観測・合成エンベロープの合いを実現した。シミュレーションでは非線形性の強いパラメータである破壊時刻も非線形性の弱い加速度放射強度と同等の良好さで決定され,この種の解析のネックであった非線形性は克服できたと考えられる。一方,シミュレーションで用いた観測点数(9点)では震源モデルを充分に拘束できなかった。これは手法の欠陥ではなく,破壊時刻と放射強度の両方をモデルパラメータとするにはデータの持つ情報量がやや不足していることを示している。即ち震源モデルを充分に拘束するには多くの震源近傍の観測点が必要であるということが明らかになったということで,高密度の強震観測の重要性を訴える結果である。超広帯域の解析として1994年のノースリッジ地震の解析を行った。残念ながら観測点数が5点と少なかったため破壊時刻をモデルパラメータに含めることができず,線形化してエンベロープインバージョンを行う手法で高周波(5-10Hz)の地震波の生成過程を推定した。Wald et al.(1996)による低周波数帯の解析結果と比較すると,(1)高周波はすべりの大きい領域の周辺部から励起されていること,(2)高周波を励起しているのは断層面上のごく限られた領域であることが明らかになった。(1)のメカニズムは第一義的にはstopping phase で説明される。また(1)は強震動予測においては対象とする周波数帯にあった震源モデルを用いることの重要性を示唆する。これらは超広帯域の解析が震源の物理の理解と強震動予測のための震源のモデル化に大きな役割を果たすことを示すものである。
著者
渕 圭吾
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

経済学における「最適課税論」の成果を租税法に応用することを目指して研究を開始した。最適課税論からの示唆に基づくいくつかの短い研究成果を公表したが,経済学の成果を応用するという大上段の議論で問題が解決するわけではなく,税制の一つ一つの制度のあり方に着目してそのあるべき制度設計を考えていく必要があることが判明した。そこで,国際課税,地方税,所得課税,等につき,個別にその制度の仕組みとそれを改善するための方策を検討し,論文を執筆した。さらに,英語での研究成果の公表を実現した。
著者
廣瀬 隆則
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

脂肪肉腫は脂肪細胞への分化を示す悪性腫瘍であり、適切な診断と治療を行う必要がある。そこで脂肪肉腫の病理診断の精度を高めることを目的に種々の検討を行った。その結果、良性と悪性の区別にはp16免疫染色が有用であること、他の悪性腫瘍との鑑別にはMDM2遺伝子の増幅やMDM2蛋白の過剰発現の証明が役立つこと、また脂肪肉腫は予想以上に周囲に浸潤する腫瘍であることなどを明らかにした。この成果に基づき、脂肪肉腫の診断精度が高まり、治療法の改善につながることが期待される。
著者
桑門 秀典
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

サブリミナルチャネルを用いると,ディジタル署名の中に秘密情報を隠すことができる.署名者はその秘密情報の存在を第三者に知られることなしに送信できるので,悪用される可能性がある.しかし,もし秘密情報が存在する場合,そのディジタル署名を中継する者が,その秘密情報を破壊するような操作が可能であれば,全てのデータにその操作を施すことによってサブリミナルチャネルによる通信を防止することができる.このような操作が可能であるようなディジタル署名方式を開発し,実用化の検討を行うことが本研究の目的である.1.提案するディジタル署名方式の効率の向上:合成数を法とする平方根を求める困難さに安全性の根拠をおく使い捨て型ディジタル署名を基にして,サブリミナルチャネルの悪用を防止できるディジタル署名方式を考案した.この方式は,極めて効率が良く,現在の計算機上での実装も容易である.一般的に自己ランダム帰着という性質をみたす問題の中で,一方向性をもつ問題を利用した使い捨て型ディジタル署名は,効率が良く,かつサブリミナルチャネルの悪用を防止できるディジタル署名方式に変換できることがわかった.2.提案方式の安全性の検討:提案方式の安全性は,妥当な計算量的困難性な仮定に基づいている.悪意のある署名者が秘密情報をディジタル署名に隠したとしても,それが受信者に伝わる確率は,無視できる程小さいことがわかった.3.提案方式の実用化の検討:提案方式の実装は容易であり,計算に要する時間も短い.ただし,転送すべきデータが比較的多いので,低速なネットワークでは支障がでる可能性がある.しかし,近年の高速ネットワークの整備を考慮すれば,この欠点はあまり問題にならないと考えられる.
著者
三船 恒裕
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度は昨年度に引き続き、外集団への攻撃性が生じうるかを検討する実験を行った。昨年度はコスト祖を支払った攻撃性を測定する経済ゲームとして新たに先制攻撃ゲームを開発したが、そもそもの攻撃率が低いという問題があった。そこで今年度はまず、ゲームの内容を改善し、さらにゲームでの攻撃行動が防衛のための攻撃であることを示すための実験を行った。具体的には以下の通りである。参加者は二人一組で1500円を元手としてゲームを行い、一方が攻撃のボタンを押すとボタンを押したほうが100円を支払い、押されたほうは1000円を失うこととなった。両者がボタンを押しても結果は早押しで決まり、後から押した場合は自分・相手に対して何の影響もなかった。実験では二人一組の双方がボタンを押せる双方向条件と、一方だけがボタンを押す権利があり、もう一方はボタンを押せない一方向条件を参加者間で配置した。先制攻撃ゲームにおけるボタン押し行動が「相手がボタンを押すかもしれない」という恐怖に基づくものであれば一方向条件ではボタンを押し行動が生じないと予測されるが、実験の結果はこの予測を支持した。双方向条件での攻撃率は50%であったが、一方向条件では4%であった。双方向条件においてかなりの攻撃率が観察されたため、次の実験ではこの攻撃率が内集団相手と外集団相手で異なるのかを確かめる実験を行った。132人を実験参加者とし、最小条件集団を用いて相手の所属集団を操作した結果、攻撃率は相手が内集団の場合は約29%、外集団の場合は約32%であり、統計的な有意差は見られなかった。つまり、昨年度実施したゲームを改良し、攻撃率が高まるようにしても、昨年度の結果と同様に外集団に対して特に攻撃的になるという現象は観察されなかった。これは「ヒトには外集団に対する攻撃性が身についている」と主張する共進化モデルの予測とは明確に反する結果である。
著者
竹野 裕正 中本 聡 八坂 保能
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

この研究では,核融合直接発電での電荷分離に利用するカスプ型直接エネルギー変換器の性能向上に,高周波電界を利用する.最初のイオン捕集電極前面の網電極による実験結果から,磁場平行方向の電界が有用であることを見出した.これに基づいて電子捕集電極前に円環対電極を設置して実験を行い,電子電流を増大させうる条件があることを見出した.この現象の物理的理解のために電子の軌道計算を行ったところ,電子の走行時間の差が実験結果に対応すると考えられる.物理機構の究明には至っていないが,性能改善の可能性が見出された.現象の応用を目指した研究を継続して行く.
著者
大村 直人 本多 佐知子 白杉 直子 原 真衣子 池田 和哉 GHOBADI Narges
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、主に調理における人間の撹拌動作の中の暗黙知に着目した。5人の熟練者と2人の非熟練者の撹拌動作を観察した。生クリームの状態は、生クリームの気泡巻き込み量を示すオーバーランとレオロジー特性を用いて評価した。動作解析においては、被験者の肘、手首、泡だて器の柄の3点にマーカーを設置して、その動きを記録した。生クリームの混合過程を、食紅をトレーサーとして可視化した。5人の熟練者はいずれも、非熟練者よりも約半分の時間でオーバーランのピーク値に到達し、その値も100を超えた。動作解析より、熟練者は非熟練者の動きに比べ、肘、手首、泡だて器の運動は同期しておらず、複雑でカオス的であることがわかった。
著者
橋本 健志 四本 かやの 児玉 豊彦 田中 千都 平良 勝 大畠 久典 北岡 祐子 藤本 浩一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、自殺未遂歴および希死念慮がある精神障害者に対してリスクをマネージメントしながら、就労支援を行う特化型就労支援プログラムを開発しその有用性を検討することを目的に実施した。このプログラムは、医療機関と連携した特化型就労支援窓口と携帯メール自動配信サービスから成り立っている。K市内の就労支援事業所と精神科診療所外来作業療法部門の2箇所で医療機関と連携した特化型就労支援窓口を開設しその有用性を検討した。さらには、希死念慮等の精神症状を有する精神障害者に対して携帯メールを配信するプログラムを開発し、それによって希死念慮が低下し、社会資源を積極的に利用する者が有意に増加したことを報告した。